7.捕まえる~分岐~ED

Last-modified: 2009-11-16 (月) 03:34:19

【捕まえる】
 
 
釈迦如来
「あの、これどうぞ」
葉月
「いいんですか?部長!渡しちゃって!!」
釈迦如来
「うん。だって僕らが持ってても意味なさそうだし…。これを取りにわざわざ来たみたいだし」
 
そう言うと、釈迦如来箱は二十面相に箱を差し出した。
 
二十面相
「……確かに受け取っ…」
 
二十面相が箱を受け取ろうとしたその時!
 
黒羽
「隙あり!!!!!!!!!」
 
黒羽は近くにあった木の棒で二十面相に面を喰らわす。
さすが剣道二段の段持ちだ、綺麗な一本。
 
二十面相
「ぐはっ…!」
 
その場にしゃがみこむ二十面相。
思いの外ダメージを喰らったらしい。
 
黒羽
「今だ!!捕まえろ!!!」
シルク
「は、はい!!」
釈迦如来
「葉月、この箱持ってて!僕も参加してくる!」
葉月
「はい!」
 
葉月は釈迦如来からタイムカプセルの箱を受け取ると、しっかりと胸に抱いた。
二十面相はと言うと、黒羽たちによってどこからか見つけてきたロープでグルグル巻にされてしまっていた。
 
釈迦如来
「や、やった…捕まえたーーーー!!!!!」
葉月
「やりましたね!!部長!!!」
 
抱き合いながら喜ぶ二人。
横には悔しそうにロープを結ばれた状態であぐらをかく二十面相。
 
二十面相
「無念…」
 
ガクッとうな垂れる二十面相。
年貢の納め時だ。
部員達は二十面相を囲うように輪になると、ジッと奴を見下ろしながら、どうしようかと唸っている。
 
黒羽
「さて…、こいつをどうしようもんか」
釈迦如来
「とりあえず、理事長に突き出す?」
柿崎
「そうですね。それがいいかも。」
シルク
「そうすれば僕達ヒーローですね!」
葉月
「そうだね♪」
釈迦如来
「ヒーロー、ジール…いい響き♪」
黒羽
「んじゃ理事長に突き出すか!」
 
そう言い、二十面相を引っ張った時だった。
まったく動かない。
鉄のように重いのだ。
 
黒羽
「あれ?…あぁ!?」
釈迦如来
「どうしたの…え!?何これ!!あのマッチョマネキン!?」
 
気がつくと、二十面相は去年発掘された演劇部の先輩からの贈り物のマッチョマネキンになっていた。
ご丁寧に衣装も着て。
 
二十面相
「ハーッハッハッハ!」
葉月
「え?あ、いつのまに!」
 
気がつくと、二十面相は再び胸像の上に立っていた。
 
二十面相
「君達は手強い。その箱は諦める事にするよ。だが、なかなか楽しかったよ。…さらばだ!」
 
二十面相が胸像から離れようとした、その時だった!
 
 
ボキッ
 
 
まるでタイミングを見計らったかのように、ハリボテの胸像の首が、無残にももげてしまった。
 
全員
「!?」
 
あまりの衝撃にみな目が点になっている。
逃げるように去っていく二十面相。
その場に残された演劇部員達はただその場に立ち尽くしている。
そして、徐々に焦り始めた。
 
全員
「………………」
全員
「………」
全員
「あああぁぁぁぁあああっ!!!!!!!!!!!!」
 
黒羽
「ちょ!!何してくれてんだよ二十面相!!」
 
逃げた二十面相に対し、怒りを抑えられない黒羽。
他の部員もあれやこれやと叫んでいた。
 
黒羽
「タイムカプセルは守れたのに…!!でもこれってないだろ!?」
シルク
「僕たちも逃げちゃいますか?」
黒羽
「そんなことできるわけないじゃん!!」
釈迦如来
「まぁまぁ。そんなに怒ってもしょうがないから。とりあえず何とかしなきゃ」
葉月
「そうですね」
 
どうしようかとどうしようかと考えていると、そこへクレアール祭を回っていた生徒達がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
彼らは胸像と部員達を見てハッとすると、こちらをジッと見てコソコソ話し始めた。
この状況からして、胸像を壊したのは明らかに演劇部員達。
…ヤバい。
 
