モラ吉影は静かに暮らしたい

Last-modified: 2019-12-04 (水) 00:03:11
58 名前:手フェチ (R.e180t.) 投稿日:2004/08/28(土) 01:13 [ /TBou94I ]
ある晴れた昼下がり。丁度昼食の時間、辺りは昼食を食べにいく人たちで賑わっている。
その中で、ごく一般な会社員、モラ吉影は昼食を買いにパン屋の『モナジェルメン』に向かっている。
途中、女子社員達がモラに近づいて

「あの、よかったら私たちとお昼ごいっしょしませんか?」

などと声をかけてきたが丁重にお断りした。

モラ吉影には『彼女』がいたからだ、だから断ったのだ。『正式』な『彼女』ではないが。

モラジェルメンについたモラは店を入った直後、『彼女』に喋りかけた。

「おいおい、何を怒ってすねているんだ?新入社員の女の子達に『お昼』を誘われただけじゃあないか。
 君とお昼食べる約束してたのに一緒に行くわけないだろう?すぐに誘いを断ったのを聞いてただろ?」

一人ごとをブツブツ呟きながらトレイなどを取り、パンを眺めている。

「僕が君を一人ぼっちにさせたことがあるか? ン?
 さ……、心配はいらないから一緒にサンドイッチを選ぼうじゃあないか」

モラ吉影が上着の内ポケットに手を伸ばすと中から女の 『手』 だけが現れた。
そう、モラ吉影が 『彼女』 といっていたのは 『女の手』 だったのだ
モラ吉影がサンドイッチを買い、外に出ると一目散にモラ中央公園の方に歩いていった。
モラ吉影は公園の木によりかかると買ったサンドイッチにかぶり付いた。

「美しい町だ…… モラ王町…… こんなすばらしい町が他にあるかな……
 まるでピクニックに来てる気分だね」

『手だけの彼女』に話かけながらモラ吉影はつぎつぎとサンドイッチを飲み込んでいく。
途中、何かに気づいたのか。鼻をクンクンさせて匂いを嗅ぐと
おもむろに消臭スプレーを『彼女の手』に振りかける。

「……」
(ちょっと匂ってきたか…… この女ともそろそろ別れ時かな、手を切る時期か……
 『手を切る』 ……ククク… またどこかで歌を歌っているしぃを見つけてくるか……)

モラ吉影は彼女を再び内ポケットにしまうと残りのサンドイッチを平らげた。

59 名前:手フェチ (R.e180t.) 投稿日:2004/08/28(土) 01:14 [ /TBou94I ]

時は過ぎ、日が沈んで真っ暗になる頃、モラ吉影は帰路を歩いていた。
真っ直ぐ家に帰るのではなく、ちょっと違う道を歩いて寄り道をしている。
そう、新たな『彼女』を探しているのだ。モラ吉影が歩いていると前からちびギコとちびしぃのカップルが歩いてきた。

「……」
(『カップル』か。まあ僕はさすがに『カップル』の女はごめんだ)

そう思っていたが前をよく見ていないカップルとモラは思い切りぶつかってしまった。

「……ッ、 おっと、すまない、余所見をしてしまったよ」
「痛いデチ!何をボーッとしてるんデチか!ちびしぃタンに何かあったらどうするんデチか!」
「ホント シツレイ シチャウワネ」
「……」
(なんだこいつら……)

倒れた拍子に落としたカバンからナツメの爪切りがちらりと顔を覗かせている。
モラはカバンを手に取り中身を片付けてさっさとここを去ろうとしたが――。
「ププッ、見たデチか?今時 ナツメ の爪切りなんて持ってたデチよ」
「ダサイワネ カンジワルイシ ムカツクワ!」
「ほんと、もう時代遅れだというのに笑っちゃうデチ!」
「アハハハッ チョウダサー ムカツクー」

「……」

今の言葉を聞いてモラはピタリと止まり、行き先を変えた。
さっきのクソカップルに感づかれないようについていった。
クソカップルはあるマンションにたどり着くとマンションの階段を上り家のドアを開けた。

「ネエー、ハヤク ダッコノネックレス カッテヨー」
「そのうちデチ!」

ちびギコがドアを閉めようとした途端、モラの手によってそれは阻止された。
モラが強引に手で扉をこじ開けるとずかずかと中に入っていく。

「お、お前!何をしてるデチ……」

ちびギコが最後まで言う間もなくモラは持っていた鈍器でちびギコの頭を粉々に吹き飛ばす。

「かレブェアガァア!」

ビチャッと嫌な音がし、ちびギコだった物体は崩れ落ちた。
その様子を見たちびしぃは腰が抜けてモラを見ながら後ずさりをしている。

60 名前:手フェチ (R.e180t.) 投稿日:2004/08/28(土) 01:15 [ /TBou94I ]

