566 :魔:2008/05/14(水) 21:40:19 ID:??? >>524より続き 『裏話 ~後遺症~』 吹っ切れてから後は、早いものだった。 ウララーは擬似警官を辞め、銃を持つ事を辞めた。 素直に虐殺に向き合い、実行し、楽しみもした。 堕ちた、と言ってしまえばそこでおしまい。 寧ろ、堕ちたというよりリバウンドと形容した方が正しいだろう。 いつも正義とは悪とは何かと考え悩んでいたウララーが、今や虐殺を素直に受け入れている。 その表情は見違える程清々しく、あるべき姿とさえ錯覚してしまう程。 街を受け入れ、街に歓迎されたウララーは自身の身体を血で汚す。 被虐者のものでも、ぽろろのものでも構わず浴びた。 ひたすら、虐殺を楽しんでいた。 ※ 「う、く・・・んっっ!!」 ソファの上に俯せになり、頭をこちらに向けて背中を見せるぽろろ。 ウララーはその小さな背中に、ひたすら画鋲を刺していた。 「まだ沢山あるからな」 掌の中のプラスチックの箱に、金に光る画鋲。 じゃらと音を立ててぽろろにそれを見せ、また一つ取り出して刺す。 画鋲をぽろろの背中に埋める度、ぽろろは身体を小さく跳ねさせる。 顔を赤らめ、涙を目尻に溜めながら堪える様は、そそるものがある。 時折堪えきれなくなるのか、ソファに強く爪を立てる事もあり、それもまた良い。 「あうッ!」 ぽろろの反応や、喘ぎ声のバリエーションは様々だ。 ウララーはそれに応えるようにと、画鋲を刺すという事に一工夫加える。 時間を掛けてゆっくりと刺していく時もあれば、一気に押し付けたり。 或いは捩込むように指でくるくると回しながら刺しもした。 (・・・) ぽろろの性分は、虐待虐殺されること。 虐殺の楽しさを見出だせた自分にとっては、嬉しくも悲しくもある。 人目を気にしなくて良いのだが、一緒に暮らす者を虐待するなど。 最初はそう思ったのだが、一度虐殺に溺れた身。 後ろめたい事など、当の昔に失っている。 それに、 「ぐ・・・ううぅっ!」 呻き声をあげ苦しみつつも、垣間見るぽろろの表情。 歯を食いしばりながら、一瞬だけそれが恍惚にシフトする。 性行為をするよりも気持ち良さそうなぽろろを見て、安心を覚えてしまったのだ。 ここまでくると、もう感情論は必要ない。 互いの好きな事を、互いに息をあわせて行うのみ。 自分は坦々と画鋲を刺し、ぽろろはそれにひたすら喘ぐ。 「お前の背中、金色に光って綺麗だな」 「あう・・・ッ! うあああああんっ!!」 画鋲まみれの背中を撫でてやると、ぽろろは激しく悶えだす。 無数の突き刺さった針が、傷口の中を刺激しているのだろう。 辛子でも塗ってから刺してやれば、もっと喜んだだろうか。 そう思いながら、画鋲に覆われたぽろろの背中を沢山撫でてやった。 567 :魔:2008/05/14(水) 21:43:49 ID:??? 隙間なく並んだ画鋲達は、豪華な衣装のようにも見える。 身体とそれの境目では血が少しながら流れていて、そのコントラストも美しかった。 「これで全部だ。頑張ったな」 「・・・」 ぽろろからの直接な返答はなかったが、小さく頷いてくれた。 地味な虐待とはいえ、感じる痛みは決して易しいものではない筈。 凄まじい苦痛、いや快楽に苛まれ、反応する事がやっとという所か。 そう考えると、今のぽろろはエクスタしぃとやらに似ている気がする。 だが、奴らは痛みを痛みとして認識していないと聞く。 それにぽろろ自身も、痛いと感じた時はしっかりと『痛い』と言っている。 「・・・う、ウララー、っ」 「ん?」 「もう・・・や、やめ・・・」 ふと、ぽろろの言葉で我に返る。 気を抜くとすぐに考察したがるのは、悪い癖か。 全て聞こえなかった所から、どちらを願っているのかわからない。 止めて欲しいのか、或いは遠回しに続きを欲しているのか。 どちらにせよ、自分の中には答は一つしかないのだが。 