ストーリー/終焉の果てに

Last-modified: 2023-04-06 (木) 08:50:21
 

ケインバレル:
 …。

俺が空白へ入る前…ただの軍人だったときの話だ。
スタリーフォレストを設立して人類をまとめ、部隊の将校として立つロードを見たことがある。

己の過去にも未来にも迷いのないような意志の強さ。
前だけを向き、強く踏み出す自信。

彼の欠点など誰が指摘できるものか。
実際あの男の清廉潔白ぶりを見てそんなことをする者は、ひとりもいなかった。

追従を超え、神と呼ぶ者までいた。
俺はそこまで敬ってはいなかったが、彼に従う人々の気持ちは理解できた。

このスタリーフォレスト連合で、新たな希望を探す人々の気持ちが理解できたのだ。

その後、俺はテネブリスという人物がロードの代わりとしてスタリーフォレスト連合の代表になったと耳にした。

ロードのあとを継ぎ、強い意志で連合を導いていくのだろうと淡い期待を抱きもしたが…。

しばらくして連合に不満を抱いた彼は、ダークムーンノクターンという新たな組織を作り…人類へ反旗を翻した。

テネブリス:
 やはりスタリーフォレスト連合はソウルワーカーを前線へ出しましたか…。
 最後まで自らの愚かさを省みようとはしないのですね。

ケインバレル:
 …

ロードの堂々とした顔と比べると…いま俺の前に立つこの顔は、情けないことこのうえなかった。

主体性もなく、確信もない。
ただそうすることが正しいのだという、漠然とした正義に駆られて今へ至ったとしか思えない。

この男はなぜこうなったのだろうか。
少なくとも連合で英雄として戦っていたときは、誰もが憧れる存在だったというのに…。

もちろんテネブリスも悪意をもって反乱を起こしたわけじゃない。
この反乱も彼なりに悩んで出した結論なのだろう。

だが、どこか引っかかる。
急な心境の変化も、極端な選択も…果たしてひとりでそんな考えに至るものなのだろうか。

…とはいえそんなことを悩むにはすでに遅い。

 テネブリス。俺は人類のために、最後までお前をとめる。

テネブリスは俺の覚悟に応えなかった。
その瞳はただスタリーフォレスト連合への憎悪と、俺に対する哀れみを映すのみだった。

…ずいぶん前に人類から捨てられ、むなしさと砂埃の臭いだけが残る場所。

陽の光を遮る雲ひとつない晴れ空が、はるか遠くまで染みわたる。
日陰などあろうはずもないその地では、かげろうが揺らめいていた。

戦争と呼ぶには物足りない百名余りの兵士たちは向かいに立つ者を眺め、人間同士で戦わなければならないこの現実を飲み込めずにいた。

民間人のいる都市から離れた第8区域を通って進行してくることから、テネブリスも戦いそのものを望んではいないのだろう。
…ただ意見の違いは力ずくで解決するしかないという、極端な結論へとたどり着いただけだ。

もはやそれ以上の会話は必要ないと、互いに武器を掲げた…。

――その瞬間だった。

まるでその時を待っていたかのように、世界の理を破るような存在感をまとって「それ」は現れた。

初めは陽の光だと思った。だが「それは」明るい日射しのもとでさえ眩しく輝いていたのだ。
まさに、光を照らす光のごとく。

巨大な光の柱…。
ただの光というより、まるで神の審判のようにも感じられる巨大な「それ」が、唐突に轟音を伴って目の前に現れた。

 テネ、ブリス…?

ほんのわずかばかり聞こえた悲鳴はすぐに消えた。

目の前に見えたのは、巨大な光の柱とその中に立つ者たちの影だった。
頭と手足だけがかろうじてわかるそのいくつものシルエットは、悲鳴すら出せずにもがき苦しんでいた。

状況の変化に付いていけず呆然と眺める俺の耳に、音が届く。

肉が焼かれ、血が沸騰し、蒸発する音が。

それはどこかで聞いたことのある…。

 うぅっ…!?

