ベビしぃモデル大募集

Last-modified: 2021-08-30 (月) 11:36:19
231 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/05/18(日) 17:26 [ Gcm2QqF2 ]
【 ベ ビ し ぃ モ デ ル 大 募 集 】

「ヤメテェェェェ!!! ハナチテェーーーーーッ!!!」
片言でおしゃべりできるようになったばかりの舌足らずな声で、
四肢をばたつかせて泣き叫んでるのは、ベビしぃだ。
カメラの向こう側には、沢山の凶器。
ベビしぃは必死でその場から逃げようとしていた。

「あなたのベビちゃんはもう登録しましたか!?
ベビしぃ専門のモデル事務所が出来ました!!」
そんなチラシが幼いベビを持つ母しぃ達に届けられたのは、一週間前の事だった。
「ハニャーン!! ベビフーズノCMニモ タイガドラマノ ムサシィ ニモデラレルノネ!」
「ワタシィノベビチャン ノ モデルニモナレルナンテ!」
母しぃ達は、チラシに書かれた「主な出演作品」を見て歓喜の声をあげた。
モデル事務所にはチラシを見た沢山の母しぃ達から、問い合わせの電話が入ってきた。
「ゼヒ ウチノ カワイイ ベビシィチャンヲ トウロク サセテクダサイ!!」
「シィノ ベビチャンヲ テレビニ ダシタイデス!」

モデル事務所に登録した、とあるベビしぃの元に、仕事のお誘いが来た。
映画の子役で、ほぼ主役級の扱いになるという。
母しぃは迷わずにベビしぃを映画に出すことにした。
「オイシイモノモ イーーッパイ タベラレルシ… ベビチャンハ スクリーンデビュー デキルノネ!」
母しぃは、天才子役としてテレビに取り上げられる我が子の姿を想像して微笑んだ。
「ベビチャン アナタハ アイドルニ ナレルノヨ」
物事をよく分かっていないベビしぃは「チィ?」と言って小首を傾げた。

次の日、ベビしぃは映画スタッフの運転するワゴンに乗って撮影スタジオへと向かった。
ベビしぃの役は、母を殺されて一人でたくましく生きる主人公が生んだ赤ちゃんの役だった。
セリフは一斉無く、、ただ主人公の女優にダッコされている位だから、
「可愛らしいしぐさで、映画に花を添える役柄」と言うのが的確だろうか。
そんな謳い文句に誘われるまま、母しぃがベビを映画出演させた事を後悔する事になるとは、
まだ母しぃは知る由も無かった。

232 名前: 231 投稿日: 2003/05/18(日) 17:27 [ Gcm2QqF2 ]

10日後の夕方、ベビしぃの到着を待つ母しぃの元に一本の電話が入った。
とても信じられない、ショッキングな電話だった。
「…ソンナ…ベビチャンガ…」
ベビしぃが映画の撮影中に病気で亡くなったという電話だった。
風邪をこじらせ、あっという間に亡くなったと言う。
出来る限りの手を尽くしたのだが、駄目だったとスタッフは語った。
数時間後、小さな箱に入れられたベビしぃの遺体がが母しぃの元へと届けられた。
ベビしぃは体中の毛が抜け落ち、所々青痰が出来ていた。
点滴でもしてくれたのだろうと、母しぃは思った。
小さなお腹には、手術の縫い跡。
沢山泣いたのだろうか、ほっぺには涙の跡が残っている。
口元には、血の跡がこびりついていた。
母しぃは箱の中の冷たくなったベビしぃにすがって号泣した。
「ハニャァァァァ… ハニャァァァァ… ベビチャン…ドウシテェェェ… ナッコッテ ナッコッテイッテェェェ…」
しかし、冷たくなったベビしぃがもう可愛らしい声でナッコをねだることはもう無い。
母しぃは川原に冷たくなったベビしぃを埋葬した。

新作の映画が封切られたのは、それから数ヶ月後の事だった。
ベビしぃにとってデビュー作であり、遺作にもなった作品…。
タイトルは「ダッコの向こうに」。
母しぃはベビしぃが笑っている写真をバックに忍ばせて、映画館へと足を運んだ。
館内のライトが静かに消され、スクリーンに映画が映し出される。
そう言えば、あの時は浮かれてどんな映画なのか聞いていなかった。
映画の中盤に差し掛かると、母しぃは嗚咽を漏らしはじめた。
スクリーンに我が子が登場したのだ。
「…ベビチャン… 」
主人公の女性に抱かれて笑っているのは、紛れも無い自分のベビしぃだった。
母しぃの瞳から、涙がポタポタとこぼれ落ちる。
あの日の朝、元気よく撮影に行ったまま、帰らぬ存在になった我が子。
人影もまばらな平日の映画館。誰も号泣している母しぃなど気にも留めてない。
スクリーンの中のベビしぃは、まだ良く回らないお口で一生懸命お歌を歌っている。
その歌声は、母しぃがまだ一度も聞いた事の無かったベビしぃの歌声だ。
涙が後から、後から頬をつたう。
「ベビチャンハ ステキナ エイガニ デラレタノネ…」
母しぃは嬉しそうに画面を食い入るように見詰めた。

233 名前: 231 投稿日: 2003/05/18(日) 17:29 [ Gcm2QqF2 ]

