57 名前: 1/6 投稿日: 2003/03/28(金) 02:33 [ wcVG3eEU ] ≪幽霊などいない!≫ 薄暗い研究室。 よくわからないたくさんの機材。 その機材から伸びるたくさんのアンテナのような物。 そして、そこに響き渡るチビギコの悲鳴。 「ヒギャカゴコッ・・・カコッ・・・コッ・・・。」 ピーーーー。 心電図の空しい発信音がチビギコの悲鳴の変わりに鳴き始める。 研究室の真ん中においてあるテーブルの上には、 先ほどまで悲鳴を出していたと思われるチビギコ・・・ いや、その側においてある毛の山からチビフサだということがわかるものがおいてある。 四肢と頭は机に固定され、抵抗することはできない。 既に、その体は血で真っ赤に染まっていた。 脚は、肉を乱暴に削がれほぼ骨だけになり。 腹部は大きく切り開かれ、中の内臓が切り刻まれていた。 胸は、酷く殴られたのだろうか。 浅黒く変色し、折れた肋骨が数箇所で皮膚を突き破っていた。 だがそれは右胸だけで、 左胸は殆ど殴られてはいなかった。 理由としては、その胸につけている心電図用の電極だろうか。 腕は、何かの薬品を掛けられたのか酷く焼け爛れ。 首にはメスが所々突き刺さっている。 口の中は血で溢れ、歯は全部抜かれていた。 さらに、歯茎だけとなった口の中には、 穿られたであろう白い神経が血で歯茎にべたぁっ、とくっ付いていた。 その歯茎には爪楊枝が何本か刺さっていた。 目は抉り出され、テーブルの上に適当に置かれていた。 そして何よりそのチビフサの頭にはたくさんの電極が取り付けられていた。 先ほどまでチビフサを虐待していたと思われる、 白衣を真っ赤にした50代と思われる眼鏡をかけた研究員は、 小走りにテーブルの横を通り、部屋の奥のPCを覗き込んだ。 適当にマウスをいじり、いろんな画面を開く。 どれも似たようなグラフに見える。 「やっぱりだ。・・・私の理論に間違いは無かった。」 彼は、にやりと笑っていた。 58 名前: 2/6 投稿日: 2003/03/28(金) 02:34 [ wcVG3eEU ] 彼は子供のころから「怪談」が好きだった。 たくさんの幽霊話を聞いていた。 だが、成長し、厨房にもなると幽霊の存在に疑問を持ち始めた。 彼は「科学」も好きだった。 幽霊について科学的実証できるかを考えながら理系の道に進み始めた。 「暗示」、「催眠」、「プラズマ」・・・ さまざまな仮説を打ち立てて考えていった。 大学に入り、実証のためにはどのような知識が必要かを考え、 その知識を高めていった。 そのまま大学院に入り、卒業、もっと深く追求するために自分の研究所を設立した。 だが、それで食っていけるわけも無く、すぐに借金まみれになった。 自殺も考えたとき、Y田R科雄執筆のある本に目が留まった。 「そうだ、自分もこの知識を生かして本を書こう。」 そう考え、日本の怪奇現象を纏めた本や、心霊レポートなどの本を執筆した。 非常に高い知識のかいあって、その手の人ではかなり知られるようになり、 研究費もまかなうことができた。 さらに、執筆をしているときひらめいたのである。 心霊スポットではカメラなどの精密機械が正常に動かないことが多い。 方位磁針と言った磁石なども異常をきたす。 このことが何を意味するか、 異常な量の電磁波を発生しているのだ。 この話と少し変わるが、 生物は頭(脳)から微弱な電磁波を出している。 なぜかというと、脳の神経が情報を伝えるとき、電流を使用しているからだ。 電気が流れれば磁界も発生し、電磁波も生まれる。 そして、その電磁波はが、何らかの形で増幅し、 さらに、その電磁波を感じ取ることができれば幽霊は実在することになる。 彼のは理論こうだ。 