ですがスレ避難所 その324
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/sports/36360/1519735598/
263 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/05(月) 15:15:01 ID:ErUL32uk0
ちょいとジェットエンジン畑の人に質問。
ネ20にはじまる日本で開発した航空用タービンエンジンには
水噴射が採用された形跡がないように見えるんだけど
過給器で圧縮した空気の温度低下をなんでもかんでも水メタで済ませてた連中はどこに消えたの?
同じようにレシプロでは水メタ押しだったアメリカでは、
ニーンのライセンス取って作ったJ42で水噴射使ってオリジナルより15%出力上げた事例などがあるんで
余計に日本で試されてないっぽいのが不思議なんだけど。
https://arc.aiaa.org/doi/pdf/10.2514/4.867293
J42に関してはこれの203ページがソース。
264 名前:ひえん ◆K7fN1eJTyk[sage] 投稿日:2018/03/05(月) 18:16:58 ID:jczZE8nw0
>>263
量産性とか信頼性とかの兼ね合いでは
使ってない時は邪魔だし
300 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/06(火) 08:11:33 ID:53HGdGpk0
>>263
畑違いもさが、横レスするもさ。
レシプロの水噴射は、微量の水滴が気化しきらずに点火直前まで残るようにセッティングするもさ。
これがノッキングを抑止するもさ。
残り過ぎると燃焼を邪魔したりプラグを文字通り湿らせるもさね。
ジェットエンジンの水噴射は、場合によっては予熱してでも「噴射した全量が気化する」ようにセッティングするもさ。
気化しない水滴状態のまま燃焼室に入る水があってはいけないもさ。
そして、所要の噴射量の桁が違うもさ。
大容量の、正確に噴射量制御できる噴射系が無いとジェットエンジンの水噴射は行えないもさね。
また、燃焼室の後ろにタービン保護のために噴射する場合も同様もさ。
亜音速の燃焼ガスがタービンに当たるときに水滴が残っていると
あっというまにタービンが水滴の衝突衝撃と腐食効果で破損するもさ。
これにも大容量で正確な噴射系が不可欠もさ。というわけで
私見:「やりたかったけど、そんなポンプやノズルは日本国内では売っておらず、新規に作る時間も人手も無かった」
戦後、発電用や産業用の国産ガスタービンでは水噴射が大変に流行っているもさ。
今でもそうもさ。
日本ガスタービン学会誌の古い号を読むと
「ガスタービンの水噴射が実施できる喜び」を語った記事が多く見られるもさよ。
302 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/06(火) 08:17:09 ID:53HGdGpk0
>>300追記
歴史上初めて「プラスの出力を出す」ガスタービン(1903年)を実現した
ノルウェーのエーリング博士のエンジンは
空気圧縮機にもタービン前にも水噴射していたもさ。
出力はわずか10馬力程度の小さな実験機だったもさ。
水噴射を活用することで、エーリング博士は自費で用意できた安い鋼材でガスタービンを実現したもさ。
以下、何年も待ってもらっている架空戦記のネタバレ
「もし、エーリング博士に師事した日本人が居たら」
エーリングエンジンをスタートポイントとしてコツコツと拡大改良して、
「大きな水タンクを載せたジェット機」を作って、
そして「水事情の悪い戦地では使えない」と言う逸話を発生させた気がするもさ。
305 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/06(火) 10:04:03 ID:lkH1ZTOY0
>>300
そういえば、護衛艦向けに使えないかと川重の発電用ガスタービン調べてたら、
ガスタービンに水噴射だかするモデルを見つけたなぁ。
今採用されてるM7Aでもそれでパワーあげるモデルがあた。
護衛艦で真水消費とかやってられるかー!で読み飛ばしたが読み直すかな。
321 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/06(火) 17:45:20 ID:8K9/o1h20
>>300-302
回答ありがとうございます。
水噴射の概念はガスタービンの黎明期から存在したが、
日本ではそれを自力で実用レベルに引き上げることができなかった
(敗戦後は海外から実用レベルの装置が導入されたので自力開発する必要がなかった)、と理解していいんでしょうか。
水噴射は「圧縮で熱を持つ吸気の温度低下=燃焼前の混合気密度上昇を目的として、水の蒸発潜熱を中間冷却に利用する」ものだと思っていたので、
レシプロのシリンダー内まで気化していない水滴が残っていたというのは驚きです(燃焼効率むしろ悪化したのでは?)。
余技でシリンダー冷却も肩代わりさせていたって事ですかね。
