ブジョヌイは考えた。
我が砲はどうしてこんなに非力なのかと。
やれ燃やせ燃やせと皆は言うが、そう都合よく燃えてくれるとも限らぬ。
それでもダメージが入ればまだ良い。戦艦を撃とうとも、砲弾の半数ほどは装甲やモジュールを
舐めるばかりで、そうこうしておるうちに、反撃の砲撃で手痛い一撃を容赦なく浴びせかけられては
歯痒い思いをしていたのだった。
そんなある日、神は気まぐれにIFHEなるものを思いつき、世界に与えてやった。
ブジョヌイは半信半疑であった。こんなものが役に立つのかと。
唯一の武器とも言える火災の可能性を引き下げてまで得る価値はあるのかと。
そんなとき、ブジョヌイは「二人の兄弟」でキャッキャとはしゃぐクリイブランドを見た。
彼は新しい玩具を手にいれた子供のように、いや今考えればまさにそうだったのだが、
砲撃を繰り返してはゲラゲラゲラと嗤うのだ。
見ると、敵艦のHPはガリガリと削れていた。ブジョヌイはクリイブランドがより多くの砲門を持つ
優秀な奴だと日頃思ってはいだが、心のどこかでは自分と同じ軽々しい砲力の持ち主だという
妙な安心感もあった。それがどうだ、あいつは今、輝いている…!
ブジョヌイは堪らず訊いた。おい、きみ、よくダメージ入っているな。それはどういう仕掛けかい。
クリイブランドはこちらを一瞥すると、少々馬鹿にしたように大袈裟な身振りで答えた。
きみこそ、これ、この神様がくだすったIFHEをまだ知らないのかい。きみの兄弟も、みんな使ってるぞ。
ブジョヌイは目を丸くした。これが噂のIFHEなのかと。
しかし我が兄弟が皆使っているのに自分だけ知らなかったというのも恥ずかしい。
ブジョヌイは、おい、そんなことは知っている、スキルポイントが足らなくてなとモゴモゴ吃りながら
港へ帰ったのだった。
本当はポイントなど、優に足りてはいたのだが。
一週間ほどしたろうか。
ブジョヌイは自信に満ちていた。
ダメージが入る。ちゃんと、燃える。
これだ、これこそが在るべき姿だったのだと思うと、もう笑いが止まらない。
連射の利く砲を撃ちながら、もう恍惚としていた。
しかし、ブジョヌイは忘れていた。
自分が、全身性感帯であるということを…
撃つことに夢中になっていた彼は気づくことができなかった。
遠くの長門の禍々しい砲門が、こちらにゆっくりと向き、今発射されたことを。
スドオオオオオオオオン
アヒイィィ!?
己が身を貫くAP弾。それが彼の見た最後の光景だった。
(straysheep2)