黒羽
「あー…アメあげるからさ、これ見なかったことにしてくれないかな?」
 
どこからかお菓子を取り出して、口止めに走る黒羽。
すごくいい笑顔だ。
満面の笑みだ。
だが目が笑っていない。
 
生徒
「あ、ありがとうございます」
 
アメをもらい礼を言うと、そそくさと逃げるように去っていく生徒達。
喋る…あれは絶対誰かに話す…。
 
シルク
「とりあえず、もう一度作って誤魔化しておけばいいんじゃないですか?」
釈迦如来
「僕なら、本物よりも美しいものを作れるけどね♪ふふふん」
黒羽
「…そうだな、もう一度作り直すしかないな」
葉月
「僕怖くなってきた…。逃げたいかも」
 
釈迦如来の発言を、何事もなかったかのようにスルーする。
どうしようかどうしようかと話していると、柿崎が静かに口を開いた。
 
柿崎
「あの~…素直に謝っちゃったらどうですか?その方が、被害は少ないんじゃないかと思うんですけど…。この場合、まずは顧問の白雪先生にですか」
葉月
「僕もそう思う!素直に謝ったら、白雪先生も理事長もきっと優しく許してくれて、『素直に謝りに来てエライわね。ご褒美にお菓子をあげましょう!』って、お菓子くれるかも♪」
黒羽
「それはない!」
 
黒羽即答。
さすが3年生、伊達に3年間白雪先生の下で稽古をしていない。
顧問の性格は熟知しているようだ。
 
釈迦如来
「でもそうだね。素直に謝りに行こうか!そしてこの死守したタイムカプセルも渡しちゃおう!」
 
 

*****************************************

【分岐・箱を――――開けていた場合】
 
 
職員室前。
ドキドキしながら扉の前に立っている部員達。
 
黒羽
「おい、ノックしろよ」
釈迦如来
「まぁ、こういうことには順序というものがあってだね…、まだ心の準備が…」
 
なかなかノックをしない釈迦如来。
心なしか顔色が悪いように見えなくもないが、気にしない。
震えてもいるようだが、気にしない。
 
黒羽
「演劇部だろ!舞台立つ時みたいに腹くくれ!」
釈迦如来
「だってぇ~…」
黒羽
「なよなよするな!」
 
誰だって、こんな怖いこと早く終わらせたい。
いつまで経っても行動を起こさない釈迦如来に焦れた黒羽は、無理やり腕を持ってノックさせてしまった。
 
釈迦如来
「あああああーーーーーーーー!!!!!」
シルク
「部長!しーっ!!!!」
 
全員に口やら鼻やらを抑えられて、もがく釈迦如来。
息ができないとか、そんなところではない。
 
黒羽
「開けるぞ」
全員
「はい!」
釈迦如来
「し、仕方ない…」
 
ノックをしてしまったからには入るしかない。
 
全員
「失礼しますっ!」
 
みな顔を強張らせて職員室の中へ入り、白雪先生のもとへと歩いて行く。
 
黒羽
「お話があってきました。全ては部長が説明します」
釈迦如来 
「えっ!?」
黒羽
「えっ!?じゃないよ!ジール部長だろ。ちゃんと説明しろって」
 
こんな時だけ部長扱い。
部長は辛い…。
 
釈迦如来
「あの、実は…理事長の胸像を壊してしまって…その…済みませんでした!でも、直しますから!」
白雪先生
「なんですって?」
 
白雪先生の顔がドンドン変っていくのが分かる。
例えるなら般若のようだ…。
 
白雪
「あなた達、一体何をしているのっ!」
 
美しい顔を真っ赤にし、まるで鬼のようだ。
なんだか角が見える気がするくらいだ。
何度も頭を下げ、精一杯謝る部員達。
その様子に、白雪先生の怒りも収まってきた。
 
白雪
「まぁ、やってしまったものは仕方ないわ。とにかく、きちんと直しておきなさい。それから今日中に直すように!」
全員
「…はい!」
黒羽
「あの…一つお渡ししたいものがあるんですが、いいですか?」
白雪
「何?」
 
そう言うと、黒羽は足元に置いていたタイムカプセルの箱から一通の手紙のようなものを取り出した。

黒羽
「タイムカプセルの中に入っていました。白雪先生宛です。どうぞ」
白雪
「え?私に?」
 
目を丸くして驚く白雪先生。
黒羽から手紙を受け取ると、封を切り、中身を出した。
中身は花柄の可愛らしい便箋で、綺麗な字で文字が書かれている。
 
葉月
「先生何が書かれてr…」
シルク
「シーッ!」
 
白雪
「あの子達ったら…」
釈迦如来
「あの子達?」
 
何か熱いものを感じたのか、目頭をハンカチで押さえる白雪先生。
心なしか、声も震えている感じがした。
 
白雪
「この手紙はね、私がクレアールに赴任して、最初に教えた部員達からの手紙です」
柿崎
「なんて書かれていたんですか?」
白雪
「ありがとうって。どんな言葉よりも、たった一言の方が嬉しいものなのね…」
釈迦如来
「よかった、先生に渡せて。二十面相から死守したかいがありました!」
黒羽
「ヤベ、なんかちょっと泣けてきたかも…」
 