日本でも発電用や産業用分野では多用されていたんですね。
航空用だけしか見ていませんでした。
https://engineering.purdue.edu/~propulsi/propulsion/jets/basics/water.html
ガスタービンへの水噴射が図式化されたものを見る限りでは、
戦前の日本のエンジン関係者はポンプやノズルの質というよりも
「外気(圧縮機前で噴射する場合)・及び圧縮後の高圧空気の圧をフィードバックして気化しきるよう水の噴射量を制御するメカニズム」
を開発または再現できなかったのではないかと推測しています。
328 名前:両棲装〇戦闘車太郎[sage] 投稿日:2018/03/06(火) 22:34:06 ID:exmo2MzI0
>>321
大モサのおやびんとか熱機関に詳しいニキとかが詳しい解説してくれるだろうけど、
座学レベルの熱力学の側面から軽く説明してみる。
水噴射のポイントは、冷却効果よりも/ではなく、
蒸発によって作動ガスの増量を、より小さな逆仕事で達成しうること。
レシプロエンジンでシリンダー内に着火の瞬間まで水滴が残存したり、
ガスタービンエンジンで圧縮機と燃焼器の間に水噴射装置を設置するのは、
出力を増加せしめる為の作動ガス量を増加させるのには、
圧縮機をシンプルに多く駆動するよりも水噴射ポンプの動力の方が小さな仕事で目的達成しうる。
非常にザックリした例えだが、機関出力10kWのガスタービン機関を過負荷運転させて20kWの出力を取り出したい、とする。
乱暴に、ガスタービン機関ではタービンが受ける仕事の2/3が圧縮機での逆仕事に消費されるらしいので、
このガスタービン機関ではタービン単体出力30kWで圧縮機逆仕事20kWとすると、
20kWの機関出力を得るにはタービン単体出力60kWで圧縮機逆仕事40kWになる。
一方、蒸気機関では給水ポンプによる逆仕事はタービン出力の2%を割り込むらしいので、
水噴射ポンプ0.2kWでタービン単体出力10kWを出力しうることになる。
コレを詰めて計算すると、水噴射ガスタービン機関が20kWを取り出す運転条件では、
圧縮機逆仕事20kWで給水≒水噴射ポンプ逆仕事0.2041kW、
タービン単体出力40.2041kWという計算結果が得られ、
逆仕事で見れば19.7959kWも得していることになる。
333 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/06(火) 23:56:16 ID:D7O9jCCg0
>>328
悪文だなあ・・・。
ガスタービンの出力の約2/3が圧縮機で消費される。
機関出力10kWの出力のガスタービンの場合、タービン単体出力は30kWで20kWが圧縮機で消費される。
このガスタービン機関に水噴射機構をとりつけると・・・。
蒸気機関の給水ポンプがタービン出力の2%ですむから10kWの2%で0.2kW。
水噴射ガスタービンが圧縮機20kWと水ポンプ0.2kWで、タービン単体出力40.2kWを達成できるから
水噴射機構がない場合、機関出力20kWを取り出すためにはタービン単体出力60kWが必要だから
水噴射機構により19.8kWも得をしたことになる。
334 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/07(水) 00:00:04 ID:.SBWiTsY0
ガスタービンの出力の約2/3が圧縮機で消費される。
機関出力10kWの出力のガスタービンの場合、タービン単体出力は30kWで20kWが圧縮機で消費される。
このガスタービン機関に水噴射機構をとりつけると・・・。
蒸気機関の給水ポンプがタービン出力の2%ですむから水噴射機構に必要な出力は10kWの2%で0.2kW
と仮定する。
水噴射ガスタービンが圧縮機20kWと水ポンプ0.2kWで、タービン単体出力40.2kWを達成できる。
水噴射機構がない場合、機関出力20kWを取り出すためにはタービン単体出力60kWが必要になる。
水噴射機構により19.8kWも得をしたことになる。
ガスタービン用水噴射機構の給水量って、蒸気機関の給水量よりはるかに少ないと思うんだが・・・。
359 名前:両棲装〇戦闘車太郎[sage] 投稿日:2018/03/07(水) 22:44:44 ID:k3Xs3Z/g0
>>333-334
すげー、読み取れてるじゃん。
ガスタービン用水噴射機構の給水量って、蒸気機関の給水量よりはるかに少ない
検算しやすいように出力への寄与度を1:1にしただけで、
もう少しリアルな数字にしてもソレはソレで算出できるけどね。
338 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/07(水) 09:12:00 ID:dlXAVtdA0
>>328
http://horsesmouth.typepad.com/hm/2017/05/wet-takeoff.html
引用元はP&Wが出した本らしいですが、
水噴射によって燃焼器前の空気が冷却されることで(燃焼室容積あたりの酸素密度が上がるため?)
