434 :こんな恋のはなし :2005/04/07(木) 03:05:31 O
子供の頃のヒーローと言えばウルトラマンや仮面ライダーと言ったところか。
オレ自身ヒーローにスゴく憧れていた。
本当は誰かのピンチを救うヒーローになりたかった。…けど自分は脇役にしか成りえないことも分かっていた。
…いや、脇役ならまだいい。セリフもないエキストラで終わってしまうのが耐えられなくて…
…それでもオレには前に踏み出す勇気はなかった。余計なことをしなければ危害が及ぶことはない。その安心感にいつしか慣れていった。
…
…
その日もやはり舞波はクラスで孤立していた。『舞波は無視』は、もはやクラスの定義に成りつつあった。
石村舞波、彼女は今クラスからイジメを受けている。理由は体育祭のバレーで舞波のレシーブミスによって優勝を逃してしまったから、というバカらしいものから。
舞波も自分が悪いと自己暗示しているばかりに先生に打ち明けることが出来ないでいた。
実はオレと舞波は一時期、仲が良かったときがあった。マイペースな彼女とは話がよく合ってオレ自身スゴく楽しかった。
だけど、その体育祭の日以来、口を交わしていない。クラスのリーダー的存在のヤツから口止めを受けていたからだ。
もちろんオレだって、こんなの絶対おかしい!とは思っている。だけど舞波と話せばオレまでイジメの標的になってしまう。
結局はオレも自分の身が大切だった。そんな自分に腹が立ち情けなく思えてくる。
そんなこんなで今日1日も終わり帰路へついた。はぁ…とタメ息をつきながら公園の曲がり角を曲がる。
そこでバッタリと女の子に立ち会った。
舞波だ…。
「オマエ…なんでこんな所に…」
「偶然君を見かけてさぁ。せっかくだから一緒に帰ろうよ♪」
「あ…あぁ」
オレは舞波と一緒に帰ることになった。
数分経っただろうか…。微妙な沈黙が2人を包む。
「…」
「なに?さっきからソワソワしちゃって…」
「え?い、いや…」
「誰も見てないから心配しないで…」
舞波はそう呟くとオレにニッコリと笑顔を見せる。
全部舞波に見透かされていた…
そう思うと急に恥ずかしくなってきてしまった。
「オマエ…大丈夫かよ?」「なに?クラスのみんなが私を無視してること?」
「…その、なんつーか」
「私のこと心配してくれてるんだ??」
無理に笑顔を見せる舞波がドコか愛しかった。
「…誰にだって1度や2度のミスはあるさ。ただついてなかったらソイツはみんなの前で起こっちまう」
「…」
「おまけに運が悪けりゃそのミスだけで、そいつの未来が決まっちまう…」
「…」
「舞波…オレ…!」
「ダメ!言わないで!!」「舞波…」
「…ふふ♪ありがとね…。なんか君のおかげでちょっとだけ勇気もらえたよ」
「…そっか」
「私…家近いからもう行くね!」
舞波はそう言い残すと走り去っていった。
そのころにはオレの気持ちも何とかしてアイツを助けてやろう!と思えていた。
次の日、意気揚揚とオレは学校へ登校した。教室のドアを開けた瞬間、オレは誰かに突き飛ばされた。その姿はそのまま走っていった。
今の…舞波だよな…?
オレは服をほろうと友達に確認する。
「あぁ…今のは石村だよ。黒板を見て辛くなったんじゃね?」
オレは視線を黒板に移す。そこには舞波への中傷や批判が書かれていた。
友達は続ける。
「オマエ…チェックされてるぞ?昨日クラスの女子がオマエと石村が一緒に帰っているのを見かけたらしい」
オレは黙って耳を傾ける。「まぁオマエもイジメられたくなけりゃ、これ以上首を…」
「誰だよ…」
「あ?」
「誰だよ!?コレ書いたの!!」
オレの怒声が教室に響く。一瞬の静寂…。それを打ち破るかのようにオレの足は舞波の元へ向きだした。
晴れわたった外からは風が容赦なしにふっかかってくる。少し火照った体を冷やすには丁度いい。
舞波は屋上にいた。その後ろ姿から声をかけるのは一度ためらったが勇気を出して話しかけてみた。
「舞波…」
「来ないで!!」
「…」
「はは…。今まで我慢してたモノが全部はじけちゃった…」
無理に陽気な声で舞波は話し返す。
「舞波…教室に戻ろう?」
「ちょっと無理かもしれない…。正直クラスが怖いんだ…」
「大丈夫だ!オレは舞波の味方だからさ!」
「…そんな無理してまで助けてくれなくていいよ」
「…強がんなよ!」
「強がってなんかないよ!!」
「じゃあ何で昨日の帰り道オレに話しかけたんだよ!?」
「…!!」
「…助けてほしかったからだろ?」
「…っ…うぅ……」
「…泣きたいときは思う存分泣いちゃえよ。舞波ちゃん♪」
「ばか…う…っ…ぐすっ…」
舞波は、そのぷっくりとしたほっぺたに大粒の涙を流すとオレの胸に抱きついてきた。
もう迷うことなんてない。何の取り柄もないオレを…誰かが必要としてくれる人がいるんなら…オレは何を「躊躇」する必要があんだよ!?
少しオーバーだけど…そいつのためなら命だって惜しまないヒーローになってやる!!
(おしまい)