■ ※注意書き ■
この文章は、志半ばに仕事に行かなければならなかった徹哉の中の人の思いである。
これは本編のifであり、完全に食い違っているので本編の美しさをを損なうものである。
でも書いちゃった。
雑記がやりたかった事(20%)+ついでだから色々脚色しちゃえ♪(100%)と勢いで書いてしまったものなので荒い。かなり荒い。
でも書いちゃったからしかたない。
こんなものが出来ちゃったからしかたない。
PS.
真に面白いものに出会ってしまうと、人間はおかしくなってしまう。
■ 第二十回デモンパラサイト ■
■ 蛇足なスピンオフストーリー ■
「彼ラヲ スクッタ 悪魔ノ チカラ」
どんな絶望でも笑えば少しはマシだと思った。
だから笑えと言った。
徹哉は走った。
最後の約束を守るために。
その目は光を失い、腕は力を無くし、体は熱を失うばかり。
だが、足は動く。原理は判らないが、風が判る。
見えぬ目の変わりに、風を読み前へ進む。ひたすら前へ、前へ、前へ。
降りしきる雪が風を読む邪魔をするが、これを見て微笑んだ彼女を思うと、この邪魔者さえ愛おしい。
行く先は病院。
雅子のいる場所。
徹夜は走った。
ふと、心に風が吹く。
「ねぇてっちゃん、あの人のこと、ほんとは、覚えてたでしょう?」
ごめん、覚えてないんだ。
涙が出た、と思う。
体の感覚がなく、泣いている手ごたえは顔にないが、風がそう感じさせる。
覚えてないから、選べなかった。
栢を置いて行くことも、雅子の所へ行くことも。
…、いや、俺はすでに選んでいるではないか。
破水した彼女を一瞬心配したが、それでも俺は栢を選んだ。
その事実は変らない。
どの面さげて、彼女の会える?
こんな俺が会っていいのか?
「だけど、俺は馬鹿だから」
走る。
この俺なんかが誰かの助けになるのなら、この俺なんかが誰かの役に立つのなら、俺でも誰かを支えられるのなら。
徹夜は走る。
走れる理由はひとつ。
忘れているから割り切れるのだ。
彼女には酷い事をした。
途中で彼女と自分の関係に薄々気付いたが、その時には栢を好きになっていた。
記憶がなくなったことを言い訳に、俺はそこから眼を背けた。
最低だ。
でも俺は走る。
こんな俺でも、雅子の助けになるはずだ。いや、なってみせる。
4日前まではどうしていいか判らず先送りにしていた問題。今だ解決策もない。それでもいい。
「俺は馬鹿だから、こんな事しかできない」
ふと、鳴神閏眞の事を思い出した。
切れ者の成神なら、こんなややこしい事情もなんとかしたかもしれない。
まぁ、鈴木志奈子以外にその目に入らなかった成神が二人の女性を相手にするのは想像することはできないが…。
「あの二人は無事かな…」
足がもつれコケそうになる。
今はちょっとした思考の横道も、体に負担をかけるという事か。
それに大丈夫。
成神がいれば鈴木は心配ない、あの二人は大丈夫だ。
思考をクリアにする。
走る。
徹夜は走る。
突然、風が吹く
雅子の笑顔を、思い出す。
「…え」
走る足が、緩やかに減速する。
走る速度に比例して、なおも思い出す。両親、友人、忘れていたはずの記憶。
「え、ちょ、ちょっと待て!」
幸せの風景、帰る家、どうしようもなく白紙の原稿、初めて出した本のタイトル。
「今はだめだ!今思い出したら、俺は!」
足が止まる。
それでもなお思い出される過去の情景。
溢れる、暖かな記憶。流れ続ける、忘れていた記憶。
記憶が牙を剥く
思い出したいと願い、思い出せなくても良いと諦めた筈の、思い出せなくてもそれで良いと腹をくくった筈の記憶が徹哉に戻っていく。
「…あぁ、俺は、……俺は!」
走れない。
罪悪感で走れない。
涙が流れ、降りしきる雪が肩に積もり始めた。
忘却という欺瞞を失った徹哉は、もう二度と走れない。
無知であるからこそ、目を背けていたからこそ、出来る事があった。
それなら道化が一人いるだけだ。
「無理だ。俺は、どんな顔で雅子に会えばいいんだ…」
力なく倒れた。
背中を地に付け、降りしきる雪にさらされる。
その顔は醜く歪み、宛所のない感情は徹夜の胸中を掻きむしる。
雪が何事もないように冷たく降りしきる。
あれからどれだけの時間がたったか?