「より多くの燃料を燃やせる」ので推力が上昇する、と説明しているように見えるのですが。
359 名前:両棲装〇戦闘車太郎[sage] 投稿日:2018/03/07(水) 22:44:44 ID:k3Xs3Z/g0
>>338
うーん、燃焼器の耐熱温度限界が決まってるのに対して、水噴射によって燃焼器前空気温度を下げることで
耐熱温度限界が遠くなって燃料を余計に噴いても運転限界が来ないという機序についての説明だろうか?
391 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:03:06 ID:v.6iROP60
>>321
「圧縮で熱を持つ吸気の温度低下=燃焼前の混合気密度上昇を目的として、水の蒸発潜熱を中間冷却に利用する」
ガスタービンへの水噴射の意味は時代や用途によっても異なるもさ、要注意もさね。
たとえば黎明期のエーリングのエンジンは、水噴射によって「空気圧縮機の効率を上げていた」もさ。
これはどういう意味か、AAを作りたいもさが文章で説明するもさ。申し訳ないもさ。
エーリング博士は空気圧縮機開発の大権威として当時すでに高名だったもさが、
それでも効率50%程度の空気圧縮機を作るのがやっとだったもさ。
これでは、組み合わせる燃焼器やタービンの効率が仮に100%であっても、出力はゼロもさ。
タービン出力が全て圧縮機の駆動に消費されてしまうもさね。
19世紀初頭にイギリスのバーバーがガスタービンの基本特許をとってからおよそ100年間、
ガスタービンと言うものは「効率の良い圧縮機がないから」実現できなかったもさ。
通説書の多くが「高温に耐えるタービンが無かったから」と書いているもさが、間違いもさ。
さて、空気圧縮機に水噴射して効率改善とはどういうことか説明してみるもさね。
続くもさ。
394 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:12:42 ID:v.6iROP60
話を単純にするために、空気圧縮機の効率を50%とするもさ。
空気圧縮機を駆動するために消費されたエネルギーの半分だけが空気の圧縮に用いられて、
残り50%は熱に変わって逃げるものとするもさね。
さて、ここで空気圧縮機の外側に鍋を被せて、お湯を沸かしてタービンを回すもさ。
このタービン出力は空気圧縮機のロスを回収したエネルギーもさ。
このエネルギーを空気圧縮機の駆動系に足す工夫があるものとするもさ。
この蒸気タービンと駆動伝達系の効率が80%と仮定するもさ。
すると、空気圧縮機はロスした50%のエネルギーのうち40ポイントを再度使えるもさね。
戻ってきた40ポイントのうち、空気圧縮機はその半分を有効利用するもさね。
20ポイントを足して、効率70%になるもさ。
ここでもまだ損失があるもさが、これも回収できればさらに空気圧縮機の効率が上がるもさ。
実際のエーリングタービンでは圧縮機の外に鍋を被せたり、別途蒸気タービンを用意したりはしなかったもさ。
圧縮機の内部に水を適量噴射して、圧縮機内部で生じる損失熱で水を沸騰させて圧力を上げたもさ。
この蒸気圧で直に空気の圧力を上げたもさ
さて、水を用いて空気圧縮の効率を上げるたとえ話をもっとシンプルにしてみるもさね。
頑丈な密閉容器に水と空気を入れて外部から熱を与えると、容器の内圧は上がるもさね。
蒸気が発生した分、空気はそれに押されて圧縮されるもさ。
この考え方を空気圧縮機に適用したものがエーリングエンジンもさ。
仮に空気圧縮機の効率がゼロ、つまりは空気圧縮機が
ただ無駄に空気をかき回して加熱するだけの装置であったとしても、
水噴射を用いて空気を圧縮できるもさ。
最初のエーリングエンジンは、水噴射無しでの効率が50%しかない圧縮機を6段直列に接続していたもさ。
これだけだと、空気圧縮効率は1.5%と言う惨めなことになるもさね。
しかし博士は水噴射を用いて空気圧縮機の効率を劇的に向上させ、80%程度を確保したもさ。
393 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:08:40 ID:TxU1VKIg0
>>391
ガスタービンと言うものは「効率の良い圧縮機がないから」実現できなかったもさ。
通説書の多くが「高温に耐えるタービンが無かったから」と書いているもさが、間違いもさ。
この視点なかった……
もしかしてそれで遠心式圧縮機の方が初期ジェットエンジンの試作で多いのかな?