「いや、まだ続きがあるぞ」 ぽろろの耳元で囁き、テーブルに用意してあったものを取る。 何の変哲もない、唯のガムテープ。 それを見て何をされるのか理解したのか、ぽろろの顔が青ざめていく。 「さっきはチクチクするだけだったが、これだとどうなるか俺にも想像できない」 別に言葉で責めているつもりはないが、ぽろろはより怯えだす。 赤らんだ頬に小さな冷や汗が一筋伝い、顎から離れてソファに落ちる。 しかし、身体は震えていても、その眼だけは爛々と光っていた。 早くやってほしいという気持ちではなさそうだが、期待のようなものを感じる。 恐怖に怯える被虐者のようにありながら、やはり何か違うぽろろ。 よくわからないギャップのようなものは、己を駆り立てる。 ―――酷く、興奮してしまう。 ガムテープの切れ端を摘み、景気よく引っ張る。 適度な長さの所でそれを破り、画鋲の衣装の上に貼付ける。 綺麗だった金の衣装は茶色の紙に隠され、みすぼらしく見えた。 「いくぞ」 短く呟き、ガムテープの端を摘む。 そして何も考えずに、腕を思いっきり振り上げた。 「っっぎゃあああああァァァァァ!!!」 ばりばり、と激しい音がしてガムテープは剥がれ、次いでぽろろの絶叫。 どちらも耳をつんざく勢いで、予想外のボリュームに心臓が跳ねた。 「うああああああああっっ!!!」 海老反りになり、ソファの上で転がり回ろうとするぽろろ。 流石に耐え切れなかったのか、その苦しみっぷりは気狂いのよう。 激痛を訴えるのが背中ということもあり、庇えないもどかしさもあるのだろう。 剥がしたガムテープを覗くと、こちらも凄い事になっている。 赤く汚れた画鋲がびっしりと敷き詰められ、所々肉のようなものもある。 一部画鋲が付いていない所があったが、恐らくまだぽろろの背中に刺さったまま。 ぽろろが落ち着いたら、抜いてやるとしよう。 568 :魔:2008/05/14(水) 21:44:27 ID:??? ※ 「うぐ・・・」 余程痛かったのか、ぽろろが大人しくなるまで大分時間が掛かった。 その間、悶える様を観て十二分に楽しめたのだが。 今のぽろろは、痛みが引いたというよりも満身創痍といった方が正しいようだ。 涙を溜めた目は虚ろだし、だらし無く開いた口からは涎が際限なく溢れている。 俯せでありながら、必死に身体全体で呼吸をしてもいた。 仰向けになればいくらか楽になる筈だが、穴だらけの背中をどこにも触れさせたくないのだろう。 (しかし・・・) 我ながら、なかなか悪意のある事をしてしまったなと、ぽろろの背中を見て思う。 蓮コラのそれよりは小さいが、穴という穴からは体液が沢山漏れている。 所々大きく肉が刔れていたりして、痛々しさは半端じゃない。 思わず、目を背けたくなる。 そうありながら、ずっと眺めていたいような気持ちにもなる。 ぽろろの可愛らしい背中にある無数の穴と流れる血液。 悍ましくもあり、また、僅かだが美しくあった。 「痛かったか?」 「・・・う、ん」 『痛い』。 その言葉は、そのまま『気持ち良い』にシフトはしないようだ。 歯を食いしばり、なお苦痛に悶えるぽろろ。 (・・・可愛い、な) いい意味で、胸が締め付けられる。 ぽろろの両脇に手を突っ込み、そのまま持ち上げる。 そして、成すがままのぽろろを自分の腿の上に座らせた。 「・・・?」 赤らんだ頬に、涙と涎でくしゃくしゃになった顔。 嫌悪感など微塵とも感じるわけがない。 この表情が、己を酷く駆り立てる。 ぽろろも、喜んでいる。 自分がぽろろを虐待する度、虐殺する度。 「ぽろろ」 「えっ?・・・ッ痛! 痛い、痛いっっ!!」 気持ちが高ぶり、思わず抱きしめる。 傷だらけの筈のぽろろの背中に、爪を立てる。 弱々しく抵抗し、強く泣き叫ぶぽろろ。 耳元で聞こえるその悲鳴で、イッてしまいそう。 心が、精神が、おかしくなってしまいそうだ。 「ずっと、聞いていたいな・・・そう、お前の、声」 「うあっ! く、痛あっッ!!」 