936 名前: 1/4 投稿日: 2003/09/30(火) 02:55 [ lpivPhLU ] ちびギコの朝は早い。 今やごみ漁りにも競争が起きる時代である。 かよわい彼らは野犬はおろかカラスにさえ勝てないだろう。 彼らには夜明け前しか食事のチャンスはないのだ。 ガサ・・・ガサゴソ・・・ 「まったく・・・なんでチビタンがこんなはやくおきなければならないでち・・・。」 「ミューミュー」 午前3時にゴミを漁るちびギコ兄弟。弟はまだベビのようだ。 身の程をわきまえないセリフが憎たらしい。 コンビニと寿司屋の間にあるゴミ集積所は酷い散らかりようだ。 「やった!イカとノリ弁でち!」 「ミュー♪」 お目当ての物を見つけた兄弟は、その場でがっつき始めた。 汚く弁当を食い荒らし、噛み切れないイカを振り回す。 さらに散らかる集積場。片付けるほうはたまったもんじゃないだろう。 「おまいら!何してやがる!」 寿司屋のモナーが飛び出してきた。夜中にガタガタとデカイ音出せばそりゃあ起きるだろう。 「寿司ネタに新鮮さがないでち!まあお代はこれで十分でちねー!」 「バフゥッ!!」 ベビを咥えて逃げるチビ、でかい屁をかまして逃げていく。 「あのクソチビ!殺してやる!」 「だいぶ荒らされたみたいですね・・・」 コンビニ店長のモララーがゆっくり歩いてきた。 937 名前: 2/4 投稿日: 2003/09/30(火) 02:56 [ lpivPhLU ] 「カラスや野犬が出る前に片付けなきゃならないんだ。やってられないモナ!」 「これじゃ朝までかかりそうだ・・・うちの弁当も荒らされてるな。」 「あのクソチビ保健所を呼んで・・・」 「まあ待ってくださいよ大将。お互い食い物扱う商売。保健所は呼べないでしょう」 「じゃあどうするモナ!」 「こうすればいいだけですよ・・・」 次の晩もちびギコ兄弟はゴミ漁りにやってきた。 「あの親父はなんで大トロをださないでちかね・・。頭悪すぎでち」 「ミュー」 ふざけたセリフを吐きながら2匹が歩いてくる。 「なんでちか?これ?」 そこにあるのはゴミ袋ではなくおおきな箱だった。 収集BOXと書いてある。当然鍵もついている。 「こんなもの!壊してやるでち!」 渾身の力を込めた引っかきは、ひ弱な爪を根っこから2,3本折っただけだった。 「ヒギャー!痛いでちぃ!」 泣き叫ぶちびギコ。小便も漏れる。横ではベビも泣きわめく。 影で見ていたモナ大将とモラ店長。笑いを堪えるのに必死である。 「うう・・こんなとこもういいでち・・・」 「よし今こそあのクソどもを・・・」 「まあまって。後3日ほおっておきましょう」 「なんでモナ!」 「3日後にわかりますよ・・・」 納得のいかないモナ大将を抑えて、モラ店長は2匹をそっと見送った。 938 名前: 3/4 投稿日: 2003/09/30(火) 02:57 [ lpivPhLU ] ガリ・・・カリ・・・ガリ・・・カリ・・・ 3日後の夜、モナ大将は弱弱しい音で目が覚めた。 外に出てみると、すでに来ていたモラ店長が目配せする。 そっとゴミ集積場をのぞいてみると、そこには 血まみれの手で力なく箱を引っかくちびギコ兄弟がいた。 やせ細りうつろな目。すでに爪はほとんど剥がれている。 「ゴハン・・・ゴハン・・・」 「ミィ・・・ミィ・・・」 あれから3日間。ちびギコ達は何も口にすることができなかった。 夜中にゴミを漁れるのはあの場所しかなかったし、夜があければ ゴミは多くでても野犬やカラスに全て奪われる。隣町を目指そうともしたが ひ弱なベビをつれて縄張りを抜けることなど危険すぎてとてもできない。 結局、彼等は、かつての御馳走欲しさにここへ戻ってきたのだ。 「元気そうだモナ、クソども。」 「なんかフラフラしてるね。酔ってんの?」 「オネガイ・・・ゴハン・・・ノリダケデモ・・・」 「ミ・・・ミ・・・」 涙を流し、足にすがる。 939 名前: 4/4 投稿日: 2003/09/30(火) 02:58 [ lpivPhLU ] 「汚い手で触らないでくれるかい。」 軽くモラ店長が足を上げると、チビはベタリと地面に落ちる。 「プスゥ」 ぐったりとした体から屁がもれた。 「そういやお代のかわりに屁をこくんだったね、君は」 「どうせこくなら・・・」 モナ大将の足がチビの腹にかかる。 「でかい音を出して見るモナ!」 「グベッ」「バヒュゥウ」 力の限り踏み潰されたチビは、血の塊と屁を出して事切れた。 「ミィーーー!」 「そういやこいつもいたんだっけ」 「ほっとくモナ。朝には死んでるモナ」 兄の体に擦り寄って泣くベビを尻目に2人はそれぞれ店に戻る。 翌朝、ゴミBOXの前に2匹の死体があった。 力尽きるまで兄の体を引きずったのだろう。2匹とも箱に手をかけて死んでいた。 「そんなにゴミが好きだったなら、一緒にしてやるよ」 モラ店長は箱の中に2匹を放り込むと、夜勤明けの眠い目をこすりながら 帰るのだった。 完