649 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/07(日) 22:20:05 [ mOEYQtFM ] 本板初投稿な上に虐殺ネタが久しぶりだったりする。 メインの虐殺が後編にあるから前編は多少物足りないかもしれないけど多めに見て欲しいところ。 『快楽を求めて』 前編 「あぁああぁぁぁああぁぁぁあああぁああぁっ! 」 静かな住宅街に突如響いた悲鳴。 音源はごく普通の家からだった。 殴られた頬に手に手を当て、目には涙を浮かべた子供は見る。自分を殴った人間―――その子の母親を。 「あんたなんか産まなければ良かった! あんたはモラとは違って馬鹿で、阿呆で……」 罵倒を繰り返しながら母は子の腹を蹴って、蹴って、蹴りまくった。 その母親の言うモラ事モララーはただその様子を眺めている。 別に母に対する恐怖や軽蔑が芽生える訳でも無ければ、暴力を振るわれている弟に対する同情も無かった。 こんな事は何時もの事だ。気にする程の事では無かった。 しかしモララーは決して二人から目を離さない。否、離せなかった。それは何故か。 母の顔がとても生き生きとしていたからだ。 弟を殴る母には憎悪などと同時に何かを狂喜する様な表情も垣間見えた。 モララーにはその楽しそうな母が羨ましくて羨ましくて仕方が無かった。 それは彼が成人して、一人暮らしを始めてからも変わらない事だった。 日が西に傾き、世界を真っ赤に染めた頃、モララーはやっと仕事から解放された。 昨日上司の都合の為、遅くまで働いていた彼は今日は代わりにいつもより早く仕事を終える事が出来た。 しかしそれでも仕事は疲れる事だ。少し恥ずかしいな、と考えながらもモララーは大きく欠伸をした。 目を擦りながら帰路に着く。昨日寝る時間が遅かった所為でいつもよりも眠かった。 帰ったらさっさとする事を済ませて寝てしまおう、と彼は考える。丁度その頃だった。 路地裏から出て来る一つの影。 「ソコノモララー、 コノ カワイイ シィチャンヲ ダッコサセテ アゲル」 アフォしぃだった。 こんな日に出てくるなんて、とモララーは項垂れる。 しかしアフォしぃがそんな様子を見て、彼の気持ちを感じ取ってくれる筈も無く、 「ホラ、 サッサト シナサイヨ! シィチャンヲ イジメルノハ ギャクサツチュウダヨ! 」 さて、こいつをどうしようか。 モララーは疲れた頭でゆっくり考える。 別に虐殺するのは嫌では無かった。しかし今日はそれすら面倒だと考える程眠かった。 その間にもしぃはキーキーと耳障りな半角の声で叫びまくっていた。 勿論その声はモララーを邪魔する。 そして半ば彼は自棄になって、 「あー、分かった分かった。抱っこさせて頂きます。だから路地裏行こうか」 モララーはアフォしぃが出てきた路地裏を指差して言った。 路地裏に誘ったのは一応他の人間に対しての配慮だ。 650 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/07(日) 22:22:05 [ mOEYQtFM ] これで良いだろうと言いたげなモララーに返ってきた答えは予想外の、しかししぃに相応しい答えだった。 「ナンデ ロジウラニ イカナキャ イケナイノヨ! アソコハ ジメジメシテテ クラクテ カワイイシィチャンニ フサワシイ バショジャ ナイヨ! キタナイディニ イカセレバ イイジャナイ!」 「ごめんね。此処で抱っこしたら他の奴もしぃちゃんを抱っこしたいって寄ってくるかもしれないじゃないか。でもしぃちゃんを早く抱っこしたくてさ。頼むよ。あそこで我慢してくれないか? 」 僕も良くこんな事言えるなあ、とモララーの顔には自嘲気味な笑みが浮かぶ。 