新・座頭モラ其の二

Last-modified: 2015-06-19 (金) 00:24:09
811 名前: ろじゃー(wNWdMiVA) 投稿日: 2003/08/31(日) 19:19 [ cCi6JeP6 ]
〆新・座頭モラ〆

其の二・親と子と


「何デチ、生意気デチね!」

林の中を歩く座頭モラの耳に、ちびギコの声が入った。
---何故こんな所にちびギコが?
そう思い座頭モラは声の方へのたりのたりと歩んだ。

「しぃは被虐AAなんデチから黙ってちびタンに虐殺されればいいんデチよ!」

そこには一匹のちびギコがちびしぃに対して何やら怒鳴っていた。
座頭モラはちびギコに話を掛ける。

「そこの小さな旦那、いかがなさいまして?」

たいへん和やかな聞き方であった。
が、それとは対称的なまでにちびギコの口調は荒ぶっていた。

「うざいメクラデチネ!今チビたんが村で一番強いかを決める大事な
 時なんデチ!ロクデナシのメクラは、すっこんでるデチ!」

一瞬座頭モラの額にうっすらと血管が浮く。

「ほほぉ…一番強いかどうか…と言うのははて?」
「このチビしぃを虐殺するデチ!そうすれば友達のフサタンやレコタンが最強と
みとめてくれるんデチ!それなのにこのチビしぃは逆らうんデチ!」
「…逆らう?」
「そうデチ!大人しくチビたんに虐殺されればいいものをちょこまかと逃げるデチ!」

チビしぃは怯えている。
座頭モラは柔く持っていたその杖を強く握りしめた。

「まっ、でも逃げる体力ももうないデチ!遅かれ早かれ死ぬんデチからチビたんの
 尊い功績の踏み台になるデ…」

仕込み杖から現れたその刃は鈍く輝いた。そして仕込み杖が容赦なく
ちびギコの四肢を瞬時に切り落とした。

「ヒギャァァァ!ちびタンのオテテとアンヨとオテテとアン…」
「小汚い手足なんて旦那には不要ですよ♪何せ旦那は最強になる男ですからねぇ。
手足の一本や二本なくとも平気ですよ」

にや、と笑うと座頭モラは痛がるちびギコの耳を掴み、自分の目線まで上げると
刃をちびの生殖器に当てた。

「それはやめるデチ!それを切ったら交尾…」
「最強を目指す者にこんな物は不要ですよ。女なんかに目が行っては
軟弱者もいい所ですしね」
「ごめんデチイィィ!メクラって言ったのは謝るデチからぁ!」

それを聞いた座頭モラの表情が変わった。
一抹の狂気を感ずる今までの笑みは消え失せ、激しい怒りの表情が現れた。

「…謝るくらいな最初っから言うんじゃねェ………」
「ヒッ、ギャァァ!?」

ブシュッ。
奇妙な音を立てちびギコのシンボルは地に伏せた。

「ヒギャァァぁぁ!!ァぁぁぁ!!ちびタンのォォォぉ!ちびタ、ヒギャァァ!!」

ちびは狂ったがごとく泣きわめいた。
いや、泣きわめくと言うより絶叫していると言った方が適切か。

「最強の男がそんな大声を出しちゃはしたないですぜ。デッヘ、ハハ」

微笑を浮かべた座頭モラの足はちびギコの脇腹を狙っていた。
脇腹で足は爆発し、四肢も生殖器も切られたちびギコは大樹に激突し
死んだ。大樹を血塗り、ズルリとちびの死骸はずれ落ちてくる。

「大丈夫かい?」

これが、つい先程まで一つの脆き生命を非道なまでに潰した男の
笑顔なのか。そんな笑顔で座頭モラはちびしぃに話し掛けた。

「…ナンデ助ケタノヨ…」
「へ?」
「ナンデ殺サナカッタノヨォ!」

予想もしない返事であった。
『何で助けたんだ』

「え、や。なぜ助けた…と言われても」

続く

812 名前: ろじゃー(wNWdMiVA) 投稿日: 2003/08/31(日) 19:20 [ cCi6JeP6 ]

「え、や。なぜ助けた…と言われても」

ちびしぃは乾いた目をしながら怒鳴った。

「モウマターリノナイコノ世界カラ消エタカッタノヨォ!」
「そんな自殺志願者みたいな」
「ソウヨ!自殺上等ヨ!」
「じ、自殺上等て…じゃあ何で逃げたりしたんです?それに殺されそうに
なった時も震え…」
「ダマレダマレダマリナサイヨゥ!」

