・下手袖をみる(Q)→申・午・寅・巳・亥

Last-modified: 2008-03-31 (月) 23:13:17

ここにも客席のざわめきは伝わってきていたが、湊がアナウンスを入れると落ち着き始める。
下手舞台袖には申役の湊と午役の神村と寅役の村河と巳役の一宮と亥役の桜井の5人が待機していた。

神村「緊張してきたっす」
村河「あ~オレも……」
一宮「睦月は落ち着いてるよねぇ」
湊「そ、そう?それなりに緊張はしてるよ?でも……そうだなぁ、慣れかも」

あっさり笑顔で「慣れ」だと言えてしまうのは、それなりに場数を踏んでいる証拠だろうか。

湊「そういえば4人ともクレ祭の舞台に立つのは初めてだったっけ?」
桜井「今更言うなよ」
湊「あはっ、ごめん。で、最後の足掻きしてるの?」

振り返って桜井を見ると、薄暗い中で台本を必死に見ていた。

一宮「もう時間ないよ?」
神村「あっ、桜井先輩。俺にも台本見せて下さい」
桜井「おいっ!邪魔するな」
村河「オレにも見せて」

湊は桜井に群がる3人を楽しそうに見ていた。そしてゆっくりと近づく。

湊「ほら、騒ぐと外に聞こえるよ。そろそろ幕が上がるし……これは没収ね」

そう言って台本を抜き取り「湊専用」と書かれた箱に入れる。

桜井「ひでぇ」
村河「ケチ~」
湊「練習通りにやれば大丈夫だよ。もしもの時はきっと誰かが助けてくれる」
一宮「客はカボチャっと」
神村「人という字を書いて……飲み込めば……よしっ。もう大丈夫っす」
湊「そうそう、その意気だ」

神村の行動にふっと空気が和んだ。

湊「始めるよ。僕たちの舞台を!」

湊は4人の背中を送り出すように押す。
そうして自分にも気合いを入れて客席から見えないギリギリのところまで歩いて行く。