少ない段数でなら遠心式の方が効率がいいから。
395 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:20:38 ID:v.6iROP60
>>393
正解もさ。
少ない段数と小さな流量では遠心式の方が効率が良いもさね。
396 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:20:59 ID:TxU1VKIg0
そっか、空気圧縮すりゃ熱が生まれるから、それに水吹き込んで沸騰膨張させ圧を高めるのか。
圧縮機に入る前の空気を冷却する最近の研究に頭が囚われすぎてたな。
413 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/09(金) 03:31:16 ID:3nNvLeT20
>>391
ガスタービンの圧縮-燃焼-膨張-排気プロセスを通過する空気流量の絶対値が小さく、
同時に圧縮効率が低いせいでシステム全体の出力に対して熱(損失)の割合が大きかった場合に限り
「(圧縮で発生した)熱エネルギーの水噴射による回収分」がエンジン出力の飛躍的な伸びしろになった、という理解でいいでしょうか。
圧縮機が空気を圧縮する際に熱を発生させる、という点は頭に入れていましたが
そもそもの圧縮効率が低かった(ので、効率低下分を熱として回収できる)という視点がありませんでした。
その観点から見たJ42とJ48の水噴射による推力増強は、
「遠心式単段圧縮機のニーンが大元なために、軍用エンジンに要求される頑丈さ単純さを保持しつつ軽量なまま(遠心式単段の弱点である)圧縮効率を上げる形にできた」
というピンポイントすぎる事例なんですね……。
J48のアフターバーナー搭載型の推力を見るに、
この時点で既に水噴射よりも空気流量増大に連動するアフターバーナーの方が推力が高かったようですが
水噴射型J48はアフターバーナー型よりもエンジン重量が軽く全長が短いので
「限られた面積で離着艦する海軍機用」としてF9Fシリーズに採用された経緯があり
架空戦記ネタとしてはそのへんが攻めどころでしょうかねえ。
375 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 03:21:18 ID:KM45bM9U0
「ターボジェットエンジン圧縮機入り口に冷却材突っ込んでみる試験」
https://ntrs.nasa.gov/search.jsp?R=19930085811
NASA(NACA)がなんか論文出してないかなーと掘ってみたらあった。
秒間2ポンドの水突っ込んだら推力35.8%アップしましたとか言ってる。
1947年8月付けで、使用機材はI-16とあるから旧式化したJ31。
アフターバーナーに関する論文をNACAが提出したのが47年1月だから半年ちょっと遅れてるが
両方とも並行して数年以内に実用化してるアメリカというかP&Wはなんなんだあの企業……。
378 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 07:48:00 ID:T2rZc15g0
じゃあジェットエンジンって雨を吸い込むと出力が上がるの?
