あるオカアサンしぃの手記 Ⅳ

Last-modified: 2020-06-10 (水) 15:14:51
70 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/03/28(金) 20:04 [ ZRp/Kjkk ]
「あるオカアサンしぃの手記 Ⅳ」
    ~精神病棟から~


毎日 淡い色の天井を見ながらしぃは暮らしています
ほんの少し前まで とても幸せだったのに
だけど今は自分の体を傷つけないように
沢山のお薬を飲んで 一日中ベットに両腕を縛り付けられて暮らしています

しぃには5匹のベビしぃちゃんがいました
みんな元気でよくおっぱいを飲んで すくすく育ちました
フワフワで柔らかいベビちゃん チィチィって泣いて甘えんぼうのベビちゃん
しぃは初めてのベビちゃんを大切に 大切に育てました

ベビちゃんがようやくアンヨできるようになった夏の始めの事です
しぃちゃん幼稚園からキャンプのお誘いがきました
電車ですぐそこのキャンプ場でおとまりするのです
しぃはベビちゃんをキャンプに参加させる事にしました
ベビちゃんだけの 初めてのおでかけです
しぃが離れてしまう事での心配はあったものの
お友達どうしでごはんを食べたり おさんぽしたり 
一緒におねんねする事の楽しさを知ってほしかったのです

しぃはベビちゃんたちにおそろいのリュックサックを作ってあげました
ニコニコ顔のベビちゃんのお顔のアップリケをつけて おそろいの寝袋も一緒に
ベビちゃんたちが待ちどうしいキャンプまであと少しです

待ちに待ったキャンプの日がやってきました
ベビちゃんたちは朝からソワソワしています
しぃはこの日の為に作ったリュックサックをベビちゃんたちに背負わせました

        「かわいい!」

しぃの思い描いていた通りです
ベビちゃんたちは楽しそうに小さなアンヨをパタパタさせます
キャンプにいくのが待ちきれないように

お弁当を作り終えてしばらくして キャンプに一緒に行くお友達が迎えに来てくれました
しぃはベビちゃんをおながいしますと言って ベビちゃんをお見送りしました
ベビちゃんもチィチィって鳴いて しぃに行って来ますって言いました

71 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/03/28(金) 20:24 [ ZRp/Kjkk ]
次の日 ベビちゃんたちがキャンプから帰ってくる予定の時間になりました
でも予定の時間を過ぎても ベビちゃんたちは帰ってきません
帰ってきたら一緒に食べようと思っていたミルク蒸しパンもさめてしまいました
しぃはとても心配になってきました そこでベビちゃんたちがキャンプをした
キャンプ場と キャンプに誘ってくれたしぃちゃん幼稚園に
電話をかけてみることにしました だけど………………

キャンプ場はもう使われていませんでした しぃちゃん幼稚園もありませんでした  

しぃは慌てました それでは一体ベビちゃんたちはどこへ行ったのでしょうか
誰に連れていかれてしまったのでしょうか
あわてて取るものも取らずキャンプのお知らせを頼りに電車に飛び乗りました
初夏の不安定な天気の中 夕立が降ってきました
電車を降りてキャンプ場に走ります 大分前から使われていないのでしょう
キャンプ場の看板は朽ち果てボロボロになっていました
草も伸び放題伸びていて しぃが歩くのを邪魔します
ベビちゃんどこなの? ベビちゃんおながいお返事をして
しぃは叫びながらベビちゃんを探します

足元に目をやると見覚えのあるものが足元に落ちていました

    泥だらけになったベビちゃんのリュックサックでした

泥だらけのリュックサックを手に 薄暗くなった誰もいないキャンプ場を探します
おながいベビちゃん 早く出てきて おながいナッコって言って

もうどれくらいベビちゃんたちを探しまわったでしょうか 空には星が瞬いています
これ以上行けばゴミ置き場と言う所までたどり着きました
散々探しまわったキャンプ場 まさか…
そう思いながら 積まれているゴミを掻き分けます

イヤァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッ!!

青白い電灯の下 しぃは見てしまいました
すすけたトーチのてっぺん オテテとアンヨをもぎ取られて針金でくくりつけられた
しぃのかわいいベビちゃんたちを
ベビちゃんたちの小さな体は真っ黒けに焦げて 痛そうに口を開けていました

72 名前: 70 投稿日: 2003/03/28(金) 20:25 [ ZRp/Kjkk ]
気がついたらしぃは病院のベットの上にいました
手に点滴を打たれ 沢山の機械がついていました
看護婦さんが心配そうにしぃの顔を覗きこんでいます
隣の開いているベットの上には ベビちゃんのリュックが置いてありました
看護婦さんはしぃにひとつの手紙を渡してお部屋から出て行きました

その手紙には差出人がありませんでした
恐る恐る 封を開けました

信じられない事が書いてありました

【拝啓 
この前はキャンプで使うトーチをありがとうございました
良く燃えて、とても楽しいキャンプになりました
使い終わったゴミはちゃんと片付けておいたので安心してください 草々】

同封された写真には 信じられないものが写っていました
しぃは自分でも聞いた事のない叫び声をあげて そのまま倒れました

みんなが楽しそうにご飯を食べている側で何も食べさせてもらず泣いているベビちゃんたち
オテテとアンヨをもぎ取られ泣いているベビちゃんたちのおかお
丸太に針金で括りつけられて動く事のできないベビちゃんたちに灯油をかけているところ

トーチに括り付けられたベビちゃんたちが火をつけられているところ……

火がついて泣いているベビちゃんが括り付けられたトーチをみんなが楽しそうに掲げている姿…

しぃは急いで警察に走りました
しぃのベビちゃんたちが殺されました おながいします犯人を捕まえてください
ベビちゃんたちはキャンプに連れていかれて そこで殺されました
泣きながら写真をおまわりさんに渡しました
それなのに

おまわりさんはしぃが持ってきた写真を見ないでしぃに返しました
そしてこう言いました
「だからどうしたと言うんですか そんなことよりも大変な事があるのに
ベビしぃくらいまた作ればいいじゃないですか そんなことくらいで警察に来られても困ります」


目が覚めた時にはまた病院のベットの上でした
もういくら寝て起きても いつもしぃの側にいたベビちゃんたちは一匹もいません
しぃはつらくそして苦しくて ノイローゼになってしまいました

しぃは今 淡い色の天井を見ながら毎日を暮らしています
ほんの少し前まで とても幸せだったのに
毎日のベビちゃんたちの成長が楽しみだったのに
だけど今は自分の体を傷つけないように
沢山のお薬を飲んで 一日中ベットに両腕を縛り付けられて暮らしています
ダッコを沢山するはずだったはずのしぃの手は 点滴でボロボロです
楽しかった日々は もう戻ってきません

もう しぃには何もないのです



                    糸冬