名無しのチビタン

Last-modified: 2015-06-19 (金) 00:20:19
794 名前: スイナ(.8sP0kzA) 投稿日: 2003/08/30(土) 12:12 [ 5cL4JZWE ]

ちと本編とは違う読み切りものを・・・。


ここはしぃやちびギコ達がただ唯一保護区域として認められている小さな村・・・。
だが、とある日、この村は突然地図から姿を消した。住民が全員虐殺されたかららしい。
住民たちは突然のことに抵抗する暇も無く、全員虐殺されていった・・・・・・。
皆・・・脆い生命を潰されて い  っ   た・・・。

  ・・・。
  ・・・・・・。

お気に入りの椅子に腰掛けて、僕は昼寝をしていた。周りには誰も居ない。母さんが家出してから僕だけがこの家に居る。
両親が離婚していても、僕はこの静かな時が好きだった。他のちびギコ達は、僕の事をよくこう言っていた・・・。

     ― 名無しのチビタン ―    と。

僕は名前を付けてもらう前に母さんは家を出ていった。ろくに教育もしてもらえなかった。そのせいか、喋り方が他のちびギコ達と違って、
「タン」とか、「デチ」とかを言わなかった。そのせいもあって、僕はよくからかわれていた。でも、僕はそんな毎日が好きだった。
家では独りであっても、外に一歩踏み出せば皆がいるから・・・。

だけど、あの日・・・「いつもの毎日」が崩れていった。
その日、いつものように僕は昼寝をしていた。だが、何かが違う。いつもならこの時間帯、小鳥の囀りが聞こえてくるはず。
だが、聞こえてくるのは笑い声と悲鳴ばかり。僕は不審に思い、閉めてあったカーテンをちょっとだけ開けて外の様子を見た。

僕はぞっとした。思わず吐きそうだった。僕の眼に飛び込んできたのは、数十人のモナーやモララー達がちびギコやしぃを
紙くずのように・・・次々と胴体や首引き千切っている。恐怖のあまりに他のちびギコ達は悲鳴を上げている。それを聞いた
モララーやモナーは笑っている。・・・ああ、今でも脳に焼き付いているよ。1匹のしぃの内臓、腸、胃、そして、心臓をモララーが
取り出しているのを。取り出されているしぃは眼に涙が溜まったまま、既に死んでいた。

そして外のしぃやちびギコ達を虐殺したモナー達は、どんどんと家へ入っていく。

(どうしよう・・!このままじゃ僕も・・・!)

そう思ったのも束の間、窓から外の様子を覗いていた僕の背後から悪魔の声が聞こえた。

795 名前: スイナ(.8sP0kzA) 投稿日: 2003/08/30(土) 12:13 [ 5cL4JZWE ]

「おい!ここにちびギコが1匹いるぞ!」
「え?マジ?・・・あっ、ホントモナ!」

僕は驚いて、後ろを振り向いた。振り向いた先には、虐殺したしぃ等の血を浴びて、血まみれになっているモナーとモララーの姿があった。

「あ・・・ああ・・・」

僕は震えた声で無意識に発していた。奥に逃げ込もうとしたが、足に力が入らない。腕にも力が入らない。僕は涙を流してガタガタと震えている。
モララーは笑って、

「おい、こいつ恐怖が極限に高まっているぞ。あんなに震えちゃってさぁ。」

それを聞いたモナーは、

「どうやらそうモナね。・・・ここは一つ、苦しまずに死なせてあげようか。」

と、笑って言い返していた。
僕は・・・あの事を聞かずにいられなかった。

「あ・・・あの・・・ここは・・・僕らちびギコやしぃの保護区域の村じゃなかったのですか・・?」

これを聞いたモララーは少し驚いて言った。

「・・・へぇ、君は保護区域の事を覚えていたのか。外に居るしぃ達はここが保護区域だった事をもう忘れていたから困ったよ。」

モナーの方は笑ったまま答えた。

「だけどねぇ・・・つい最近、保護区域の位置指定が変わったんだモナ。だからここはもう保護区域じゃないわけ。」

僕は耳を疑った。(ここがもう保護区域じゃない・・・!?・・・そんな・・・・・・どうして・・・)

「・・・さて、お喋りもここまでにしといて、そろそろ死んでもらうよ。」

モララーはそう言うと、血塗られた包丁を持って僕のほうへ歩き出した。
僕はもう、生気を失っていた。視界には、モララーが包丁を持ってどんどん歩いてきている。僕はもう何とも思わなかった。
モララーが僕の目の前に立ったら僕の頭上めがけて包丁を振り下ろした・・・!

ズブッ... 鈍い音と共に僕は目の前が真っ暗になった。何も見えない、何も聞こえない、そして、誰も居ない・・・。





僕は僕の死体を見つめていた。頭に包丁が突き刺さっていて、そこから血が流れている。
(ああ・・・僕は死んだのか・・・)不意に思った。

(・・・また独りぼっちか・・・。誰か・・・誰でもいい・・・居ないの・・・?)
辺りを見回したが死体だらけ・・・。誰も居なかった。

(母さん・・・母さんは・・・)
僕が考えていた最後の事だった。
母さんの事を思ったら、突然、僕の思考が弾け飛んでいった。まるで、1つの脆い命がかき消されたのかのように・・・。


糸冬