それも効果があったのか、 「シカタナイワネ。 アマクテ ヤワラカイモノモ ヨコシナサイヨ」 モララーは大きなため息を一回吐いて、しぃと共に路地裏へと向かった。 路地裏に着くなり、しぃはモララーに両腕を突き出し、 「ホラ、 サッサト ダッコ シナサイ! 」 思わず苦笑が漏れた。 少し躊躇いながらモララーはしぃを抱き上げる。 別にしぃが好きな訳では無い。これが彼のやり方だった。 抱き上げた事により、密着したしぃからは鼻を刺す様なしぃ独特の悪臭がモララーを襲う。お陰で目が覚めた。 何とか悪臭に耐え、しぃを降ろしたモララーは直ぐに、 「甘くて柔らかい物出すからちょっと待っててね」 しぃを視界に入れない様にしぃを抱き上げる際に地面に置いた、自分の鞄に視線を落し、漁り始める。 直ぐに目当ての物は見つかった。 薄い桃色をした飴の様な物をモララーはしぃに渡す。 「タベテアゲルワ。 カンシャシナサイ」 しぃは何の警戒もせずにそれを口の中に入れた。途端、 「シイィィィィィィィィィィィィイイッ!? ナニコレ! オクチノナカガ ヘンダヨ! 」 モララーがあげたのは仕事の同僚から貰った梅のお菓子だ。 彼はどうもこういう類の物が苦手だったので勿体無いと言う感情は湧いてこなかった。 暫くのた打ち回るしぃを眺めながら考える。 これはそんなにすっぱい物なのか、それともしぃの味覚がそれ程異常なのか。 しかし確かめたいという感情は無かった。 そうなるとモララーもそれを食べなければいけない事になる。そんな事で苦手な物に挑戦する気は更々無かった。 飴がやっと溶けてきたのか、少し大人しくなってきたしぃ。 それを見下ろしていたモララーと視線があった。 無表情だったモララーがニヤリと笑う。 しぃの顔が恐怖で引き攣るのと同時にモララーの右手はしぃの顔を捕らえ、壁にぶつけた。 「ジィ! 」 しぃを中心に壁に赤い華が咲く。 これがしぃの血では無かったらそれなりに綺麗なんだろうな、と笑いながらモララーはしぃを自分に向けて目を合わせた。 「抱っこは楽しかったかい? 」 「ナニ……スルノ……ヨ…………! コノ……、 ギャクサ……ツ……チュウ…………! 」 死なない様に加減はしたものの、ダメージは大きかったらしい。それが笑いを誘う。 「そうか、楽しかったか。それにしても大変だね、しぃは脆くて。でも生命力はゴキブリ並。虐殺しがいがあるよ」 「ギャ、ギャクサ…………! 」 しぃはモララーが虐殺厨だと自分で言った癖に、虐殺という言葉に過敏に反応した。それでこそアフォしぃといった感じだ。 「今度は僕を楽しませてよ? 」 しぃの顔が恐怖で歪む。それが可笑しくてモララーも顔を歪ませて笑った。 651 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/07(日) 22:23:28 [ mOEYQtFM ] アスファルトに横たわるしぃの腹部を蹴る、蹴る、蹴る。 モララーの頭にはいつかの光景が浮かんだ。 自分は今あんな風に生き生きとしているのだろうか、と考える。 「シ、シィ……。 オナガイ モウ ユルシテ…………」 「そんな事言われて止める馬鹿が何処に居る」 少なくともしぃは弟よりも無様だとモララーは結論付けた。 それと同時にモララーはただ蹴るだけに飽きてきたな、と思い始める。 空を仰げばもう星と月の世界だった。 暗くなって来た、とは思っていたものの、完璧に日が沈んでいるとは思わなかった。少し自分を恥じる。 「さて、そろそろ違う事しようか」 モララーは自分の吐いた血が真っ赤になっているしぃの首根っこを掴んで持ち上げた。 方耳に手をかけて、力を込める。 ブチブチと音を立てて、モララーの手を赤く汚しながら耳はあっという間にもげた。 