主人公の女優がベビしぃを強くダッコする所でこの映画は終わった。
エンディングテーマとテロップが流れはじめる。
母しぃは、ボーッとしながらテロップを眺めている。
「ヨカッタネ…ベビチャン… シィ トッテモ ウレシィヨ…」
配給元のテロップまで来たとき、また突然画面が明るくなった。
スクリーンには「ダッコの向こうに・特別編」の文字。

「イ…イヤァァァァァァァァァァッ!」
母しぃは、思わず目を覆った。
スクリーンには今しがた画面いっぱいの笑顔を見せていた我が子が、
棒切れを持ったモララーに追い回されている。
ヨチヨチ歩きで必死に逃げようとするベビしぃ。
ベビしぃはあっという間にモララー達に取り囲まれた。
一人のモララーがベビしぃの腕を掴む。
「ヤメテェェェェ!!! ハナチテェーーーーーッ!!!」
片言でおしゃべりできるようになったばかりの舌足らずな声で、
ベビしぃは四肢をばたつかせて泣き叫んでいる。
カメラの向こう側に映る、沢山の凶器。
ベビしぃは必死でその場から逃げようとしていた。
ベビしぃは背中を蹴飛ばされて、その場に倒れこんだ。
「…イタイヨゥゥゥゥゥゥ!!! チィィィィィィィィィィーーーーッ!!!」
「撮影中ションベンを漏らした罰だ!」
「チィィィィィィィッ!?」
ベビしぃの小さな体をモララーのたくましい足が蹴り飛ばした。
ベビしぃのアンヨにはかすり傷が出来ている。
「ナッコ チマスヨゥ! ナッコ ダカラ ヤメテェェェ!!」
必死で泣き叫ぶベビしぃを嘲笑うように、
モララーはベビしぃの顔を何回も蹴り上げた。
「お前の汚ねぇダッコなんざ欲しくねーYO!」
「アレはプロローグに過ぎなかったんだよ!こっちが本編なんだよ!」
ベビしぃの口からは血が溢れ出てきている。
「ハヒィィィィィィィィィィッ!!」
母しぃはその場から動く事も出来ないまま、呆然とスクリーンを見詰めていた。

234 名前: 231 投稿日: 2003/05/18(日) 17:29 [ Gcm2QqF2 ]

「そろそろアレ行っちゃいますか!」
リーダー格のモララーが取り出したのは電気シェーバーだった。
「今からベビちゃんを手術するんだからな!」
地面に倒れこんで泣いているベビしぃを、一人のモララーが優しく抱き上げる。
「…ナッコ?」
傷だらけで泣いていたベビしぃは少しだけホッとしたようにモララーを見た。
モララーはニヤっと笑って、ベビしぃをビニールシートの上に寝かせた。
「先生!おながいします!」
「うむ!きっと直して見せるんだからな!」
他のモララー達が爆笑している。
「まずは剃毛するんだからな!」
ウィィィィィィーーーーーン……ガッ…ガガガガガガガガガガ……。
「チィィィィィィィィィッ!!?? イヤァ ナコ ナッコォォォォォォォォォォッ!!」
ベビしぃのフワフワな真っ白い毛は、あっと言う間に顔だけを残して全て刈り取られた。
毛が邪魔して見えなかった青痰が体のあちらこちらに出来ている。
蹴り飛ばされた時に出来た青痰だった。
「では、本番なんだからな!」
「……………ギャァァァァァァァァァァァッ!!??」
ベビしぃの皮膚が丸見えになったお腹に、メスが入れられた。
「イチャイィィィィィィィィィィィィィィィィ! イチャーヨゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
麻酔もされずに、ベビしぃは腹を切られたのだ。
「それ!腸をだせ!」
ズルッ、ズルッという嫌な音が、画面の向こうからしてきた。
「ベビチャ…シィノ シィノ ベビチャ…」
我が子が、病死ではなく虐殺死であった事に、ようやく母しぃは気付いた。
両膝がガクガクと震えて止まらない。
スクリーンの中ではモララー達が我が子を痛めつけている。
だけど、もうどうする事もできない。
「ママァァァァァァ!! タチケテェェェェェェェ…ナコ ナッゴォォォォォォォォォ!!」
スクリーンの中のベビしぃは、必死に母しぃの助けを求めて泣き叫んだ。
あの時、モデル事務所になんか登録しなければ。
あの時、映画の仕事を断りさえしていれば。
後悔しても、もう遅かった。

235 名前: 231 これでおしまい。 投稿日: 2003/05/18(日) 17:30 [ Gcm2QqF2 ]
映画は、無理やり傷口を縫合され、そこに消毒と称してアルコールをかけられる場面で終わった。
「ギャァァァァァァァァァァァァッ!?」
それが、ベビしぃの断末魔だった。
母しぃはフラフラと映画館を後にした。
「ベビ…シィノ シィノ ベビ……」
ブツブツ独り言を漏らしながら、街をフラフラとさまよった。
風の強い日だった。
おぼつかない母しぃの足に、紙が絡みついて来た。
なんだろう。と、紙を拾い上げる。
「あなたのベビちゃんはもう登録しましたか!?
ベビしぃ専門のモデル事務所が出来ました!!」
あの時の忌まわしいチラシだった。
「イヤァァァァァァァァァァァッ!!」
チラシには、可愛らしい笑顔のベビしぃ達の写真が沢山載せられていた。
あのベビしぃ達は、撮影後どうなってしまったのだろうか。
母しぃの脳裏にさっき見た映画の様子が浮かんでは消えていった。

END。

AA版:ダッコの向こうに