準備

Last-modified: 2016-10-15 (土) 21:55:20

表現のスタートは、身体を調整するところから始まる。
誰しも身体を動かす前には準備運動をするだろう。
ましてや、身体を使う事のプロフェッショナルであるアスリートであればこれを疎かにするはずがない。
声も身体の一部だ。思い通りの声を出すためには、自分の身体を知るのが第一歩である。
マッサージやストレッチを行う箇所、方法はいくつかあるが
その日の体調や声の出方によって組み合わせを変え、身体を起こすことを心がけよう。
声を出すのに必要な箇所をほぐしていくことによって、無駄な力みをすることなく音を出すことが初めて可能になる。

【必ず意識を持って行うこと。無意識の作業では身体は応えてくれない】

ストレッチ。マッサージは頭から身体の中心に向けて、また足先から身体の中心に向けて行うようにする


上半身のマッサージ、ストレッチ

1:頭皮のマッサージ・鬼のツノ取り

声を出す意識を上に向けやすくする為のマッサージ
頭髪をほどほどの力で引っ張るのもよい。
ストレス・精神的緊張や頭脳労働などで、頭蓋骨縫合が硬くなると、頭蓋骨に隆起ができる。
頭蓋骨は縫合部で、呼吸に合わせ1ミリほど動くが。この縫合の動きが小さくなると、ツノができる。
頭皮のマッサージによってこの凝り固まった緊張やストレスをほぐしてやるのが目的だ。

2:眼の開きと口角上げ

眼から光をとり入れて集中力を上げたり、頭声を出しやすくする為のストレッチ
頭を糸で引っ張られるようなイメージで。
眼を開き、頭頂部を意識することで軟口蓋が上がり、鼻腔共鳴や咽喉共鳴を強くすることができる。眉や口角などが上がり、喉が大きく開き、頭と身体がつながった状態となる。意識を咽から遠ざけることで余計な力みを取り除く目的もある。
1.目をギュッと閉じて5秒間キープ
2.目を思い切り大きく広げて5秒間キープ
これを5回ほど行なう。

3:眼の周りのリンパ流し

リンパの流れが滞るとむくみが生じ、引っ張り上げる力が弱くなり意識を上に向けづらくなってしまう。眼の周りのマッサージをすることで頭声を出しやすくする。
眼が開かないと声が暗くなる。声が暗くなるということは、花やかな音、喜び、楽しさといった表現が不十分になってしまうということでもある。適度にマッサージをして瞳を輝かせよう。

4:舌の体操

舌は、母音や子音の調音をするうえで重要な働きをする。舌の動きが十分でないと適切な位置に舌は移動することができず甘い滑舌になってしまう。

・舌回し体操
口を閉じた状態で左回りにてベロを歯に沿ってゆっくりと回す。20回行う。同じように右回りに20回行う。左右行って1セット。3セット行おう。
・舌の上下運動
舌を、上歯茎硬口蓋(上)と下歯に舌端を押し付けるようにして(下)上下運動させる。
・舌の前後運動
アカンベェの要領で前に出したり引っ込めたり運動させる。舌根を刺激することで唾液分泌を促し口内の渇きと緊張を取る。

5:耳の後ろから舌根に向けてのリンパ流し

眼のリンパ流しで流れてきた血流と舌の運動によって緊張したリンパを流すのが目的。頚部の状態は記憶や運動神経などのパフォーマンスに関係する。念入りにマッサージをしておこう。
まず、耳介後リンパ節から、浅頸リンパ節にむけてマッサージを続けて、オトガイ下リンパ節から、顎下リンパ節、深頸リンパ節に向けてマッサージをする。

6:胸鎖乳突筋のストレッチ

発声や演技を行うなど、大きく息を吸ったり吐いたりする努力呼吸の吸気時には胸鎖乳突筋、斜角筋が補助的に使われる。発声を行う咽に近いこともあり、この筋肉はとても固まりやすく力が入りやすい。
ストレッチをする側に首を傾げ、鎖骨の上側のくぼみを押しながら首を反対側に傾げる。五秒ほどのストレッチを三回、両首行うと効果的だろう。

7:中府のマッサージ

鎖骨の外端から3㎝ほど下のところ。呼吸機能を高めたり、呼吸器症状を軽減したりする効果があるそう。喘息など咳を治め、呼吸を楽にしてくれる。風邪予防にも。更に肩こりや上肢の痛みにも効果を発揮する。
親指を抜かした4本の指の腹で揉むように圧をかけるとよいだろう。
左右5~7回程度行うとよい。胸や腕に痛みのある場合はここを押しながら腕を回すようにするとよいだろう。

