一宮に会いに行く

Last-modified: 2008-04-21 (月) 23:34:09

誰もいなくなった楽屋に残る人影がある。
公演が無事に終わり部員達が楽屋を後にする中、何となく残ってしまった。
一宮はひっそりと静まり返った楽屋を見渡す。
メイク道具が置いたままの机、小道具や一部私物で散らかったままになっている机もある。
そして隅には衣装が並べてかけてあった。

一宮(衣装、頑張って作ったよなぁ。そうだ、破れたりしてないかチェックしておくか)

順に衣装をチェックしていく。

一宮「あっ!!」

思わず叫んでしまった。
最後に手に取った午のズボンに、ほつれを見つけたのだ。

一宮(走った時かどこかにひっかけたか……)

一宮はカバンから裁縫セットを取り出し繕い始める。
慣れた手つきだ。

一宮「これでよしっと」

元に戻そうとして姿見が目に入った。

一宮(そうだ)

思い立ったように戌の衣装を手にして鏡の前で見てみる。
戌は最初にやりたいと思った役だった。

一宮(う~ん、いまいち?卯と寅は論外だし……)

午と未と酉も見てみるがやっぱりしっくり来なかった。
そして巳の衣装を手にする。

一宮「やっぱりこれかな。マーベラスッ!!」



時計を見たら意外と時間が経っていることに気が付いた。
何となく残ってしまったけれど、そろそろ行った方がいいかも知れない。
置いてあったお菓子を一つ手に取り、ゆっくりと楽屋を後にした。
最後は忘れずに鍵をかけて……。