ねっとりとしたものが、両手に付着する。 このまま、共に快楽の海に溺れていきたい。 むせ返るような血の臭いに、ぽろろの悲鳴という音楽を聴きながら。 ―――電子音。 インターホンが鳴り響き、快楽の海から引き上げられる。 同時に深い憤りと気だるさを覚えつつ、ぽろろを腿から下ろす。 「・・・悪い、ちょっと出てくる」 「・・・」 玄関に向かう途中、振り向き様に見たぽろろの表情。 どこか、不快感を静かに露にしているように見えた。 569 :魔:2008/05/14(水) 21:45:11 ID:??? ※ もし訪ねてきたAAが勧誘か何かだったら、殴り殺してしまいそうだ。 そんな毒を心の中で吐きつつ、苛々を床に押し付ける。 どすどすとわざとらしい音を立て、玄関の前に立つと乱暴に扉を開けた。 「どちら様で・・・ッ!」 刺のある声で応対した者は、銃口だった。 咄嗟に屈み、同時にその銃が吠える。 頭上を殺意が通過したかと思うと、後方で何かが破裂する音がした。 「な・・・!?」 突然の事に驚愕し、次いで怒りが込み上げる。 が、銃口を向けていた者の顔を見てみると、また驚愕。 そこにいたのは、擬似警官だった。 「久しぶりだな。ウララー」 「エ・・・エゴ?」 男は紫の身体に、耳に青い線が走っている。 その特徴を持った擬似警官は、エゴという名。 自分とは同期の者だ。 「お前には失望したよ。銃を持つのを辞めたって聞いて、来てみたらコレかよ」 エゴの言葉を聞き、ふと己の両手を見遣る。 本来黒い筈の自分の腕は、血で真っ赤に染まっていた。 「あ・・・いや、これは」 「しらばっくれンな! 臭いも被虐者のそれじゃねェ。何考えてんだ!!」 鬼の形相で、エゴは責め立ててくる。 擬似警官だから、この反応は当たり前か。 エゴのような直情的な者に、全てを話そうとしても無駄かもしれない。 たとえ信じても、エゴは元々虐殺そのものを嫌っている。 予想だにしなかった、最悪の展開。 ぽろろを置いて、まだ死ぬわけにはいかないのに。 どうにかして、この場を切り抜けなければ。 場合によっては、最悪を最悪で返してやってもいい。 (殺すか・・・?) AAの命が散る瞬間なんて、腐る程見て来た。 自らが殺める事も、既に堕ちた身。躊躇う必要はない。 問題なのは、エゴが持つ得物と丸腰の己との差をどう埋めるかだ。 「どうしたんだよ。何か言えよ!」 「・・・」 が、どうやらエゴは話し合いたいようだ。 意図はよく掴めないが、考える余裕はできそうだ。 爆発させない程度に、真実を述べてみるか。 「・・・悪いが、俺はまだ虐殺厨にはなっていない」 「両手濡らしといて、まだ言うのかよ」 「落ち着け。信じられねえかもしれないが、この血は被虐者のモノだ」 「・・・は?」 と、エゴの額に青すじがいくつも現れる。 このままいくと、本当に爆発させてしまいそうだ。 だが、真実を述べないで死ぬのも御免だ。 肚をくくるつもりで、続ける。 「アフォしぃでもちびギコでもない、新しい被虐者だ。殺しても死なない」 「・・・」 返事を待つが、エゴの口は開かない。 ただ、その表情が歪み、歯ぎしりの音が大きく聞こえたのと、 銃を握っている手の人差し指が動いたのは、確認できた。 570 :魔:2008/05/14(水) 21:46:44 ID:??? 「!?」 炸裂音。 場の空気が、凍り付く。 (・・・?) 死が自分に襲い掛かると思って、咄嗟に目をつむった。 が、痛みはどこにも感じず、違和感も何もない。 恐る恐る目を開けると、奇妙な光景が飛び込んできた。 エゴの銃を、青い紐のようなものが縛り上げていたからだ。 銃口は天井を向き、弾痕も天井にできている。 紐は自分の後方から伸びているようで、目線でそれを追う。 振り向くと、背中のあたりからその紐を出しているぽろろがいた。 「な、何だ、こいつ・・・ッ!?」 エゴが驚愕の声を上げるや否や、更に二本の紐がエゴを襲う。 