8.渡す~分岐~ED

Last-modified: 2009-11-16 (月) 03:36:32

【箱を渡す】
 
 
黒羽
「これを渡せば、像は諦めるのか?」
釈迦如来
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
二十面相
「いかにも。嘘はつかない。約束しよう」
 
どうするか。
箱の中身は確かに気になるが、それ以上に胸像のことがバレたら、それこそ学園中大騒ぎになる。
演劇部はいい笑いの種だ。
 
黒羽
「分かった。渡そう」
釈迦如来
「えぇぇ~~!!」
黒羽
「仕方ないだろう!」
 
そう言うと、黒羽は渋々箱を渡してしまった。
 
二十面相
「物分りが良くて助かる」
 
そう言うと、二十面相はマントを翻して…。
 
黒羽
「えぇ!?」
釈迦如来
「あぁぁ!?」
 
事もあろうに再び像の上に乗る二十面相。
 
シルク
「やめてぇぇ~~~」
葉月
「それ以上乗るなぁぁ~~」
 
悲鳴が響き渡る。
無理もない。
これ以上壊れてしまっては困るのだ。
 
二十面相
「これは私からのプレゼントだ。受け取ってくれたまえ」
 
パチン。
指を鳴らすと、学園内の外灯・校舎の照明が一斉に消えてしまった。
 
シルク
「え!?」
釈迦如来
「ま、真っ暗?!」
 
クレアール学園は郊外にあるため、照明が消えると真っ暗になる。
月が出ていれば多少は見えるかもしれないが、あいにく今日は新月。
星の明かりだけでは心ともない。
それに暗闇に目が慣れるのも時間が掛かる。
 
黒羽
「んがっ!?誰だ!俺の尻触ったのは!?」
釈迦如来
「あ、これ総司のお尻だったn…」
黒羽
「触んじゃねぇぇぇぇぇぇえ!!!!」
釈迦如来
「ギャーーーーーーーーーーーース!」

黒羽の鉄拳が飛ぶ。  
違う悲鳴。
それと同時に全ての灯りが燈る。
 
釈迦如来
「あ、つ、ついた…」
黒羽
「どんなマジック使ったんだ…」
柿崎
「さすが、二十面相ですね」
黒羽
「感心している場合か!?肝心のあいつはどこへ…あぁぁぁぁ!!!」
 
胸像の上に立っていた二十面相の姿はなくその代わりに…。
 
シルク
「き、胸像の頭が……」
 
“メキッ”という音が似合うくらいに凹んでいた。
 
黒羽
「あ、あ、あのヤロォォォォォ!!」
??
「誰があの野郎なのかしら?」
釈迦如来
「へ?」
 
振り向くと、そこには腕組をした演劇部顧問の白雪先生が居た。
これは、つまり…。
 
白雪先生
「さぁ、何がどうなったのか、全部話してもらいましょうか?」
 
ニコニコしているが、これから起こるであろう惨劇に、その場に居る部員全員が戦慄を覚えた。
 
 
翌日・朝-
 
 
釈迦如来
「おはよ~…」
葉月
「おはようございます…」
 
昨夜、コッテリと油を絞られた部員達が部室にやって来た。
皆一様に疲れた顔をしている。
 
釈迦如来
「くっそー…せめて二十面相だけでも捕まえたかったな…」
黒羽
「そうだな。しかし、あの身のこなしだと簡単に捕まるとも思えないな」
柿崎
「…胸像は壊す、折角作ったハリボテは壊される、先生にはバれる、…最悪ですよね…」
天馬
「胸像?また何かしたんですか?」
黒羽
「おおぅ!?風邪治ったのか?」
天馬
「えぇ。すっかり。で、何したんです?」
釈迦如来
「実は、さ…」
 
インフルエンザで1週間ほど休んでいた天馬に、釈迦如来が事のいきさつを説明した。
 
天馬
「はぁ…また無茶苦茶しますね…」
黒羽
「仕方ないさ。その時はかなり焦ってたしな」
天馬
「で?胸像のドコを壊したんですか?」
釈迦如来
「だから、顔の部分だってば」
天馬
「?別にどこも壊れていませんでしたが…」
黒羽
「はぁ!?そんなバカな!!」
天馬
「見て確認してきたらどうですか?」
 
それもそうだ。
百聞は一見にしかず。
部員達は理事長の胸像へ走り出した。
 
釈迦如来
「あ、あれ?」
柿崎
「…なんともないですね」
黒羽
「どういうことなんだ…」
シルク
「あ、あの…」
釈迦如来
「ん?どうしたの?」
シルク
「都合が良すぎる解釈かもしれませんけど」
 