そうだ、俺はたしかに知っている。
その音を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、毎日のように聞いたあの音…。

熱々のフライパンの上で、卵が焼ける音だった。

毎朝耳にしていて最も馴染みのある、心地の良い音。

それが目の前で彼らの焼かれる音とあまりにも酷似していて、俺の胃袋はまだ残っていた朝食を吐き出すことを強要した。

 

 

 

途中から
…。

ネーブ:
 …。

カント:
 ネーブさん、準備はいいですか?

ネーブ:
 はい、すぐにお願いします。

 ですが、本当にここまでの力を集める必要があるのですか?
 いっそフランマやジェレミーと共にスタリーフォレストを攻撃したほうが、より効率よ
 く勝てると思うのですが…。

カント:
 ネーブさん、ソウルワーカーを甘く見ちゃダメですよ。
 ジェレミーの作戦やフランマの侵攻は、必ず彼らに阻止されます。

 あくまでも彼らの役目は、あなたが力を集めるまでの時間稼ぎでしかありません。
 それ以上は期待してませんしね。

ネーブ:
 そうなのですか…?

カント:
 そうですよ。
 それに力で人類を支配しようとする者が、ヴェシや宗教団体の力を借りたら格好が
 つかないでしょう?

ネーブ:
 カント…。
 何か勘違いしているようですが、私はこの力でスタリーフォレストを支配できれば十
 分なのです。

 格好など気にする必要はありません。
 私たちの持つ力を見せ、スタリーフォレストの抵抗する意志を折れればそれで満足
 です。

カント:
 弱者を踏みつぶすことほど、力を誇示するのに効率的なものはないんですが…。
 どうです?ひとつ、都市の一角を吹き飛ばすとか。

ネーブ:
 いえ、いけません。
 人間を正しく導くための力で人間を殺しては、本末転倒でしょう。

 私の敵はソウルワーカーを利用してきたスタリーフォレストと、その協力者のみ。
 関係のない人間の犠牲は極力抑えたいのです。

カント:
 はぁ、つまらない人ですねぇ。

ネーブ:
 私の信念と正義は、面白半分に遊ぶものではありません。

カント:
 素晴らしいお言葉ですが、悪の権化から力をもらう人のセリフじゃありませんよ。

ネーブ:
 はぁ…。カント、私達はじきにすべての人間の支配者になるのです。
 そういうふざけた言動はそろそろやめてください。

カント:
 無礼者!僕の前に跪け!
 …こんな感じのほうがいいですか?

ネーブ:
 あぁ、あなたに真面目さを求めた私がいけませんでした。
 もう結構ですので、力を私にください。

カント:
 ふふ、わかりました
 さぁ、では目を閉じてください。少し寝て目が覚めれば、あなたはまったく異なる存
 在になっているはずです。

 あなたを通じて増幅し強大になったエナジーは、世界へ広がりあなたの意志と欲望
 を繋ぐことでしょう。

ネーブ:
 …私は、本当に見せることができるのでしょうか。

 あの日私がみた強大な光の正義を…。
 あの高潔で驚異的なものを、人間たちに感じさせられるのでしょうか。

カント:
 えぇ、もちろんです。

ネーブ:
 世界を正しく導いていけるのでしょうか?

カント:
 それはあなた次第でしょう。

ネーブ:
 たしかにそうですね。ならば私にできる限りを尽くします。
 …始めてください。

カント:
 わかりました。
 では…。

 ゆっくり休んでください。次に目を開けたとき、あなたは…。
 ふふふふ…。

 …。 

ハル:
 …。

ロスカー:
 …。

カント:
 遠い昔…。
 あるつまらない惑星に、邪悪な力を持つ神様がいました。

 名はカント。
 何かに呼び起こされ、存在したときから「惑星を管理せよ」という欲望と使命を与え
 られた管理神。

 カントはしばらくの間、使命に従ってまじめに惑星を管理しました。
 しかしある日、ふとひとつの疑問へと至ったのです。

 これ、ものすごく退屈なのでは?
 この宇宙のどこかに、少なくともこれよりは楽しいことがあるのでは?