しかししぃは叫ばない。もうこれぐらいでは駄目な様だ。 ならもっと惨い事をしよう、と考えたが、生憎道具は無いし、虐殺する方法も思いつかなかった。 不意に思い浮かぶ一つの案。 偶には“奴”に玩具を与えるのも良いかもしれない。 モララーはしぃに告げる。 「お前、家に来ないか? 」 「ウチ…………? ソコデ シィチャンニ ナニスルキナノ…………? 」 どうやら居る様だった。 またモララーはニヤリと笑う。 「助けてやる」 勿論本意では無かった。 そんな事誰でも少し考えれば分かる事だ。 しかし相手がアフォしぃなら話は違う。 「オナガイ! タスケテ! ドコデモ イクカラ! 」 アフォしぃというのは愚かな生物だとつくづく思う。 モララーはしぃの首根っこを掴んだまま、歩き始める。 しぃは大人しい。本当に助けて貰えると思っているのだろう。 モララーは夜道を歩きながら、これはゆっくり眠れそうに無いなとぼんやり考えていた。 657 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/15(月) 14:52:46 [ 13gJNIm2 ] 結局土日に投下出来なかった。orz >>649-651の続きです。 『快楽を求めて』 後編 あれから数時間は歩いた。 いつもは電車やバスを使って帰っているが、流石にアフォしぃも連れて乗車する訳には行かない、と歩いてるのだが、 「キョウモ ゲンキニ シィ シィ シィ♪ ミンナ ナカヨク ハニャニャン ニャン♪ 」 慣れない運動で足が痛いのは自業自得としても、この歌はなんとかならないものかとモララーは頭を抱えた。 それでも此処で少し静かにしろこの糞虫! といった具合に虐殺を始めないのはやっと見慣れた風景の中に戻ってきたからだろうか。 「もう少しだからね、しぃちゃん。美味しい物でも二人で食べよう」 「ワカッタワ。 ソンナニ イウナラ タベテアゲル」 しぃはモララーが歩いている間に随分回復した様だった。 壁に顔をぶつけて、蹴って、片耳をもいだぐらいだからそれが普通なのかもしれないが。 これは面白い事になりそうだ。 少し緩んだ頬をまた武器に、モララーはまたしぃに優しい偽りの言葉を振りかけた。 「うひひひっはっはははあっ、あっああっ」 明かり一つ無い部屋に獣の鳴き声の様な声が響く。 その声は何かを狂喜している様に聞こえた。 「くるっ、くるよおぉっ! また、またね、かな? うふふひひ」 暗闇で血眼がギラギラと光る。 来るというのはそいつの獲物。分かるのはきっと野生の勘という奴の所為だろう。 そいつはもはや元の姿を知らない。 あの日を境にただただ自分の快楽だけを優先する化け物になってしまった。 昔の苦痛も何もかもから解放された。 しかしそれは他人の痛み、苦しみを理解する優しい心するも忘れてしまう事だ。 「あああっはっははは。ははあっう」 しかしそんな事を理解する心すらそいつは無くしてしまった。 「お前はもう人間じゃない。僕の弟でも無い。ただ僕に従っていれば良い」 そんな元兄の言葉も理解する事は無い。 658 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/15(月) 14:53:25 [ 13gJNIm2 ] 仲の良い友人達に自慢の真っ白な家。 その家に汚いしぃを入れる事に抵抗が無い訳では無かった。 色々考え、かなり屈辱的な方法ではあったが、取り敢えず家は汚れないある一つの方法を使う事にする。 「さあ、しぃ姫様。此処です」 モララーは器用に違和感の無い笑顔を作ってしぃに俗に言うお姫様抱っこをした。 「ッタク シカタナイ ヤシネ。 イイワ コノ ヤサシイシィチャンガ アンタニ ワタシヲ ダッコサセテアゲル。 