新しい「生命」

Last-modified: 2015-06-12 (金) 21:56:44
298 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:35 [ fLQTybt2 ]
「モララー生命科学研究所」。
そこは、外科・内科手術や、遺伝子操作により、新しい「生命」を研究している。
一人のギコが、研究所へ入った。
そして、待合室へ入って行くと、一人のモララーが座っていた。
「貼り紙を見たのかね?」
「ああ・・・そうだ。」
「この実験の被検体になるには、死んでも知らんぞ。」
「承知だ。」
「なら来てもらおうか。」
ギコはモララーに付いて行き、部屋の前で止まった。
「ここか?」
「そうだ。」
そして、二人は部屋の中へ入った。
「ようこそ我が研究室へ、ギコ君。」
そこは驚くべき場所だった。
周りには、培養液で満たされたカプセルが数多くあり、その中には、
失敗作と思われる生命体が入っていた。
更に、コンピュータにより室内は完璧に管理され、モララー一人でも、
十分に研究できた。
「私はなかなか人を信じられなくてね・・・」
「・・・で俺にどんな事をするんだ?」
「良くぞ聞いてくれた!」
モララーはギコに一冊のファイルを手渡した。
そこにはとんでもない事が記されていた。

299 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:36 [ fLQTybt2 ]
1ページ目にはこう書いてあった。
「生命体の遺伝子の混合」
2ページ以降からは、実験結果のデータや写真、被検体の行動記録が記されていた。
「ああ、一つ言っておこう。」
「何だ?」
「出来損ないはこうなる。」
モララーはモニターにあるVTRを流した。
どうやらちびキコにカブトムシの遺伝子を加えた生物らしい。
頭にカブトムシの角が生えていて、腕のような突起が何個かある。
その周りを二人の科学者が取り囲んでいる。
「く、来るなデチ!!」
「どうするモナ?」
「まずは・・・角もぎだな!」
一人の科学者がチビギコの角を持ち、力の限り引き千切った。
「ヒギャァァァァ!!」
ちびギコは頭からおびただしい量の血が吹き出ており、泣き叫んでいる。
「痛いデチ!痛いデチ!!」
「角を貸すモナ。」
角を持った科学者は、ジャンプし、角をちびギコの頭目掛けて振り下ろした。
「必殺・兜割りぃぃぃ!」
グシャ!!
「ギャァァァァ!!!」
角は見事にちびギコの頭を粉砕した。
「あー、スキーリしたモナ。」
「ストレス解消だからな!」
モララーはVTRを切った。
「どうだい?気分は?」
そのときギコは、意外な言葉をモララーに言い放った。
「早く俺に実験をしたらどうだ?」

300 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:36 [ fLQTybt2 ]
「待ち切れないか・・・わかった。今すぐやろう。」
そういってモララーはカプセルを一つ取り出した。
「君には、『甲殻類』の遺伝子を注入する。」
「コウカクルイ?」
「簡単に言えば、エビやカニの事さ。」
「ほう・・・わかった。早くしろ。」
「まあ待て。何でそこまで急ぐ?報酬か?」
「金は要らん。」
「じゃあ何故?」
「そんな事はどうでもいい。」
「ううむ・・・わかった。」
ギコは診療台の上に横になり、麻酔をかけられた。
「一ヶ月後に君は新しくなる・・・」
モララーはそう言った。
そしてギコの意識は深い闇へと沈んでいった。

301 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:37 [ fLQTybt2 ]
一ヵ月後、ギコは目を覚ました。
しかし、そこは培養液の中だった。培養液の中でギコは暴れだした。
「ガバッ!ゴバッ!」
「おおっ!目覚めたか!」
モララーはギコを培養液の入ったカプセルから出した。
「最悪の目覚めだったがな。溺れるところだったぞ。」
「おお、済まなかった。」
そう言うと、モララーは鏡を取り出した。
「さ、自分の姿を見たまえ。」
ギコは鏡を見た。
しかし、変わるどころか、しっぽ一本分の変化も無かった。
「どういう事だ?」
「まあ、これを飲んでみなさい。」
ギコは錠剤を一つ手渡された。それを試しに飲んでみた。すると、
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
ギコの身体が高熱を発し、激痛が走った。
そして一分後、ギコは自分の姿を見た。
全身が茶色の殻で覆われ、体の大きさは二倍程度に大きくなっている。
「コレガ俺ノ新シイ姿・・・」
「そう。元に戻る時もこれを飲みなさい。」
ギコはまた錠剤を飲んだ。今度はすぐに元に戻った。
「成功だな。じゃあ報酬だ。」
そう言ってモララーは封筒と、錠剤の入ったビンを渡した。
封筒の中は、百万はあるだろう。
「ありがとよ。恩に着る。」
「それはそうと、君はどうする気だ?」
「・・・俺には復讐する相手がいる。」
「わかった。・・・私は止めない。」
そして、ギコは研究所を後にした。