なんなんだ、このちびは。
座頭の喉までその台詞は出かかった。が、それをぐっと
押さえ思った。
『何か訳ありなのか、このちびしぃ』と。

「…まぁ、その…握り飯もある事だし一つどうです?」

さっ、と座頭モラは懐から包みを取り出し開封した。
葉と土の香しかしない林の中に、塩の臭いが振りまかれる。

「…モラウワ」

ちびしぃは瞬時に握り飯を掴むとすぐに座頭モラに背を向け、
肉食獣のようにその握り飯を貪った。

握り飯がなくなると座頭モラは口を開いた。

「…じゃあ、お嬢ちゃん。もう馬鹿な輩と出くわさないように早く
お家に帰るんだよ。君の母様も心配してるだろうしね」

すると突然、ちびしぃは先ほどより大声で怒鳴る。
目からは涙が落ちそうであった。

「ママハ心配ナンテ、シ、シテナイヨ!!」

人一倍聴覚のいい座頭モラの耳にその大声は、少々きつかった。

「ううっ、耳の中で蝉が鳴いてる…って…ママが心配してないだぁ?そんな母親」
「ウチノママハチビシィノコトガ嫌イニナッタンダヨォ!」
「嫌い…に…なった?」

座頭モラはその言葉が引っ掛かり問いかけた。

「『なった』って?元から嫌いなんじゃないのか?」
「……………」
「相談だけでもしてみてよ、おじさんに」
「………ワカッタ」

ちびしぃは下にうつむきながら話し始めた。

「ワタシハ『しぃの』…シィノノママハ…スゴク優シイママダッタノ…毎日ダッコ
モシテクレテ…オベンキョウモ教エテクレルシ…ママ、ダイスキ…ダッタノ………
…デモネ、少シ前カラオカシイノ…スグ…チビシィノコト叩イタリ…蹴ッタリ
シテ…スゴク…スゴク…」

しぃのの目から落ちた。
大粒の、透明な雫が。

「スゴク…コワクナッチャッタノ…ドウシテナノカ…ワカンナイ…ワカンナイ…」

これ以上語らせるのを不憫に思った座頭モラは口を開いた。

「…分かった。もう言わなくていいから。…ちびちゃんのお家はどこ?」

しぃのは歩き始めた。後ろに座頭モラを引き連れて。
-----時おり、雫を垂らしながら。


続く

813 名前: ろじゃー(wNWdMiVA) 投稿日: 2003/08/31(日) 19:20 [ cCi6JeP6 ]
林を抜けてすぐに現れる村の最果てに、しぃのとその母親の家はあった。
廃屋と言っていいくらい、その親子の家はぼろぼろだった。
木製の壁には『しぃUZEEEeee!!』『糞虫早よ死ね』と言ったしぃを
罵倒する文章が彫られていたり書かれていたりした。

かび臭い扉を開けると、両耳がなく生傷の絶えないしぃがいた。
たぶん親しぃであろう。この、死にたがりの。
親しぃはわが子をちらと見、一瞬だけ家哀しそうな表情を浮かべるも
キッと顔を固め座頭モラに問いかけた。

「…ドナタサマ?」
「え…や、その。まあしがない按摩をやっとります下衆な男でして、その」

しどろもどろになっている座頭モラを牽制するように、しぃのは
母親にこう言う。

「シィノニオニギリクレタノ。オ礼ガシタクテ連レテキタノヨ」
「アラ、ソウ。アンタガミスボラシイ格好シテルカラソチラノ慈悲深イオ方モ
アナタニオニギリクライハ恵ンデクレタノネ(藁」

座頭モラは思わず言葉を失った。『絶句』と言うやつだ。
ちびしぃは母親を睨み付けると足早に、家を出た。
乱暴に閉めた扉の音が狭い廃屋に響いた。

「ど…どう言う事です」

二十秒ほどの沈黙を裂いた座頭モラの口からは、自然にそんな言葉が出た。

「あんた、あの子の母親でしょう!?それをそんなボロクソに…」
「…娘ガオ世話ニナリマシタ」
「へっ?」

その母親の思わぬ口ぶりに座頭モラは再び絶句する。
母の目は、一子を持つ優しき女性の目であった。

「ナントオ礼ヲ申シテイイカ…何分、ウチハコノ通リビンボウグラシ」
「いや礼だの何だのは別にどうでも構いませんがね。それより…」
「コレニハ訳ガアルノデス」
「訳…」
「海ヨリ深ク山ヨリ大キイ…訳…ナノデス」

「…聞かせて下さいよ。その…訳を」



「モウママハ、ママジャナイ」

家を飛び出したしぃのは寂れた枯れ野にいた。
一週間ほど前に、ここで戦が起こっていた。
しぃのは拳を固めて静かに、そして怒りながら
うなった。
固く結ばれた拳には、戦に敗れし武士の亡がらから引き抜いた
刀を握りしめていた。
これで、母の顔を借りた悪魔を切り裂く。

