ごっつアブいかんじ2

Last-modified: 2015-06-26 (金) 02:41:47
712 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:38:47 [ Ov819D7. ]
ごっつアブいかんじ2

「は~、今日も仕事が大変だったぞ」
夜中ワンルームマンションに帰ってきたギコはコタツに入り自分の肩を揉みながら
独り言をいう。

「明日もサービス残業で大変・・・」

ガン! ガン! ガン!
誰かが窓を叩いている。

「ゴルァ、なんだ?」
気になったギコがコタツから出て窓まで歩いていき鍵を開ける。
すると、窓が一気にガラッと開けられて一人のしぃと目が合った。

ジャジャジャジャーン(効果音)

一目で怪しさ爆発のしぃだった。他人の家の窓を叩いている時点で怪しいが
今やそこは問題にならない。外見が特に怪しかったのだ。
黒いマントを羽織り、その下は黒いビキニのみでヘソも足も丸出し、
首元にはオシャレにドクロのネックレス、頭には高そうなサークレット、
どこをどう見ても悪の組織の女幹部か変質者である。
どっちにしてもギコにとっては関わりたくない相手だ。

「ゲー!何者だ!」
そう言ってしまってから後悔する。
何者だなんて言ったら相手が名乗ってしまう、つまり深く関わってしまうのだ。

ギコの不安道理に怪しい格好のしぃは窓から家に上がりこみながら名乗りを上げる。
「ホーホホホッ!私の名前はドクロしぃ。貴方をアフォしぃ帝国に連れ帰り
性奴隷にしてやるわ!」
しぃの正体は悪の組織の女幹部かつ変質者だった。最悪である。

713 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:39:17 [ Ov819D7. ]
しかし、悪が名乗りを上げたら正義の味方がやってくるが世の理。
悪を打ち倒すべき声が室内に響いた。
「まてぃ!」

「はにゃーん、何者!!」
身構えながら辺りを見回すドクロしぃ。
間を置かず玄関のドアが開きヒ-ローが登場した。

「耳もぎのモナー!」
堂々と名乗りを上げてドクロしぃに構えをとるモナー族の男。
それを合図に窓から天井から床下からクローゼットから次々と正義の味方が現れる。

「皮はぎのモララー!」
「耳もぎのレモナ!」
「耳もぎのニダー!」
「皮はぎのつー!」

新たな四人のヒーローは順に名乗りを上げ、モナーの周りに集まっていく。
そして最後に全員で決めのポーズをとって一斉にお決まりの言葉を叫んだ。

「「「「「五人そろって虐殺戦隊コロスンジャイ!!」」」」」

その運命的ともいえるタイミングのいい登場にギコはただ感動し、ドクロしぃは
苦々しい表情で事の行方を見ていた。

「さあ、今のうちに逃げるんだ!」
モララーがギコの手を取って玄関へと逃がし、外へ出て行ったのを確認した後、
戻ってきたモララーを含む全員でドクロしぃの前に立ちはだかる。
「さあ、かかってこい!ドクロしぃ!」
ここに正義のヒーロー達対悪の幹部という黄金パターンが出来上がった。

714 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:39:52 [ Ov819D7. ]
「ちがう」
だが、悪の女幹部から帰ってきた返事は誘拐を邪魔された事による憎悪に燃えた
物ではなく、ヒーローの存在そのものを否定するかのような冷たい言葉だった。
そして、その顔はさっきまでの高笑いをあげていたハイテンションなものでは
無くなっていた。
ドクロしぃはまずはモナーに向かって確認の意味を込めて質問した。

「あなたの名前は?」
「耳もぎのモナー」
「うん、あなたはまあいいわよ。さあどうぞ」
しぃはモナーの手元にしゃがみ込み頭を傾けた。
「もぎなさい」
「へ?」
予想外の事態に困惑するモナー。
「いいからもぎなさい。あんたは私の耳をもぐ。その為にここにきたんでしょ」
ドスの聞いた声でもう一度言うドクロしぃ。モナーの顔に冷や汗が伝う。

