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西ヒート 序章
無限に広がる荒野を一人の有髪の僧が歩いていた。後ろ振り返るが彼の生まれ故郷は遙か彼方にあり見えるはずもない。
男「はぁ・・・」
出発のときの華やかな見送りを思い出し懐かしむ。今との差が男の脚をさらに重くさせた。
男「いっそ綺麗に死のうかぁー」
???「そこの陰鬱とした坊主うぅぅぅ!!!」
男は驚いた。巨大な岩山が口をきいたと思い岩山を見上げるがなにもない。
???「そっちじゃあない!下だ!下!」
男「・・・なんだおまえ?」
視線を下に落とすと一匹の妖怪がいた。猿と少女の複合体が岩山に下敷きになっていた。
猿「私か!?聴いて驚け見て笑え!」
男「わっはっは」
猿「無表情で笑うな!私は斉天大聖だあぁぁぁ!!!」
男「なんと貴様があの悪名高い天界荒しの」
猿「そうだすごいd」
男「騒乱、騒音、暴行、無断侵入、窃盗未遂の重犯罪者か!?」
猿「・・・くすん」
男「・・・」
猿「ちがうんだあぁぁ!!!愛ゆえの犯罪なんだあぁぁぁ!!!」
男「重犯罪者がなんのいいわけだ」
猿「ちがう!!!私のお師さんがな私にいったんだ!!!おまえには結ばるべき人がいる!その人と結ばれればおまえは最強になるとなあぁぁぁ
」
男「それで?」
猿「それで愛と勇気を手に入れるため天界書庫で私の運命の相手をしらべようと思ったんだが警備員にじゃまされてなぁ!!!しばらく暴れたんだが神に捕まりこのざまだぁぁぁ!!!」
男「バカだろおまえ」
猿「断じてちがぁぁぁう!!!その札を剥いでくれ!!刑期がすんだのに一向に解放されんのだ!!!」
男「しかし犯罪者を勝手になぁ」
猿「そういえば坊主はどこにいくんだ!?」
男「法名を三蔵、名は男だ。西方浄土にお経をな」
猿「一人かぁぁぁ!?」
男「・・・供がいたが化け物に食われた」
猿「そうかぁぁぁ!!!私は強いからボディガードになるぞぉぉぉ!?つれてゆけぇぇぇ!」
男「そんなでたいか」
猿「当たり前だぁぁぁ!」
男「・・・背に腹は帰られんな」
ぺりっ
猿「おおっ!!!体がうごくぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
男「おまえに法名をやろう孫g」
女「わたしのことは女とよべ!!よろしくなあぁぁぁ!!!」
男「・・・やれやれ」
2
西ヒート 豚編
女「男ぉぉぉ!!!人家がみえたぞおぉぉぉ!!!」
男「わかった。わかったから腕を引っ張るな。なんでくっいてくるんだ」
女「命の恩人に感謝するのは当然だ!!好きだぞ男ぉぉぉ!!!」
唐突な告白に男の息を詰まらせる。受け流すべく言葉を発しようとするがその前に女が農家の扉をたたいた。
女「こんばんわぁぁぁ!!!」
婆「はいはい?」
しわくちゃな人の止さそうな老婆が顔を出した。男が合掌する。
男「旅の僧でs」
女「今日泊めてくれるかなぁぁぁ!?」
婆「いぃぃともぉぉぉ!!!」
女&婆「ひゃっほうぅぅぅ!」
男「時代考証っ知ってるか?」
家の中に案内された二人はすぐに食事を用意された。男は目の前に置かれた鍋を凝視する。ぐつぐつと肉団子が煮えていた。
男「婆さん惚けてるな。女、鍋には手を付けるなよ」
女「好き嫌いはだめだぞ男!!!」
男「阿呆。俺の連れになる以上おまえも僧籍。なまぐさものは禁止だ」
女「なぁぁるほどぉぉぉなぁぁぁぁ!!!」
婆「ぎょええぇぇ!!!米が目にいぃぃぃ!!!」
男「ばーさん!!」
男「さて風呂にも入ったし寝るか」
女「あーいい湯だった!!男ぉぉねようぜぇぇ!!!」