302 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:38 [ fLQTybt2 ]
ギコは自分のアパートに戻り、酒場へ向かった。
「BAR・マルミミ」
店内は静まり返っていた。マスターの丸耳モナーがコップを拭いている。
「いらっしゃい・・・!ギコ!」
「よう、マスター。」
「どうしたんだ?一ヶ月も見なかったが・・・」
「ちょっとした事情かあってな、ところでコイツを知らないか?」
ギコは、そう言って一枚の写真を見せた。写真にはしぃが五匹ほど写っていた。
「そうだな・・・確か『BAR・DAKKO』にいたはずだ。」
「そうか!有難う!」
ギコは走って「BAR・DAKKO」に向かった。
「BAR・DAKKO」
ギコは店内に入った。四匹のしぃが、バーテンダーのしぃと話していた。
「ソレデネー、サンチョウメノギコクンガ、ダッコシテクレナカッタノヨ!」
「ソレデドウシタノ?」
「テツパイプデ、アボーンサセタワヨ!」
「よう、久しぶりだな。」
「!アンタハ!」
「虐殺厨ノムスコヨ!」
「だれが虐殺厨だって!?」
「シィゾクナノニ、ダッコヲモトメナイナンテ、ギャクサツチュウドウゼンヨ!」
「俺の母さんは、人に迷惑をかけたくなかった!お前らとは違うんだ!」
「フン!イイワケネ!ワタシタチガコロシテ、セイカイダッタワ!」
「アボーンケッテイネ!」
そう言うとしぃ達は鉄パイプや銃を持ち出した。
「見せてやるよ・・・俺の力を!!」

303 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:38 [ fLQTybt2 ]
ギコは錠剤を飲み、変身した。
「シィィィ!ケダモノヨ!」
「マターリノタメニ、シニナサイ!」
「ウオォォォォォ!!」
ギコは、爪で一匹目のしぃを切り裂いた。
「シィィィィィ!」
しぃの腹が裂け、内臓が飛び散った。仲間はそれを見て、唖然とした。
「ヨクモ!」
しぃ達は銃を構え、ギコに向かって発砲した。
しかし、ギコの殻に銃弾が跳ね返され、一人に銃弾が当たり、腕が吹き飛んだ。
「イタイヨゥ!ダッコデキナイヨゥ!!」
「ウガアァァァァ!」
一匹は奥に逃げたが、残りの三匹は足がすくんでいた。
「ダ、ダッコスルカラ、ネ?」
「カワイイカワイイシィチャンヲ、コロスキ?」
「シィノオテテー!」
「・・・殺ス。殺ス!ブッ殺ス!!」
『イヤァァァァ!!』
ギコは両腕でしぃを細かく切り刻んだ。挽き肉になるまで。
「モウ一人ハ奥カ・・・」
ギコは奥の部屋へと向かった。
「アト一人・・・」
ギコは奥の部屋に入った。中には、バーテンダーのしぃと、
その子供らしい二匹のベビしぃがいた。
「チィチィ!」
「ナッコ!ナッコ!」
ギコはしぃを殺そうとした。
すると、しぃがこう言ってきた。
「トリヒキ・・・シナイ?」

304 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/06/01(日) 19:39 [ fLQTybt2 ]
「何?」
「ベビハ、コロシテモイイワ。デモ、ワタシハタスケテクレル?」
ギコはしばらく黙り、一匹のベビしぃを手の平に乗せた。
「チィチィ♪」
グシャ!
ギコは何の迷いも無く、ベビしぃを握り潰した。
「ヂィィィィィ!」
ギコの手からは、血が滴り落ちる。
「トリヒキハセイリツネ。ジャアネ。」
すると、
ズパッ!
ギコはしぃの足を切り落とした。
「シィィィィ!!ナニスルノヨ!ベビハコロシタデショ!?」
「オレガ、イツ『ハイ』ト言ッタ?」
そして、噛み付いてしぃの頭を引き千切った。
「オカアタン!オカアタン!」
ベビしぃは泣きながらしぃの体に擦り寄った。
ギコはベビしぃを摘まんで、
「恨むなら、母親を恨みな。」
口の中に入れ、噛み砕いた。
ギコは錠剤を飲み、元に戻った。
「母さん・・・」
ギコはロケットペンダントを取り出した。
幸せそうに笑っているしぃは、母親だろう。
「敵は・・・取ったよ・・・」
ギコは足元に落ちていた銃を取り、
「俺も逝くよ。」
自分の頭を、撃った。
ギコの顔は、笑っていた。
「これで良かったんだ・・・。」

<糸冬>