 好奇心の芽生えた神の目に映ったのは、自身と同じく生まれながらに与えられた使
 命だけを背負って生きるヴェシしかいませんでした。

 力を与えても前進するだけ。さらなる欲望を与えても生まれ持つ使命にしか生きな
 い…。
 まるで列をなして移動するアリです。

 そんな彼の目に、セカンド・ステアという惑星が飛びこんできました。
 そこに生きる人間という種族は、彼にとってあまりにも完璧な存在でした。

 その惑星の生物は表では優しいフリや正しいフリをしながら、裏では己の利益のた
 めにどんなことでもします。
 仲がいいように見せておいて、突然背中を突き刺すのです!

 列をなして移動するアリの群れしか知らない彼に、人間はアリ同士の戦う姿を見せ
 てくれました。
 その惨めで醜い姿に、感動すら覚えました。

 喜びのあまり、彼は人間の内なる欲望を引き出すべくデザイアエナジーを分け与え
 ようとします。
 …しかしうまくいきませんでした。彼のデザイアはセカンド・ステアの持つ莫大なソ
 ウルとぶつかり、亀裂を作るだけでした。

 その副作用として空白という現象が発生しますが、彼の試みはふたつの世界間に亀
 裂を生じさせるだけで、半分失敗のまま終わってしまいます。

 しかし彼は空白を利用しました。
 より強大なデザイアエナジーを注ぎ、さらに多くの亀裂を作って空白の世界を広
 げ、人間が住めるようにしたのです。

 惑星にデザイアを持ち込めないのなら、人間をデザイアに染めればいい。
 デザイアに染まった人間が惑星を埋め尽くせば、彼が自ら望んだ世界になるはずだ
 ――

 …というのが、僕の意図でした。

 おや、顔が怖いですよ?
 久しぶりの再開なんですから、少しは笑ってください。

ハル:
 ロスカーさん、危険なので下がってください。

ロスカー:
 心配はいりません。
 彼もすでに私と同じ状態のようです。

カント:
 はは、よくわかりましたね。
 世界を統合するためにすべての力を還したあなたのように、僕も全力を注いだせい
 で何もできなくなってしまったんですよ。

 ネーブさんにすべての力を使い切った今は、ただの人間と変わりありません。

 背丈は平凡ですし、体つきも貧相です。
 スタリ―フォレストなら兵長にさえなれず、下っ端兵士としてただ死を待つだけだっ
 たでしょうね。

ハル:
 そうですか。なら私がここで殺してあげます。
 泣いて詫びようと許しはしません。

カント:
 ははは、ご心配なく。
 僕はあらかじめ自分の死まで計画に入れてここへ来たんですから。

ハル:
 計画?笑わせますね。
 ただの強がりなのを見抜けないとでも?

 すべての力を注いだテネブリスが敗れた以上、もうあなたに奥の手が残されていな
 いのはわかっているんです。

 計画だなんだと、いつまでも思惑通りのような顔をして。
 あなたは死ぬしかないんです。

カント:
 あははは、わかりました。
 では死ぬ前にひとつだけ質問です。

 ロスカー。
 人間世界の管理者を名乗るあなたに、果たして答えられるでしょうか?

 人間はなぜかくも美しく、面白い生き物なのか。

 そしてなぜあなたのような神は今まで人間を傍観し、放っておいたのか。

ロスカー:
 カント。
 神は干渉も同調もしませんし、感化もされません。

 干渉は不条理を、同調は不平等を、感化は不和を生み出します。
 それが神として、管理者としての義務です。

 人間はこれまで自らの力で歩んできました。神はそのそばでほんの少しととのえる
 だけ…。
 彼らの迎える未来を自ら作り出せるよう、任せなければならないのです。

カント:
 あぁ、やっぱり知らないんですね。
 あなたはまったく知らないんですよ、ロスカー!

 不条理?不平等?そんなのは言い訳に過ぎません!
 あなたたちは人間の価値がわからず、理解できなかっただけです!