モナーはもう少し躊躇してから右手を上げ、武器の名を呼んだ。
「モナー・ミミモギブレードー」
モナーの手の中に武器が突如現れる。その形・大きさは誰が見ても唯の
果物ナイフである。しかし、耳もぎの為の武器としては果物ナイフでも
十分な威力を持つのだ。


「えっと、本当にいいんですか?」
「早くしなさい」
モナーは武器を構えドクロしぃの右耳に狙いを付けた後に念を押して聞き、
肯定の返事の後そのナイフを振り下ろした。

ひょっとしたらこのしぃは今の自分達よりずっと強くて果物ナイフなんか簡単に
耳の筋肉で受け止める事ができるのだろうか。
モナーはそう考えたが、ドクロしぃの右耳はいとも簡単に切り落とされた。

715 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:40:49 [ Ov819D7. ]
だが、そこからが違った。ドクロしぃは悲鳴を上げて痛がったり右耳をを失った事に
狂乱する事なく右耳のあった箇所から血をドクドクと噴出し顔を真っ赤に染めながら
レモナの方を見て、赤く濡れたその口を開いた。

「あなたの名前は?」
「耳もぎのレモナです」
迫力に負けて丁寧に返してしまうレモナ。
「まああなたもいいわ」
ドクロしぃはモナーの時と同じ様にレモナに頭を下げた。
「もぎなさい」

ただもぐ耳が左耳なところだけが違った。
「レモナ・ミミモギバトルハンマー」
トンカチを手に取り左耳に何度も何度も叩きつける。
モナーの果物ナイフが素早く耳を切り落とし相手に恐怖を植え込む為の
武器なのに対し、レモナのトンカチは本来耳もぎに不向きで耳をちぎりかつ
それと同時に頭部や顔にダメージを与え外見を醜くする事が主な目的とする
武器である。
その為、ドクロしぃの左耳はちぎれる事なく土佐犬のように潰れて広がっていく。
そして何度もトンカチを叩きつけているうちに頭蓋骨が陥没し衝撃で左目が
眼球から飛び出してもまだ左耳はちぎれない。

「まだ?まだなの?」
トンカチの下から聞こえてくるドクロしぃの声。それには明らかに苛立ちが
含まれているのがレモナにも分かった。
これ以上長引かせると何をされるものか分かったものじゃない。
レモナはトンカチを捨て、頭部とほぼ一体化した左耳を両手でつかみ強引に
引きちぎりにかかる。
レモナが引っ張った方向に対して反対側にドクロしぃが踏ん張った事と
耳の付け根がぐちゃぐちゃに潰されていた事もあり、思ったよりも
あっけなく左耳はちぎれた。既に床に血だまりが出来るほど出血していたので
右耳をちぎった時ほどの出血はなかった。
その代わり耳の下からは骨が見えるほどの深いグロテスクな傷が現れ、
上から見ると赤く染まった頭部の中でそこだけ白く見える。

716 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:41:24 [ Ov819D7. ]
ドクロしぃの顔の鼻から上は既に元の形を留めていなかった。
顔から飛び出した左目は既に完全に視力を失い、残された右目も目蓋が腫れ、
その上血が入っている為殆ど前が見えないのだろう。
両耳を失った頭部は左半分が傾斜をつける様にへこみ砕けた骨が露出しており、
高級品であったはずのサークレットは見るも無残に変形し孫悟空の輪のように
頭部にくいこんでいる。
とっくに気を失いあるいは発狂あるいは死んでしまってもおかしくないダメージ。
しかしそれでもドクロしぃは倒れない。歯を食いしばり右目の血をマントで拭い
次の相手であるモララーを確認し歩いていく。

ドクロしぃが一歩歩くたびに粘り気のある血が床に滴り落ち、顔色はどんどん悪く
なっていく。その姿を正面から見ているモララーだけでなく、この場にいないギコ
を除いた全員がこの後の展開に関係なくドクロしぃの命が残り少なく、おそらく
今日中には死ぬであろう事に気付いていた。
そして、ドクロしぃは命の残り時間を確実に削りながら四歩歩きモララーの前に
立った。