なんか下がると思ってた
379 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 08:00:18 ID:KM45bM9U0
https://www.youtube.com/watch?v=_PR0Ka_J2P4
失火しなけりゃ実際上がって離着陸時の出力調整が大変になるんで、
現行のエンジンはこういう「水その他想定される気象条件で吸入されるであろうものを突っ込むテスト」をやってるそうな。
通販番組のノリで水とか氷突っ込むのは見てて怖いが耐えるもんだ。
397 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:28:46 ID:v.6iROP60
>>378
初期の(空気圧縮機の効率が悪かった)ジェットエンジンは
適量の雨を吸うと出力が劇的に上がったもさ。
つまりは熱として捨ててしまうエネルギーが多かった時代の話もさ。
今日のジェットエンジンの圧縮機は90%超えが当たり前で、
水噴射による熱回収で出力を上げようとしても10%未満の損失分の一部を回収できるだけもさ。
そして欲張って水を過剰に噴射すると、水蒸気にならなかった水が
液滴のまま燃焼器に入り込んで大変なことになるもさ。
だから、今では「圧縮機に入る前に、空気を水で冷やして収縮させる」ことで
「体積流量はそのまま、質量流量を増大」させることで出力を稼ぐもさ。
産業用ガスタービンや発電用ガスタービンのように吸わせる空気の温度や湿度を管理できるものでは、
今でも空気圧縮機内部に水噴射するものがあるもさ。
399 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 18:37:37 ID:v.6iROP60
ガスタービンエンジンの特許取得者バーバーは効率が良い速度型空気圧縮機を得られず、
レシプロ式圧縮機とタービンの組み合わせで試作機を作ったもさ。
外部スターターからの動力供給を止めると止まってしまったもさね。
その後、ブレイトンと言う人物が「燃焼ガスからエネルギーを取り出す装置もレシプロにしてみる」ことを思いついて、運転に成功したもさ。
しかしこれは圧縮機と膨張機を別体にしたレシプロエンジンに他ならないもさね。
ともあれ、ブレイトンの工夫によってガスタービンの燃焼サイクルを実際に解析できるようになったもさ。
130年以上が過ぎた今も、ガスタービンの燃焼サイクルを「ブレイトンサイクル」と呼ぶのはこれが理由もさ。
さて、ブレイトンが示した結果と論文によって次のステップへと進んだもさ。
「レシプロ式並みに効率が高い速度形圧縮機と、同じく効率の良いタービン」
この組み合わせを実現すべく、各国で工夫が行われたもさ。
今日、史上初のガスタービンを実現した人物はエーリングであることが周知されているもさ。
しかしエーリングはスカンジナビア語でしか論文を書かなかったもさね。
ずっと後にホイットルと言うイギリス人がノルウェーを訪れ、エーリングの業績を見て
「これを事前に知っていれば、ジェット機の実現を10年くらい早めえただろう」と書いたもさ。
408 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/08(木) 23:00:33 ID:TxU1VKIg0
>>399
うおーう。これは確かに架空戦記ものと相性のいい、「if」を考えたくなる話ですな……
B-29を迎撃に発進する水噴射式ジェットエンジン積んだ迎撃戦闘機を考えたくなる……
706 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 13:13:15 ID:xRE/thfg0
https://www.flightglobal.com/FlightPDFArchive/1954/1954%20-%202509.PDF
https://www.flightglobal.com/FlightPDFArchive/1954/1954%20-%200990.PDF
ニーン102の圧力比データとして4.5:1というのをやっと発見。(※現在リンク切れ)
Jumo004が総圧力比3.14:1、ネ20が3.45:1とされてるから、初期ジェットエンジンの圧縮機は
「理論上高い圧力比を出せるはずの軸流式多段よりも、高効率のディフューザーを実装した遠心式単段の方が圧縮能力が高い場合があった」
ということになるんかな。
おそらく航空用として軽量化する兼ね合いとか素材技術、設計が未発達などの条件が絡むんだろうけど、
日独それぞれで放棄した遠心式圧縮機をものにしてのけたフッカーさん凄えわ。(ホイットルも自分で作ってたやつは結局理屈倒れだった)
ただし、フッカーさんはマーリン用過給器設計で
航空用の圧縮機に関して鍛えられていた無類の経験持ちなので(リアルチート)
架空戦記ネタとして遠心式ターボジェット使うなら
「フッカーさん級に熟達した流体専門家で、なおかつ航空機用装備の軽量化に慣れてるエンジニア」みたいな存在を生やさなきゃならんだろうなあ。
710 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 14:20:39 ID:NHsxxxeA0
>>706
遠心式は回転数が高いと言う問題もあるもさ。
なお、ニーンの40年前に設計されたエーリングエンジンの圧力比は「4」もさ。
問題はあまりにもエーリングの知名度が低いので
「エーリングに師事してました」と言う人物を生やすだけではネタとして弱過ぎるもさね。
712 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 16:48:37 ID:xRE/thfg0
>>710
http://4.bp.blogspot.com/-OXA9vmTXgWw/Tv7dum4xsFI/AAAAAAAABYQ/wML9JxPXWwk/s1600/11.jpg
https://www.intechopen.com/source/html/48946/media/fig10.png
軸流だと動翼(速度増)・静翼(速度減・圧力増)を同軸で重ねまくってやれば
回転数が低くても圧力比を高められるものの、
遠心式はインペラの回転で遠心方向に空気を送り出す速度を稼ぐので
回転数=圧縮能力直結なのがどうにもならんですな。
http://www.imeche.org/docs/default-source/presidents-choice/jc12_1.pdf
資料を見る限りホイットルさん試作機でテスト時に17500回転とかぶん回してたようで、そりゃタービンブレードも飛ぶわなと。
713 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 17:28:27 ID:xRE/thfg0
https://digitaltmuseum.no/011014260024/aegidius-ellings-gassturbin-prinsippskisse-av-gassturbin-i-og-ii-utbygg
https://digitaltmuseum.no/011014273586/aegidius-ellings-gassturbinoppstilling-fra-1903-slik-den-var-montert-i
あとエーリング先生のガスタービン模式図と実機写真発見しましたわ。
……これ、本当に1903年に作られたブツなので?
