綺咲編

Last-modified: 2008-05-23 (金) 16:52:39

シーン4 【本番まで残り 21日】PM4:30
・覗く →衣装合わせシーンへ(S)→誰かに近づく


綺咲編


カーテンという名ばかりの薄布を、部室の奥の隅あたりに張った洗濯紐に掛けた仮更衣室…があった。
部室にカーテンをしてある物の、綺咲個人用に自分で作った個人更衣室だ。
皆が着替えた後、一人グズグズと着替え終わっていない綺咲の姿があった。
そこへ、天馬と桜井も仕事を終え戻って来て、講堂の状態を湊に報告していた。
綺咲「今から、着替えますから、決して覗いてはいけません…」
天馬「鶴の恩返し…」
綺咲「あ、でも、すみません…何の恩も返せませんが」
桜井「女じゃねぇんだし、その辺で皆と一緒に着替えろよ…」
綺咲「何事も、もったいぶっておきませんと、ネ?」
湊「まぁ、早く着替えておいでよ。」
衣装を抱え、そそくさとカーテンの向こうへ姿を隠す綺咲。
釈迦如来「卯は、気弱そうな少年風に作ったんだよね?」
一宮「そうそう、アリスとかのマーチハリーの少年版みたいな感じで」
湊「色は渋めに黒に近い色で統一して作ったんだけどね」
一宮「大人しそうなウサギが派手な衣装でもね、と思ってさ」
等、衣装班の言い分にカーテンの向こう側から、暫く沈黙を守っていた綺咲の声がする。
綺咲「嘘でしょう!!マーチハリー、嘘でしょう!!」
桜井「ん?ナンだ、何かあったのか?」
綺咲「…絶対領域」
桜井「はぁ?」
天馬「……あぁ。アレですか……」
二人のやり取りに、衣装班は笑いを堪え、肩を震わせている。計画に一枚噛んでいる天馬は涼しい顔をしていた。
湊「いいから、出ておいでよ~、小鳥!」
その声に、カーテンの向こうから顔だけひょこっと覗かせる。
綺咲「…ばにー」
とうとう堪えきれなくなったのか、釈迦如来が爆笑し始める。
釈迦如来「あははっ!!卯の可愛らしさを存分に生かした…ぷぷっ、衣装だと思うよ…ははは!!」
一宮「俺たち衣装班の力作だよ~」
綺咲「オイシイですが…恥ずかしいです!!」
釈迦如来「世界中の女性を虜にするのは僕だけれど、小鳥くんなら、間違って男も釣れそうだよ!!あははは…」
綺咲「もう、みんな、僕に釣られてしまうとイイです!!」
湊「小鳥が逆ギレしてる!!」
桜井「で…、いい加減出てきたらどうなんだ?」
釈迦如来が何の掛け声もなく、カーテンを一気に引く。
薄い生地は簡単に引っ張られ綺咲の足元にふわりと舞い落ちた。
綺咲「えっ!?わ~ん!!!」
そこには、半袖のパフスリーブでフリルのついたブラウスに赤い大きなリボンタイ、手首には袖口だけがつけられ、黒っぽく光沢のある生地で作られたベスト、半ズボン…そして、縞々のオーバーニーソックス姿の綺咲があった。
恥ずかしさのあまり、半ズボンとニーソックスの間の太ももを手で必死に隠している。
頭につけたウサギのカチューシャが力なくヘタリと下がっているのもまた、恥ずかしそうな姿にマッチしていた。
綺咲「こ、これではまるで…」
と、同時に部室のドアがバーンと開かれ、そこには四隣の姿が…。
四隣「バニーガール…いえ、バニーボーイ!!!その絶対領域に縋り付きたい!!」
能登川「綺咲先輩、逃げて~!!!」
そう言うなり、綺咲めがけ両手を広げ走りこんでくる四隣。
怯え、咄嗟の事に動けない綺咲。
これは、とばかりに天馬が足をかけ更に延髄に手刀を入れる。四隣は先ほどのカーテンの布の上へと突っ込んで倒れる。
天馬「安心せい、峰打ちじゃ…」
四隣「み、峰打ちじゃないし~」
釈迦如来「ほら、早速、一人釣れた…」
綺咲「釣れたとかっ!!…だ、大丈夫ですか?四隣さん??」
思い切り倒(さ)れた四隣を心配する綺咲。
天馬「綺咲さん、手、差し伸べたら、食われるよ?」
綺咲「えっ!?」
慌てて手を引っ込める。更に一歩後ろへ。
四隣「そ、そんなっ!手を引っ込められた~!!」
綺咲「あっ、すみません…なんとなく。」
など、やり取りがある中、腹を抱えドツボにハマっている男が一人…。
桜井「…ぜった…絶対領域!!小鳥サン…絶対領域って!」
綺咲「…笑いすぎです、桜井先輩。」
湊「多分、似合うだろうな~とは思っていたけれど…ここまで似合うとは!」
一宮「マーベラスだよ!!小鳥くん!」
卯の衣装どうしようか?という話になった時に、まず最初に不思議の国のアリスのマーチハリーを誰もが思い浮かべていた。
とはいえ、それではありきたりだなと、他に案はないかと練っていた時に、バニーガール…という言葉が誰ともなく出てきた。
でも、あの衣装を舞台上で着せる訳にもいかず、少年風にアレンジさせたものが…今の綺咲の姿である。
綺咲「マーベラスとかっ…あぁ、なんとなく、皆さんの視線が、腿にくるのが、…恥ずかしいですよっ!!」
天馬「衣装ですから、気にしない方が……」
綺咲「わ~ん!天馬さんも、足出しちゃうとイイですよ!!」
天馬「え?別に出しても気になりませんが?やりますか?」
綺咲「えええっ!?本当ですかっ!?ううう…早く…慣れませんとね?」
溜息をつく綺咲であった。