≪焼肉って旨いよね≫

Last-modified: 2015-06-11 (木) 21:38:37
150 名前: 1/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:22 [ zYvbWp.E ]

≪焼肉って旨いよね≫

薄暗い地下室に、
肉の焦げるイイ臭いが漂う。
数人の男が何かを囲んでいる。
焼肉でもしているのだろうか。
だが、何か雰囲気が殺伐としている。
分かりやすくたとえるならば、
12月24日の吉野屋のような・・・。
一人の男がスイッチを操作する。
スイッチを入れると同時に、
肉が焼け、油がはねる独特の音が響く。
焼肉用のホットプレートのスイッチだろうか、
ただ、普通の焼肉との相違点は、
ホットプレートの代わりに、
体中に保護膜をはがされたコードを巻かれたしぃが居たことだろう。
「ジィィィィィィィィィィィィィ!!」
スイッチを入れると同時に、
しぃ族特有の叫び声が辺りにこだまする。
そして、泣き叫ぶしぃを、周りの男たちはじっと見ていた。

151 名前: 2/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:23 [ zYvbWp.E ]
「シィィィィ。
シンジャウヨォ。」
スイッチを切ると、しぃは弱弱しく呟いた。
既に体の大半が焼け焦げ、
さらりとした毛皮はスパークが起きたときに飛び散り、
もう影も形も無い。
「大丈夫大丈夫。
 体を良く乾かしておけば家庭用電源では氏なないからな。」
一人が明るく言い聞かせる。
「そうモナ。
 それに、まだいいたいことはあるモナ。」
「シィィィィィ!
ダッコ スルカラ ユルシテェ。」
カチリ
スイッチを入れる。
しぃの体にまた電流が流れる。
「ジィィィィィィィ!」
激しいスパークが起こり、
肉が焦げながら辺りに飛び散る。

152 名前: 3/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:23 [ zYvbWp.E ]

少しして、スイッチを切った。
「ハニャァ、 ハニャァ、 ハニャァ、 ハニャァ。」
苦しくてあえいでいるしぃに言い聞かせる。
「だからなんでそうダッコで解決しようとするかな。
 その考えがいけないと何度も言ってるだろ。」
「そうだゴルァ。
 大人の体と言うのはとても重いんだぞ。
 それにのみを良く映されるから大変なんだぞゴルァ。」
「ダッテ、 ダッコハ マターリノ ショウチョウナンダヨ。」
しぃが力を振り絞り、
大声(先ほどまでのか細い声と比べたら)で叫ぶ。
一人頭をぽりぽりとかく。
先ほどから、しぃにこのことを何度も言い聞かせているが、
しぃはその考えを崩さない。
それ故に反論に困っているのだ。
一種の敗北と思える人もいるが、
これはあくまでこちらの言い分を、
あちらが受け付けていないだけだ。
「百歩譲ってそうだとしよう。
 だとしてもそれは限定されたマターリでしかないだろ?
 だって、ただゆっくりしていられるのは、
 抱きかかえられている君だけだろ。
 その下で僕たちは思い君の体を支えなくてはいけない。
 これの何所がマターリなのかな?
 どう見てもわがままを押し付けているとしか考えられない。」
一人の男がまくし立てる。

153 名前: 4/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:26 [ zYvbWp.E ]

「そもそもしぃ族というものは、
 モナー族やギコ族並みの知能を一応ながら持っているのに、
 それを生かそうとせず・・・」
「ハニャーン シィハ ワルクナイヨォ。
ハニャーン ハニャーン。」
ほぼ一方的にしゃべる男を無視し、しぃは泣き始める。
だが、すぐに男も気がついた。
「だ・・か・ら・・・」
顔の筋肉が引きつっている。
「人の話はちゃんと聞けっつってんだ・・」
しぃの態度が逆鱗に触れたらしく、
般若心経のような顔でしぃに飛び掛ろうとする。
だが、寸前で仲間に取り押さえられる。
それとほぼ同時に、またしぃに電流が流される。
今回はやや長めだ。
「ジィィィィィィィィ。」
激しく暴れ、泣き叫ぶしぃをよそに、
取り囲んでいる男たちは肉の焼ける香ばしいい臭いによだれをたらしていた。

154 名前: 5/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:27 [ zYvbWp.E ]