カンシャ シナサイヨ」 良くそんな事言えたな、と思ったが口にはしない。 モララーはそのまま家に入った。 玄関で手を使わずに靴を脱ぎ捨てると、廊下を歩く。 そして迷うこと無く一つのドアの前で止まった。 そのドアは一つだけ金属製で、無駄に頑丈に出来ている。 そして何よりも他と違っていたのはそのドアから放たれる妙な威圧感。 しかし二人が恐れる事は無い。 モララーにとってはいつもの事で、しぃにはその威圧感を感じる能力は無かった。 「しぃちゃん、此処に居るお友達と仲良くしてあげてね」 「ハニャ……? 」 モララーは勢い良くドアを開け、中にしぃを放り込んだ。 「ハニャ!? 」 突然投げられた所為でしぃは受身も取れずに地面に突っ込む事になった。 一番最初に地面にぶつかった右腕を擦りながらしぃはモララーを睨む。 「ナニスルノヨ! コノ ギャクサツチュウ! 」 モララーは何も言い返さずにしぃの後を指差した。 しぃは不機嫌そうにそっちを向き、 「シイィィィィィィィィィィィィ! 」 しぃの軽い体が左に吹っ飛ぶ。 壁に叩きつけられたしぃは重力により、床に崩れた。 そして事を理解しようと視線を彷徨わせるしぃ。 その目にそいつが映った途端、しぃの表情が凍りつく。 「ウララーっていうんだ、それ。元僕の弟ってとこかな? でももう人間じゃないよ、そいつ。化け物。ただの化け物だね」 モララーはしぃとウララーを同時に嘲笑すると、ごゆっくりと言い残して部屋から出て行った。 わざわざ部屋の電気を付けて。 真っ暗の方がまだ良かった。 暗闇の中、化け物と一緒に居るのは確かにどうしようも無く怖いことだ。しかし、 「イヤ、 イヤア……。 コナイデ、 コナイデ、 コナイデ コナイデ コナイデエェェェェ! 」 「うふふぬっ、ははっは」 化け物の自分を獲物としか見ていない目に晒されるよりはどんなにマシだっただろうか。 しぃがどんなに叫ぼうが、それはまだ始まったばかりだった。 そいつは物凄いスピードでまたしぃまで近づくと、しぃを勢い良く上へと投げ飛ばす。 迫り来る天井。しぃは恐怖で声も出せなかった。 ゴッ。 天井はしぃに容赦する事なんてなく、しぃはまたぶつけられる激痛を味わう。 しかしそれだけでは終わらず、今度は地面に吸い込まれ、頭から打ちつけた。 「ッ! 」 ジンジンと傷む後頭部。涙でぼける視界。 それでも奴の顔はしっかりと見えた。 「ヤ、 ヤダ オナガイ ヤメテ……」 勿論そいつにはしぃの言葉を理解する能力は疾うに無くしている。 もしあったとしても、止められないだろう。 そいつの顔に浮かぶのは紛れも無く誰かを傷つける事により得られた快楽を噛み締めている表情だった。 659 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/15(月) 14:53:57 [ 13gJNIm2 ] 丁度良い温度のお湯は流し続けるシャワー。 適当に体に付いた血を流すと、モララーはシャワーを止めて、湯船にゆっくりと浸かった。 「はぁ……」 ため息が漏れる。 そのため息の理由は自分でも良く分からなかった。 奴があんなになったのはもう数年前の話だ。 ウララーは物心が付いた頃には虐待されていた。 単身赴任の父が気付ける筈も無く、モララーもウララーも誰にも話さなかったので何時までたっても続いていた。 けれど恐らく気付いていた人は居た筈だ。 ウララーは年中長袖で過ごしていたし、学校などの水泳の授業は毎回休んでいた。 それにモララーの記憶が正しければ、痣や傷が隠しきれて居ない事も度々あった。 しかし誰もそれを止めなかった。見て見ぬ振りをしていたのだろう。 