・上手袖をみる(P)→子・丑・未・卯

Last-modified: 2008-05-24 (土) 01:57:19

桜沢「いよいよ……だね」
ここは舞台上手袖、湊の開演のアナウンスが聞こえ、より一層緊張感が増す。
こちら側には、子役の釈迦如来、丑役の黒羽、卯役の綺咲、未役の桜沢の4人が待機していた。
黒羽「……こうして、学祭の舞台に上がるのもこれで2年目だけど、……舞台前の緊張には慣れないよね」
桜沢「たしかに……去年も緊張したけれど、やっぱり緊張するよ~!」
釈迦如来「僕は全然平気だねっだってさ、世界中の女性を魅了するこの僕が、このくらいでいちいち緊張なんてしてられないよ?」
黒羽と桜沢と釈迦如来は去年も学祭で舞台に立っていた。
黒羽「余裕だな、ジール……俺はやっぱり緊張するよ~」
釈迦如来「緊張を解く為にも、悪戯でもしちゃおうカナ~?」
桜沢「あはは!!ジールくん見てるとなんだか安心してきちゃったよ~」
黒羽「だな!!……あ、小鳥君は初めてだよね?だいじょう……ぶ……じゃねぇぇぇ~!!」
桜沢「顔色、悪っっ!!」
舞台袖の後ろの方で一人ブツブツ何か呪文のように唱えている。
釈迦如来「小鳥くん、ははは!!そんなに緊張しない、しないっ☆」
釈迦如来が笑いながら綺咲に近付き、肩にポンと手を置く。
綺咲はその手をガシっと掴みにじり寄る。
釈迦如来「……!!」
綺咲「……人……人……」
黒羽「あ、あぁ……人を手の平に書いて……」
綺咲「ひ、人を食べませんとっ!!人を食べませんと!!」
黒羽「ちげぇぇぇぇ~!!明らかにテンパってるぅぅ~!!」
綺咲「さぁ、何方を食べてもイイでしょうか?僕に食べられてもイイ方、名乗り出て下さい!!」
桜沢「いやっ、小鳥くん、それ、違うから!!」
黒羽「明らかにその台詞、誤解受けるから!!違う方向に取れるからっ!」
釈迦如来「ちょ!!今、一番危ないの、僕だよね??」
先ほどから手をつかまれている釈迦如来が焦った顔を向ける。
綺咲「ひ、人を食べれば、緊張がおさまるんですよっ!!皆さん、舞台、2度目ですよねっっ!!少しくらい……食べさせて下さっても!!味見程度でも……」
桜沢「こ、小鳥くん!!落ち着いてっっ!!」
黒羽「そ、そうだよ、深呼吸して……はい、吸って~、吐いて~」
綺咲「す……吸って……吸って……吸って……ぅっ」
黒羽「吐いてねぇぇぇぇ~!!」
釈迦如来「ひっひっふ~、ひっひっふ~」
桜沢「それ、ちがっ!!」
綺咲「ひっひっふ~……ひっひっふ~……」
桜沢「やってるしっ!!」
そんな事を言っているうちに開演を知らせるベルが鳴り響く。
泣いても笑っても、本番だ。
4人はその音に、顔を見合わせる。
綺咲「……やるしかないですよねっ!」
開き直ったのか、ニコッと微笑む綺咲に、残り3人もつられて笑う。
桜沢「おかげで、何か緊張がなくなったよ。」
黒羽「……全く人騒がせな」
釈迦如来「緊張していなかったのに、別の意味で緊張させられちゃったなっ!!」
釈迦如来の言葉に皆一同に笑い、そして、舞台へと顔を向け、何時もとは違う、少しだけ凛々しい表情になる。
見てくれる人達に、少しでも楽しい一時を……。