紐はするりと巻き付き、エゴの身体の自由を奪った。 よく観察してみると、紐というより触手と表現した方が正しいかもしれない。 エゴの両腕と胴体を纏めて縛りながらうねうねと動くそれは、気持ち悪い事この上ない。 「ぽろろ、一体これは・・・」 ぽろろの方に向き直り、問い掛ける。 が、届かなかったようで、俯き加減で何やら呟いている。 「邪魔した・・・ウララーさんを、殺そうと・・・」 呪詛のようにエゴへ怨みの言葉を吐き、触手を暴れさせるぽろろ。 虐待を中断させられたのが余程不快だったのか、非常に悍ましく感じる。 そのせいで、背中の触手はすんなりと受け入れる事ができた。 ぽろろやVに驚かされ続けてきたから、耐性がついただけなのかもしれないが。 「う、ウララー! なんなんだよコレ!?」 自分とは相反するように、エゴはひたすら焦り、怯えている。 それを無視し、ぽろろは器用に触手を動かしてエゴを宙に浮かせる。 次の瞬間には、天井、床の順にたたき付けた。 「ぶぐっっ!!」 鈍い音と湿っぽい音がして、エゴは俯せに寝かされる。 遅れて、どこかで宙を舞った銃が音を立てて落ちた。 ふと気が付くと、いつの間にか形勢逆転してしまっていた。 「邪魔・・・邪魔・・・」 「ぽろろ、一旦落ち着け」 とりあえずぽろろを宥め、次にすべき事を考える。 触手については、全てを終わらせてから聞こう。 「あ・・・っ、が」 エゴの顔を覗き込むと、床に顔から突っ込まされたようで、鼻血が出ていた。 痛むのか涙目にもなっていて、先程とのギャップに思わず笑いそうになる。 そこで、ある感情が芽吹いてしまう。 本来は犯罪である筈だが、心がしたいと叫んでいる。 堕ちた者は何処まで堕ちていくのか。 理性はそう遠回しに警告するが、本能は既に点火していた。 対峙した時にも、それに近いものを念っていた。 だから、戸惑う理由なんてどこにもない。 囁くように、ぽろろに伝える。 「ぽろろ」 「はい?」 「今から、こいつを虐殺しようか」 571 :魔:2008/05/14(水) 21:47:30 ID:??? 「んな・・・!?」 エゴの顔を覗き見ながら言ったので、表情の変化がしっかりと確認できた。 一気に青ざめ、焦りを強くするエゴは滑稽で堪らない。 そんなエゴに追い打ちを掛ける為、少し言葉を交わす。 「ああ、こういう事は俺も初めてだから。ぽろろを怒らせた自分を呪えよ?」 「待っ・・・ふざけんな! やっぱり虐殺厨だったんじゃねぇか!!」 「一般AAを虐殺したことなんて無いんだが。まあ、殺した事はあるけどな」 「テメェっっ!!」 ひたすら怒号を浴びせ掛けてくるエゴ。 しかし、その必死さの奥には怯えが垣間見える。 怒りをぶちまけなければ、自我を保てないのだろうか。 「もう俺は堕ちたんだよ。手だって、文字通り血に染まってやがる」 「こんな・・・こんなことッ!」 嘆くエゴを無視し、耳を掴んでぐいと上に引っ張る。 鼻息が掛かるま位置まで顔を近付け、吐き捨てるように囁く。 「悪いが、俺はお前を虐殺して、初めて虐殺厨になる」 ※ なかなか便利な身体だなあと、ぽろろを見てつくづく思う。 聞くところによると、触手は治癒能力の延長線上のものだとか。 自在に操ることが出来る上、蜥蜴の尻尾のように切り離す事も可能とのこと。 体格差のある被虐者を捕らえる事ができたのも、この触手のお陰なのだろう。 その触手はエゴをテーブルの上に大の字に縛り上げ、しっかりと固定されている。 溶けているかのようにテーブルにくっついており、スライムのようにも見えた。 「~~~!!」 触手はご丁寧に口に詮までしていて、エゴは喋る事すらままならない。 怒りかはたまた恐怖感か、首を必死に動かして抵抗している。 正しくは、『抵抗しようとしている』と表現した方がいいかもしれない。 「さて、先ずは何をしてやろうかな・・・と、そうだ」 思考を張り巡らせる前に、視界の中に先程扱っていた画鋲まみれのガムテープがあった。 