https://digitaltmuseum.no/011014273589/aegidius-ellings-gassturbin-fra-1903-rotor-med-turbinhjul-og-6-kompressorhjul
撮影用にケーシングをばらしたと思しきもの。
後のでかい円柱が燃焼器っぽいんだが、なんでこんなにでかいのかは不明。
734 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 22:08:51 ID:K97R7OEw0
>>713
モサも最初にgoogle検索で見つけたときは
なんでこの検索ワードでこんな後の時代のエンジンが引っかかるもさ?」と思ったもさ。
戦後、ホイットルがエーリングの業績を見て
「知っていればジェットエンジンの実現は年単位で早くなったはずだ」
と書いたのはお世辞ではないもさね。
714 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 17:56:52 ID:J3jpOkBw0
>>713
一瞬、クローズドサイクルガスタービンかとおもた。
海自も昔研究して投げ捨てたやつ。
何というか、こう試行錯誤が見えて面白いな……
727 名前:両棲装〇戦闘車太郎[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 20:49:55 ID:xWLzzmog0
>>713
4段圧縮で更に再生器まで付いてるとか、本当にオーパーツめいた。
730 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 21:35:32 ID:xRE/thfg0
https://digitaltmuseum.no/011014260005/del-av-ellings-gassturbin
タービン部分も複数作ったみたいだが、このブレードと一対一で開いてる穴はなんぞ。
まさかブレード一枚一枚の根にこの横穴でピンかネジ通して固定してるとかじゃないよな……。
735 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 22:11:34 ID:K97R7OEw0
>>730
ドラバル式のはめ込みブレードもさよ。
これはエーリングの発明ではなく、フランスのドラバルの発明をそのままもさね。
ホイットルがもっとややこしい形状の穴を開けてはめ込む方式を発明して、
現在のガスタービンではホイットル方式が主流もさ。
737 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/15(木) 23:20:50 ID:xRE/thfg0
>>735
http://3.bp.blogspot.com/-Q9-JRS9hbJ0/Twk0mT8JMBI/AAAAAAAABfs/ECpm-ghJVcE/s1600/www4.jpg
この右上のやつですか。
隙間や段差が見えないぐらいぴっちり磨き込まれてるの狂気の沙汰なんですが。
738 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/16(金) 00:00:15 ID:uEPKr.LY0
https://digitaltmuseum.no/011024250283/gassturbin
模型のタービンもたぶんドラバルと同じ作り。
んで模式図と>720のタービン及び「タービンを収めるケースの外周」見て驚愕。
もしかしてこの1903年に作られたやつに限っては、ドラバルの衝動タービンではなく「変則構成のラジアルタービン」なのでは?