ハル:
 理解できていないのはあなたのほうです。
 人間はあなたみたいなものの手を借りたいと思ったことなんてありません。

 理解されたくもありませんし、求めてもいません。
 ただこの場で死んでほしい…それだけです。

カント:
 ははは!勇敢なハル・エスティアさん!
 僕を憎む気持ちは理解できますが、まぁ聞いてくださいよ!

 テネブリス…!
 彼はあまりにも純粋で、真面目な男でした。

 強大な力を目撃し、憧れ、少しでも近付こうとあがきました。
 力こそが正義という自らの信念を貫いて、無限の欲望を抱き、成長したのです。

 まさに人類のお手本ですよ。
 すべての人類が目標とすべき人物像じゃないですか?

ハル:
 強かったですが…それだけです。
 結局ひとりになって、人類に敗北したじゃないですか。

 それともテネブリスの言うように、強者が正義だとでも?

カント:
 いえいえ、あの人のくだらない正義を言っているんじゃありません。
 そんな嘘の世界は僕も望んでませんでしたよ。

ハル:
 …どういうことですか?
 あなたはテネブリスがこの世界を支配するのを手伝っていたじゃないですか。

カント:
 はは、まさか。
 暴君が力で世界を統治しても、退屈なだけです。

 力こそが正義という秩序のもと弱者が踏みつぶされて生きる世界なんて、退屈すぎ
 ると思いませんか?

ハル:
 強がらないでください!
 テネブリスが死んであなたの計画にも支障が出たのはわかっているんです…!

 今もただ虚勢を張っているだけでしょう!

カント:
 そうでしょうか?
 まだ僕の計画は着実に進んでいるんですよ。

 ネーブさんは僕が望む姿へと完璧に成長してくれました。
 まるで少年漫画の主人公のように、失敗を超えて強くなったんです。

 おかげで彼の体に莫大な量のデザイアエナジーを集めることができました。
 かつて僕がデザイアエナジーをセカンド・ステアへ持ち込もうとして失敗したこと
 を、ひとりの人間がやってのけたんですよ!

 他の世界の神がしなかった…いえ、できなかったことをです!
 死にはしましたが、その偉大さは十分に称えらる*1べきでしょう!

 皆さんはがんばって戦いました。
 この世界の支配者になろうとした暴君を、立派に倒しましたよ。

 そして皆さんがネーブさんを倒してくれたおかげで…。
 この世界に、永遠に終わらない紛争が始まるのです。

ハル:
 それは…一体どういう…。

ロスカー:
 …やはり私の感じた不安が的中したようですね。

 カントはなぜか、最初から本気を出してはきませんでした。
 私が力を失ったと知ったにもかかわらず、戦前の均衡維持に努めるだけでした。

 フランマの独断行動も、エフネルの世界が統合するのも見ているだけでした。

 カント、貴方はまさか…。

カント:
 おおっと、そこまでですよ。
 すべて言ってしまったらつまらないじゃないですか。

ロスカー:
 初めから…ソウルワーカーにテネブリスを倒させる計画だったのですね。

ハル:
 …えっ?

カント:
 あ~あ、言っちゃった…。

ロスカー:
 いい加減にしてください。
 私は貴方の遊びに付き合うつもりはありません。

カント:
 …僕にとってネーブさんは、デザイアエナジーという空気でいっぱいに膨れた風船
 でした。
 膨れたところに針で穴を空けると、勝手にエナジーが広がっていくというわけです。

 ハルさんも第6区域で無駄に増えたネーブさんの幻影を見たでしょう。
 あれらはすべて肉体という風船から漏れ出たデザイアエナジーです。第6区域へう
 まく広がるよう、がんばったんですよ?