そう決心したしぃのの耳に---自分に握り飯を渡した中年の声が入る。

「しぃのーっ。どこだーっ。出てきてくれーっ」

まずい。見つかる。
そう思いしぃのは駆け出した。
母を殺める執念は通常のちびしぃの速度をゆうに越えている。


廃屋にしぃのが到着する頃、辺りは豪雨に見舞われいた。
雷鳴の2、3も鳴っている。
まるでしぃのの行為を褒め称えるように。

廃屋の扉が開く。
母を見つける。
刀が天を刺す。

母の下腹部に、刀が咲く。

「しぃのっ!」

雨に濡れた座頭モラが見た時、既にしぃは死にかけていた。
しぃのは肩で息をしている。

「しぃの…」
「………ママハ死ンダヨ、モララー」
「しぃの…お前の………お前のママは………お前を助けるつもりで
あんな事を…言って…」
「…タスケル?…ソレ、ドウイウ」
「お前のママ、耳ないだろ」

そう言われてちびしぃは息も絶え絶えの母の頭上を見た。

「ナイヨ…ソノ日カラママハ…ママジャナクナッタノヨ」
「…実は三日前な。…ここらに住んでるモララー二人組に…お前のママは
虐待されてたんだ」
「…ソレデ…ソレデシィノニ八ツ当タリヲ」
「違う。…違うんだ

その二人組は…意地の悪い輩でな。さっさと殺せばいいものを…いやそれもいかんが…
じわじわと1日づつにお前のママの耳や手足を切るつもりだったんだ…」

ちびしぃは目を見開いたまま座頭モラの話を聞いた。
そしてその目の方に、母は…死にかけた母はいた。

「一昨日は右耳…昨日は左耳…今日は尻尾をもぎに来るらしい。
手足をもぎ毛をむしり目玉を取り…最後には首を取るだろうな。
…お前のママは自分が死んだ後二人組は…お前を虐殺するであろうと
思ったんだろうな。…それで…」

座頭モラの声が途端に静かになる。

外はやはり豪雨だ。

「…お前に暴言を吐いて…家を出させようとしたんだ」

「ナゼヨ、ママモ一緒ニニゲタラヨカ…」

「それじゃ駄目なんだ。二人組は地の果まで追い掛けるだろうよ。
自分が犠牲になる間にちびが逃げてくれる事を望んだんだよ」

814 名前: ろじゃー(wNWdMiVA) 投稿日: 2003/08/31(日) 19:21 [ cCi6JeP6 ]
「ネェ…」

しぃのが口を開いた。
体毛がどくどくと紅く染まっていく母に問いかける。

「ホントナノ、ママ…」

母は何も言わなかった。
ただ---ただ少々哀し気な微笑を浮かべただけだ。

母はこと切れた。
無情にも母は、ああ。母は。

「ネェ…ママ、ママ、ママ……………
復活して下さい…ママ…復活して下さい…ママ…」

狂うようにそうくり返し始めたしぃのの肩を、座頭モラは叩いた。
そして静かに首を左右に振った。

「ママハ…ママハドコニ…ドコニ行クノ?」

座頭モラの指は天を突き刺した。
それを受け止めるのに、しぃのは幼過ぎた。


前編完。後編へ続きます。

837 名前: ろじゃー(0dQNL3o2) 投稿日: 2003/09/06(土) 08:51 [ umKIcoEU ]
>>811-814


座頭モラの指は天を突き刺した。
それを受け止めるのに、しぃのは幼過ぎた。

「あっ」

座頭モラは一歩遅かった。
いや、しぃのが早すぎたのだ。
しぃのは自ら自分の喉に先ほどの刀を突き刺した。
そう、座頭モラに止めさせる隙もなく。

「シィノモ…ソコニ…行ク」
「ばっ、馬鹿!なんて事…くそっ!」

座頭モラは血がどうどうと噴き出すしぃのを両の腕で抱えて、
村の医者の所に向った。
水たまりが赤く染まる。

横殴りの豪雨を突き抜け、座頭モラは医者の家へと辿り着いた。
綺麗なヒノキで出来た扉を幾度となくドンドンと叩く。
すると眠そうな初老のモララーが現れた。

「何です?」

眠りを妨げた事か、医者は幾分苛立っているようだ。
座頭モラは烈火のごとく喋り始めた。

「このちびしぃが喉を刺して自決しようとして、早くしないと
えらいことになるから何とか…何とかして下せぇ!!」

医者は当事者であるしぃのをちらと見、すこぶる不快そうに言った。

「あのねぇ。こっちだって寝る間もないくらい忙しいんですよ。
それをあーた、ちびしぃ?ふざけないで下さいよ」

「な、何言ってるんです!」

「しぃ族は医者の掟で助けられないんですよ。一般の病院じゃぁね。
まあここから3つ山を越えた所に糞虫医院って言うしぃ専用の病院が
ありますよ。そこあたって下さいな」