やっと電撃から開放されたしぃは、
ただコンクリートの床に力なく倒れるだけだった。
仲間に取り押さえられて男が冷静さを取り戻す。
「君の何所が悪くないって?
 自分本位の考えで、自分が避ければなんでいいところの何所が?
 自分の意見に従わない人を「虐殺厨」と決め付け、
 集団で暴行を加えるところの何所が?
 わがままを押し付けるところの何所が?
 税金も払わないやつの何所が?
 人のことも考えず、自分勝手なことを言うところのどこが?
 いざとなったら、「マターリしたい」「しぃちゃんは悪くない」といった、
 むちゃくちゃなことをほざくところの何所が?
 就職しようとしない。
 就職できてもまともに仕事しないところの何所が?
 自画自賛で自意識過剰のところの何所が?悪くないって言うんだい?」
これでもかと言う長文をしぃに向けて浴びせかける。
他の香具師も、そうだそうだと、ヒートアップする。
「どうだい?何か文句は?」
しぃに問いかける。
「ソンナノ シィチャンジャ ナイヨォ。
ダカラ オウチニ カエシテヨォ。
ハニャーン ハニャーン ハニャーン。
またしぃが泣き始める。
所々でため息が漏れる。
「この期に及んでまだとぼけるとは、
 まったく、もう言葉が出ないよ。
 ・・・アンビリカルケーブルを。」
何人かがそれに賛成する。
反対の声は出ない。
「では・・・」
そういい残すと、男は部屋の端の方へ移動した。

155 名前: 6/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:27 [ zYvbWp.E ]

すぐに男は戻ってきた。
手にはよくわからない三本の太い針が出ているコンセントのような物を持っている。
それをしぃの横におくと、
しぃの体に巻きついている電線を取り始めた。
しぃのカをに希望の文字が見える。
だが、その希望もすぐに打ち消された。
全ての電線を取り払うと、
今度はしぃの背中に馬乗りになった。
「アンビリカルケーブル取り付け!」
そういうと、背中の真ん中に、その太い三本の針を差し込んだ。
「シィィィィィ!」
針が差し込まれる激痛にしぃは暴れた。
だが、男は片手で頭を押さえると、
そのまま差し込み始めた。
最後にぎゅっと押して、抜けないようにして、
「取り付け完了」
男は素早くしぃから退くと、
周りを取り囲んでいる群衆に退いた。
「では行きますか。
 ・・3・・。」
しぃに、あれを差し込んだ男が音頭を取る。
「・・2・・」
何人かがそれに続く。
「・・1・・」
「・・0・・」
それと同時にスイッチを入れる。
「ギジッ! ギジィィィ!」
しぃがしぃらしからぬ悲鳴を上げ、
操り人形のように暴れ始める。
だが、先ほどまでの派手なショートなどの音ヤ発光はしなかった。
だが、ある意味これは彼らにとって最高のショーだった。
しぃが勝手にもだえ苦しむのだから。
もうそろそろかな、と呟くと、
男はスイッチを切った。
途端,しぃは糸の切れた人形のごとくその場に倒れた。
2~3度体を痙攣させると、
そのまま動かなくなった。

156 名前: 7/7 投稿日: 2003/04/07(月) 04:28 [ zYvbWp.E ]

「すごいモナね、
 アンビリカルケーブルって。」
「ああ、
 皮膚が一番生物の体の中で抵抗が高いんだからな。
 だから、通常の電気ショックはなかなか電気が通らなくて死刑囚は苦しんだらしい。
 心臓の電気ショックの場合も、
 抵抗が低いクリームを塗るなどをして抵抗を下げてるんだ。
 (そのままやると大火傷だからな。)
 だけどここで逆転の発想だ。
 皮膚が一番抵抗が高いんなら、
 その皮膚をなくせばいいんだ。
 つまり、電極の接触面が皮膚じゃなければいいんだ。
 そうなれば、家庭用の電源でも簡単に人は氏ぬんだ。」
「へぇ~すごいモナね。」
説明を受けて称賛の声を与えるが、
実は殆ど説明を聞いていなかった。
この部屋に漂う焼肉の匂いで。
「ねえ、焼肉行かないかゴルァ。」
「いいモナね。」
「割り勘だからな。」
彼らはそのまま地下室から出て行った。

======糸冬了======

以上、感想スレにあるのを勝手に小説化させていただきました。
すみませんでした。