 まぁわかってやったのかは知りませんが、第8区域へ戦場を移したのはいい選択で
 した。
 おかげでネーブさんは、第6区域に広げておいた自分のエナジーを使うこともでき
 ずに死んだのですからね。

 すでに自分の肉体に大きな穴が開いてデザイアエナジーが急激に漏れ出している
 ことも、最後になってわかったはずです。

ハル:
 「私も結局…奴のおもちゃに過ぎなかったわけか…」。

カント:
 あぁ、そうそう。その台詞。
 ネーブさんの遺言ですよね。

ハル:
 なぜですか…?なぜテネブリスを殺したのですか?
 人々は?兵士の皆さんは?キャサリンは?

ロスカー:
 そうまでして、なぜこの世界にデザイアエナジーを広げるのですか?
 貴方に何の得があってこのようなことを?

カント:
 僕の目的なんてもうわかっているでしょう?

 楽しい楽しい、人間同士の戦争ですよ!

 西部にデザイアエナジーという巨大なエサを撒き、東部はその匂いを嗅ぎつけまし
 た!

 第6区域に残されたデザイアの種によって、人間同士の紛争が始まります!
 互いが自分の命を守る力を得るために、相手の命を奪うんですよ!

 舞台は整いました!
 西部にはテネブリスを倒した多くのソウルワーカーが、東部にはいくつもの奇跡を
 起こしたLXTが存在します!

 世界を救った人間の英雄と、世界を救う人間の技術!
 どちらが勝つか気になりませんか!?

ハル:
 やめてください!
 そんなこと知りたくもありません!

 楽しいですか!?面白いですか!?
 あなたは死んだ人々の顔を見たことがあるんですか!?私たちはそんなもの望んで
 いません!

 私たちは普通に生きたいだけです!
 なぜ…どうしてこんなことをするんですか!

 どうして、人間を殺して笑えるんですか…!

カント:
 …はい?

 何を言ってるんですか?
 皆さんは僕に感謝しないといけませんよ。

ハル:
 …感謝?感謝ですって?

カント:
 初めてここへ来たとき、この平和ぼけした世界の人間は自分の持つ能力も理解しな
 いまま、あまりにも怠惰に生きていました。
 …いえ。あれは生きているのではなく、自分が死ぬ日をただ待っていただけですね。

 「老後対策」だなんだと…明日何が起きるかわからない人間には贅沢すぎると思い
 ませんか?
 そんなものは生ではありません。死を待ちながら淘汰されているだけです。

 だから僕は人間に、真に生きるという目的をあげたんですよ。
 明日友人が、家族が、そして自分が死ぬかもしれないという警戒心を与えることで
 ね。

ハル:
 そんなこと、誰も…。
 誰も望んでいなかったんです!

カント:
 必要性を知らなかっただけです。
 これほど愛しい人間でも、その無知さにだけは言葉も出ませんよ。

 時が過ぎ、いつか再び大きく繁栄すれば、人間は僕に感謝するでしょう。
 競争と欲望こそが成長の足がかりであり、中途半端な偽善の仮面を捨て、己の真の
 欲望を追求することが近道なんですよ。

 もう人間は空白へ入らずともデザイアエナジーに触れることができます!
 それもうわべだけの正義に憑かれた、ネーブさんの欲望でいっぱいのエナジーにで
 す!

 強さのため!研究のため!復讐のため!知識の渇きを潤すために!
 多くの人間が集まり、奪い、醜く争うでしょう!

 デザイアエナジーという資源を得るため、人間同士のもうひとつの戦争が始まるん
 です!

ハル:
 そんなことにはなりません。
 やっと手に入れた平和なんです。だれも戦争なんか望んでいません。

 すぐにわかりますよ、この世界はあなたの思い通りになんてならないということが。
 …人間をなめないでください。

カント:
 …。

 あは、あはははは!
 あっはははははは!

 やっと手に入れた平和?戦争なんて望んでいない?
 あなたは一体今まで何を見て生きてきたんですか!

 人間は力を得るために再び争います!
 この現実は変わりませんよ!

ハル:
 もういいです。話も聞きたくありません。
 少しでもあなたの本心がわかるかもしれないと期待した私がバカでした。

 あなたの本心なんて理解する必要はありませんし、これ以上生かしておく価値もあ
 りません。

カント:
 ははは、悔しいですか?
 でしたらどうぞ、刺してください!力を失ったこの肉体では抵抗できませんよ!

