キャラクター/エカチェリーナ

むかしむかし……。
ゆきにつつまれた冬の国に
ひとりの少女がやってきました。
　
外の国から来た少女は、
不慣れな土地でけんめいに努力し、
ついに女帝となりました。
　
女帝のなまえは、
エカチェリーナ2世へいか。
　
ある日、へいかのため特別につくられた
というピストルがお城にとどきました。
　
金や象牙でそれはそれは美しい装飾の
なされたピストルを、へいかはとても
気に入りたいせつにしました。
　
やがて、へいかのピストルは
ながいながい時をへて……。
　
貴銃士エカチェリーナとなって、
ますたーのもとへ舞い降りたのです。
　
ぼくとますたーのおはなしが、
いま幕をあけます……。
　
ぱちぱちぱちぱち。
　
……とゆーわけですので、ますたーさん、
あなたのこと助けてさしあげますね。
　
あ……まった。
助けてさしあげたいですけど、およーふくが
こんなボロではいけませんでした。
　
ぼくって、可愛くなればなるほど、
つよくなる貴銃士なのですー。
　
ですから、すてきなドレスをまとってこそ、
貴銃士エカチェリーナのしんのじつりょくを
お見せできるのですよ。
　
うつくしいドレスをまとい、せんじょうに
舞い降りる、天使のようなぼく……
ほふぅ……すてきですね……。
　
可愛さはひとの心をうばい、
ひとの時をとめます。
　
せんじょうの方々、すぐにほんとうの天使に
お会いできることでしょう……ふふ……。
　
つまりですねー、可愛いはさいきょう……！
可愛いには、だれもかてないのですー。
　
それなのに、この基地ときたらドレスの
ひとつもなくて、ぼく、しょんぼり……。
　
むぅー。

……今日のおよーふくはどうですかー？
　
……だめ？
　
えー、きびしーい。ボロのおよーふくでも
可愛くしようってがんばったのにー。
　
……あれ？　そこにいるのは？
　
ごきげんよう、ますたー。
　
いま、よーせいさんたちと
お話してたところですー。
　
……え？　ますたーはよーせいさんが
見えないんですか？
ここにいらっしゃるじゃないですか。
　
ふーん……ほんとーに見えないようですね。
貴銃士だけにしかみえないのかしらん。
恥ずかしがり屋さん……？
　
じゃあ、ますたーによーせいさんのこと
教えてさしあげますねー。
　
えーっとですね、よーせいさんたちは、
ぼくたち貴銃士のことをちぇっくする係
なのですー。おめつけ役、なのですー。
　
気品とか、立ち居振る舞いとか、もちろん
およーふくも、貴銃士としてふさわしいか
……をちぇっくしてくださるのです。
　
いま、ちょうど、よーせいさんに
ぼくのちぇっくをしてもらってた
んですけれども……。
　
ぼくは、気品も立ち居振る舞いも
完璧なんですって。とーぜんのぜんですね。
　
でも、やはり……およーふくで減点です。
まぁどうみても、このよーなふくでは
高貴な貴銃士とはいえませんものね。
　
高貴なぼくとしては、すてきなドレスを
着ていたいですけど、
ここにはないようですし……。
　
え……お買いもの？
まぁ……、ぶてぃっく……で
ドレスを買うのですね。
　
ぼく、お買いものってしたことないので、
どうやればいいか
わからないのですけれど……。
　
でも、可愛くなるためにはそのよーなことは
言ってられません。ぼく、
どんなしょうがいも乗り越えてみせます。
　
さっそく、次のお休みにお買いもの、です。
可愛くてすてきなドレスが見つかると
うれしいですー。