それとも自分に関係の無い子供はどうなっても構わなかったのだろうか? ウララーに何か遭った後に悲しそうな顔をして、まさかこんな事が……、なんて言うつもりだったのだろうか? 兎に角虐待は何時までも続いた。 モララーが中学校に入り、高校に入り、大学に入っても続いていた。 そして運命の日が訪れる。 「モララー、隣の国では食用の肉を生産してる事知ってるモナよね? 今度それを見物出来る事になったんだけど、一緒に行かないモナ? 」 友人のその言葉が全てを動かした。 断る理由も無かったし、興味も僅かだがあった。 二週間後、彼はその友人と隣の国へと旅立った。 滞在したのはたった三日間。 それでも彼を虐殺の世界に引き込むには十分だった。 あっという間に過ぎた三日間。 帰って来たモララー。しかし、お帰りと声を掛ける者は家には居なかった。 代わりにあったのは血を吸った畳と、血だらけの母の服と、 「んふふふっはっははは、あはははっはひゃひゃっ」 狂った弟。 大体何があったかは理解出来た。 次の日、確認の為に公園に居たチビギコを連れてきて、与えた。 すると予想通りになった。 楽しそうにチビギコを甚振った後、チビギコを食べた。 母を殺した事への怒りは芽生えなかった。 別にウララーの事で恨んでいた訳では無い。ただ過剰な愛が鬱陶しかった。 モララーはウララーを怖がらなかった。 都合が良いと思った。 その後、モララーはウララーを手懐ける事にした。 手懐ける方法なんて簡単だ。ペットとなんら変わり無い。適当に餌をやったりし、都合の悪い事をした時は罰を与えれば良い。 すると自然にそいつにはこいつは自分の敵では無い、自分が従うべき者だ、と理解してくれる。 ウララーも例外ではなかった。 そしてウララーを手懐けた後、怪しまれない様にと母の捜索願を出した。 しかし母は見つからないだろう。もうウララーの腹の中に収まってしまっているのだから。 そして適当に母の面影があると先に進めないから、などと奇麗事を並べ、此処に引っ越してきた。 虐殺の後始末に居ると都合の良い化け物を連れて―――。 「嗚呼、もう僕何考えてたんだろ? 」 モララーは狭い湯船の中で体をゴソゴソと動かす。 大分のぼせてきたのか頬はほんのり赤かった。 660 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/15(月) 14:54:21 [ 13gJNIm2 ] 「ウッ、ウッ、ウッ! 」 時間の感覚はもう無い。 あれからウララーはしぃを飽きもせずに何回も壁に叩きつけ、しぃは抵抗出来ずにされるがままで居た。 全身痣だらけ……にはなっていない。恐らくなっては居るのだろう。しかし分からなかった。 ウララーが勢い良く壁に投げつける所為なのか、何回も壁にぶつけている所為なのか分からないが、砕けた骨がしぃの腹から飛び出ている。 全身は血で濡れて、意識は朦朧としていた。 もう良い。さっさと殺して! しぃがそう心の中で叫んだ頃だろうか。 ウララーがピタリと動きを止めた。 「……? ナ、 ナニ? 」 ウララーはしぃを眺めるだけで、何もしてこない。 「ナ、 ナニヨ。 イ、 イマサラ シィチャンニ アヤマッタッテ ユルシテナンカ アゲナイカラネ。 アノ クソモララーモ……」 しぃがぐっと握り拳を作り、強がった。 しかしウララーはそれにはどんな反応も見せなかった。 代わりにニヤリと笑う。 そしてしぃの前で初めて喋った。 「おまえ、あそぶ、あきた。はら、へた。おれ、おまえ、くう」 聞きたくなんて無かった。理解したくなんて無かった。 しかしその言葉はしっかりとしぃの中で残る。 「ヤ……、 イヤア……、 オナガイ、オナガイヨ…………」 しぃの言葉は通じなかった。 そいつはは偶然ウララーだった頃の名残として言葉を言う事を少し覚えていただけで、それを理解する事は出来ない。 