ある夏の日

Last-modified: 2015-06-07 (日) 10:17:22
98 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 22:25 [ rFMNtD7w ]
1/5

 酷く憂鬱な日だった。
どんよりと曇った空は地上の熱も湿気もすべて閉じこめて、鈍色に淀んでいた。

 「まったく……夏はイヤだねー。なんで僕がこんな引きこもりオタみたいな
生活送らなきゃいけないんだか。はぁ…」
蒸し暑い屋外に出る気はせず、部屋の中クーラーをがんがんにかけて
だらだらとスプラッタ・ムービー観賞にふけっていたモララーだったが、
いい加減ガイシュツの映画ばかりで飽きてきた。
手元のペットボトルが空になったので、冷蔵庫に向かう。
刺激の強い炭酸飲料でも飲まないとやってられない。
がちゃり、と冷蔵庫の扉を開けるが、飲み物のたぐいは一切無かった。
「っち…」
まとめ買いしてあったコーラはいつの間にか飲み尽くしてしまったらしい。
外に出るのは億劫だが、クーラーで乾燥した室内で飲み物無しは
辛かったので我慢して買い出しに行くことに決めた。

 うだるような暑さの中、無駄に元気なちびギコどもがキャッキャと煩く遊んでいる。
コンビニエンスストアーの空調がとても快適だっただけに、外の暑さが身にしみる。


チビどもの甲高い声も、耐えられないほどに、正直、うざい。



………殺しちまいたいくらいに。

99 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 22:26 [ rFMNtD7w ]
2/5

 鬼ごっこをしているらしいちびフサが都合良くこちらに走ってくる。
「チビタンこっちデチよ~!! ……キャッ!」
すれ違う瞬間に胴体を鷲掴みにして抱き上げた。
「なっ何するんデチか!! 放すデチよ!! 高貴なフサタンになんかしたら
お前なんかただじゃおかないんデチからね!!!」
見ているだけで暑苦しい、赤茶のフサフサした毛並み。
苛立って、モララーは力任せに背中当たりの毛束をむんずと掴むと
ばりばりっと爽快な音を立ててむしり取った。
「アキャアアアアアアッッッッッッッッ!!! 何するデチ! 何するデチ!!!
フサタンの綺麗なお毛毛が……むがっ! げほっケヒャァ………」
勘に障る悲鳴を押し込めたくて。手の平に残る先の毛束を口に押し込めた。
「この糞暑い中ぴーぴーキャアキャアうざいんだよ、クソガキ」

気怠げな曇り空の下、気晴らしのちびフサ虐待に興じるのもまあ、悪くない。

100 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 22:26 [ rFMNtD7w ]
3/5

 まずは基本の耳もぎ。みちみちと繊維の千切れる音を立てながら
頭部から切り離されていくその様はいっそ幻想的で、思わずじっくりと
見つめ倒してしまう。細胞の破壊されていくその音が快感で、
悲鳴なんかに邪魔されたくないから口にはめいっぱいむしり取った
毛束を詰め込む。まあ、勿論、あとには悲鳴を楽しむためのイベントも
待っているので窒息しない程度に気を使うけれど。
涙を流しながらなんとか悲鳴を上げようとして毛束に咳き込むちびフサの
表情もたまらない。サディズムが刺激されて、モララーの全身をぞくぞくさせた。

 耳が終わったら、次は尻尾だ。強すぎず弱すぎず、絶妙の力加減で
引っ張ると、皮だけがずるりと剥け落ちる。いわゆるずる剥けというヤツだ。
皮膚が裂けた部分から赤黒い肉がだんだんと覗いてくる様子はやはり
幻想的で、モララーはぬたぬたと光る肉をしばし見つめていたが、
気の早い蠅どもがもうたかってきたので手早く済ませてしまうことにした。

 「まったく、お前らのせいで暑いの思いだしちまったじゃねーかよ」
蠅を手で追い払いつつ、フサの口内に詰めていた毛束を抜き出す。
「げほっ! げほ…おえっっ!! えうぅ…やめ……て………くだちゃ……」
涎にまみれた毛に嫌悪感を覚えたが、べったりと手に付着したそれを
フサの体に擦り付けることでそれは押さえ込んだ。

また数匹、新しい蠅がたかってきた。

101 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 22:27 [ rFMNtD7w ]
4/5

「あぎゃあぁぁあああっ!!!! やめ……ッ! いひぃぎゃぁぁああううッッ!!」
背中の、皮膚のたわんだ部分を両手でつかみ、力いっぱい引き裂いた。
モララーの白い毛にびちゃびちゃと赤黒い液体がふりかかり、
鮮やかなコントラストを描き出す。ばりばりと景気のいい音を立てて
肉体から毟られていく皮膚は、程良い弾力でモララーの手を楽しませる。
「あ、あう……えひぃ………ぃぅぅぅ」
肉だるま状態になって蠅にたかられている元ちびフサ。
蠅の量も随分増えてきたことだし、もうそろそろ潮時だろう。

 まだ少しばかりひんやりしている炭酸飲料のボトルを袋から取り出すと、
キャップを器用に片手でクルリと開けた。ぷしっと爽やかな音が耳に響く。
「はい、仕上げ。1本まるまる使ってもらえるなんて光栄に思えよ~」
じゅわわわわわわ。
「――――――――――~…………………!!!!!」
ボトルを元ちびフサの真上で逆さにすると、無色透明の炭酸飲料が
ぼたぼたと飲み口の部分から落下していった。
むき出しの肉に炭酸の刺激が広がり、声にならない悲鳴を上げる肉塊の姿に
満足したモララーは、重たいビニール袋を担いで帰路についた。
憂鬱さも、けだるさも、どこかに消えていた。
今夜もきっと熱帯夜だ。

102 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 22:29 [ rFMNtD7w ]
5/5

 翌朝。昨日とはうってかわって爽やかにからりと晴れた空の下。
当分のたっぷり含まれた液体を振り掛けられた元ちびフサは
蠅にたかられて真っ黒になっていた。腐肉のあまやかな匂いは
この青空に不釣り合いで、ひたすらに醜かった。