カードゲーム

Last-modified: 2015-06-04 (木) 02:24:39
382 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 18:59 [ Dc7I1YzU ]
大きな箱を抱えたモララーが、モナーの家へと遊びに行った。

「ようモナー! 遊びに来てやったからな!」
「待ちかねたモナ。早速プレイルームに行くモナ」
「今日はコテンパンにやっつけてやるからな!」
「それはこっちの台詞モナ!」

二人は『プレイルーム』と呼ばれる部屋に入った。
殺風景な部屋で、壁際にテーブルと対面するように椅子が2脚。
テーブルの上には秒針しか無い時計のような物が置いてる。
そして周りはガラクタがあふれ返っていた。

モララーが椅子に座り、持ってきた箱を開け、
懐からトランプのようなカードを出した。
モナーはガラクタの中から、モララーが持ってきたのと同じような箱を引きずってきた。
そしてもう1脚の椅子に座ると、彼もまたトランプのようなカードを取り出した。

「今日のデッキはすごいからな!
 せいぜい上手くシャッフルすればいいさ!」
モララーが取り出したカードをモナーに渡す。
「こっちも自信作モナ!
 そう簡単に負けはしないね!」
モララーのカードを受け取る代わりにモナーは自分のカードを差し出し
そして二人は相手のカードをシャッフルしだした。

383 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 18:59 [ Dc7I1YzU ]
どうやら二人はトレーディングカードゲームを始めるらしい。
お互いのカードを見ずにシャッフル。
ダイスを振ってイニシアチブを決める。
どうやら先行はモナーのようだ…

「カードをひいて… (ニヤ
 いやー、悪いねー、いい感じでシャッフルしてもらったみたいで…
 『プリースト』のカードを『教会』に配置するモナ」
モナーはテーブルの自陣、「教会」と書かれた部分に「プリースト」のカードを置いた。
それと同時に後ろの箱から一匹のちびフサを取り出して、床に立たせた。
「このふさふさを『プリースト』にするモナ」
モナーは終始笑顔で行動している。よっぽど初期カードが良かったのだろう。

「フゥ、ヤットデラレタデチ」
ちびフサの方は狭い箱から出る事が出来てほっとした顔をしている。
耳を澄ますとモナーやモララーの持ってきたの箱の中から
「僕も早く出して欲しいデチ」「苦しいデチ」「タチケテ…」
と言った声が聞こえてくる…

「オジチャン、お願いデチ、仲間を出してあげて欲しいデチ」
ちびフサプリーストはモナーに懇願するが、モナーはカードを見ながら
「すぐ出してやるから邪魔するな」と、無表情な声で答えるだけだった。

「で、このプリーストを『冷ややかな目の盾』で補強するモナ!」
モナーは手札からもう一枚カードを出し、先ほどのプリーストの上に重ねる。
と同時にいきなり席を立った。
部屋の隅にある大きな扉を開ける。
そこは冷凍庫になっていて、そこから大きな氷の塊を持ってきた。
「さ、フサ君、この氷を抱くモナ」
「イヤデチ! こんなチベタイの抱いたら寒いデチ!」
どかっ!

フサが口答えすると同時にモナーの蹴りが顔に入る。
かなり手加減したが、それでも鼻血がでる。
「だから、フサ毛のあるてめぇをプリーストに選んだんだろうがよ
 いいか、離したら殺すからな…」
「ヒィィィィ!!!!」
恐怖を感じたちびフサは、しっかりと氷に抱きついた。

384 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 18:59 [ Dc7I1YzU ]
ここで少し説明をしないとなるまい。
このトレーディングカードゲームでは、『クリーチャー』を配置した時に、その『クリーチャー』に見立てたちびギコを実際に配置する。
ただ、普通『クリーチャー』は単体だとそれほど強くない。
そこで『補強』カードで強くするのだが…
『補強』カードによる有利な項目を得るためには、そのカードに書かれている拷問に『クリーチャー』役のちびギコが耐えなければいけない。
部屋に散乱しているガラクタは、全てゲームのルールにのっとった専用拷問器具なのだ。
ちなみに先ほどの『冷ややかな目の盾』カードの内容を見てみるとしよう。