むぅー……。
　
ごきげんよう、ますたー。
ぼくはごきげんよろしくないのですー。
　
このあいだ、
ますたーにおしえていただいた、
お買いものにいってみましたのです。
　
さいしょはひとりでいこうとしていたのです
けど、まぁ……アレクがついてきたいと
いうので、彼もいっしょに。
　
すこしとおくの大きな街にでていきまして、
ぶてぃっくをのぞいてみましたら、
あったのです。
　
ぼくにぴったりのさいずの、
ブルーのすてきなドレスが……！
　
ぼくはうれしくなって、さっそく
『いただきたい』と店主に伝えましたところ
カネはあるのか、と。
　
まぁ、カネ……とは？
ぼくはものをいただくとき、
おかねを払ったことはありません。
　
うつくしく可憐なぼくが、
うつくしく可憐なドレスを着る。
これってとーぜんのことですよねー。
　
ですから、無知な店主に
教えてさしあげたのです。
　
『むしろあなたのほうが、ぼくに
着てくださいとドレスを贈るのが
すじではありませんこと？』って。
　
そうしたらですよ。店主がとつぜん
わーわーとわめきだして、ぼくを外にいた
世界帝軍の兵士につきだしたのです！
　
『あたまのおかしい貧乏なこどもがいる、
えいぎょうぼうがいだ』……とかなんとか、
言っていましたっけ。……ふん！
　
世界帝軍の兵士も、
シッシとおいはらうような真似をして……
くつじょくのきわみ、です！
　
あまりにぶれいな行い、もうがまん
できません。おふたりに鉛玉を
めしあがっていただこうとしましたら……。
　
ヘタレなアレクに、
むりやり連れ帰されましたのです。
　
……と、いうわけで、お買いものは
しっぱいにおわってしまいました。
　
ふん。
あのような店主がいるぶてぃっくには、
もう2度といってやらないのです。
　
あら……べつに、ますたーが悪いのでは
ありませんよ。
そこは、お気になさらないで。
　
ですが、ドレスへのみちは
とおいですねぇ……ふぅ……。
　
……？　つくる？
　
ぼくが、自分でドレスをつくるのですか？
　
まぁ……それは名案なのです。
　
つくるのもはじめて……ですけれど、
だいすきなドレスですから、
きっと楽しいでしょーね！
　
ますたーもどんなドレスがいいか、
一緒に考えてくださいー。

むぅー……。あともうすこし、
なのですが……。
　
あら、ごきげんよう、ますたー。
　
みてくださいー。およーふくのざいりょうが
そろってきたのですよー。
　
この生地、シルクのようになめらかな
手触りなのです。こっちは飾りのリボン。
ネックレス。可愛いでしょー。
　
ここまで集めるのも、
とってもくろうをしました……。
　
ときには1日中、あしがぼうになるまで
蚤の市をさがしまわって、
それでもみつけられない日もありました。
　
しなぶそく、の世の中とは聞いておりました
が……そのうえ、ものを買うには
おかねもひつようだということで。
　
望めばなんでも手に入るような、
おばあさまがいきていた頃とは何もかも
ちがうんだって、アレクが言ってました。
　
まったく、
ほんとーにふべんな時代ですこと。
　
ますたーはよく生きていられますね。ぼく、
はじめてますたーのこと尊敬しましたもの。
　
おかねはですね。
こちらもたいへんでした……。
　
ほかの貴銃士のみなさんは、『あるばいと』
をしておかねをかせいでいるようですので、
ぼくもやってみようと思って。
　
街のぜんぶのおみせに聞いてみたのです
けれど、はらだたしいことに、どこも
あるばいとをさせてくれないのです……！
　
『おまえみたいな細っこい子供にできる
仕事があるわけないだろう』などと……
ぶれいな発言をするものもおりまして。
　
こちらの方にも鉛玉を召し上がって
いただこうとしたところ……。
　
またもやヘタレのアレクがしゃしゃりでて
きて、とめられましたけども。
　
でも、こんかいは、アレクには
感謝しなければいけないのですー。
　
ぼくに気をきかせたのか、
知りませんが……。ぼくも手伝えそうな
あるばいとをみつけてきてくれて。
　
朝はやくからふたりであるばいとを
がんばって……そうしてなんとか、
おかねをためることができたのですから。
　
ほかにも色々ありましたけれども……
やめておきましょう。
　
はくちょうが湖面をゆうがに滑るとき、
水面下でばたばたと足をうごかしている
ようすは見せないものです。
　
およーふくの材料は、あとはレースが
あればかんぺきなのですが、
これがでまわっていなくて……。
　
……え！　ますたー、
その手にお持ちのものは、とってもすてきな
レースではありませんか……！
　
ぼ、ぼくにくれるのですか？　まぁ……！
　
ぼくが材料あつめに苦労しているのをみて、
お知り合いにたずねてくださったのですね。
　
ありがとうございます……。これで、
すてきなおよーふくがつくれそうです！

