女「男ぉぉぉぉぉ!!昼飯だぁぁぁぁぁぁ!!」
男「おう。食堂行くか?」
女「いよっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
- 食堂-
男「何食う?」
女「男と同じのだぁぁぁぁぁぁ!!」
男「わかった。ちょっと待ってろ」
男「すみませーん!カレーライス二つ。辛さは“ヘブン”で」
…………
………
……
…
女「男…これを食うのか?」
今俺たちの前には、赤黒いオーラを発したカレーがある。さすが、食べた者を昇天させるヘブンの名前は伊達じゃないな。
こいつの前じゃハバネロなんて煙草の前のココアシガレットみたいなもんだ。
女「なぁ…男、本当にこれを食うのか?」
男「ん、そうだけど。無理して食わなくてもいいぞ?」
一応好物だし。
女「いいや!そんな事はないぞ!!」
女はスプーンを何かの武術のように構えると、
女「い、いただきまぁぁぁぁぁす!!」
ルーのみのゾーンに突き入れて、一気に口に入れた。
パクッ
女「お、なかなかうま………」
男「…………………」
女「………………ぎ」
男「ぎ?」
カシャーン
女「ギャァァァァァァァァァァァアぁぁぁァァァァぁァ!!!!!!!」
男「うおっ!」
女「みず!水ぅ!!」
男「待て!水は余計に苦しくなる!これを飲め!」
俺はグラスに入った牛乳を渡す。
女「はひっ!ひぃ!」
口を開けることすら辛くなってきたのか、女は涙目で牛乳を子猫みたいに舌先でチロチロと舐めながら飲む。
男「ごめんな。お前が辛いの駄目だなんて気付かなくて」
俺が、一向に目尻から涙が消えない女の頭を撫でると、
女「!!」
とても驚いたような顔でこっちを見るが、すぐに不機嫌なんだか恥ずかしいんだかわからない顔をして、明後日の方角を見た。
女「駄目じゃない…苦手なだけだ…」
男「よしよし……」
それから俺は昼休みが終わるまで、小動物みたいに口からグラスを離さない女の髪を梳くように撫で続けた。
その後、俺達の間でカレーが禁句になったのは言うまでもない。