そのまま顔を洗って、口をゆすいだ。なんかさものすごい口の
中が変なんだもん。顔もかぴかぴするし。
昨夜のことは、とっとと忘れよう。うん。
拭くものなんかないからぶんぶん頭でも振っておこう。
どうせすぐ水浴びするし。
その前に。
はい
私の後ろで岩場に腰かけてた長文読解にマントを渡すと、眩しそうな
顔をした。
あなたの顔の方が眩しいですよ。ええ。
なんですか。まるで犬みたいだとか思ってます?
いや。昨日、抱いておけば良かったと思って
セクハラ反対! そして私の顔を見て笑うな!
冗談だ
冗談に聞こえませんでした
半分だけ冗談だからな
ああ言えばこう言う。慣れない言葉に顔が熱い。本当に嫌だこの
男。
水浴びがしたいんだろう?
長文読解が手渡してきたのは、綿布を縫い合わせただけの手拭いだっ
た。わお。外人から手拭い渡されたよ。
いいんですか?
それとも、体が乾くまで俺にさらしているつもりか? 襲うぞ
この人、口開かなきゃ神秘的な美形なんだけどなぁ。
大人しく手拭い受け取ると、長文読解は私に背を向けた。どこへ行く
のかと見ていたらすぐ近くの岩場の影に、こちらに背を向けて座り
込んだ。あら、常識的。離れてるけど居てくれるだけで安心感があ
る。