8:僧帽筋のストレッチ

正確には、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋、上後鋸筋を含めた僧帽筋のストレッチ。単に僧帽筋のストレッチとなると首の後ろから背中にかけての筋肉を示す。吸気と呼気に密接に関係してくる筋肉なので入念にストレッチを行おう。
掌で頭を抱えるように持ち、首の左右、後部がしっかりと伸びるように、伸ばしたい側の肩は上がらないよう気を付けながらストレッチを行う。

9:広背筋、僧帽筋のマッサージ

下後鋸筋を含む吸気と呼気をしやすくするのが主な目的となるマッサージ。とにかく上半身には呼吸にまつわる筋肉が集中している。マッサージやストレッチをすることでリラックス効果も期待できる、積極的に行うこと。
腕を背中にまわし、親指の当たる場所から下に向けてマッサージを行う。背骨を挟んで左右のバランスがとれるように行うのが理想。後ろに回した手が同じ高さになるよう心がけるとよいだろう。

10:内関のストレッチ

手首のあたりにあるツボ。動悸や喘息、胸痛などリラックス効果もあるという。叫びの科白など、声を使ってしばらくたつとこの内関部分がカチカチになることがある。上半身の力みや咽の力みが現れるのかもしれない。
手首が固いと、頭まで固くなるもの。なかなか伸ばすことのない部分だけに、筋肉を伸ばしリラックスに役立てるとよいだろう。

11:手三里のマッサージ

肩こりや首のコリのツボとしても有名な手三里。声を出す際力を入れないようどれだけ心がけていても、使うたびに疲弊していってしまいまう。小まめにマッサージし、咽にかかる負担を減らしてやるといいだろう。
手三里の場所は肘を曲げたときにできる横じわの外側の端から手の方向に指三本分のところ。手をにぎると筋肉が盛り上がる部分だ。ゆっくりでかまわない。数分感かけてゆっくり押していこう。

12:外、内腹斜筋のストレッチ

外、内ともに吸気を補助する腹斜筋。横隔膜は内臓を押し下げることによって肺に吸気させるため内臓が移動するためのスペースが必要となる。しっかりと伸ばし、縮めることで刺激すること。

13:身体の前面、背面のストレッチ

肋骨の中にある外肋間筋、内肋間筋、腹直筋を伸ばし背中の下後鋸筋は縮める。続いて腕を広げ背中を縮める。肩甲骨を寄せるイメージで上後鋸筋、下後鋸筋、僧帽筋、広背筋を縮めていく。最後に背中を丸め腕を前に突き出し、外肋間筋、内肋間筋、腹直筋を縮める。ここで挙げた筋肉はいずれも呼気・吸気に関係してくる。呼吸がしにくいと感じたら小まめにストレッチを心がけるとよいだろう。

下半身のストレッチ、マッサージ

14:足の裏側のストレッチ、マッサージ

胡坐をかいて、足の裏側をほぐす。土踏まずと足の指先を重点的にほぐしていくことになるが、土踏まずは内臓に、指先は地面をしっかりとつかむうえで大事な役割をもつ。
特に、指先が十分にほぐれていないと踏ん張ることによって身体の無駄な力を地面に流すことができない。念入りに行おう。

15:脹脛のマッサージ

足首から膝にかけて圧をかけながら引き上げるようにマッサージしていく。脹脛がむくんでいたり、張っていたりしては脚に力がはいらない。人体の血液は、重力の影響により、70%が下半身に集まっている。そのため足でうっ滞が起こると、全身を循環する血液の量も少なくなり、心臓をはじめ、ほかの重要な器官に十分な酸素、栄養が行き渡らなくなってしまう。あしは第二の心臓というが、実は脹脛こそが第二の心臓なのである。

16:太腿のマッサージ

大腿四頭筋は、腰のクッションともいえる場所。ここが固まっていると足そのものに力が入りづらくなってしまう。深呼吸をする際はどうしても横隔膜によって内臓膜が押されるため腰に負担がかかる。受け止める大腿が固まっていては腰への負担を無意識に避けてしまう。
太腿の外側の大腿四頭筋、外側広筋、太腿の内側の内転筋、膝のあたりにある内側広筋このあたりを、押さずに伸ばすイメージでマッサージする。