724 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/08/19(火) 23:36 [ NaIlXll6 ] 1/3 この世でもっとも残酷で。 この世でもっとも醜くて。 それは女の戦い。 【嫁と姑 女、修羅の道】 ギコ雄と妻のモラ子は、自宅のマンションで言い争っていた。 「しょうがないだろ。母さんももう歳なんだから」 モラ子は、ぐずる子供のように口の中でグチグチつぶやく。 「嫌よ。義母様と同居なんて……。私、しぃ美義母様にいびられちゃう」 が、夫に先立たれ一人で暮らすしぃ美をほっとくわけにはいかない。 しぃ美の息子ギコ雄は、妻と共に母親の所に同居することにした。 同居。この選択がギコ雄の実家に血の雨を呼ぶこととなったのだ。 ギコ雄の実家。今日から、しぃ美、ギコ雄、モラ子の三人の生活が始まる。 「ただいま母さん。元気かゴルァ」 「ヨク来タネ、ギコ雄ニ モラ子サソ。田舎ダケド 住メバ 都ダカラ」 「宜しくお願いします。お義母様」 最初は和やかな対面だった。 しかしそれは嵐の前の静けさにすぎなかった。 問題は夕食の時に起こった。 「私が作りますわ。お義母様」 「エ、ソンナ。悪イワヨ」 しぃ美の台所。つまり主婦の縄張りにズカズカと入り込んだモラ子。 気の弱いしぃ美は、不愉快に思いながらも黙って見ているしかなかった。 725 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/08/19(火) 23:36 [ NaIlXll6 ] 2/3 モラ子が作った料理は、ミートソースたっぷりのハンバーグだ。 口の中に広がる肉汁。とても美味しい。 ギコ雄は喜んで食べている。 一方、しぃ美はあまり食が進んでいなかった。 老人であるしぃ美には、洋食を食べ慣れていなかったのだ。 しかたなく、しぃ美はハンバーグを残すことにした。 三角コーナーに捨てられ、生ゴミと化したハンバーグをモラ子は見逃さなかった。 「折角作ってやったのに。あの女!」 料理は、主婦の武器でもあり誇りだ。蔑ろにされて許せるわけがない。 モラ子の心に残酷な何かが根付き始めた。 翌日、またモラ子が食事を作った。 ギコ雄とモラ子の分の食事はカレーだった。 しぃ美の食事は、ミートスパゲッティーだった。 また、しぃ美は食べ慣れない洋食を残してしまった。 さらに次の日、ギコ雄達はロールキャベツを食べていた。 なのに、しぃ美だけトマトスープ。 この頃になって、しぃ美は気付き始めた。 ハンバーグの材料は挽肉。ミートスパゲッティーの材料も挽肉。 ミートスパゲッティーはソースにトマトを使う。トマトスープもトマトが必要。 「モシカシテ、私ダケ 違ウ料理ナノハ、 材料ニ 昨日ノ 残リ物ヤ 生ゴミヲ 使ッテルカラ……?」 歳を取り、ヤワになったしぃ美の肩が震えた。 「……ナ、何故?」 しぃ美には、モラ子の怒りの理由はわからなかった。 モラ子の料理を残したのは、嫌がらせではなく、洋食が食べられないからだ。 悪気のないしぃ美に、さらなるモラ子の牙が向けられる。 726 名前: ナヒャ(yWVxXezQ) 投稿日: 2003/08/19(火) 23:36 [ NaIlXll6 ] 3/3 昼、ギコ雄は会社に出かけるので、 家にはモラ子としぃ美の二人きりになる。 モラ子は居間のソファに座り、ワイドショーを見ながら菓子をつまむ。 下品な笑い声が居間に響く。 しぃ美は、以前は昼のTV番組を見るのが好きだった。 が、現在はワイドショーや昼メロを見ると、 モラ子の下卑た笑い声を思い出し、悲しみと悔しさが込み上げてくるだけだ。 ピンポーン。玄関のベルが鳴る。 「はぁーい。どちら様ぁ?」 ドアを開けると、手荷物を持った女子高生の制服姿の8頭身がいた。 彼女は八重。しぃ美の孫の一人で、長女の娘(?)だ。 「こんにちわ。ギコ雄叔父さんのお嫁さんですか?お若いですね。 これ家族旅行で北海道に行ったお土産です。メロンですよ。皆で食べてください」 八重はビニール袋に入った大きなメロンをモラ子に渡した。 「あのぉ、しぃ美お婆ちゃんいます?」 しぃ美は玄関までヨタヨタと歩いて来た。 例えキモイ8頭身でも、八重は可愛らしい孫だ。 「八重チャソ……」 訴えかけるようなしぃ美の瞳。 だが、モラ子は八重としぃ美に会話をさせまいと、八重に甲高い声で話しかけた。 「ところで、八重ちゃんは彼氏とかいるの?」 八重の鼻息が荒くなった。彼女(?)の脳内は、もはや1の文字でいっぱいだ。 「えぇ~? そんなぁ彼氏なんてぇ。ハァハァ。でも、小指の赤い糸が繋がってる人ならいるかな♪」 モラ子は、八重の話など聞いていなかった。 しぃ美が孫に、嫁にいびられてることを話さないように邪魔しているのだ。 散々、1さんハァハァトークをした八重は、笑顔で帰っていった。 孫の後ろ姿をしぃ美は無言で見つめている。 八重チャソ。貴女ガ 持ッテ来テクレタ メロンハネ、私ハ 食ベラレナインダヨ。 家に入ると、勝ち誇った顔でモラ子がメロンを食べていた。 ギコ雄はまだ帰らない。 鬼嫁 完 精神虐待。