「生物が死亡するとき、痛みを感じないようにするための快楽物質や、 絶望的な状態でも生を維持するためにするために、さまざまな情報伝達物質が脳内で放出され、 その物質も増えれば脳内で流れる電流の量も増えるため、通常では考えられない量の電磁波を出す。 その大量の電磁波を音声、映像などに感じ取ることによって幽霊を見ることができるのである。 幽霊の遭遇が夜の方が多いのは、昼では視覚からの情報が非常に多いが、 夜にはそれが少なくなるため、その分を補うから。 そして、たまにその感じ取る能力が強い人がいるが、 これが霊感になるのだ。」 どうだろうか、やや日本語が間違ってはいるうえ、 支離滅裂な気がするが、それなりに筋は通ってはいないだろうか。 59 名前: 2/6 投稿日: 2003/03/28(金) 02:34 [ wcVG3eEU ] さて、話を戻そう。 つまりだ、彼がやっていたチビフサへの残虐行為は、 情報伝達物質を大量に放出させ、異常な量の電磁波が発生するかと言う実験だった。 そして、実験は成功したようだ。 どの機材からも大量の電磁波を観測した。 満足そうな表情でPCの横にあるマグカップを手に取り、コーヒーを啜った。 既に冷めてはいたが、今の彼はどうでも良かった。 ふと、一息ついたとき、後ろから生物の気配がした。 ・・・ 彼は今言い知れないほどの恐怖を感じた。 彼はたくさんの心霊スポットへ出向き、 たくさんの話を聞き、 たくさんの話を書いた。 だが、心霊現象にあうことは無かった。 だからこそ、電磁波と言う説を唱えることができたのだが。 それ故に、霊の恐怖を知ることは無かった。 冷や汗がほほをなぞる。 幽霊などいない。 現に、ついさっき幽霊は電磁波であると言うことが証明できたでは無いか。 頭の中で冷静になるために思考をめぐらすものの、 この恐怖心を拭うことはできなかった。 むしろ、恐怖が増徴していた。 中に着ているシャツが汗でぬれるのがわかった。 自分の心音が大きく聞こえた。 後ろを確認したい。 好奇心はそう騒いでいるが、恐怖心が上回り、振り向くことはできない。 既に時間は午前2時を過ぎ、職員はいない。 だえも助けてくれない。 彼は、マグカップを持った姿勢のまま動けないでいた。 永遠とも思えるような時間をすごしただろうか。 とうとう好奇心が上回り、 彼は思いっきり振り返った。 60 名前: 上が3/6、これが4/6 投稿日: 2003/03/28(金) 02:35 [ wcVG3eEU ] チビフサがいた。 先ほどまで虐待していた赤茶色の毛色を持つチビフサが宙に浮いていた。 心なしか色が薄いように見える。 最大の特徴として、脚の部分が霧のようなもので隠れていた。 そう、紛れも無く「幽霊」だ。 だが、何所と無く迫力に欠ける。 そのせいか、彼は恐怖を感じなかった。 その代わり、 怒りを感じた。 なぜ自分がこんなののためにここまで怯えなくてはいけなかったのか。 彼は、殴りたいと言う衝動を抑えることができず、つい手が出てしまった。 彼の理論では、これは周囲の電磁波が作り出した幻覚であり、実体の無い「はず」だった。 拳は当たった。 そのままチビフサは非常に簡単に吹き飛び、部屋の反対側の壁にでだっ、と当たった。 あまりにも手ごたえが軽かったため、こぶしの勢いがあまり、彼は前につんのめった。 体勢を整えると、彼はその拳を見ずに入られなかった。 暫くの間、拳に見入っていたが、突然チビフサが上昇し始めた。 成仏だろうか。 「そうはさせないぞ。」 彼はそう呟くと、机の上においてあったチビフサ(体)の固定を外し、 そのまま乱暴に床に落とした。 べチャッ、と言う音がした。 床は後で掃除すればいい、 だが、このチビフサには次が無いかもしれない。 