おにーにの悲劇 2

Last-modified: 2015-06-07 (日) 10:21:09
68 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/31(金) 22:56 [ VJzMamDs ]
次の日、おにーには何度も嘔吐を繰り返した。
「ハァハァ、苦しいのワッチョイ。ウ、オゲェッ……ヒィヒィ」
今でも、口の中をはね回るミミズの感触と味が、ありありとよみがえってくる。
そして、次の食事の時間にモナーは、再び図鑑を開いた。
「カエルのページが出たよ」
「も、もしかして、蝿を食べさせる気デチか?」
モナーは、にこやかに首を振った。
「蝿を捕まえるのは、大変モナ」
おにーには、ホッと安堵の息をついた。
モナーは、庭へと姿を消した。
数十分後、ブリキ缶いっぱいに何かを捕まえて戻ってきた。
「何デチか、それは?」
「見るモナか?」
缶の中で、蠢いているのは、ブリブリと太ったナメクジ達だった。
……カエルはナメクジも食べる。
「嫌ぁぁぁっ!! そんなの食べたくないワチョォ!!」
暴れるおにーに、しかしどんなに暴れようが、モナーに押さえつけられてしまう。
「はい、アーンするモナ」
おにーにの口をこじ開けて、ナメクジを缶から箸で掻き出すと、
ナメクジは吸い込まれるかのように、おにーにの口へ落下した。
ヌメヌメした粘液、ザラザラした皮膚。
とめどなく涙を流しながら、おにーには気を失った。
モナーは心配そうに、おにーにを見た。
「きっと風邪だモナ。暖かくするモナ!!」
モナーは、おにーにを暖めることにした。
おにーにの口には、まだ無数のナメクジが詰め込まれたままだった。

69 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/01/31(金) 22:57 [ VJzMamDs ]
モナーは、おにーにを布団に寝かせた。
敷き布団2枚、毛布3枚、布団2枚。
部屋に暖房のかけてやった。
エアコン30度、石油ストーブ強。
それでも寒いといけないので、布団の中にカイロと湯たんぽを入れてやった。
「これで大丈夫。早く元気になるモナ」
モナーは用事があるので、家を出た。
もちろん、鍵はキチンと閉めてある。窓だってちゃんと閉め、鍵をかけた。
しばらくして、あまりの不快感におにーには目を覚ました。
体は汗でグッチョリで、米も海苔もベトベトになっている。
そして、すさまじい吐き気。熱気とナメクジの所為だろう。
胃から、すっぱい液が迫り上がってきて、胃の中にあったナメクジの肉片を口に押し戻した。
おにーには、それを吐き出すと、毛布で口をぬぐった。
だが、胃の中の物が無くなっても、不快感はおさまらなかった。
「暑いのワッチョイ。苦しい、苦しいよ……。誰かたちけてデチ」
このおにーには、暖房器具の止め方を知らなかった。ドアや窓の開け方も知らなかった。
外は雪、白くて美しく舞い落ちる雪を窓ごしに眺めながら、おにーには暑さに身もだえした。
おにーには、暑さで頭が割れそうだった。
脱力感や吐き気に弄ばれながら、おにーにはモナーの帰りを待つしかなかった。
鼻からは、汗と鼻水の混じった液が滴っている。
目はショボショボとして、ろくに目を開けていられなかった。
口からは、胃液を垂れ流している。
「お外に……出たい……デチ」
虚ろな瞳で、窓の外の雪景色を見ながら、おにーには無限とも思える時間を過ごした。
モナーが帰ってきたときには、おにーには瀕死だった。
が、モナーの必死の看病で一命はとりとめた。
そう、おにーにの苦しみはまだ終わらない。