あるオカアサンしぃの手記ーⅤ

Last-modified: 2015-06-11 (木) 21:36:13
145 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/04/06(日) 17:49 [ VJ6UmGSs ]
あるオカアサンしぃの手記ーⅤ」
     ~罪と罰~
 
ただ あの子が邪魔だった…それだけなんです
あの子がいると 何も出来なくて
幸せにもなれない気がして
しぃは……………………………………

あの子が生まれたのは 桜の終わりの雨の日でした
しぃは三日三晩苦しんで ようやくあの子を産みました
初めての子でした 嬉しかったんです
あの時は

ベビの目が見えない事に気付いたのは それからまもなくでした
ご飯を目の前においても鼻を地面にこすり付けるようにしてご飯を探します
「ナッコ」と言ってフラフラと蛇のように這いずって しぃを探します
最初のうちは この子にはしぃしか頼れる存在はいないんだと思って
出来る限りの愛情と言う物で接してきました
魚の骨は全て取り去った物を食べさせ いつでもダッコして生活させました
これらが本当に愛情と呼ばれる物だったかは今となっては謎ですが

しぃはすっかりベビに抱き癖をつけてしまったようでした
しぃがどこに行こうとしても 常にナッコナッコと泣いてついてこようとします
ベビは一人で留守番するという事が出来ませんでした
魚もベビ一人では満足に咀嚼も出来ませんでした
うっかり魚の骨を喉につまらせ……そんな事 一度や二度ではありませんでした

ある日 しぃはベビが眠っている隙を見計らって
幼なじみのギコ君の家に遊びに行きました
ギコ君とは小学校以来 ずっと会っていなかったので
積もる話しがありすぎて 帰ってきた時には外はすっかり暗くなっていました
ダンボールのおうちについて ベビを見ると
ベビはダンボールの中で大量の便をして その中でスヤスヤと寝息を立てていました
底の方は染み出したオシッコで濡れてボロボロになっています
しぃがいやな気分でそれを見つめていると しぃのニオイに気付いたのか
ベビが起き出してきました そしてナッコナッコと五月蝿く泣き始めました
その時 しぃは今まで押さえていた物がなにかのフタをあけて飛び出してくるような
そんな感情が沸いてきた事を覚えています

それが憎しみというものだったというのは後の後で気がつきました

146 名前: 145 投稿日: 2003/04/06(日) 17:50 [ VJ6UmGSs ]

あの日以来 しぃはベビを一人ダンボールに残してギコ君とデートを重ねました
時には泊まりでデートをし 一晩中ベビを一人にする時もありました
せっかく楽しい気持ちでウチに帰ってきても 
ベビのナッコナッコという泣き声を聞いたとたん吹っ飛んでいくのは
前の事でよく知っていたからです

当然の結果というのか しぃのお腹にベビちゃんが出来たのは
数ヶ月後の事でした
ギコ君はしぃに結婚を申し込んでくれました
ベビの事が急激に邪魔になってきました
こんな障害をもったベビを連れてギコ君と結婚なんて出来ません
幸いなことにギコ君はこのベビの事を知りません

しぃはベビを置き捨てる事にしました

しかし それは失敗に終わりました
しぃのニオイを嗅ぎながらヨタヨタとずっと後をつけてきます
うざったらしいことにママ、ママという鳴き声のおまけつきで
しぃはその頃から ベビに幾度と無く暴力を振るうようになりました
こうする事で 早くしぃから離れて行って欲しかったのです
何回も何回もベビのお腹をつねったり オカオを叩いたりしました
それなのに ベビはしぃの後をいつまでもママ、ママといってはついてきたのです

そんなこんなをしているうち しぃのお腹はどんどん大きくなっていきました
もし このままベビをどうすることも出来ないまま 赤ちゃんを産んで
ギコ君の所にお嫁に行った時に 障害を持ったベビがいるのがギコ君に知れたら…
とたんに怖くなって 夜中考えてしまう事もしばしばありました

147 名前: 145 投稿日: 2003/04/06(日) 17:51 [ VJ6UmGSs ]