「ヒ……ッ ヒィ……ッ!」
「1LDKのマンションか…… ちびギコにしては良いマンションに住んでいるじゃあないか
 それともここはキミのマンションかね? ン? 何をそんなに怯えている?」

ちびしぃは体を震わせながら必死にモラから離れようとしている。

「私の名はモラ吉影、モラ有デパートに勤務しているごく一般のサラリーマンだ。
 妻子はいない。年齢はこう見えても33歳だ。ちびしぃちゃん、君の名前を教えてほしいのだが?」

「チ、チ、チ、チビタンニ ナ、ナ、ナニヲシタノ……?」

ちびしぃに質問されモラ吉影は鬼のような形相に変貌した。

「質 問 を 質 問 で 返 す な ァ ー ッ !
 疑問文には疑問文で答えろと学校では教えているのかァッ!?私が『名前は?』と聞いているんだァッ!」

「アヒィィィ! シィコッ! シィコォォ!!」

「しぃ子? ンーッ いい名前だ。 ところでしぃ子さん、私の爪を見てくれ。
 ほらッ こんなに伸びている。 ちょっとこの爪を切ってほしいのだがね」

そういうとモラ吉影はカバンから爪切りを取り出しちびしぃに渡した。

「ほらっ! 私の持っている  ダ サ イ ナ ツ メ の 爪 切 り  でねッ!
 他人の爪を切ったことがない?だめだめ、これも経験だよ!深爪しないように気を付けて……」

「アウウ、ヒィィ、コ、コロサナイデ……」

ちびしぃは泣きながらモラの爪を切り始める。

「そうそう、中々うまいじゃないか」

「ユ、ユルシテ、コロサナイデ……」

ちびしぃは必死でモラに命乞いをする。爪を切りながら……。

「許す? 何を許せというのね? 勘違いしないで貰いたい、私は何も怒ってるわけじゃないのだよ
 ふむ、うまく爪を切り終えたようだね。 よく出来たじゃないか。褒美を上げよう」

モラ吉影はちびしぃの耳を掴むと赤子の手をひねるように引きちぎった。

「シィギャアアア! シィノオミミガァー!」

「ほらほら、君の美しい耳だよ。これにさっきのちびギコ君の耳をつけてだね。
 ほらっ!こんなに美しいペアのイヤリングができたよ!片方耳はなくなったがもう片方の耳につけたまえ」

モラ吉影は無理やりちびしぃの片方の耳にイヤリングをつける。

「とっても良く似合うじゃないか」

モラ吉影は鈍器を手に取りちびしぃをタコ殴りにし始めた。

「君にも同じ痛みを分けてあげよう。カップルは同じ痛みを分かち合わなければいけないだろう?」

61 名前:手フェチ (R.e180t.) 投稿日:2004/08/28(土) 01:15 [ /TBou94I ]

ドゴッっと顔面に一発殴る。

「ブギィィィ! ギジィィィィ!」

次に手足を殴る。

「ジギャアアア! シィノアンヨガァァッ!」

次は尻尾。

「アギエエエエ!モウヤベデェェェ!コロサナイデェェェェ!」

「ほーら、ほらほらほらほら! そんくらいで泣いちゃだめだぞー。
 さっきのちびギコ君は顔面にモロキツイ攻撃を食らったが泣かなかったじゃあないかッ!
 あのちびギコ君を見らなわなきゃいけないぞ。 ほら! 見 ら な う ん だ よォォォォ!!」

泣く暇もなく一撃で頭を吹っ飛ばしただけだが、そんなことはお構いなしにちびしぃを殴りまくる。

「……」
「ふうっ、やっと泣き止んでくれたね? そして喋らない君は実に美しい」

原型を留めないほど顔面がグチャグチャで、体はもはや肉の塊と化している。
片方の手だけを持ち、モラは立ち上がって内ポケットにしまった。

「まあ、僕はロリコンじゃあないが…… 腕だけとなれば年齢も関係なく清く付き合えるよね?」

モラがマンションを出て行ったあとは頭が粉々になって倒れているちびギコだったものと
体が肉の塊となり、顔面ぐちゃぐちゃのちびしぃだったものだけが残されていた。

「とてつもなく良い気分だよ。君の名は…… なんだっけか?
 忘れてしまったがまあいいだろう。さあ、かえって君の手料理でもご馳走になろうか?僕も手伝うよ」

再び帰路を歩くモラ吉影であったが、その顔はとても充実感に満ちた顔だった。
新しい『彼女』を得たのだから。 またその『彼女』も手を切られるわけであるが……。