一旦言葉を切る。
 
シルク
「二十面相が去り際に“プレゼントを受け取れ”って言っていたじゃないですか」
 
――――“これは私からのプレゼントだ。受け取ってくれたまえ”――――
 
釈迦如来
「あぁ、確かそんな事を……」
シルク
「そのプレゼントって、修理された胸像じゃないかと…」
黒羽
「…確かに都合のいい解釈だな」
 
 

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【分岐・箱を――――開けていた場合】
  
 
釈迦如来
「なんで修理した胸像をプレゼントにするのかな…」
葉月
「なぜでしょう…」
黒羽
「まぁ、確かに謎だよな。あの箱といい二十面相といい…」
天馬
「箱?」
釈迦如来
「うん。あの胸像の下から出てきた箱」
柿崎
「中にはメガホンとか台本とか入っていたんですよ」
 
箱の中身を教えてあげる柿崎。
 
天馬
「思い切り演劇関係ですね…映画かもしれませんが」
黒羽
「まさか、二十面相はそういう関係者なのかな?」
葉月
「え?じゃあ箱を渡したから、壊れた胸像を修理してくれたとか?」
天馬
「しかし、安いものではありませんからね…」
 
それもそうだ。
 
釈迦如来
「でも、胸像が無事に戻ったならそれはそれで良いかな」
黒羽
「だな。あまりスッキリはしないが」
 
キーンコーンカーンコーン…予鈴が学園内に鳴り渡る。
 
釈迦如来
「やば!授業始まる!じゃ、みんな放課後に!」
黒羽
「おう」
部員一同
「はーい」
天馬
「で、型取りする時、胸像に離型剤塗ったんですか?」
釈迦如来
「へ?」
シルク
「え?」
葉月
「ん?…」
柿崎
「…あ」
黒羽
「…まさか…」
釈迦如来
「…えへ」
黒羽
「えへ。じゃないだろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
釈迦如来
「うわぁぁぁぁ!ごめんなさ~~~~~い!!」
 
もうすぐ授業が始まるというのに、追いかけっこを始める演劇部員達。
 
天馬
「壊れて当然ですね…」
 
今日も賑やかな1日が始まった。
 
END
 
 

**************************************************

【分岐・箱を――――開けていない場合】
 
 
釈迦如来
「なんで修理した胸像をプレゼントにするのかな…」
葉月
「なぜでしょう…」
黒羽
「まぁ、確かに謎だよな。あの箱といい二十面相といい…」
天馬
「箱?」
釈迦如来
「うん。あの胸像の下から出てきた箱」
葉月
「中は何が入っていたんでしょうね…」
柿崎
「多分、演劇部に関係のあるものだとは思うんですけど」
シルク
「え?じゃあ箱を渡したから、壊れた胸像を修理してくれたんでしょうか?」
天馬
「しかし、安いものではありませんからね…」
 
それもそうだ。
 
釈迦如来
「でも、胸像が無事に戻ったならそれはそれで良いかな」
黒羽
「だな。あまりスッキリはしないけど」
 
みんなどこか晴れた顔をしていなかった。
やはりスッキリしてはいないのだ。
 
釈迦如来
「早いうちに先輩に連絡しちゃおうっ」
黒羽
「そうだよ!一言文句を言ってやらないと!」
 
どうやらこのモヤモヤを先輩にぶつけるようだ。
このままにしておくのはどうにも気持ちが悪いのだ。
 
柿崎
「落ち着いて下さい。今ジール先輩が電話してますから…」
釈迦如来
「…あ、もしもしー先輩?もう、大変な目に遭いましたよー。二十面相に散々振り回されてー…先輩達のタイムカプセルー…」
 
釈迦如来が話し出す。
どうやら繋がったようだ。
それにしても気さくに話しかけている…。
 
釈迦如来
「だからぁ、タイムカプセルですよー先輩達が理事長の像の下に埋めた…」
釈迦如来
「え?」
黒羽
「どうした?」
シルク
「どうしました…?」
釈迦如来
「知らないって…タイムカプセルも…二十面相も…」
黒羽
「は?」
葉月
「ええー!」
柿崎
「そんな…」
黒羽
「…中身は?」
シルク
「なんだったんでしょうか…」
釈迦如来
「二十面相は…誰だったんだ」
黒羽
「だって…あったよな?理事長の像の下に…箱が…何かが…」
 
ケータイを握ったままの部長と、呆然とする部員一同。
 
キーンコーンカーンコーン……今日も予鈴が学園内に鳴り渡る。
 
受話器の向こうから先輩の声が漏れる。
 
 
『嫌な、事件だったね』
 
 
朝日の差し込む部室に、怪人二十面相の笑い声が響き渡る…。
 
 
END