座頭モラが怒りで震え始めた。

「3つ…あんたぁ、寝言言ってるんじゃないのか」

「寝言はどっちですかね。害獣でしかない糞虫を生かそうなんて、
それこそ寝言ですよ。自決したんなら、そのままほっときなさいよ。
糞虫が死んで困る事なんて一つとてないんですからね」

「……………いいから治せ」

座頭モラがうつむきながら静かに、そしてどす黒く言った。

「しつこいなあーたも…何でそんな糞虫のちびに執心…あ、そうか。
あんたが虐待したのか!で楽に死なれちゃ困るから…で治ったらまた
虐待…いやじわじわと駆除するのか。あー、そですか。はいはい。
いや私も虐待虐殺は大好きですよ。昨日もキモゴミを鎖分銅で」

838 名前: ろじゃー(0dQNL3o2) 投稿日: 2003/09/06(土) 08:52 [ umKIcoEU ]

「黙れ」

次の瞬間、医者の喉から赤い血の花が咲き誇った。

「モギャアアアァァァ!モララーのノドがぁぁぁぁ!!」

じたばたと医者はそこら中を転げ回った。

…しぃのはこと切れていた。
座頭モラの目から泪は流れない。

医者をおき、座頭モラはふらふらと親子の墓を作った。
親子を埋めそこの大小の砂の山を築いた。
虚ろな表情で座頭モラは親子の住んでいた廃屋へと向う。
そこには扉の前で雑談を交わす、蛇の目を刺したモララーの二人組がいた。

「ったく糞虫親子の奴どこ行きやがったんだ」
「どうせ害獣何だから漏れらが殺ってやろうと思ったのにYO!!」
「でも所詮糞虫さ。逃げたって知れてる。追っかけるぞ」
「そうだな。見つけたらまず親しぃをレイープして」
「ちびしぃは俺に犯らせろ!」
「何だお前いつからロリコンになったんだ」

座頭モラが二人に近寄った。
死臭を漂わし懐を血塗らせためくらの姿は、二人組には
かなり忌避すべきものに写ったようだ。
しかししばらくすると思い立ったように片方のモララーが言った。

「あ、もしかして按摩さん。あなたがここのしぃ殺りました?」

物も言わずに佇む座頭モラ。

「そうか、この按摩さんがやったのか」

もう一方が言う。

「俺ら殺りたかったけど、ま、いっか。どうせ糞虫は腐るほどいるし」
「そうだな。どうだった?按摩さん。随分血がついてるけど相当じわじわ
殺ったんだろうねぇ。今後の参考にしたいからどんなテを使ったか教えて下さいよ」

杖から剣が現れた。

「その仕込み杖でまずは耳もぎですか?いや耳切りか」
「やっぱ最初は耳か」

座頭モラが口を開いた。

「そうだな…まずは耳もぎさ…」

一方のモララーの右耳が切れ、血が噴水のごとく噴き出した。

「ぎゃああぁぁ!!耳、耳が、耳から耳、耳から血があああぁぁ!!」

耳のあった部分を押さえる同胞を置いて、もう一方は逃げ出した。
しかしその男が逃す訳がない。
座頭モラは逃げるモララーの前に回りこみ、杖の先端を目玉に押し付け
目玉を潰した。ブチュン、と水風船が割れるような音がした。

「痛い、痛い、やめてくれ…俺が何やったってんだぁ!」



そこから座頭モラ自身も覚えていない。
気付くと、真っ赤に染まった豪雨に打たれる自分の前で原形を止めていない
モララーが二匹いただけだ。
五体がグシャグシャになり、四肢はもがれ、耳や目玉等の器官を砕かれ、
舌は抜かれ、ろれつの回らない口調でひたすらもがいている。
二人のモララーがいただけだ。

座頭モラは無心だった。
これと言った感想もなかった。

座頭モラが歩き始める。
どこに行く訳でもなく、歩き始める。

839 名前: ろじゃー(0dQNL3o2) 投稿日: 2003/09/06(土) 08:53 [ umKIcoEU ]
子らよ あどけなく 愛しき者よ
子らよ 穢れなく 危うき者よ

時を 選び採れず 命 受けし者よ
親も 選び採れず 生まれ出でし者よ

親なればと カを尽くすとも
親なればの 全ては 果たし得ず


新・座頭モラ 祖の二・完