なんだか部員達も感無量だ。
黒羽にいたっては泣きかけてさえいる。
 
釈迦如来
「タイムカプセルは白雪先生に預けます」
白雪
「分かったわ。…みんな、ありがとう」
全員
「本当に済みませんでした!ありがとうございました。失礼します!」
 
職員室を後にする部員達。
安心で、誰からともなく安堵のため息が出た。
 
黒羽
「なんだか一件落着って感じか?」
柿崎
「いや、まだですよ!理事長の胸像の修理が…!」
黒羽
「やっべ、忘れてた…」
シルク
「でも、みんなでやればきっとすぐですよ!」
葉月
「そうですよ!」
釈迦如来
「んじゃ、胸像直しますかぁ~っ!!!!!」
 
部員達は理事長の胸像の修理に向かった。
廊下には部員達の笑い声が響いていた。
 
 
END
 
 

***********************************************

【分岐・箱を――――開けていない場合】
 
 
職員室前。
ドキドキしながら扉の前に立っている部員達。
 
黒羽
「おい、ノックしろよ」
釈迦如来
「まぁ、こういうことには順序というものがあってだね…、まだ心の準備が…」
 
なかなかノックをしない釈迦如来。
心なしか顔色が悪いように見えなくもないが、気にしない。
震えてもいるようだが、気にしない。
 
黒羽
「演劇部だろ!舞台立つ時みたいに腹くくれ!」
釈迦如来
「だってぇ~…」
黒羽
「なよなよするな!」
 
誰だって、こんな怖いこと早く終わらせたい。
いつまで経っても行動を起こさない釈迦如来に焦れた黒羽は、無理やり腕を持ってノックさせてしまった。
 
釈迦如来
「あああああーーーーーーーー!!!!!」
シルク
「部長!しーっ!!!!」
 
全員に口やら鼻やらを抑えられて、もがく釈迦如来。
息ができないとか、そんなところではない。
 
黒羽
「開けるぞ」
全員
「はい!」
釈迦如来
「し、仕方ない…」
 
ノックをしてしまったからには入るしかない。
 
全員
「失礼しますっ!」
 
みな顔を強張らせて職員室の中へ入り、白雪先生のもとへと歩いて行く。
 
黒羽
「お話があってきました。全ては部長が説明します」
釈迦如来 
「えっ!?」
黒羽
「えっ!?じゃないよ!ジール部長だろ。ちゃんと説明しろって」
 
こんな時だけ部長扱い。
部長は辛い…。
 
釈迦如来
「あの、実は…理事長の胸像を壊してしまって…その…済みませんでした!でも、直しますから!」
白雪先生
「なんですって?」
 
白雪先生の顔がドンドン変っていくのが分かる。
例えるなら般若のようだ…。
 
白雪
「あなた達、一体何をしているのっ!」
 
美しい顔を真っ赤にし、まるで鬼のようだ。
なんだか角が見える気がするくらいだ。
何度も頭を下げ、精一杯謝る部員達。
その様子に、白雪先生の怒りも収まってきた。
 
白雪
「まぁ、やってしまったものは仕方ないわ。とにかく、きちんと直しておきなさい。それから今日中に直すように!」
全員
「…はい!」
白雪
「このタイムカプセルは私が預かります」
葉月
「えー…まだ中身見てなかったのにー…」
白雪
「つべこべ言わず、早く直しに行きなさい!」
全員「は、はい!!失礼します!!」
 
白雪先生に一喝されると、部員達はそそくさと職員室を後にした。
 
シルク
「はぁ…最悪」
葉月
「くっそー!二十面相の奴めー!!」
 
職員室を出た後は、しばらくは二十面相に対しての愚痴しか出てこなかった。
それも当たり前かもしれない。
 
黒羽
「仕方ない…理事長の胸像、修理しに行くか…」
柿崎
「そうですね…」
釈迦如来
「そう言えば、二十面相は一体誰だったんだろう…。なんでタイムカプセルを欲しがったんだろう…」
 
重い足を動かしつつ、部員達は理事長の胸像へと向かう。
だがそこには、いくつもの謎しか残っていないのであった…。
 
 
END