忘我の徹哉は、ふと、最初の記憶を思い出す。
忘れていた記憶ではない。失ってからの最初の記憶。
あの時はどうしようもない不安で心がいっぱいだった。
その不安を救ってくれたのは、栢だった。
なにかと不安がる徹哉を、栢は助けてくれた。微笑みながら暖かい眼差しで見守ってくれた。
だからか。
どんな絶望でも笑えば少しはマシだと思った。
だから笑えと言った。
自分に。
笑うことで人がこんなにも救えるのだと思い知った。
そこから徹哉の道化が始まる。
「最強のファランクス」と名乗り、絶望でも笑い、未来を信じた。死にゆく同じ立場の被験体に助かると言い続けた。泣いて不安がる子を笑えと脅した。
自然と徹哉は笑った。
いいじゃないか、俺一人が不幸でも。
雅子が怒って俺をなじっても、それで心が晴れるなら。
いいじゃないか。
「まぁ、雅子は優しいから…」
許してくれるだろう。
だが、俺は俺を許せない。
それでも、雅子に会いに行く。
それは栢の望んだことでもある。
望んでくれたことでもある。
あれが嘘か本当かという疑念が湧いて、興味がなかったので心の中で二連刃〈ダブルスラッシュ〉によって掻き消した。
そうだ、栢。ありがとう。いつも俺を助けてくれて。
嘘とか本当とかどうでもいい。
誰かを助け、笑わせてやれるなら、それ以外に何の意味がある。何を悩む。
馬鹿は馬鹿らしく、走ればいいのだ。
悩むなんて大馬鹿者のやることだ!
走れる。
いや、走る。
そして、風が、止んだ。
時間が来のた。
周囲の状況を知らせていた風が、残っていた足の感覚が、途切れた。
凪。
最後の最後で躊躇ったその時間。
立ち止まった時間は、永遠に徹哉をここに釘付けにした。
あぁ、なんて大馬鹿者。
こんな俺でも愛してくれた人がいたのに、俺は彼女達を裏切ったのか。
…。
だが、徹哉は口の端を吊り上げた。不適に笑った。
ファランクスは風を操る。
なら、声を届けさせることが出来るはずだ。
そんな無茶を考えた。
そんな力徹哉には無い。
それでも、徹哉は自身のファランクスを信じた。
なんたって徹夜のファランクスは、『最強のファランクス』だからだ。
「愛している、と、雅子に、伝えてくれ」
風よ、伝えてくれ。
そう、言いながら無意識に利き手を前に、天に伸ばした。
そこは悪魔化した際に最も顕著に変化する場所。ここならまだ少しは底力が残っているはずだ。
そして、徹哉は笑いながら逝った。
感覚は無い。風の手ごたえも無い。
それでも徹哉は満足した。
脳裏には愛する三人。最後の一人はまだ産まれてすらいないが…。
現実に、風は吹かなかった
「愛している、と、雅子に、…」
そう言って、事件の被害者である男性は死んだ。
天にまっすぐ悪魔化した手を伸ばして。
その手を、古綴朗はしっかりと握っていた。
「判りました、必ず伝えます」
一時的に混乱した現場から消えた当事者達を、小林大翔と一緒に探していたのだ。
探し当てられたのは、運と、言うべきか。
「これで、最後だな」
小林大翔が言った。
「あと、泣くなよ、アキラ。みっともない」
振り返り、小林大翔を見る古綴朗。
「ヒロト、お前は泣かないんだな」
「当然だ。だって、見ろ」
小林大翔は名も知らぬ男に目を向けている。
古綴朗も目を向ける。
男は満足そうな顔をしていた。
「どんな理由があるかは知らないが、この顔を前に泣くわけにはいくまい?」
「俺には無理だよ」
「ならそれで良いんじゃないか。人それぞれだ」
「じゃぁ、俺は泣く」
そうして男の腕は、二人の前で地にちからなく落ちた。
彼はどんな絶望でも笑えば少しはマシだと思った。
だから笑えと言った。
■ 最後に ■
●orz <ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
↑ ↑
穴 俺
…と、お約束は置いといて、蛇足のさらに蛇足をしておこうと思います。
蛇足1
セッションの流れから最後に記憶が戻り立ち止まって絶望のうちに死んでいく・・・なエンドを考えてました。
やらんで良かった。
蛇足2
最後にヒロトが出てくるのは彼がガントレット=因果律操作したから。
蛇足3
実はこれに続く15年後のショートストーリーまで考えてしまったが、流石に自重。
(十分暴走しているが)
雅子の子、達也がガントレットだったり「無敵のガントレット!」とか叫んでたりします。
ちなみに鳴神さん家も出てきます。いや~、流石\鳴神屋!/です。使いやすい設定だ。
蛇足でないもの
第二十回デモンパラサイトセッションの関係者みんな、愛してるぜ!
参加セッション
comment
- zakkiさんたら… -- Kei 2008-03-04 (火) 23:33:10
- 愛されたッ!? -- f_po 2008-03-07 (金) 15:37:39
- ていうか、覚えてなかったのかー!? -- huyu_aki 2008-03-08 (土) 00:54:29