marietta

Last-modified: 2007-05-15 (火) 23:48:28

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                    プロローグ                                        海月 真璃亞

いつも夢に出てくるのは、真っ赤な深紅の惨状――。
たたずむ、蒼い瞳をした美しい金髪美女―。
けどその瞳にはいつも、涙だけが頬を伝う・・・白い羽の女神。
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世界をすべる中央城ヴェディーエリル城は、7つの国に7のマリエッタを召喚した。
マリエッタとは、ヴェディーエリルの黒歴史の一つである。
マリエッタとは総称『天使の器』のことである。その昔、ヴェディーエリルは一般市民を犠牲にし、
その生きた精神を別の肉体へと転移させた。その移された肉体こそ、天使と呼ばれるものの亡骸である。
だれもがマリエッタに選ばれるわけではない。その器に精神を入れ込ませれるほどの強い精神と気高い精神、慈悲の心が無くしては、その亡骸に精神を入れることは不可能。すなわち、失敗は死に値する。
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しかし、何千万もの人々のうち、選び出されたのは七つの精神だけだった。
そして、やはりヴェディーエリル公国が必死の思いで手に入れた天使の器も七体しかなかった。
しかし、ある時他の公国からの侵略により、七つの精神が消えてしまったのだ。
何千万もの民の死を招くだけの惨事となり、結局はヴェディーエリルは他国に占領されてしまう。
しかし、その他国もまた、マリエッタを欲し大量の市民を犠牲にすることになった。
マリエッタが成功すれば、その王の思うがままに記憶をいじれる上に、大いなる力をマリエッタはもつ。
どの国もマリエッタを欲する。そしてそれは現在も・・・・。


暗い洞窟の中で、一人の少女はもがいていた。
この世界の黒歴史の闇、そして死。それらの恐怖間に少女は声も出なかった。
暴れることの出来ぬよう、舌を噛んで死ねぬようにと、処置は厳重で、少女は死ぬことも自分の意思では行えない。
明るい世界から闇の世界へと導かれる我が身に、親は何と思うだろう。
死の間際に、少女は思った。
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悲鳴なんて、くれてやるものか。
命乞いなんて、してやるものか・・・。
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今、殺されようとしていると言うのに・・・少女は心の中で最後の最後まで強くそう思った。
しかし、そんな少女に一人の男は残酷な言葉を吐く。
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「お前は、死ぬのだ。まぁ、万が一成功しても、俺を殺すことなんてできないだろうな。生前の魂の記憶は全て忘れちまうだろうしよ。精々死なない事を祈っているんだな!」
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少女は、青ざめる。
私が、私と言うモノを忘れる。私の大切なモノの声も忘れる。
両親が泣きながら私を呼ぶとき、私はすでにこの世にいないか全てを忘れて人形のようになっている。
どちらもきっとつらいに違いない。いや、その事すらも思えない世界に行ってしまう。
少女は、震える唇で最後の言葉を吐いた。
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「私は、私はお前を許さない。きっと私は、お前に復讐する。記憶だって絶対に取り戻してみせるし、私は絶対にこの国の王を許さない。」
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男はせせら笑った。
そして少女がその男を見たのが、それで最後だった。


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