SS2 駄菓子屋編

Last-modified: 2013-08-14 (水) 22:22:05

町外れの森の奥、俺は女に手を引かれて歩いていた。
男「おい、どこまでいけばいいんだ?」
女「もうちょっとだぁぁぁぁ!!!」
男「ほんとにあるのか?こんな森のなかに駄菓子屋なんか」
女「ある!!こないだ来たから間違いない!!!」
そうは言うが、俺は女が白昼夢でも見たのではないかと思えてならない。
女「あ!見えた!!あれだぁぁぁ!!!」
指先を見れば昔ながらの駄菓子屋がぽつんとそこだけ異空間から現れたように佇んでいた。
男「へぇ・・・この町には長年住んでるけど、ここは知らなかったなぁ・・・」
女「へっへへ~vvこないだ偶然見つけたんだぁぁぁ!!すっごい安いしお金は
プラスチックの箱の中に入れればいいんだぁぁぁ!!!」
男「ふぅん・・・今時珍しいな・・・」
なぜだろう・・・その駄菓子屋はなんとなく不気味な感じがした・・・
感覚というか第五感というか・・・それが入ってはいけないといっている気がしたのだ・・・
女「男ぉぉぉ!!早く入ろ!!早く早くぅぅぅvvv」
だがその声は女の急かす声にかき消された。まぁいいか・・・そう思ってしまったんだ。
女に手を引かれて入ってみれば、そこはまさに漫画に出てくる駄菓子屋。
飴玉やゲソ串、ABCビスケットまで置いてある。しかも値段は10~20円ばかり。
男「へぇ・・・凄いな・・・これなら100円だけでも相当食べれるぞ」
女「だろぉぉぉ!!凄いだろぉぉぉ!!!!」
そんなのん気な事を考えながら女とあれこれ見ていると・・・

婆「いらっしゃい」
思わず声がでそうになった。声の方向へ顔を向けると、100近いんじゃないかと思えるほど
しわくちゃの婆さんがいつの間にかたっていた。
男「あ、ども」
とりあえず挨拶だけでもと想い軽く会釈。と、
女「あれ・・・?お婆ちゃんこないだいたっけ?」
男「はぁ?」
今度は声がでた。何を言ってるんだ。
男「お前こないだここに来たんだろ?なら人がいたかぐらい覚えてるだろ」
女「う・・・うん・・・そうだけどぉぉぉ・・・こないだは誰もいなかったんだぁぁぁ」
ワケが分からない・・・人がいれば気づくはずだろう。
女「まぁいいやぁぁぁ!!男ぉぉぉ!!何買うのぉぉぉぉ!!?」
男「あ?俺は・・・マーブルチョコ・・・かな・・・でもさすがにそれは・・・」
ないだろう。そう言おうとしたら、婆さんの指が入り口付近をさした。
そこには丁度目的の品があった。
男「ども・・・」
軽く会釈して箱に手を伸ばす。何個か取り出してふたを閉めた。
女「チョコもいいけど辛いものも食べたいよぉぉぉ!!!お婆ちゃん辛いの」
どこ?そう女が聞く前に婆さんは左の奥付近を指差す。そこにはピリ辛菓子があった。
喜んでとりに行く女を尻目に、俺は言い知れぬ不安を感じていた。

さっきからこの婆さんは俺達がどこだと訊く前にその方向を指さしている。
経営者だから当たり前かもしれないが、俺はこの婆さんからはなにか嫌な雰囲気を感じた。
女はそんなことなどお構いなしに袋にお菓子を詰めていく。
女「男ぉぉぉ?どした?汗だくだぞぉぉぉ?」
言われて初めてシャツの背中から顔に至るまで脂汗がだらだらと流れていることに気がついた。
馬鹿な・・・考えすぎだ・・・気にするこたぁない・・・そう自分に言い聞かせるだけ精一杯だった。
俺もあらかた食いたいものを菓子袋に詰めた。
男「すいません・・・これでいくらですk・・・」
金を払おうとして振り向き、そして驚いた。いつのまにか婆さんが消えていた。まるで煙のように。
女「あれ?お婆ちゃんどこだぁぁぁ?」
女はきょとんとしていたが、俺は先ほどから感じていた不安が渦を巻いて膨れ上がっていた・・・
何かがヤバイ・・・そんな気がしてならない・・・
男「でるぞ・・・」
女「ふぇ?でもまだお金払ってn・・・」
男「いいから!!!早く!!!」
菓子袋を投げ捨て女の手を引き急いで店を出た・・・と、次の瞬間

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・・・
地響きとともについさっきまであった駄菓子屋の場所が地滑りを起こし崩れた。
俺はどちらかといえば冷静な方だが、今回ばかりは声が出なかった・・・
女は俺の横で腰を抜かし、魂が抜けたように口をぽっかりと開けている。
女「な・・・なんだあれぇぇぇぇ・・・どうして・・・!!!お婆ちゃん!!!!」
男「ばか!!よせっ!!」
突然息を吹き返したように立ち上がり、崖の方へ駆け寄ろうとする女を必死で取り押さえる。
女「離せ!!お婆ちゃんが・・・お婆ちゃ・・・ん・・・?」
女の抵抗が止まる。どうしたのかと思い目線の方をみると、狐が一匹こちらを見ていた。
その顔は何故か、どこか楽しそうに見えた。
しばらくこちらも見ていた狐は、すっと踵を返し、去り際に
「命 拾 い し た な」
俺達の耳にはっきり聞こえる声で呟き森の奥へ消えていった・・・
周りを見渡せばもう夜で、俺達の後ろには
『地滑り注意』の看板がひっそりとこちらを睨んでいた・・・

おまけ

男「っていう物語を文化祭でやりたいんだけどどうよ?」
女「こえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
男友「やたらありがちな設定だな・・・」
女友「男クン脚本家目指してる?」
男「一応」