68 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/31(金) 22:56 [ VJzMamDs ] 次の日、おにーには何度も嘔吐を繰り返した。 「ハァハァ、苦しいのワッチョイ。ウ、オゲェッ……ヒィヒィ」 今でも、口の中をはね回るミミズの感触と味が、ありありとよみがえってくる。 そして、次の食事の時間にモナーは、再び図鑑を開いた。 「カエルのページが出たよ」 「も、もしかして、蝿を食べさせる気デチか?」 モナーは、にこやかに首を振った。 「蝿を捕まえるのは、大変モナ」 おにーには、ホッと安堵の息をついた。 モナーは、庭へと姿を消した。 数十分後、ブリキ缶いっぱいに何かを捕まえて戻ってきた。 「何デチか、それは?」 「見るモナか?」 缶の中で、蠢いているのは、ブリブリと太ったナメクジ達だった。 ……カエルはナメクジも食べる。 「嫌ぁぁぁっ!! そんなの食べたくないワチョォ!!」 暴れるおにーに、しかしどんなに暴れようが、モナーに押さえつけられてしまう。 「はい、アーンするモナ」 おにーにの口をこじ開けて、ナメクジを缶から箸で掻き出すと、 ナメクジは吸い込まれるかのように、おにーにの口へ落下した。 ヌメヌメした粘液、ザラザラした皮膚。 とめどなく涙を流しながら、おにーには気を失った。 モナーは心配そうに、おにーにを見た。 「きっと風邪だモナ。暖かくするモナ!!」 モナーは、おにーにを暖めることにした。 おにーにの口には、まだ無数のナメクジが詰め込まれたままだった。 69 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/31(金) 22:57 [ VJzMamDs ] モナーは、おにーにを布団に寝かせた。 敷き布団2枚、毛布3枚、布団2枚。 部屋に暖房のかけてやった。 エアコン30度、石油ストーブ強。 それでも寒いといけないので、布団の中にカイロと湯たんぽを入れてやった。 「これで大丈夫。早く元気になるモナ」 モナーは用事があるので、家を出た。 もちろん、鍵はキチンと閉めてある。窓だってちゃんと閉め、鍵をかけた。 しばらくして、あまりの不快感におにーには目を覚ました。 体は汗でグッチョリで、米も海苔もベトベトになっている。 そして、すさまじい吐き気。熱気とナメクジの所為だろう。 胃から、すっぱい液が迫り上がってきて、胃の中にあったナメクジの肉片を口に押し戻した。 おにーには、それを吐き出すと、毛布で口をぬぐった。 だが、胃の中の物が無くなっても、不快感はおさまらなかった。 「暑いのワッチョイ。苦しい、苦しいよ……。誰かたちけてデチ」 このおにーには、暖房器具の止め方を知らなかった。ドアや窓の開け方も知らなかった。 外は雪、白くて美しく舞い落ちる雪を窓ごしに眺めながら、おにーには暑さに身もだえした。 おにーには、暑さで頭が割れそうだった。 脱力感や吐き気に弄ばれながら、おにーにはモナーの帰りを待つしかなかった。 鼻からは、汗と鼻水の混じった液が滴っている。 目はショボショボとして、ろくに目を開けていられなかった。 口からは、胃液を垂れ流している。 「お外に……出たい……デチ」 虚ろな瞳で、窓の外の雪景色を見ながら、おにーには無限とも思える時間を過ごした。 モナーが帰ってきたときには、おにーには瀕死だった。 が、モナーの必死の看病で一命はとりとめた。 そう、おにーにの苦しみはまだ終わらない。