ニヤリと何処かモララーそっくりに笑い、ウララーはしぃの残った方耳に食らいついた。 「ヤッ、 シイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイ!!! 」 しぃの鳴き声を合図にウララーは更に歯に力を込め、引っ張る。 「シイィィィィィィィィィィィィィ、 シイィィィィィィィィィィィィ、 シイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!! 」 しぃの叫び声に重なるブチブチとしう、何かが無理矢理ちぎられて行く音。 ややあって、その音が途切れた。 異常な程熱を持っている傷口。目の前の化け物の口の中には自分の一部。 「ヤ、 カエシテ、 カエシテ! シィノ オミミ カエシテ! 」 これだけ言葉が通じたのだろうか? いや、恐らく音として入ってきただけなのだろう。 ウララーは五月蝿いな、黙れ、とでも言いたそうに、口の中の耳を引っ張り出すと、今度はしぃの右腕に食いついてきた。 「シイィィィィィィィィィィィィィィィィ!! シィチャンノ オテテ、 オテテガアッ! 」 右腕も耳同様に食いちぎられた。 腕の方が頑丈に出来ている所為か、食いちぎられるまでの時間と痛みが多い。 それを終えると今度は間髪を入れずに左腕に食いつかれた。 左腕を食いちぎられ、左脚に歯が入った頃、しぃはやっと自分を手放す。 最後にしぃの視界に入ってきたのはやはりウララーの虐殺に快楽を得ている顔だった。 661 名前:9012 ◆ruriF5y1O2 投稿日:2006/05/15(月) 14:55:11 [ 13gJNIm2 ] 長風呂し過ぎたのだろうか。 頬を火照らせ、少しフラフラしながらモララーは箪笥の前にやって来た。 箪笥の中から血が付いてもあまり目立たない様な黒い服を選ぶ。 それを着て、自分で自分を見下ろした。 全身真っ黒の自分。まるで喪服を着ている様だ。 なんだか可笑しくて、モララーはふと笑いを漏らした。 普段の表情に戻り、あの部屋へと向かう。 恐らくしぃはもう殺されているだろう。 今は食事中だろうか? それすら終わっているのだろうか? 別に恐怖する様子も見せず、ドアを開けた。 同時に生臭い血の臭いがモララーを包む。 部屋の中に見えたのは血溜りと赤いまだ新鮮な肉塊。そして鮮やかな臓器の様な物。 どうやら今は食事中の様だ。 次に目に入ったのは元弟。その表情。 フラッシュバック。 舞い戻る物は母の表情。 自分以外の何かも傷つけ、得る快楽。 それを狂喜する表情。 暫くして、モララーはやっと我に返った。 やはりウララーは満足そうな顔でしぃを食べている。 羨ましいと思った。 確かにモララーにとっても虐殺は楽しい。 しかしあれ程では無かった。 何が足りないのだろう? モララーは考える。 何が自分には足りないのだろう? みんなとても生き生きと楽しそうに、快楽を手にして嬉しそうに虐殺している。 しかし自分は違う。 何が違うのだろうか? 答えはいつも見つからなかった。 それは今回も一緒だ。 欠伸がモララーの思考を遮った。 仕方無いのでいつもの考えで収める事にする。 只管虐殺していればきっと分かる。きっと快楽を手に入れられる。 唯僕は虐殺していれば良い。唯それだけを続けていれば良い。 モララーは二度目の欠伸を無理矢理殺し、ドアを閉めた。 途端、薄くなる血の臭い。しかし完全に消えた訳では無い。 モララーは染み付いた血の臭いを一回大きく吸い、ベッドへと向かい、歩いて行く。 明日はまた仕事だ。快楽を得るのも大切な事だが、他にもしなければならない事は沢山ある。 快楽だけを求めるのは化け物だけで良い。 そう、化け物だけで良いのだから。 終