朝 しぃはいつものようにベビに食べさせる魚の骨を処理しようと思い
重いお腹を抱え どうにか魚の骨を処理していました
「まっててね 今 ご飯だからね」とベビに話しかけながら
だけど ベビは待ちきれなかったのでしょう
まだ しぃが処理をしていないほうの魚を食べ始めたのです
いつもなら しぃはその瞬間に魚を取り上げるのですが
その時は その様子を止めることなく漠然と見ていました

しぃの思った通り ベビは喉に骨を詰まらせて暴れ始めました
その瞬間 しぃはよかったと安堵しました
ーーーーこれで ギコ君のところに心配せずに行ける
これでギコくんとしぃの赤ちゃんと一緒に暮らせるーーーー
だけど それはしぃの浅はかな考えに過ぎませんでした
ベビは ゲホっと咳をして 喉に詰まった骨を吐き出したのです

しぃは その日 自分の手でベビを殺す事を決意しました
コイツのせいでしぃがギコ君に嫌われたら堪らないからです
いつもお散歩している時のように ベビをダッコして外に連れだし
遠くの高原まで連れて行きました
ベビはしぃにダッコされて嬉しそうです
誰もいない高原の中 ベビと遊びます
随分遊んで ベビが生あくびをし始めた頃
しぃは ベビを殺しました

泣き叫ばれないように ベビの口にペンチを突っ込んで
ベビの舌を抜きました
万が一引っ掻かれて怪我をしないように
ベビの手足の爪を抜き取りました
ベビは痛いのか 舌を抜き取られて声にならない声で泣きました
逃げられないように アンヨとオテテをちぎりとった時は
さすがに少々の罪悪感というものは生まれたのかもしれません
だけど その時のしぃには そんな事考えるヒマもなかったのです

ベビはウジ虫のように這いずりまわりながら しぃの事を探します
もう しぃには昔のようにベビの事をダッコするような心はどこにもありませんでした
ベビはクネクネと体をよじらせながら しぃの側にやってきました

しぃは ベビの頭を踏みつけました
バキィィィィだかメキィィィィィという音があたりに響き渡りました
「お前がいるとしぃはいつまでも幸せになれない お願い
早くしぃの前から いなくなって」
何度も 何度も叫びながら
しぃはベビの頭を踏みつけました

148 名前: 145 投稿日: 2003/04/06(日) 17:52 [ VJ6UmGSs ]
ふと我に返ると ベビは既に事切れていました
頭の中身をそこら中に散乱させ見えない目を飛び出させてボロボロの雑巾のようでした
しぃは 持ってきていたクッションのワタを取り出すと
ベビのグチャグチャになった屍を詰め込んで 
近くにあったゴミ箱に放り投げて帰りました

次の日
しぃはギコ君の元へお嫁に行きました
ふたりの間にかわいいベビちゃんが生まれたのは それからすぐの事でした

前のベビとは比べ物にならないほど ふたりの間に出来たベビちゃんは
愛しくて かけがえ無いものでした
とっても賢くて とっても愛くるしくて…とても幸せでした
もし ここにあのベビがいたら……
そんな事はとても恐ろしくてとても考えられませんでした
ただ 幸せな毎日をしぃは暮らしていました

しぃのベビちゃんはすくすく育って
チビしぃちゃんになりました
このまま幸せな日々が続きますように そう願っていたチビちゃんの誕生日の日
チビちゃんは車に跳ねられ2本のアンヨとシッポを根元から失いました

チビしぃちゃんはどうにか一命をとりとめました
ホッと胸をなでおろすギコ君の隣で しぃはこれがいつか自分が犯した罪に対する
「罰」なのだと思いました

チビしぃちゃんはあの日からずっとベットの上の生活です
鼻から管を入れて栄養を取り
おしめを毎日取りかえる生活を しぃは送っています
ギコ君はこの事で しぃの前からいなくなってしまいました
以前 自分の子を殺した事もばれてしまいました
白痴のように口からヨダレを垂らしているチビしぃちゃんをダッコしながら
しぃはあの時の罪に対する「罰」の重さを痛いほど実感するのです

でも……
あの時は本当に邪魔だったんです


本当に………


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