385 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:00 [ Dc7I1YzU ]
【冷ややかな目の盾】
この魔力の盾は、直接攻撃以外に冷気攻撃と魔力攻撃を緩和する。
クリーチャーの防御力+5 冷気攻撃と魔力攻撃は無条件に半減。
なお、マジックユーザー系クリーチャーを補強した場合
同じエリアにいるクリーチャー全体に効果を付与する。
[条件]
ちびギコとほぼ同じ大きさの氷の塊を抱かせる。
一瞬でも離したり死亡した場合、効果は無くなる。

386 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:00 [ Dc7I1YzU ]
「チ、チベタイデチ! も、もう死んでもいいから離したいデチィィィ!」
「なに? くそう、補強効果が無くなったら戦術がパーになるモナ!
 寒さに強いと思ってフサを使ったのに…
 しょうが無い、最後の行動モナ!
 『モンク』を『教会』に配置。『プリースト』を支援するモナ!」

モナーはもう一枚手札から「教会」の場所に置き、箱の中から慌てて一匹のちびギコを取り出した。
「フサターン! 大丈夫デチか!?」
「チビタン! 助けて欲しいデチー!!」
「今行くデチ! 助けるデチ!」
泣きながら勝手な会話をする二匹。
しかしモナーは怒る事も無く、ちびフサの近くにちびギコを連れて行った。

「ちび君、君も一緒にこの氷を支えておくんだよ」
「イヤデチ! チベタイし… フサタンをたすけるんデチ!」
「一緒に持ってあげれば、助かるかも知れないよ。
 さっきも聞いてたかもしれないけど、もし氷を離したり落としたら…」
モナーはちびギコの耳に手をやる。
「死んじゃうかも知れないモナよ?」
その耳をもぎながら、その台詞を吐いた。
「ギャアアーーー!!!」
悲鳴をあげながら、ちびギコも氷の塊に抱きついた。
「チビタンのオミミが…」
「ウウウ… ガンバルしか無いデチ…」

「さ、モナのフェイズは以上だモナ」

387 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:01 [ Dc7I1YzU ]
それまで黙ってモナーの行動を見ていたモララーが、ここで初めて口を開いた。
「教会を守備して魔力の供給を確保…
 どちらかといえば持久戦の作戦だが、パワープレイも出来る…か。
 くー、いきなりそこまで固められると辛いなあ…」
「モララーのおかげで、初手から良い具合に守備を固められたモナ」
「ああでも、こっちもお礼を言わないとな…」

ニコニコしていたモナーの表情に一瞬陰りが見えた。
その一瞬の陰りを見逃さず、モララーは続けた
「ふふ、そう。こっちの初期カードも良いんだよ。ありがとう、モナー君。
 『オログ=ハイ』を『ゲート』に配置!
 その『オログ=ハイ』を『鋼鉄の守り』で補強!
 『ハーピー』を『フィールド』に展開! もちろん空中だからな!」

モナーの手番の間ずっと考えていたのだろう。
一度に三枚のカードを場に出し次々に宣言をしていく。
宣言が終わるとおもむろに立ち上がり、後ろの箱からちびギコとちびしぃを出し、
部屋の隅から万力を取り出した。
「このちびギコを『オログ=ハイ』にするからな!
 そして鋼鉄の守り!」
「ギャアアアァアァァ!! オテテガアアア! イタイー!!!!!」

388 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:01 [ Dc7I1YzU ]
【鋼鉄の守り】
自由と引き換えに体が鋼鉄と化し、防御力を手に入れる事が出来る。
クリーチャーの攻撃力の数値を防御力に足す事が出来る。
クリーチャーのあらゆる特殊能力、弱点は無効化する。
ただし移動、攻撃は出来なくなる。
[条件]
専用万力15回転分の力でちびギコの両腕を締め上げる。
死亡した場合、効力は無くなる。

389 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:01 [ Dc7I1YzU ]
「イタイデチー! ヤメテクダチャイ!!!!」
「えーいうるさいな、両手両足を30回転で締める『ミスリルの壁』よりましだろうが!
 で、このちびしぃがハーピーね」
いいながら、天井から吊るされているロープにちびしぃの体を結ぶ
「良かった。これなら大丈夫…」
ちびしぃは安堵のため息をついた。


「なるほど… 『ゲート』を死守して物量作戦モナね…
 こりゃ、波状攻撃に注意した方がよさそうだなあ…
 それにハーピーにちびしぃを使うのも良い判断だね。
 ちびギコどもだと暴れて勝手に首吊りになって死んだりするしなあ」
「まあ、そういう事。これで君の戦術が持久戦になるだろうけど…
 俺の怒涛の攻撃に耐えられないだろうからな!」
「ふん! 全部凌ぎ切ってみせるモナ!」