ふふ……このくんしょー、どうですー？
やっぱり、ぼくにぴったりですね。
　
こんなにうつくしいくんしょーを、
ぼくが身にまとったら……。
　
こうごうしいまでのかがやきに、
世界帝軍はまるごと、
ぼくに魅了されてしまうかもですねー。
　
このくんしょーは……
ますたーが、ぼくの可愛さをみとめてくれた
あかしなのでしょう？
　
ますたーに、可愛いって言ってもらえたら、
百人力ですー。
　
これからも、ぼくは可愛いの頂点を
めざします。さいきょーの可愛いは、
ぼくのものなのですー。
　
だからますたー、どうぞあんしんして、
ぼくの可愛さにおぼれてくださいね。
　
ますたーが、ぼくのことしか
目にはいらなくなってしまっても……。
　
さいきょーに強くなったぼくが……
たいせつなますたーを、
守ってさしあげますから。

ますたー、つぎの休暇は、
ぼくと一緒にりょこうなのですー。
　
アレクもついてきますよ。まあ、置いていく
のも、ちょっと可哀想ですし……。
　
あんなヘタレでも、
荷物持ちくらいはできますものね。
　
せっかくおおきな町へゆくのですから……。
　
これは、およーふくをたくさん
手に入れるちゃんす、なのですー。
　
……ふふ、ますたーにも、ぴったりの
およーふくを選んでさしあげますー。
　
そういえば……
アレクは、旅行にむけて『あるばいと』に
いそしんでいるようですね。
　
アレクがいないと、
りょこうもできないなんて
思われてしまうのは、心外なので……。
　
ぼくはぼくで、
りょこうの準備をしておきましょー。
　
まずは、りょこう先のぶてぃっくを
ちぇっくです！　事前調査は、
しょっぴんぐの基本ですものね。

とっても楽しいしょっぴんぐでしたね、
ますたー。
　
あしたはもう基地に帰らなければいけない
なんて、名残惜しいのですー。
　
でも……基地に帰ったら、
これまでよりももっと高貴なぼくを
見せてさしあげますねー。
　
だって、こんなにたくさんのおよーふくが、
手に入ったんですもの。
　
あたらしいおよーふくは、
ぼくを最高に可愛くしてくれます。
　
いまは、ぼくの高貴力は、かこ最大値を
きろくしているに違いないのですー。
　
ふふ……可愛く高貴であることは、
貴銃士であるぼくの義務……。
　
もっと高貴になって、
ますたーのためにがんばりますね。
　
……あら、もうこんな時間ですか。
ますたー、さいごのお楽しみですよ。
　
ぼくが選んでさしあげた、あたらしい
およーふくにきがえてくださいません？
　
ぼくと、ますたーと、アレクと……
それぞれ色違いのもちーふがついていて、
とってもすてきだったでしょー。
　
ちょっぴりおそろいのおよーふくで、
たのしいディナーの時間なのですー。

あ、ますたー。
今、あたらしいドレスに付けるお花の
飾りをつくっているのです。
　
このあいだ、
結婚式のりはーさるをしましたでしょう？
　
教会やすてきなぶーけをみておりますと、
いいアイディアがわいたものですから。
　
ねえ、ますたー。
りはーさるのアレクは、どうでした？
　
ふふ、格好よかったでしょう？
アレクは、顔はいいのですもの。
　
あれで、エスコートのとき、
なぽれおんに近づくにつれて、
歩き方がギクシャクしなければ……。
　
かんぺきで最高な王子さま
だったのですけれど。
　
……はぁ。
まあ、しかたがありませんね。
　
さぁ、お花の飾りがひとつできましたよ。
次は……あれ、リボンが足りませんねー。
　
アレクに買い出しにいってもらいましょう。
……いえ、たまにはますたーとぼく、
ふたりきりでもいいですね？　うふふ。