52 名前: 低温殺菌 投稿日: 2003/01/30(木) 05:32 [ MwWSejrE ] しぃは都会のワンルームマンションに住んでいた。 その日もいつものように帰宅した。 部屋に入ると、いつもとは違う雰囲気を感じた。 しかし疲れていたので気にせず食事をとることにした。 「コンヤハナニヲ タベヨウカナー? ハニャニャニャーン」 しぃは冷蔵庫を開けた。 途端に、中から小さな塊がボトボトとこぼれ落ちた。 突然の出来事でしぃには何が起こったかわからなかった。しかし・・・ 「シ、シィィィィィィ!!」 ・・・赤黒くドロドロしたもの、黄色くグシャリと潰れたもの・・・ まぎれもなく、それらの塊は臓腑だった。 フライドチキンのように骨にからみついたものもあった。 ・・・その持ち主の首が冷蔵庫の奥に詰め込まれていた。 頭部は砕かれ脳髄がこぼれ変わり果てた姿だが、しぃにはそれが誰だかわかった。 「シ・・・シィナ・・・・・・」 しぃは失禁した。 小便の刺激臭と肉塊の生臭い臭いが室内に充満した。 しぃは親友の血でまみれ、震える足を電話まで運んだ。 受話器を取ろうとして、ふとクローゼットの扉がわずかに開いていることに気付いた。 しぃは扉を恐る恐る開けて、中を見ずにはいられなかった。 ・・・しぃの上着が掛けてあったハンガーには代わりに白い毛皮が掛けてあった。 その横のハンガーには腸が何重にも巻き付けられ、異臭を放っていた。 クローゼットの下には、 皮を剥がれてスクランブルエッグのような脂肪と網目状の血管を剥き出しにした しぃ子の肉塊がバラバラに積まれていた。 「ア・・・ア・・・ア・・・・・・」 しぃは悲鳴を上げることもできずにその場に崩れた。 53 名前: 低温殺菌 投稿日: 2003/01/30(木) 05:33 [ MwWSejrE ] 突如、電話が鳴った。 しぃは這って受話器を取った。 『・・・おかえり、しぃちゃん。僕たちのプレゼントは気に入ってくれたかな?』 陽気な低い男の声だった。 「ア・・・ア、アナタタチネ・・・シィナト・・・シィコヲ・・・コンナ・・・・・・ケ、ケイサツニ・・・ツウホウシテヤルカラネ・・・・・・」 しぃは力無く、しかし必死でそう言った。 『あれ?おかしいな?もう一匹いたと思うんだけどなぁ~』 その言葉でしぃは体中に電気が流れたようなショックを受けた。 見ると、浴室の扉の隙間から明かりが漏れていた。 出掛ける前は確かに電気は消えていた。 しぃは扉をそっと開けてみた。 ・・・浴槽の湯は腐ったトマトジュースのように紅く、腐敗臭を漂わせた。 中には腕や脚を形作っていたものが沈み、 黄色や黒のドロリとしたもの、ゼリー状のものが表面に浮かんでいた。 ・・・シャワーに突き刺されたしぃ美の頭部は、 目の部分から脳髄が垂れるほど深くえぐられていた。 「ウ、ウゥ・・・ウエェェェ・・・・・・」 空腹にも関わらずしぃは嘔吐した。 浴室に散らばる肉片に浴びせられた胃液は、 血液の混じる異様な色となって排水溝にチョロチョロと流れた。 ・・・しぃは受話器に戻った。 「ド、ドウ・・・シテ・・・コ、コ・・・コンナ・・・コトヲ・・・・・・」 しかし電話の相手は先ほどと違った。 『・・・オナガイ・・・・・・タスケテ・・・・・・ダレカ・・・・・・』 「シ、シィカ!?シィカナノ!ド、ドウイウコト・・・!?」 そしてまた陽気な男の声が聞こえた。 