なんかケースの外周にしっかりノズルが見えてるんですが。
757 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/16(金) 16:54:05 ID:jhCVpLus0
>>738
ご指摘どおり、エーリングの1903年のエンジンはラジアルタービンもさ。
ご本人が「タービンの耐熱性の制約からラジアルにした」と書いているものがあったはずもさ。
ここで面倒になるのは、G.ドラバルは蒸気タービンに関して数々の発明をしているもさね。
主なところだけでもこんな感じもさね。
・ドラバル式衝動軸流タービン
・ドラバル式のタービンブレードとタービンディスクの結合機構
・ドラバル式ノズル
・ドラバル式フレキシブル高回転シャフト支持機構
そんなわけで「ドラバル式の組み立て方式によるラジアルタービン」とか
「組み立てはドラバルだがタービンの動作原理はパーソンズ」なんてものがあって話をややこしくしているもさね。
757 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/16(金) 16:54:05 ID:jhCVpLus0
>>713
でかい円柱が燃焼器っぽいんだが、なんでこんなにでかいのか
初期のエーリングエンジンの燃焼器が大きな断面積を持つのは、今日の産業用ガスタービンと同じ理由もさ。
燃焼器内部の圧縮空気の流れ速度を遅くして、燃焼の確実性を得ているもさね。
当時においてエーリングが使えた燃料と噴射装置では、
後の時代のようなコンパクトな高速流燃焼器は使えなかったもさ。
759 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/16(金) 17:29:53 ID:jhCVpLus0
>>757追記
ガスタービン産業(ジェットエンジン含む)の成長には、エーリングはほとんど貢献していないもさ。
1970年代にスミソニアンが「知られざる先駆者エーリング」と言う特別展示を行うまでは、
エーリングの母国ノルウェーでさえ知名度低かったもさ。
1903年にエーリングが運転に成功したとき、ストドラ御大が名著「スチームタービン」に
「近年、ガスタービンの運転成功例があると聞く」と付け足している程度もさ。
エーリングの技術の継承者は今は無きコンズベルグ社と、元コンズベルグの技術者が立ち上げた会社くらいもさね。
一方、ドラバルはガスタービンを作ることは無かったもさが、
ドラバルの存在抜きにしてガスタービン技術を語ることは出来ないもさ。
ストドラ御大については、蒸気タービンでの偉大な業績だけではなく
ガスタービンにおいても文字通りの遺産を残しているもさね。
世界最初の実用ガスタービンはスイスのヌーシャテル発電所もさが、
これはストドラ御大の監修でブラウンボベリが作ったもさ。
今世紀初頭まで稼動していたもさ、今では世界技術遺産もさ。
なお、ヌーシャテル発電所を見学した最初の日本人は日本海軍空技廠の種子島中佐(当時)もさ。
771 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/16(金) 21:22:07 ID:uEPKr.LY0
>>757
759
なるほどドラバル氏凄い人だったんですね。今までまるっきり知りませんでした。
英Wikiとか読んだり画像キャプションを機械翻訳した限りでは、
エーリングさんは「遠心式圧縮機(ポンプ)」の特許を取ったり
会社を興したりしていたようで、タービン屋というより圧縮機畑の人だったのかなと。
785 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 12:28:12 ID:PeGM6pPQ0
>>771
ノルウェーの産業界でも、
「空気圧縮機の天才エーリングが自宅でヘンなもの作ってる」認識だった様子もさね。
ひとつには、エーリングは論文をスカンジナビア語でしか書いていないもさね。
エーリング博士ご本人は「飛行機の次世代エンジンの準備は整った」と何度か書いているもさが、
ノルウェーの航空産業は相手してないもさ。
もしエーリングが論文を英語かドイツ語で書いていれば、ホイットルなりオハインなりが参考にして、
ジェット機の出現は史実よりも早まったかもしれないもさ。
少なくとも、1970年代まで「知る人ぞ知る」扱いに留まった史実とはかなり違ったと思うもさね。
787 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 12:35:57 ID:C2pVxpAY0
>>785
日本に持ってきたらどうなったかは知りたい
790 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 12:48:32 ID:PeGM6pPQ0
>エーリング論文が日本に入っていた場合
>>787
>>789
「灯油と水で高速飛行が出来る」に飛びついて国費とリソースを浪費するか、
後世に架空戦記ネタを増やすかだと思うもさ。
たぶん、空技廠種子島グループが取り組んだものが
日本のガスタービンの始祖であると言う史実は変わらないと思うもさね
794 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 13:31:23 ID:hJGUdmh20