「あなたの名は?」
「か、かわはぎのモララーです」
「そう、あなたもいいわ」
今度はマントをはずして背中を向けてから言葉を続ける。
「さ、やりなさい」

「モララー・デーコンオローシー」
他の二人同様に右手に武器を召還するモララー。
モララーの手に現れた武器はその名の通りにおろし金であった。
それを背中に当て一心不乱に前後に動かし皮膚をこすり落としていく。

数回こすりつけただけで背中の皮が破れ、紐が切れたビキニが床に落ちる。
そこからもう数回で背中の皮は八割がた剥がれ頭部と同じく血で真っ赤になる。
その間ドクロしぃは悲鳴や恨み言を一言も言わず、痛みに耐えていた。それが
ヒーロー達の心にずしりと堪える。
彼らはしぃ虐殺の為に結成されたヒーロー戦隊であり、血も涙もなく残酷に悪の
しぃを虐殺できるものだと思っていた。しかし、それは思い上がりだった事を
今知った。ここにいるしぃは虫けらではなく自分たちと同じ人間だった。
彼女が何に怒り何のために自分の体を傷つけさせているのかはまだ分からないが、
その姿はストレス発散の爽快感を呼ぶものではなく己の命を懸けて彼らにメッセージ
を送ろうとする尊いものとして映っていた。

717 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:42:06 [ Ov819D7. ]
背中から胸と腹に、そこから両手両足に何十分も掛かりながらモララーは全身の
皮膚をこすり落としていく間、自分でも理由は分からないが頭の中で何度も
ごめんなさいと繰り返していた。
顔の皮はぎはすぐに済んだ。レモナの攻撃で既に結構めくれあがっていたからだ。

「残った二人こっちにきなさい」
ドクロしぃの声は注意しないと聞こえないぐらい小さかった。
もうドクロしぃの目は見えない。手足も神経が切れてしまったので腰をおろし壁に
もたれかかっている状態である。口も顔の皮はぎの時に唇を失い、歯も半分以上
失っていたが奇跡的にまだ少しだけしゃべる事ができた。そして聴力もかろうじて
残っている。
ドクロしぃはニダーとつーが近づいてきた事を気配と足音で感じ、
二人に名を聞いた。
「耳もぎのニダー」
「皮はぎのつーです」

二人の名を聞き口の端を吊り上げるドクロしぃ。ここまで長くつらかったが
これでようやくこいつらに間違いを教える事ができるその思いが全身に広がる
激痛を少しだけ和らげた。
ドクロしぃは喋れる内に伝えようと早口で語りだした。
「で、あんたらはどうやって私の耳をもいで皮をはぐの?」


「「「「「あ」」」」」

同時に自分たちのメンバー構成のおかしさにやっと気付く五人。
「おかしいでしょ?耳もぎ三人に皮はぎ二人て。私は耳二つしかないし皮は一度
しかはげないし」
「あ、あーはい。そうですね」
「分かったら今回は戦うのあきらめて役割分担をちゃんとして出直してきなさい」
「はい、どうもすみませんでした」
コロスンジャイの五人は頭をさげ玄関から退散した。

718 名前:耳もぎ名無しさん 投稿日:2006/06/03(土) 22:42:33 [ Ov819D7. ]
マンションの入り口でずっと待っていたギコが帰ろうとしているモナー達を見つけ
声を掛ける。
「ヒーローさん、さっき戦い終わったところですか?」
「うん、まあ楽な勝負だったよ。というか一方的だったね」
モナーの返事は一応嘘ではない。
「じゃあ俺部屋に戻りますね。ありがとうございました!」
ヒーロー達に別れを告げてギコは自分の部屋に戻っていった。

ギコが部屋に戻ると壁際に耳と皮を失ったドクロしぃの見るも無残な姿があった。
恐る恐る体に触れてみるとまだ暖かくついさっき死んだ事がわかった。
「やっぱヒーローってすげー!!」
ギコは何も知らずに感動した。部屋はかなり血なまぐさいが今日はぐっすり眠れそうだ。

終わり