机を開けると今度はチビフサの背中の毛を鷲づかみにし、 そのまま机の上に押し倒した。 血で汚れていたが構わない。 そのまま暴れるチビフサを机に固定した。 61 名前: 5/6 投稿日: 2003/03/28(金) 02:36 [ wcVG3eEU ] まずは当然のように電極を取り付け、心拍、脳波測定。 だが、心電図も脳波測定機器のグラフも棒を表示するだけだった。 あまりにも不可解だ。 心電図はともかく、脳波まで無いと言うことはどういうことか。 故障かと思ったが、つい先ほどまで正常に動いていたところからも故障ではない。 暫し考えた後、脈絡も無く問題をチビフサに振ってみることにした。 「2+5=?」 「7」 怯えながらではあるが、チビフサは正解を答えた。 脳は動いていないのに考えることができる。これ如何に。 そうか、ここには脳が無くて、 足元に転がっているチビフサの死体に脳があるんだ。 ・・・ 納得できるか。 頭の中で漫才をしながらも思考をめぐらす。 結論は・・・でない。 まあ、後々考えよう。 今は、目先の疑問を。 と言う結果が出て、彼は目先の疑問。 「足はどうなっているのかについて考えてみた」 とりあえず手を突っ込んでみる。 脚らしき物には当たらない。 それどころか机すらも。 上90度から手を突っ込んでいるから、本当ならすぐに机にぶつかるはずだ。 駄目だと判断した彼は触診をあきらめ、別の方法を試してみた。 「水をぶっ掛ける」 そこで、バケツいっぱいの水をチビフサの下半身に掛けてみた。 一瞬ではあるが、足のようなものが見えた。 だがすぐに靄が湧き出し脚は隠れてしまった。 このことから考察するに、 「足は紛れも無く存在する。だが周囲に靄が発生して目視確認は難しい。 さらに、この靄が空間を圧縮、拡大し靄の中に手を入れても足には当たらないため触診も難しい。 簡単に言えば、あの靄の中はどら○もんのポケットの中身と同じである。」 と判断した。 ふう、これで胸のつっかえが取れたよ。 62 名前: 6/6 投稿日: 2003/03/28(金) 02:38 [ wcVG3eEU ] その後、彼はこのチビフサのことをよりよく知るために生体解剖をした。 循環器が停止しているため消化器系も機能していなかった。 と言うより、全ての器官が機能していなかった。 あれ~? 肺が機能していないならなんで声がでるのかなぁ~? これは疑問の一例である。 多数の疑問により、ちょっと精神をやられたようだ。 なんでぇ~? なんでぇ~? なんでじゃぁぁぁぁ! そして、またもやつい手が出てしまった。 頭部の固定器具はチビギコ用である。 当然大して衝撃に強いわけではない。 よって、 チビフサの頭は見事にちぎれ、 飛び出した目を、折れた歯を、口から突き出た舌を、割れた頭からはみ出す脳を、 そして脳を固定していた固定器具と共にチビギコの頭は飛んだ。 「ぎゃあふさたんのくびが。」 そんな声が聞こえた気がした。 彼はこっちの世界に戻ってきて、あわてて頭を拾いに行った。 千切れた頭を広いあげる。 だが、そのとき、 まるで手に舞い降りた粉雪のように、 チビフサの頭は消えた。 壊れた頭部固定器具のみが手の中に残った。 机の上の体もなくなっていた。 彼は、状態が飲み込めなかった。 全ては幻覚だったのか、 だが手には、頭を拾い上げたときの、冷たい、けれどもふんわりとした毛並みの感触が残っていた。 そして彼は今日もチビギコを殺し続ける。 このときみたいな、幽霊チビギコの出現を夢見て。 ===============糸冬了================ 以上、季節外れの幽霊物でした。 読み返すと、虐殺シーンが非常に少ない。 すみませんでした。