半袖半パンの女が自熱で乾燥しつつある髪を揺らしながら入ってくる。その尻から生えた茶色い尻尾が楽しそうに揺れている。
男「ごふっ!?い、いや、女人も禁制なわけでだな」
女「いいじゃないかぁぁぁ!!!だいちわたしは妖猿だぞぉぉぉ!!!肌を重ねるくらいなんだぁぁぁ!!!」
男「そうか。じゃあ俺はトイレで寝るわ」
女「そんなやかぁぁぁ!?」
男「ありがとうございました。それでは」
女「じやあなぁぁぁ婆ちゃん!!!」
婆「さいなら」
すたすた。
女「なあ男」
男「どうした?」
女「腹が減ったぞぉぉぉ!!」
男「早すぎだ。おいこら大根を抜くな」
女「これはたまたまそこに自生していたんだぁぁぁ!!!泥棒ではない!」
農民「村長ゥー!村長ゥー!」
村長「・・・なるほど。そういう経緯で」
男「すいません」
女「ばりぼり」
男「食ってないで謝れ」
村長「いや、だいこんはいいのですが一つお願いが。最近我が村に妖怪が住みつきまして」
男「ほうどんな?」
村長「あんな」
???「もっとぉもっと豚みたいにしてぇぇぇ!!!」
村長が示した畑には一匹の妖怪が尻をつきだしておねだりしていた。
3
西ヒート 雌豚編1
???「もっとぉ。みみずをズキューンでズキューンとかしてえ!(自主規制)」
農民「いやおらたちそんな趣味ないしぃ若い女がー畑の畝で転がってるもんじゃないべ」
???「これでも一万歳なのぉ!農作業で鍛えry」
男「あれは単なる可愛そうな人です」
村長「いやぁずぅとあーしてて邪魔なのです。大根を金一枚で買うか退治するか」
男「どれだけふっかけるんだ!?」
女「男ぉ面白い旅芸人がいるぞお!」
男「違う。あまり見たらだめだ!」
村長「そう。教育上悪いのですお願いします」
男「・・・いたしかたあるまい。女、おまえはしばし待て」
女「いやだぁぁ!!付いていくぞぉぉお、よっこらせ」
男「人参を抜くな!」
女「自生していた赤い大地の恵みだぁぁぁぁ!!!!」
女の叫び声に雌豚ごっこをしていた妖怪がようやく二人に気づく。
???「アッー! 斉天大聖!!」
女「・・・」
???「あんた解放されたのっ!?」
男「知り合いか?」
女「・・・誰だぁ?」
男「あっちは知ってるみたいだが」
女「いっさいしらん!」
女友「女に記憶をもとめたあたしがバカだったわ。天上陸軍が将、けいれん(漢字は失念)大将女友よ!」
4
西ヒート 雌豚編2
女友「天上水軍の天蓬元帥女友よ!」
女「なあなんか前回と台詞がちがくないか?ばりばり」
男「ある間抜けの都合だ。腹こわすから生野菜はやめろ」
女「心配無用!私が持っている時点で焼き人参だあぁぁぁ!」
男「妖怪め。天上軍の元帥ということは貴方は神仙様。なぜここに・・・つーかなんで農民に迷惑をかける」
女友「い、いや、知り合いがいないもんだからつい、ね・・・。天界を追い出されちゃったの」
女「うおぉぉぉ!!おまえも騒乱罪かぁぁぁぁ!?」
女友「バカいわないで。あんたみたいに天上三軍と四天王を相手取るなんてできないわ。経費の使い込みがばれてね」
男「横領か」
女友「SMクラブに通ったくらいで天帝もあんなに起こらなくても・・・」
女「えすえむってどんな秘密結社なんだぁぁ!?」
男「・・・はぁ。気にしなくていい。とゆーか黙ってろ」
女友「・・・そういえばさっきから女を手名付けてる貴方。名前は?」
男「手名付けてるわけじゃあないが男三蔵法師。仏のもとへ経w女友「待ってたわ!」・・・」
女「待ってたってどーゆーことだああぁぁぁ!!?」
男「耳元で叫ぶな耳小骨が砕ける。あと腕を掴むな。痛い」
5
西ヒート 雌豚編3
