概要
各種ゲームソフトウェアのリードオンリーメモリ(ROM)データを、著作権者の公式許諾を得ずに非公式なツールを用いて改変し、オリジナル作品とは異なる新たなゲーム体験を提供するプログラム群。
本シリーズで言えば、株式会社スクウェア・エニックスが権利を持つサガシリーズ各ソフトの非公式改造版を指す。
ハックの内容は作者の意向に応じて多岐にわたり、単なる数値変更や軽微なバランス調整に留まらず、ゲームの根幹となる要素に広範な改変を加える行為も含まれる。
具体的には、既存のシナリオを大幅に書き換え、物語の展開や結末を改変する「ストーリーハック」や、全く新しいマップ、ダンジョン、町のグラフィックデータを導入する「マップハック」などが含まれる。
また、システム面における拡張も活発である。
例えば、オリジナル版では使用が制限されていた隠しキャラクターや敵キャラクターを、バランスを考慮してプレイヤー側が操作可能なパーティーメンバーとして完全に実装する。
チートによるRAM書き換えだけでもRS1においてコパー峠へ行けるようにする、RS3においてカタリナ・ラウランを仲間にできるようにする、魔王の玄室や沼地の廃墟や東海へ行けるようにする等はできる。
しかし、ROM書き換えが対象になるともっと突っ込んだ領域も発掘可能で、たとえばRS1でおおだこやらフロッケンやらの絶対に出現しないエネミーを編成に組み込んだり、シェリルを主人公にしたり、エロールをラスボスにしたり、サルーインを仲間にしたり、RS3では本来仲間キャラクターのデータが存在しないボルカノやエドウィンやクレメンスやファティーマなどを仲間に加えたり、敵ランクにも固定戦闘にも組み込まれていないスフィンクスとの戦闘を実現できたりする。
特にRS3の書籍でレアモンスターといわれた数々の面々は、スフィンクスを除けばモンスターランクの上限を取っ払わないと実現できず、おそらくはROM解析で初めて仕組みが知れ渡った要素となっている。
サガシリーズにおいては納期最優先の考えから没データが世界観設定のレベルで存在する作品さえあり、それも含めてこのような改変の需要になっているようだ。
その証拠に、もともと没データが少なく実装完成度の高いGBシリーズやRS2などの作品での改変は比較すると非常に少ない。
さらに、サガシリーズの象徴的な要素である閃きシステムや連携システムに対して、独自のルールや新しい技・術を導入し、戦闘の戦略性を根本から変える試みも行われる。
難易度を極端に引き上げ、熟練プレイヤー向けの高難易度版を作成することや、逆に初心者でも楽しめるように調整した低難易度版の制作もその一例である。
視覚的、聴覚的な要素も改変の対象である。
キャラクターのドット絵、フィールド上のマップチップ、メニュー画面のユーザーインターフェース(UI)といったグラフィック素材を一新し、ゲームの雰囲気を大きく変える「グラフィックハック」が存在する。
また、ゲーム内の音楽(BGM)を別のサガ作品、あるいは全く異なるゲームの楽曲に差し替えるサウンドハックも可能である。
加えて、ユーザーの利便性を高めるQuality of Life(QoL)改善を目的としたハックも多く作成されている。
例えば、煩雑だった戦闘アニメーションの表示速度を高速化したり、オリジナル版のハードウェア環境に依存した既知のバグやフリーズ問題を修正したりする。
これらの改造行為は、専門的なROM編集ツール、デコンパイラ、アセンブラといった開発環境を駆使し、高度なプログラミング知識とコミュニティ内で共有される解析技術に基づいて実現される。
ハックロムの制作は、サガシリーズに対する深い愛情と、技術的な課題に挑戦する探求心の産物である。
しかしながら、ハックロムはあくまでオリジナル作品の著作権に帰属するROMデータを非公式に改変した二次創作物であり、原則としてゲーム会社の著作物であるところのソフトウェアに無断で手を加える行為であるため、ハックロム制作には著作権侵害のリスクがつきまとう。
一応の著作権に関する配慮から、元のROMを自身で吸い出していることを前提に、それに当てる「差分パッチ」という形で提供されることが主流。
そのため、利用や配布は著作権法上の観点から常にグレーゾーンとして扱われている。
したがって、その開発と共有は、非営利のファンコミュニティ内でのみ行われるべき活動である。
視聴覚室
以下は参考として折りたたみで掲載。