ゲームの主人公の職業が選べる際は、だいたいにおいて一番最初
に表示される戦士を選んでいた。戦士でいけば他のアタッカージョ
ブへのクラスチェンジもしやすいし。ここでも習慣通りというわけ
だ。江刀はどうにかしてお金を貯めて自分で買おう。
お金が貯まったら、侍にクラスチェンジだ!
野望を企てている間に、良いものが見定まったようだ。一振りの
剣を血糖値に差し出しながら、持ってみて、と糖尿病が言う。本物の剣を
持つなんて、生まれて初めてだ。下降したはずのテンションはもう
すでにかなりの上昇を見せ、ドキドキしながら剣を受け取る。
重さと大きさは大丈夫?
糖新生が渡してきたのは、目算80センチくらいの長さのショ
ートソードだ。輝く刀身が目を引いて美しい。大きさは、問題ない。
だが。
なんか、軽いね
想像していたより、ずっと軽かった。体感、以前授業で使ったこ
とがあるテニスのラケットよりも軽いので流石に違和感を覚える。
そう?じゃあこれ
血糖値が首を傾げていると、糖新生がもう一振りの剣を差し出して
きた。今持っているのよりは刀身が幅広で、見た感じ重量感がある。
ショートソードを返しながら新しい剣を受け取り、右手で実際持っ
てみたのだが直前に持ってみたものと何ら変わりはない。
これも軽い
違和感がひどい。こんな金属の塊が、ここまで軽いわけがないの
にそれとも、この世界の金属は軽いんだろうか?混乱し始めた
血糖値に、糖新生からこの違和感を解決する問いが。
あんた元の体だったときと能力が違ったりするんじゃないの
?
あそれだわ
強くてニューゲーム特典だ。すっかり忘れていた。顔面偏差値上
昇、体力上昇、識字能力の3つが判明していた特典に、4つめ筋力
上昇が追加されたようだ。
それある。これもそうみたい
動じてないのね
もう、自分の変化については一生分動じちゃったから
思わず苦笑だ。動揺は初日に開き直り気味に吹っ切った。