女友「へ?その人がアンタの運命の人だったの?」
女「それはわからんが私たちは相思相愛だあぁぁぁ!!!よって運命など関係なし!!」
男「そんなわけはないが俺を待ってたって?」
女「あっさりしすぎだあぁ!!!でもそんなソウメンみたいなとこもすきだあぁぁぁ!!!」
女友「ふーん。へー羨ましいわね。三年くらい前かしら。やさぐれて歌舞伎町で退廃的な生活を送ってたの。いろんなプレイをした」
男(普通は悪事だが)
女友「そんな時菩薩が現れていったのよ。八戒を守り清貧に生きよ。いつか現れる三蔵のともをすれば天界に帰してくれるってね」
女「八戒ってなんだあ?」
男「仏教の基本的な五戒に三つ加えたものだ」
女「なあるほどうぅぅ…」
男「理解しとらんだろ。しかし仏の使いの菩薩様が…南無ありがたや。しかしさっきの行為五戒に」
女友「本当にしたことなんかないよ。きちんとまもってる♪こっちもいいけどやっぱり戻りたいからね」
男「わかった供にしよう。おまえのほry」
女「仲間になるのか女友!ならばこの自生していた大地のやんちゃっこをやろう!」
女友「あら美味しそうなじゃがいも」
農民「村長ぅー!村長ぅー!」
男「…」
6
西ヒート バカッパ編
女「じーんせぇぇぇい男のみぃぃぃ!!愛しかなぁぁぁいぃぃぃ!!」
男「恥ずかしい歌を大声で歌うな。そして水戸黄門に謝れ」
女友「まーまーいーじゃない?男君だってまんざらでもないでしょ」
三人が歩いているのは女友の村から数百里離れた山の中だった。力一杯男に抱きつく女の後ろに女友が武器であるまぐわを手にのんびりと付いていく。
男「そう見えるか?」
女友「見える」
男「・・・」
女「男おぉぉぉ!!!おっきな川がみえるぞぉぉぉ!!!泳ごうぜぇぇぇ!!!」
女の指さす先には幅だけで半里はあろうかという河川があった。しかも流れは急であり到底泳げそうにない。
男「本気か?」
女「セクシーな私の体で悩殺してやるうぅぅ!」
男「その前に溺れて脳死するな」
女友「これは橋を見つけないとね。あ、すいません」
村人「なんだべか」
女友「あの川をわたりたいんですけど橋ってどこですか?」
村人「橋はないべぇ。船でわたるしかなかったんだけどもぉ。最近妖怪がでるようになってそれも無理だべ」
男「妖怪というとドMでド変態の?」
女友「・・・#」
村民「いんや。人を襲うし魚は食べ尽くす悪いやつだぁ」
7
西ヒート バカッパ編2
女「そいつは悪い奴だなあぁぁぁ!私が退治してやる」
村民「まじだべか!?」
男「まあ人を救うのも行のうちだな」
村民「ありがとうございますだ旅芸人のみなさま!」
男「……ねーよ」
川は目の前にくると迫力を倍にした。ごうごうと唸る音が木々に反射する。上流から流れてきた枝が岸壁にあたり不気味な音を奏でている。
男「安易な約束をしてしまったが大丈夫かな」
女友「大丈夫でしょ?斉天大聖がいる時点でおそれるものはなし。じゃあいってくるわ」
男「一人でか!?」
女友「元天上水軍元帥」
女友はニーッと笑い川に飛び込む。男はゆっくりと自分に抱きつく猿をみる。
男「なあ」
女「んー?」
女はスリスリと顔をこすりつけながら呑気に尾を揺らしている。
男「おまえ認められてるな」
女「うむ。次郎君を倒したのはすごいらしいぞ!仏もほめていた!」
男「いや威張られても。次郎君ってだ、!!!」
川の中央で爆音とともに水柱があがった。
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西ヒート バカッパ編3
男「な、なんだ?うわっ!」