お互いに台詞は挑発しているようだが、顔はゲームを楽しんでいる顔だ。
「チベタイ」「イタチ」「タチケテー」というBGMもあって、とても爽快な気分になっていたのだ。

それからもゲームは続き
箱から出てきたちびギコ達は様々な拷問を受け、そして死んでいった。

390 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:01 [ Dc7I1YzU ]
「よっしゃ出た『犬死』の呪い!
 そちらの『タウン』にいる『エルフの長』を犬死!
 60秒首を吊って、生きていたら呪い跳ね返し成功だ、やってみれ!」
「ギャアア!! シニタクナイデ …カハッ!」
「死亡確認!」

391 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:01 [ Dc7I1YzU ]
「『フレイム』の呪文!
 『フィールド』にいる『エント』に15秒の火炎放射!
 あ、『エント』って植物属性じゃねーか、よーし30秒火炎放射!」
「アヂヂヂイヂ アヅイデチ タチ、タチ、タチエェケ… テ…」
「死亡確認!」

392 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:02 [ Dc7I1YzU ]
「『レジスト・ファイア』の補強!
 80度の熱湯風呂5秒我慢でこれ以降の炎無効だ!
 あ… まだ4秒だろうが、何出てるんだよ!」
「アギャーー! アツイデチ ゲボゴボ… ガボ… ゲフ」
「死亡確認!」

393 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:02 [ Dc7I1YzU ]
「こちらの『アリゲーター』でそちらの『ホブゴブリン』を攻撃!
 おら、アイツを殺して来い」
「い、イヤデチ!」
「殺さないと、お前が死ぬよ?」

「し、シニタクナイデチ! オジチャンタスケテ!」
「うーん、君は『バインディング』で両手両足が縛られてる状態だし…
 手持ちのカードも良いのが無いし…
 それに正直『ホブゴブリン』は時間稼ぎの捨て駒だったからこのままで良いモナ!」
「ソ、ソンナ…!」
「キミヲ コロサナイト… ボクガシヌデチ…」
「ヤ、ヤメテ! ギャアー!」
「『ホブゴブリン』死亡確認!」

394 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:02 [ Dc7I1YzU ]
一進一退の攻防が続いていて、ゲームは後半戦になっていた。
この時点でお互いかなり疲弊して(ゲームの中で)おり、場に出ているクリーチャーは
お互いが第一ターンに出した四匹だけになっていた。
「ヒドイデチ… ミンナ シンデイッタデチ…」
「フサオタン… フサトタン… チビキチタン… ウッウッ…」
「ヒドイデチ… アクムデチ…」
「コンナノッテ ナイヨウ…」
第一ターンからずっと出ていて、間近で仲間の死を見つづけてきた彼らの精神も、もはや限界だった。
モナーの『プリースト』は凍死寸前でもあったし、モララーの『オログ=ハイ』は痛みが限界に達し朦朧としてきていた。

今はモララーのフェイズだ。
(くっ、『オログ=ハイ』は限界だな。そろそろ来い!)
祈りながら自分の山からカードを引く
「キタ━━━━━━━━(・∀・)━━━━━━━━━!!!!!」
引いたカードを見た瞬間にモララーが大歓声をあげる。
「な、なにを引いたモナ? その喜びよう!!!」
「俺の秘密兵器だからな!
 こいつを『フィールド』に展開だ!!!!」
バシ!
場に出たカードを見て、モナーも思わず大声をあげた
「うわぁ!『ブルーアイズレッドフサギコ』!!!
 そんなレアカードどこで手に入れたモナ!!!」
「ネットオークションだ。8万もしたぜ…」

「ちょっと見せて欲しいモナ
 うわー、さすがに強いカードだけど…
 出現条件とか、維持費とかやっぱり大変モナね。
 あ、作成条件も大変モナねー…」
「しかし、試すだけの価値はある強さだからな!
 じゃ、この取って置きのちびフサ君で作成はじめるからな!」

395 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:03 [ Dc7I1YzU ]
「ボ、ボクハ ナニヲサレル デチカ…?」
箱の中から取り出されてちびフサは、すっかり怯えてきっている。
「大丈夫だよ! 君は最強のクリーチャーに選ばれたんだ。
 絶対死ぬ事はないから、安心しな!」
モララーはちびフサに優しくそう言い…
第一フェイズに取り出した二匹を拷問から開放した。
「オテテ イタイデチ」
「ズット ツラレテタカラ シンドイヨウ」