それを拾い上げ、エゴの腹の上にそっと置く。 と、エゴのくぐもった声と、無駄な抵抗がより激しくなった。 「ぽろろ、この上に乗ってみろ」 「!!?」 焦るエゴを無視し、ガムテープを指差してぽろろにそう伝える。 頷くぽろろと激しく拒むエゴの対比は、なかなかに面白い。 ゆっくりとテーブルの縁に立ち、ガムテープに視線を落とすぽろろ。 次に素早く屈み込み、エゴの腹部に力強く飛び乗った。 「ふんっ!」 「ぶぐふっッ!!!」 ぽろろの掛け声と、鈍い音が重く響くのは同時だった。 直後、肺を圧迫されたわけでもないのに肉の詮がエゴの口からすぽんと発射された。 あまりにも間抜けな展開に、思わず吹き出しそうになる。 肝心のエゴは腹の中の衝撃と、腹の上の無数の痛みに悶絶している様子。 何度も咳込み、その合間合間に叫喚を交えて苦しんでいた。 572 :魔:2008/05/14(水) 21:48:13 ID:??? 「ック・・・ぽ、ぽろろ。エゴの口から何か飛んだぞ・・・くくっ」 必死に笑いを堪えながら、話し掛ける。 当の本人はしてやったり顔で、エゴを見下ろしていた。 「面白かったですか?」 「ああ、ああ・・・なかなか、だ。くっくく」 「じゃあ、もう一回」 そう言って、ぽろろは背中から触手を出して再度エゴの口に突っ込む。 突っ込む直前、エゴは何か言いたそうだったが、やはり肉の詮が邪魔をした。 顔色も悪く、唾や涎が自らの顎を汚している。 ぽろろが飛び上がる構えをすると、目を見開き首を起こすエゴ。 もごもごと篭った声は、罵倒か抑止かどうかわからなかった。 「せーのっ!」 ズン、と重い響きがテーブルを軋ませる。 「ぐぶああぁっ!!」 今度は先程のように肉の詮が飛び、加えて胃液らしきものが飛び散る。 びちゃびちゃと湿った不快な音と、エゴの濁った咳が耳に障る。 腹を踏むと、口から汚物を盛大に吐き出す。 なんとも醜い遊び道具を、ぽろろは気に入ったようだ。 喜々としてジャンプを繰り返し、何度も踏み付けた。 笑いも止まり、落ち着いた所で虐待を眺める。 もはや画鋲ガムテープは、それのおまけといった所だろうか。 腹の皮を無数の針が突き破るよりも、内臓をシェイクされている方が辛そうだ。 「よっ! とっ!」 「いいぞぽろろ。その調子だ」 リズミカルに跳ねるぽろろに合わせ、手拍子を入れてみる。 エゴの阿鼻叫喚と鈍い音の拍子が重なり、音楽になる。 殆ど不協和音のそれに近いが、苦痛に悶えるボーカルの声に聴き入ってしまう。 「んぎっ! ッぶ! あ、ぶぐぅぅ!!」 腹を踏み付けられて数十回目の事。 エゴの吐瀉物に、赤いものがが混じり始めた。 恐らく内臓が破裂したか、或いは喉を潰してしまったか。 これ以上続けると、このまま死んでしまうかもしれない。 一旦ぽろろにジャンプを止めさせ、様子を見る。 「げほげほっ! が、っぐ・・・」 呼吸は荒く、顔色も悪い。 試しに画鋲つきガムテープの両端を持ち、一気に剥がしてみる。 が、エゴは少し身体を跳ねさせるだけで、対した反応はしなかった。 そのかわり、小さな穴と血だらけになった腹の一部が不自然に盛り上がっている。 気になり、そこを指で強く圧してみる。 「うがああああああああっ!!」 すると、先程と打って変わり凄まじい叫び声。 どれかはわからないが、やはり内臓が破裂したのだろう。 ガムテープを剥がしても反応が薄かったのは、これが原因か。 身体の一部分が酷く痛めば、他の部分の小さな痛みは感じなくなる。 ということは、細かい虐待をしても面白みがないかもしれない。 しかも内臓が破れているとなると、そう長くは持たないだろう。 (次のメニューは、どうしたものか・・・) そう考えるや否や、ぽろろの腹の虫が雄叫びをあげた。 573 :魔:2008/05/14(水) 21:48:35 ID:??? 「あ」 ぽろろはハッとして腹を押さえる。 なかなか大きな音だったので、流石に恥ずかしかったようだ。 