「*」がない

Last-modified: 2015-06-13 (土) 21:24:01
359 名前: 補語 投稿日: 2003/06/16(月) 00:02 [ Pw2d0yzc ]
ここはモララー外科病院。そこにベビしぃをつれたしぃがやってきた。
ベビしぃの体に特に外傷や欠陥は見られない。変わったところといえば、
しぃ族特有の模様「*」が頬にないことくらいである。
しかし、それはしぃにとって大きな問題だった。
無意味な差別は集団社会ならどこにでも存在する。
例えばモナーの社会ではしばらく前まで丸耳差別があり今も根強く残っている。
同様にしぃの社会では「*」を持たないものは
社会不適合者として徹底的な迫害を受け、大半が野垂れ死にをする。
そういう事情があってこのしぃはわが子の頬に「*」を付けにきたのである。



「*をつけろですか・・・大手術になりますね。」モララーの医者がめんどくさそうに答えた。
「ハニャ!ソンナニ ダイシュジュツニナルンデスカ?」しぃは驚いて答えた。
頬に*をつけるくらい簡単だと思っていたからだ。
「*がしぃ族にしかないのはしぃの器官が特殊だからです。しぃ研究所によりますと、
 血管の配置や内臓の機能が特殊だから*がしぃ族にしかないそうです。
 なので全身手術になり、死亡率は30パーセントぐらいになります。
 それでもやりますか?」
しぃはしばらく悩んでいたが、手術をしなければ死亡率はほとんど100パーセントである。
ついに意を決した。
「ヤッテクダサイ。」
「それではこの書類に判を・・・。」

360 名前: 補語 投稿日: 2003/06/16(月) 00:02 [ Pw2d0yzc ]
「ナッコ!ナッコ!」手術を始めようとするとベビしぃがダッコをねだり始めた。
過保護に育てられたためすぐに他人に甘えたがるようだ。
「黙れ。」モララーは冷たくいうと器具の準備をし始めた。
「ナッコ!ナッコチナサイ!」
自分の欲求がかなえられないことに癇癪を起こし、ついに命令口調となった。
「ゴミ虫の分際で俺に命令するな!!」モララーは完全にキレた。
どうやら3割に当たってしまったらしい。
「ナッコ ナッコうざいんだよ!」べびしぃを手術台から殴り飛ばした。
当然しぃは近くにいないし、音も聞こえない。
ベビしぃは着地に失敗し、いやな音とともに骨が折れた。
「チィィィィィィィィ!!イチャイヨウ!」
「さぁ手術開始だ。」
モララーはベビしぃを手術台の上に乗せた。
「ナッコ、ナッコチマスカラ タチュケテ クダチャイ!」
ベビしぃはモララーの殺気に怯えたのか急に弱腰になった。
しかしもう遅い。しかも逆効果だ。
「この期に及んでまだナッコか?俺の言ったことが聞こえていないようだな。
 こんな耳、存在価値がないな。」
そう言うとメスを取り出し耳を切りにかかった。
「あんまり派手にやらないでくださいよ。」助手が心配そうに言った。
「大丈夫だ、これには慣れている。それにこれのおかげで経費も浮くしストレス解消。
 いいことだらけだな。さあぶちっといくか。」
「チィィィィィィィ!!」
悲鳴がこだましたが誰も助けに来ない。そのまま「手術」は続けられた。




1時間にも及ぶ「手術」が終わりモララーが出てきた。
「ご愁傷様です。手術は失敗に終わりました。」
沈痛な顔を作っているものの内心はすっきりとしていた。
「ハニャ・・・ソンナ・・・」
「ベビしぃちゃんの体は手術に耐えられなかったようです。
 できる限り努力はしたのですが・・・。」
嘘は言っていない。虐殺の跡を隠すのに必死の努力をしたのだ。
「ベビチャン・・・シィィィ・・・」
しぃは肩を落として病院を後にした。モララーはそれをニヤニヤしながら見ていた。

361 名前: 補語 投稿日: 2003/06/16(月) 00:03 [ Pw2d0yzc ]
しぃはしばらく泣いていたが、夕方になったのでとにかく食事をすることにした。
レストランで食事をしていると、2人のモララーがやってきた。
しぃに見覚えのある顔だった。例の病院の助手である。
彼らはしぃに気づかず隣の席に座り雑談をし始めた。
「今日はすごかったなー。あの先生よっぽどストレスがたまっていたんだな。」
「ああ。それにしてもあのベビしぃは運が悪い。3割に当たっちまうんだからな。」
「あれか。あの手術失敗率3割ってやつ。実際は手術中にモララーがキレる可能性が3割だったよな。
 大手術になるってのも虐殺があったことをごまかすための嘘で、まともにやれば成功率は10割って話だったな。」
「馬鹿なしぃどもだ。知らないってのは怖いもんだな。」
「レベルの差はあれども、それは俺達にも言えるんじゃないのか?
 たとえば、今から来る料理に毒を混ぜられても気づきようが無い。
 結局相手を信用するしかないんだろう・・・・。」




しぃは衝撃を受けた。まさかこんなことが行われているとは知らなかった。
早く他のしぃにも知らせる必要が・・・・・・
・・・いや、日頃自分のベビを差別してきた連中にわざわざ知らせる事はない。
何で自分のベビだけがこんな目にあわなければならないのだ。
平等であるべきだ。
ここまで考えてしぃは知らせるのをやめた。
こうして、モララーによる虐殺は続いていった。