男のもとに女友が吹き飛んでくる。男が避ける間もなく二人の体は激突した。男の視界が真っ白に染まる。岩を投げつけられたような衝撃だった。
女「男おぉぉぉ!?」
男と女友が地面に転がる。女友の背には大きな傷が出来ていた。
女「だ、大丈夫かあぁぁぁ!?」
男「おえ、げぇ…お、れはな…」
???「どこの田舎妖怪かしらんが俺を暗殺しようなんて笑い草だ!鍛え直してこい!」
そうさけんだ人物はまだやまぬ水飛沫の中で半月刀を付けた杖を構えて浮いていた。女は歯噛みしながら耳に手を当て妖怪をにらむ。
???「仲間か!?やめとけ。そいつもなかなか腕が立ったが」
女「友達の女友を傷つけ恋人の男を苦しめておいてあまつさえその態度!ゆるさないぞぉぉぉ!!!」
そう言いながら耳の穴からつまようじ大の神珍鉄製如意棒を取り出す。それを手品のごとく展開しながら飛んだ。
???「なっ!?ぐっ!」
その速度は妖怪の予想を遙かに上回るものであり、妖怪は如意棒を受け止めるのに手一杯になる。その隙を突いた女の蹴りは見事妖怪の頬に命中する。
???「がっ…!?」
女「うおおぉぉぉぉ!!!」
9
西ヒート バカッパ編4
男「すごいな…」
男が感嘆の息を漏らす。素早く動く妖怪相手に女はそれ以上の速さと力でもって応える。既に何十合と打ち合っているが全て女ペースだった。
男「ここまでとは。そうだ女友大丈夫か?」
女友「あひぃもっとぉ…へぶ」
膝元にあった女友の体をはねとばす。傷ついた体は無様に転がった。
男「このド変態。心配してるのに」
女友「やべー男君ドS…ってあの二人止めないと!」
男「女が殺されるっていうのか!?」
女友「ちがう!あっちは忘れてるみたいだけどあいつは…!」
女の打ちに耐え続けている手が痺れている。放たれる熱気に顔は汗だくだった。妖怪は自分が勝てるとは思っていない、しかし負ける気もない。女がバテるまで凌ぐつもりだった。
女「唸れ如意棒ぅぅぅぅ!!!」
???「うおぉぉぉ!!!」
巨木のごとく膨らんだ如意棒が打ち降ろされる。妖怪は愛器降魔の杖で受け止めるが身体は吹き飛ばされ背が水面に叩き付けられる。
女「とどめだあぁぁぁ!!!」
上段からの如意棒を妖怪が寸でのところで避ける。水柱と女の熱気による湯気があがる。
???「みえん…そこかぁ!!」
妖怪は杖を持ち変え身構えた。
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バカッパ編5
???「そこだっ!」
水柱を抜け飛びかかって来た影を杖で凪ぐ。円月刀は女の首を斬った。妖怪は歓喜に身を震わす。しかし女は死体にはならず一本の紅髪に変わった。虚しい感触だけが妖怪の手元に残る。
???「身外心!?」
妖怪に闇がかかる。彼が上を見上げるのと如意棒が肩にめり込むのは同時だった。
妖怪の身体が水面に激突し跳ね上がる。腕が灼熱のマグマに変わってしまったような感触に顔を歪めながらも空中でバランスを整え着地する。
???「くそ、なっ!?」
瞬時に距離を詰めていた女の拳が妖怪に叩き込まれる。妖怪はもう術で空中に留まる体力もなく惰性で岩に叩き付けられた。
女「…ヒート&ヘヴン」
女が両手を広げると身体が火炎に包まれた。真逆に妖怪の顔は青冷める。
女「ギム」
???「ま、まさか貴様」
女「ギル」
???「天界荒しの斉天大聖…」
女「ガン・ゴー・グフォ!!」
掌を合わし止めを刺そうとする女を唐突に後ろから男が抱き締める。身体が炎でやけるのを厭わずにしっかりと。
女「お、男!?危ないぞおぉぉぉ!?」
男「いいんだ。もういい」
女「だだだがこいつは」
男「俺たちのために怒ったんだな。偉いぞ」