「しぃちゃん、テレビをつけたら何が起きているのかわかるかもしれないよ」 しぃはテレビまで這って、電源を入れた。 ・・・ブラウン管には肢体を壁に釘付けにされたしぃ香の姿が映った。 『しぃ香ちゃんの最期をしっかり見届けてあげようね、しぃちゃん』 そうして二つの影がしぃ香の腹を引き裂き、皮を剥いだ。 「シィィィィィ!モウヤメテー!」 しぃはテレビの電源を切ろうとした。 しかしブラウン管の映像はしぃ香が解体される様子を映し続けた。 しぃは震えて部屋の隅にうずくまった。 『ジ、ジジ、ジィィィィィィィ゙!!』 しぃ香の断末魔の叫び声、ビチャビチャと臓器がこぼれ落ちる音、 ベリベリと体中の皮が剥がされる音が、受話器を通じ、テレビのスピーカーを通じ、 しぃの部屋に響き渡った。 そしてグシャリという音のあと、悲鳴も雑音も映像も消え、部屋は静まりかえった。 54 名前: 低温殺菌 投稿日: 2003/01/30(木) 05:33 [ MwWSejrE ] しばらくの間、しぃは部屋の隅で震えてすすり泣いた。 「ド・・・ドウシテ・・・ワ、ワタシタチ・・・ダケ・・・コ・・・コ、コンナ・・・メニ・・・・・・」 親友たちだったものから発せられる腐敗臭がしぃを一層責め立てた。 急にチャイムが鳴った。 「夜分にすみません!宅配便です!」 しぃは途端に我に返った。 救いを求めるため、玄関に向かった。 「オ、オナガイデス!タスケテクダサイ!」 しぃが扉を開けるとそこには全く人影がなかった。 扉の前には発砲スチロール製の大きな箱が置いてあった。 しぃは妙に冷静になり、その箱を玄関に引きずり、扉に鍵を掛けた。 差出人欄には何も書かれていなかった。 しぃはその箱を何事もないように開けた。 ・・・箱の中は真っ紅な液体で溢れていた。 その中に漬け物のようにしぃ香の体のパーツが浸かっていた。 切断面からは糸状の筋繊維が覗いていた。 引きつった顔はしぃを憎しみの目で睨み付けた。 「シ、シィハ・・・ナニモワルクナイヨ・・・ナ、ナニモデ・・・デ、デキナカッタ・・・モン・・・・・・」 しぃ香に弁明するつもりか、自分に言い聞かせるためか、しぃはそう呟いた。 しぃは部屋の中央まで這った。 そこはしぃの友人たちだったものどれからも最も離れた場所だった。 「ケ、ケイサツデスカ・・・」 しぃは携帯から警察に通報した。 そしてしぃはぼんやりと周囲を見渡した。 テレビの上に、友人たち五人で写った写真が飾ってあった。 彼女たちの変わり果てた姿を思い出し、鼻に突き刺さる腐敗臭を嗅ぎ、 しぃはまた嘔吐した。 警察が来たら自分が犯人だと疑われるかもしれない・・・。 しかし、しぃは一刻も早くこの状況から逃げたかった。 55 名前: 低温殺菌 投稿日: 2003/01/30(木) 05:33 [ MwWSejrE ] ・・・十分ほど経っただろうか。 チャイムが鳴った。 「モナ丘警察署の者です!しぃさんはいらっしゃいますか?」 しぃは玄関を見た。 ようやくこの惨劇から解放される。 「オマ・・・ワリサ・・・ン・・・・・・タ・・・フケ・・・テ・・・・・・」 しぃは必死で這った。 冷蔵庫の前でしぃ奈だったものを掻き分け、 玄関に置いてあるしぃ香のパーツが詰められた箱を倒し、 玄関の鍵を開けようとした。 ・・・ふと、しぃは背後に気配を感じ、後ろを振り向いた。 ・・・次の瞬間、どす黒い物体がしぃに振り下ろされた・・・・・・ 完