亥編

Last-modified: 2008-05-23 (金) 21:43:05

【本番まで残り 48日】PM4:00
・舞台下を観る(E)
亥編


一宮「だからアタシは爪を切れって言ったじゃないのよ!アタシのこのキレイな肌に傷がついたじゃない!」
桜井「いや、それは……」
舞台下。巳役の一宮と演技初体験の桜井が練習している。
一宮「龍也、それじゃお客さんに聞えないよ」
桜井「へ?」
普通いつも通り、話をしている感覚で台詞を発してしまったのだ。
桜井「この至近距離で大声出すのか?」
一宮「大声……まぁ、そうだね」
台本上ではこの2人で会話しているのだが、舞台ではお客さんに語り掛けるというのがまだ分からないようだ。
桜井「そ、そうなのか」
一宮「そう」
言って舞台を指差す。


黒羽「っと、ご~~は~~ん~~……違うし」
天馬「あらあら。丑さんは食べ物が落ちていると思ったのね」


黒羽の台詞は呟きだが、客席に向って発せられている。続く天馬の台詞は黒羽に対してのそれだが、やはり客席に向って発してた。
天馬「どうですか?」
湊「うん。さっきより届いているよ。いいんじゃない?」
黒羽「じゃ、このシーンはこんな感じで行こう」
天馬「もう1回通しますか?」
湊「うん。幕が上がった直後からやってみよう」


桜井「へぇ……」
一宮「な?」
桜井「なんか俺、不安になってきた」
らしくない。
一宮「なぁに。大丈夫だよ。龍也は声が低いから少し練習すればよく通るよ」
桜井「だといいんだけどよ……」
再び舞台を見る。さっきと同じシーンが繰返されている。カナヅチ片手に台詞練習していた成果(?)か、台本無しで台詞を連発する天馬、そして黒羽も校内で会うときは必ずと言っていいほど台本を持っていた。釈迦如来は主役級なので台詞が多いはずだが、台本はポケットに突っ込んだまま練習している。瀬納も部室に来る時は台本片手に練習しながらやって来ていた。
桜井「あんな風に、出来るのか……」
一宮「出来るよ。出来るようになる。ならきゃいけない」


湊「オレはそんなスピードでは捕まえられないよっ」
神村「僕だってゴーだぜっ!」
走りながら台詞を発するのも大変だ。


桜井「まぁ、やるしかねぇか」
引き受けたからには、やり通さねばならない。
桜井「もう1回頼む」


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