ロスカー:
 気をつけてください。罠かもしれません。

ハル:
 わかっています!
 こんなに堂々と殺せだなんて、罠に決まっています!

 ですが…もう我慢できません!
 息を吸うことすら許せないんです!

カント:
 心配せずに剣を振ってください、ハル・エスティア。
 僕はテネブリスを倒したあなたの手で死ぬべきと思い、ここへ来たんですから。

ロスカー
 偽りです。
 使えなくなった今の肉体を捨て、「本体」へ戻ろうとしているのでしょう。

カント:
 おや、また当てられちゃいましたよ。
 まぁわざわざハルさんがやらなくても、自ら命を絶てばいいので特に違いはありま
 せんけどね。

 ただ、そう…。
 今まで僕を追ってきたハルさんを労って、一度くらいは望み通りにしてあげたかった
 だけです。

ハル:
 楽しいでしょうね!
 あなたの思い通りに動く私も!仲間も!他の人々も!テネブリスでさえも!すべておも
 ちゃにしか見えないんでしょう!?

 戦争で亡くなった人々も!大切な人を失って悲しみに暮れる人々も!
 あなたにとってはただのおもちゃなんです!

 肉体を捨てる?本体に戻る?そんなの知ったことじゃありません!
 あなたを少しでも苦しめることができるならそれで十分です!

ロスカー:
 …そこまで言うのなら、とめはしません。

カント:
 さぁ、いつでも来てください!僕は…!
 …ぐはっ!

ハル:
 黙ってください…今すぐその体に穴を空けてあげますので。

 今までの恨みをすべて込めて…!
 最も大きな苦痛を味わわせてあげます…!

カント:
 う…ぐっ…。
 こ、ここまでエナジーを込めなくても死にますってば…。

 ガハッ…!
 し、しゃべれるようにくらいは…してくださいよ…。

ハル:
 今はこれだけ…たったのこれだけです…。
 本当のあなたに近づけないから…これだけしか恨みを返せません!

 ですがその苦痛をしっかり覚えておいてください。

 次は必ず…本体にこの剣を突き刺しますので。

カント:
 ふふ…ふふふ…わかりました。

 この痛み、この苦しみ…。
 果たして次も味わうことができるか…期待していますよ…。

 

トール:
 報告、感謝する。
 まさかそんなことになっていたとはな…。

ロスカー
 私が力を失う前に見た未来を皆さんに話していれば、彼の真意は予測できたはず
 です。
 これは私の過ちです。

イオ:
 過ち以前に、許されざる干渉です。
 権限を手放したとしても干渉の程度は知るべきです、身の程を知らぬ元管理神
 よ。

トール:
 まぁ、たとえ奴の真意を事前に知っていたとしても何も変わらなかっただろう。
 我々がテネブリスに勝利し、東部が西部の力を警戒し、デザイアエナジーが全世界
 へ広がることはな。

 ならばつまり、この平和も長続きしないということか…。
 我々の次の敵がどこになるかはわからんが、西部に残ったデザイアエナジーは間違
 いなく不和の種になる。

 この間のケインバレルの件から見ても、デザイアエナジーを狙う者は再び現れるだ
 ろうな…。

ロスカー:
 今後は人間と怪物の戦いではなく、人間同士の戦いになるでしょう。
 次もソウルワーカーが勝利できるかわかりません。

トール:
 いや…人間同士の戦いに勝敗はない。
 ただ互いに破滅するだけだ。

 戦争を防ぐことが最善なのだろうが、そう簡単にいくかはわからん…。

ロスカー:
 …アカシャよ。
 貴方は今どこで、何を眺めているのでしょうか。

 これも貴方の導く道であるならば、私達は不満なく歩んでいけます。
 しかし、本当に貴方の望む道なのでしょうか?

 私たちはただ口をつぐみ、歩んでいくしかないのでしょうか?

録画飛んだ


*1 恐らく称えられる