ニーンに至ったフッカーは
「航空機用過給器の設計に関与できた」
「かつそれがマーリンだった」
という文句のつけ難い実績を持てるルートを進んだので
仮に日本でやるなら三菱中島川崎その他エンジンメーカーで
「あいつの設計した過給器付けるとエンジン馬力超上がる」という評価を持たせ、
長距離爆撃機厨メリケンの後追いで意味もわからず排気タービン排気タービンわめく発注者を計算で黙らせ
(フッカーさんタービンで推力式排気管を捨てた場合の得失を出して二段過給+冷却器の構成を通したらしい)、
どんな理由で日本にジェットエンジンが必要なのか、という理屈を立てた上で
そのエンジニアが全面的に関与する流れを作るとかかなあ。
結局タービンまわりに耐熱金属は要るし、エンジン畑だけでなく機体畑にも牽引レシプロとは全く異なる設計を要求するし
よっぽど巧妙なエンジン配置をしないと燃料タンクをうまいこと積めないので
航続距離短いって感じになるだろうから架空ネタでも難易度高そうだ。
798 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 14:41:48 ID:hJGUdmh20
初期ジェットは重量物であるエンジンを牽引レシプロとは逆に後方寄りに配置しなければならない方針転換と
変動するが故に重心位置に置かなければならない「燃料タンク配置」で苦労してて、特に単発機の内部は魑魅魍魎。
面白いんだが日本が経験してない分野だから資料あんまねえのよなこのへん。
https://twitter.com/uchujin17/status/625933762057105408
http://www.geocities.jp/jp_j7w1_shinden/date/Structure1.jpg
震電の先尾翼配置は燃料タンクの置き場からすると論外も論外、
重心が主翼よりずっと前にある+後退翼のせいで主翼内に燃料タンクを置くお手軽容積アップが使えない。
無理に燃料タンク追加するならアタッカーみたいに腹を膨れさせるしかない。
https://static.rcgroups.net/forums/attachments/3/9/4/8/1/5/a5399816-237-Vampire%20cutaway.jpg
ヴァンパイアのような双ブームは「燃料タンクの置き場がほぼ主翼しかない」ので厚翼化して速度出しづらい。
シーホークは二股ノズルの後にタンク置いて「エンジンを前後の燃料タンクで挟み込む」曲芸じみたことやってるが
これまたフッカーさんの関わった噴流を二つに分割しても推進効率が落ちないパイプ設計ノウハウ(と耐熱金属)が要るし。
799 名前:TFR ◆IBMOSAtBIg[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 15:39:46 ID:PeGM6pPQ0
>>798
「ジェット機はインテークの設計次第では、従来の経験式からは許容しがたい太い胴体にしつつも空気抵抗を減らせる」ことに気付けば
F-86やJ29、MiG-15みたいな設計が出来るもさね。
ノースアメリカンはこの知見を得た上でFJ-1を作ってみたら大失敗で、
失敗を踏まえてF-86を実現したもさ。
F-86の胴体断面積は「雷電」よりも大きいもさね。でも高性能もさ。
ミグがMiG-15を実現するに至った知見の獲得過程は未だに謎の部分があるもさ。
このこと(設計次第で太い胴体を使える)に最初に気づいたはずのハインケルとグロスターが、
ノースアメリカンやミグやサーブと同じことが出来なかったのは何故なのかは知らないもさ。
808 名前:避難所の名無し三等兵[sage] 投稿日:2018/03/17(土) 17:19:25 ID:hJGUdmh20
>>799
「胴体を二階建てにして要素を縦に並べることで前後長を縮める(重心計算が楽になるはず)」手法を取るかどうか、では。
ソ連はYak-15がこの身も蓋もない二階建てをやっているので、
もしかしたら正面投影面積がちょっと大きくなっても支障がないのに気付いていたのかも。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d1/North_American_FJ-1_Fury_line_drawings.PNG
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/74/North_American_FJ-3_Fury_line_drawings.png
内部配置を比較すると、FJ-1では二階建て構造を利用してできるだけ燃料タンクを前進させようとしているっぽいのが
後退翼採用後は主翼タンクも含めてやや後ろ寄りになっている(空力中心が後退したのでタンク配置自由度が上がった?)感が。
http://www.geocities.ws/peter_jaye/images/f9f_p31_gencutaway_96resiz.jpg
一方FJ-1と競合したF9Fは二階建てにしないかわりに
「胴体直径いっぱいの馬鹿でかい燃料タンクを主翼ちょっと前に置く」という身も蓋もない配置。
こちらは主翼根元にインテーク開口しているから可能な構成だったりするわけですが。