「お腹すいたのか?」 「う、うん」 「まあ、これだけはしゃいだらそうなるな」 ぽろろにそう言って、エゴの腹をまた突く。 と、必要以上の苦痛の声が聞こえ、思わず手を引っ込めた。 今から食事の準備、というのも何だか気が引けてしまう。 汚物や血に塗れた部屋で食べ物を眺めるといった、図太い神経は持ち合わせていない。 下手をすれば、変にトラウマになってしまいそうだ。 (・・・そうだ) ふと、思い付く。 「ぽろろ」 「はい?」 「その・・・なんつーか、こいつ食べるか?」 ※ 「う、ウララー・・・っげ、てめぇ、ッ」 「いいの?」 人間性を問われそうな妙案に、意見が二つに別れた。 眼を輝かせ、こちらを見て喜ぶぽろろと、掠れた声で抗議しようとするエゴ。 勿論、これから死ぬ者の意見など聞く理由はない。 わざとらしくエゴを無視し、ぽろろに促す。 「どうせ死体になったら処理しないといけないし、ぽろろが嫌じゃないなら」 「・・・じゃあ、お言葉に甘えて」 謙遜気味だったが、後押しされたのかすぐに表情を変える。 ニコニコと嬉しそうなぽろろを見て、自分にもやる気が湧いてきた。 「よし。じゃあ早速解体に移るぞ」 席を外し、包丁を取りに台所へ。 途中エゴの雄叫びのような罵声が何度も聞こえたが、濁りすぎていて聞き取れなかった。 棚から包丁を取り出し、ふと気付く。 腕についていたぽろろの血を、まだそのままにしていた。 大分時間が経っているので、少しくすんでカサカサになっている。 「・・・」 臭いを嗅ぎ、舌で舐め取ってみる。 血は唾液に溶かされ、口の中へと入る。 少量だったせいか、いつものような生臭さは皆無。 そのかわり、血の表現でよく聞く鉄のような味が、舌の上で広がって消えた。 美味くはないが、吐く程不味いというわけでもない。 (そろそろ喉が渇く頃だろうな) そう思いつつ、両腕の血を洗い流す。 腕から赤が落ちていき、見慣れた黒が顔を出した。 水を切ってハンドタオルで拭き取ると、包丁を持って部屋に戻る。 部屋に戻ってくると、エゴが口まわりを更に赤く汚していた。 大袈裟に上下動する腹と、ひゅうひゅうと鳴っている喉。 横では、ぽろろが背中から触手を一本出してこちらを見ている。 「どうかしたのか?」 「いや・・・こいつが、ウララーの悪口ばっかり言うから」 そう言って、ぽろろは触手で空をつつく。 どうやらエゴを黙らせる為に腹を押すか何かしたのだろう。 「・・・そうか」 574 :魔:2008/05/14(水) 21:49:35 ID:??? 気持ちは嬉しいのだが、エゴの事が少し心配になる。 腹を突くだけで、こうも血を吐くものだろうか。 腹内部の出血がそこまで酷いとなると、文字通り長くは持たない。 ならば、なるだけテンポ良くエゴを弄って遊んでやらなければ。 ただ死なさせるだけでは味気無い。 ※ エゴの二の腕の、肩に近い所に羽を入れる。 「っぐ・・・!」 多少身もだえするものの、その動きに力はない。 気にせず包丁を動かし、腕の肉に切り込みを入れていく。 包丁が血に塗れ、腕に大分深く潜るようになった時。 ゴリ、と固いものにぶつかった手応えがあった。 切るだけならば、包丁を振り下ろして叩き割るのが良い。 が、これは虐待も含めての解体だ。普通に切り離すのでは意味がない。 そこで、 「ふんっ!」 「が! っぎゃ、うがあああッ!!」 体重を乗せながら、ぐりぐりと包丁を鋸のように動かす。 と、骨に掛かる圧力が激痛となったのか、エゴは火がついたかのように叫び出す。 ミシ、と軋む音に小さく砕ける音が混ざって聞こえる。 更にそれに重ね、エゴの掠れた悲鳴が耳を刺激した。 なかなか良い手応えと悲痛の歌に、つい笑みが零れてしまう。 しかし、楽しみもつかの間。 破裂するような音と共に、手応えが一気に霧散する。 勢い余った力は、そのまま残りの肉を裂き、テーブルに包丁を突き刺した。 エゴの骨は、思ったより早く折れてしまった。 