モララーは『ブルーアイズレッドフサギコ』のカードの[作成方法]欄を読んでいった

「えーと、まず、出現するために使用した『生贄』二匹の首を落として、作成対象のちびフサの毛を真っ赤に染め上げる… か」
「イヤデチィィィ!? ハギャ!」
「シィィィ!? グヒャ!」
モララーは手際よく二匹の首を落とし、血のシャワーをちびフサに浴びせる。
「ヒイイィイィ! イヤデチー! チビターン! チビシィターン!!!!!
 コンナノ モウ ミタクナイデチ!!!」

程なく、ちびフサの毛は血で真っ赤に染めあがる。
「えーと次にちびフサの目玉を両方ともくりぬき、代わりに青いビー玉を入れるのか…
 良かったな、望どおりもう見なくて済むじゃん」
「ヒギャアアアア!」
「よっと!」

カードの説明通り ちびフサの目をくりぬき、代わりのビー玉を入れた。
ちびフサは、目をくりぬいた時の絶叫の後は一転して静まり返っている…

「これでアヒャ化しなかったら『ブルーアイズレッドフサギコ』召喚完了だからな!」
「うわー、アヒャ化して欲しいモナ!」
「アヒャ化するなよ! こっちはもう、防御拠点が無いんだからな!」

二人が固唾を飲んで、ちびフサの次の台詞を聞き逃すまいと耳を近づける…
「アヒャれ」
「アヒャるな」

「……… ボクノ オメメ  ミエナク  ナター   デチ…」

「よっしゃーーー!アヒャってない!
 召喚した『ブルーアイズレッドフサギコ』で『教会』を全力攻撃だ!!!」
「わー、大変モナ!
 えーと手元の『結界』で『教会』を守ろうか…
 それとも『クラスチェンジ』が出るまで待って『プリースト』を『ハイ・プリースト』にするか…
 … あ━━━━━━━━━━!!!!!!!!!!」

敵の攻撃に備えるために自分の席に戻ろうとしたモナーの目に入ったもの… それは…
「ウエーン フサタン、シッカリスルデチ! シンジャダメー!」

凍死したちびフサの体をゆする、ちびギコの姿だった…

「『プリースト』死んじゃったモナ…
 『冷ややかな目の盾』の効果も無くなった━━━━!!」
「よーし! 機は熟したな! このフェイズで一気に決めるからな!」
「駄目だ! 手持ちのカードにろくなのが無い! やられるー!!!」

396 名前: カードゲーム 投稿日: 2003/02/17(月) 19:03 [ Dc7I1YzU ]
ゲームは『ブルーアイズレッドフサギコ』の活躍でモララーが勝利した。
今は感想戦を行っている。
「やっぱり8万円もするレアカードは強いモナね
 『ゲート』を死守していたのも、アレの維持費をまかなう戦略だったモナね
 気付いていればなんとしても潰したのに…」
「いやー、でもさすがに持ってることがばれると対応されちゃうからね。
 勝因は『ブルーアイズレッドフサギコ』を持っていることを見抜かれなかった事だからな!」
「さすがに見抜けないモナよ…
 でも『プリースト』さえもうちょっと生きていれば、『結界』で面白くなったかもしれないモナ
 生贄で『オログ=ハイ』も『ハーピー』も消えてたから…」

二人が感想を述べ合ってる間、当の『ブルーアイズレッドフサギコ』は目が見えず、ふらふらとその辺を歩いている。
箱の中からは「オワッタミタイデチ」「ヨカッタデチ」「モウ クルシクナイシ」「コロサレル シンパイモ ナクナッタデチ」
と言う声が聞こえる。

『ブルーアイズレッドフサギコ』がふらふらとモララーの傍に近寄る。
「お、君がアヒャらないおかげで勝てたよ。ありがとうな」
「オメメ ミエナイデチ」
「じゃ、楽にしてあげるモナ」
モナーが正拳で血濡れで青いビー玉の義眼をしたちびフサの頭を吹き飛ばした。

「じゃ、片付けて…」
「第二回戦をやるモナ!」
「望むところよ!!」

「ソ、ソンナ」「イヤデチ!」
箱の中のちびギコ達は
また、恐怖のゲームに付き合わされることになる…
この「トレーディングカードゲーム」は「使い捨てちびギコゲーム」でもあるのだ…

終