ごみ箱としぃ親子

Last-modified: 2020-12-08 (火) 14:47:38
84 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 14:59 [ O8HYloKc ]
「ハニャーン…ハニャーン…」
しぃは、誰もいないだだっ広い空間で、独り鳴いていた。
だが、その声に答えるものは誰もいない。
ただ虚しく、宙を漂うだけであった。
「シィノアカチャン!! シィノアカチャン!!」
首が折れそうなほどに振って、我が子の姿を探す。
すると、抑揚のない声が答えた。
「探し物は、コレですか?」
声の主は、モララーであった。
その手には、1匹のベビしぃが掴まれている。
「ナッコ!ナッコ!」
必死にもがいて、モララーの手から逃れようとするが、当然かなうはずもない。
彼の隣に置かれていた箱には、ベビしぃとベビギコが1匹ずつ閉じ込められていた。
「ミューミュー!」
ベビギコは箱から身を乗り出して、必死に鳴いている。母親の姿を見つけ、助けを求めているのだろうか。
ベビしぃのほうは、既に恐怖のあまり涙をこぼしながら、身体を硬直させていた。
その箱には、無情な3文字が刻まれている。

「ゴ ミ 箱」

85 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 15:00 [ O8HYloKc ]
「シィィィィ…」
血の気のひいた顔で、その地獄絵を見るしぃ。
モララーにつかまれたベビは、「ハナーン…ハナーン…」と、か細い声を絞り出し始めた。
その姿を知覚した途端しぃは奮い立った。
我が子を見捨てるわけにはいかない。
すくんだ身体に鞭を打ち、必死に威嚇の体勢を取り、
勇気を振り絞って、その悪魔に吼える。
「シィノアカチャン カエシナサイ!! コノギャクサツチュウ!!」
モララーは冷酷に、さも楽しんでいますといった様子で、嬉々として、言った。
「そんなに返してホスイのかい?」
それは意外な言葉であった。『虐殺厨』は残念ながら、そんなことで素直に返しはしないだろうという。彼女はそれを知っていたからだ。
だが、直後、その真意を知ることとなる。

86 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 15:00 [ O8HYloKc ]
ブンッ

モララー腕が虚空を切り裂く。
彼に掴まれていたはずのベビは、既にしぃの眼前に迫っていた。
声を失うしぃ。何も知らないベビは、助かったとでも思ったのだろう、
嬉しそうに「ナッコー!」と言いながら、母親に飛び込んでいった。

ボンッ

骨が砕け、肉がつぶれる音。しぃの、声にならない声。
満足そうなモララー。
しぃは我が子の身体を受け止めようとしたが、片手を吹き飛ばされる。
ベビの脆い身体も、衝撃に耐えうるはずがなく、顔面がつぶれ、片耳が吹き飛んだ。

87 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 15:00 [ O8HYloKc ]
親子の血が混じりあいながら、四方八方に飛び散った。
「ミィィーーーーッ!!」「キチィィィッ!!」
箱から身を乗り出して喚いていたベビギコは、力なく箱の縁から前足を離す。
もう一匹のベビしぃは、身を震わせながら目をそらす。
「アカチャン…シィノアカチャン…」
無残な姿を晒す我が子に、必死に呼びかけるしぃ。失った片手など、二の次であった。
だが、ベビがその呼びかけに答えることなどできるわけがない。
「次はお前だからな!」という、モララーの残酷な言葉に重なるだけだった。
しかし、悲劇はまだ終わらない。
「オナガイ…オヘンジシテ…」
その悲壮な言葉を遮り、モララーは言った。
「ヒャッハァ! 『シィノオテテ』じゃなくて『シィノアカチャン』かい!? 泣かせるねぇ! ヒャァーッハッハッハッハ!!」
「ヒドイ…ナンテコトヲ」
わざと大げさに笑う。憎悪とも悲しみとも取れるしぃの言葉は、彼の耳には届かなかった。
そして、先ほど掴んだもう一匹のベビしぃを、哀れな母親に投げつけようとした瞬間、悲劇が起きた。

88 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 15:01 [ O8HYloKc ]
ガブッ

ベビが、自らを掴んでいるモララーの腕に噛み付いたのだ。痛みのあまり、思わず声を上げるモララー。
だが、それは彼の狂気を鎮めるどころか、更に油を注いだ。
「いてぇな糞チビがッ!!」
怒りに任せて、ベビの頭と胴体を引き裂いてしまったのだ。
深紅の臓器を晒す面から、これでもかというほどに鮮血が溢れ出す。
「シィィィィィィィ!!」
しぃは耐え切れず、しぃ族特有の悲鳴を上げた。
モララーは、ベビの頭、胴体を、立て続けに投げつける。
「しつけが悪いじゃねーか! てめぇは母親シカークだな!!」

ボンッッ! ドバキャッ

89 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 15:01 [ O8HYloKc ]
彼の投げた『ボール』は、しぃにぶつかった瞬間砕け散った。彼女の右足、右耳を道連れに。
「氏ねぇぇぇぇぇ」
モララーは、残されたベビギコを掴み上げると、血を撒き散らしながら宙を舞うしぃに投げつけた。
「グヂィィィィィ…ハニャッ!!」
ベビギコは無数の肉片化して地面に散らばる。
しぃは両手、両足を失い、達磨になって地面を転がる。
「へっ、ブザマだなぁ…」
「ハニャァァァァ…」
「ハニャーン」としかいえぬほどに追い詰められたしぃに迫るモララー。
芋虫のように張って、モララーから逃げようとするが、彼がそれを許すはずがない。
モララーは彼女の命乞いに嘲笑で答えると、手を振りかざした。

90 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/04(火) 15:01 [ O8HYloKc ]
次の瞬間そこに転がっていたのは、かつて親子だったもの。
もう既に、血肉のじゅうたんとして虫に食われてゆくだけの残骸でしかない。
「殺った…」
モララーは「ゴミ箱」に彼らを弔うと、
大きなため息を一つ残して、鮮やかな都会に紛れていった。

関連作品→母親シカーク - 当小説のAA版。