「ぐぎゃあああああああ!!」 一手遅れて、エゴがより激しく叫ぶ。 痛みの度合いが腹部のそれに勝ったのか、かなり煩い。 構わず切り離した腕を、エゴを縛っている触手から抜き取りぽろろに渡す。 ぽろろは腕を貰うと、喜々として切り口にかじりついた。 「美味いか?」 「うん。『しぃ』ってAAより、断然」 「ほう」 それを聞いて、ふとあの少年の事を思い出した。 AAを喰らう者から見れば、被虐者より加虐者の肉の方が質がいいのだろうか。 自分も少し、試してみたくなってきた。 途端、じわりと強くなる渇き。 身体が、血を欲している。 エゴの方に向き直り、腹を再度観察する。 一部分だけぷっくらと膨れた腹は不自然で、かつ醜くあった。 (・・・どれ) 包丁を持ち直し、瘤状に膨れたそれに十時に切れ目を入れる。 エゴの身体が少し跳ねるものの、刃は瘤の上を綺麗に通過。 切れ目から赤い線が浮かび上がると、再び刃を入れていく。 すると、切れ目からエゴの体液が勢いよく流れ出た。 結構な量の血はテーブルまで汚し、ばたばたと床にまで零れ落ちる。 それがおさまった時には、瘤も形を失っていた。 一旦包丁をテーブルの端に置き、切れ目に指を突っ込む。 エゴの悶絶ぶりは加速し、また生気が戻ってきたかのよう。 575 :魔:2008/05/14(水) 21:50:14 ID:??? 切れ目から腹の皮をめくり、中身を覗く。 内臓を薄く浸す程だが、まだ血は残っていた。 それを腹の中に掌を捩込むようにして、掬い取る。 「~~~!!!」 もはや言葉どころか、声にすらならないエゴの悲鳴。 詰まりかけた排水口のように、ごぼごぼと喉を鳴らしている。 掬いあげた血は少ないが濃く、特有の赤黒さがあった。 いつもはここで躊躇するが、どうしてか生臭い匂いはしない。 恐らく、虐待を続けていたお陰で鼻が麻痺したのだろう。 出来ればこの調子で、慣れていきたいものなのだが。 「・・・」 意を決し、エゴの血を煽る。 口の中でそれを堪能してみるが、やはり駄目だった。 吐き気が爆発的に込み上げ、咄嗟に口を押さえる。 幸い少量だったので、すぐに飲み込む事でしのぐことができた。 (駄目か・・・) 虐殺を受け入れたからといって、誰彼の血でも構わないという訳ではなさそうだ。 ぽろろが肉を食べながら、自分は喉を潤そうと思ったのだが。 それはまだ、ぽろろに頼るしかなさそうだ。 ふとぽろろを見遣ると、あげた腕はもう骨だけになりかけていた。 おかわりが来る前に、先に切り離してしまわなければ。 包丁を持ち、反対側に回り込む。 そして、虫の息のエゴを少し眺めてから、作業に移った。 ※ エゴが死んだのは、三つ目の四肢、つまり脚に取り掛かった時だ。 肉を切ろうが骨を砕こうが全く反応がなかったので、面白みは皆無だった。 そのかわり、ぽろろの食事風景を眺める事ができたので、よしとしよう。 今現在、エゴの形が残っている部位は胸と頭のみ。 他は全て、ぽろろの胃袋の中におさまっている。 つまりかなりの量を食べたことになるのだが、ぽろろの腹はそこまで大きくなっていない。 色々と気になったが、とりあえずその疑問は飲み込んでおいた。 「・・・ウララーさん」 不意に、ぽろろが話し掛けてきた。 「うん?」 「まだ、血は飲まなくていいんですか?」 「・・・ああ。今の所は、大丈夫だ」 「そうですか」 そう言うと、ぽろろはまた食事に勤しむ。 細かく切ったはらわたを、ひょいひょいと口に運んでいく。 ※ これから、こういった生活が続く事を考えると、期待と不安が混ざり合う。 擬似警官に追われる身にはなったが、ぽろろの秘めていた能力を発見する事ができた。 敵は虐殺厨から擬似警官へとシフトしたが、共に戦える者もいる。 とことん堕ち、この街に完全に染めあげられてしまった今。 渇きも虐殺厨の肩書も受け入れ、生きていくしか他にない。 ―――街に弄ばれるのは、もう御免だ。 完