私とモラ男(糞虫狩り)

Last-modified: 2020-08-12 (水) 23:37:23
62 名前:MR  1/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:04 [ lszM1MSg ]
私とモラ男(糞虫狩り)


ある日、十歳になる息子のモラ男に言いました。
「おーい、糞虫狩りにいくぞーーー!!」と。
すると息子は今までやっていたファミコンの手を止め、キラッキラした目で
「ホント!?パパ!!」
と、エレベーターから落ちて、くるくると回り死にしているスペランカーなど
気にも留めず、大層喜んでくれました。
私は晩酌で興が高じると、糞虫狩りの興奮と快感を語って止まなかったものですから、
それを聞いていた息子は、いつか私が狩りに連れて行ってくれる日を待ち望んでいたのでしょう。
すぐさま一緒に準備を始めました。
先ずは武器を選ぼうと物置に行くと、息子は大分興奮した顔で、
「僕はこれを使いたいな!!」
とバールの様な物を、ぬーと突き出すのです。
私はこんな玄人好みの得物を選ぶ息子は、将来大物になるのでないかと頬をゆるめつつも、
「これこれ坊や、これからATM強盗に行くんじゃないんだから。
もっと初心者にふさわしい武器を選んであげよう」
と、棚に飾ってあるトゲトゲバットを差し出しました。
無数のスパイクが付いた鋼鉄の棍棒に、
「凄い!これなら糞虫の脳天を一撃で粉砕できるね!!」
と興奮気味です。
私はその他必要な道具を確認しました。
糞虫の屍骸を片付けるゴミ袋、ベビを生け捕りする場合に必要な糞虫かご、
虫除けスプレーなどもこの季節必須アイテムです。
道具を詰めた登山用かばんを背負うと、私は自分の武器であるおろし金を持ち、
モラ男の手を引いて意気揚々と狩場へ向かいました。

63 名前:MR  2/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:05 [ lszM1MSg ]
市街地では景観美化のため糞虫などの虐殺は禁止されておりますが、
屍骸処理を行うならば、公園などでは解禁されています。
さて、この臨海部に広がる公園はかなりの広さがあり、狩りに適した場所と
普通の利用者の場所とは離れた構造になっています。
糞虫狩り初心者のモラ男を連れて来るには格好の場所です。
高台からは海が見え、さわさわとそよぐ潮風が興奮にほてった頬に爽やかです。
まず我々は木陰や藪の中を探索しました。
狩りでは、先ず奴らの棲家、ダンボールを見つけるのがセオリーです。
10分程探したときでしょうか。
ミンミンゼミがかまびすしく鳴く桜の木の木陰で、思わずウッと鼻を押さえました。
このえも言われぬ異臭。欲情したブタの屁のような臭い。
異臭の元に目をやると、モラ男はややっ!と声を漏らしました。
間違いありません、糞虫の棲家のダンボールです。
木の陰に隠れ、様子を伺います。
今にも「ハニャーン」と糞虫の鳴き声が聞こえてきそうです。
興奮に乾いた唇を舌で湿らせ、得物を握り締めました。モラ男の荒い息遣いが聞こえます。
しかし、もう五分程様子を見ていますが、一向に姿を現しません。
寝ているのか?いや、それなら「ギコクン コウビ コウビ!」等の寝言やいびきが聞こえるはずです。あるいは空の巣なのか?
私は意を決してすっくと立ち上がると、猛然と巣へ突進しました。
そして思いっきりダンボールを蹴り上げたのです!

64 名前:MR  3/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:06 [ lszM1MSg ]
がたん、ごとん、ごろん、
ダンボールはゴロゴロと転がっていきましたが、他になんの反応もありません。
箱が置いてあった地面から、ワラジムシやアリが出てくるばかりです。
「空か…」
そう嘆息する私の手を、モラ男が引きました。ささやく様に言います。
「パパ、…何か聞こえない…?」
耳を澄ますと、確かに、何か聞こえます。
「……ハニャン ハニャン ハニャーーーン…」
この同人女に媚びた、脳のシナプスが蝕まれる様な鳴き声は、紛れもなく糞虫のものです!
名前の分からない広葉植物の茂みの中、やぶ蚊の羽音など忘れてしまう程緊張して接近しました。
茂みに身を隠して糞虫の姿を肉眼で確認したとき、私は、わが目を疑いました。
仰天の余り持っていた武器を落としそうになりました。
そこにいた糞虫は、大きな腹を投げ出すように尻餅をつき、どす黒い陰部があらわになるほど股を開き、眼を硬く閉じて苦しげに鳴いていたのです。
「ハニャーン! ハニャーン! ハニャーン! ハニャ…ハギャーーン!!」
そう、妊娠しぃでした。
妊娠しぃを目撃するのも希ですが、今まさに出産しようとしている個体を発見するのは
糞虫狩り十五年の私ですら初めてでした。

65 名前:MR  4/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:06 [ lszM1MSg ]
「ハニャ!! ハニャ!! ハニャ!! ハギャーーーー!!」
いきんでいた糞虫が突如奇声を上げると、にゅるりと、またぐらからベビが生まれました。
ピンク色でまだ手足も短く、オミミもくしゃくしゃなそれは、薄い膜に覆われ、
もぞもぞと動いています。
糞虫は次々とベビを生み、ついに4匹の糞幼虫が誕生しました。
「ハアッ ハアッ ハアッ…」
大仕事をなし終えた糞虫は、肩で息をしながら、しばらく動けないでいましたが
「ミィ」「ッィ」
ベビの鳴き声を聞き、ハニャッ!?と我に返りました。そして
「ベビチャン? シィノ ベビチャンダヨネ? 皆ナ シィノ ベビチャンダヨネ!?」
と、あの口をワの字にする、憎憎しい表情でベビをダッコするのです。
最早モラ男は限界のようでした。
憤怒とも歓喜ともいえぬ表情で、トゲトゲバットに舌を這わせ、今まさにあの場所に
暴れ込もうとしていましたが、私はそれをいさめました。
「モラ男よ、しばし待て。もう少し様子を見ようじゃないか。
あの糞虫とベビをもっとマターリさせるんだ。そして、奴らのそれが最高潮に達した瞬間…」
シュッとのどをかき切るジェスチャーをすると、
「奴らを阿鼻の地獄に叩き落すんだね。」
と、息子はうなずきました。
我が子との阿吽の呼吸に糞虫狩りの成功を確信しつつ、糞虫親子の観察に入りました。

特有の細い舌でベビの体を舐めていた糞虫。ベビが「チィ」「ミィミィ」と鳴きだすと
「ハニャ? オ腹ガ空イタンダネ! ママノオパーイ イッパイ飲ンデネ!」
と、寝そべった横腹にベビを集合させ、授乳を開始しました。
まだ上手く飲めないらしく、少し飲んでは休み、また飲んでは休みをくり返しています。
糞虫はその姿に目を細めながら
「ベビチャン ママハ絶対アナタ達ヲ 守ルカラネ。 ドンナ事ガアッテモ 立派デカワイイ大人シィニ 育テルカラネ」
と独り事を言うと、寝息を立て始めたベビと一緒に、船をこぎ始めました。
数分後にはベビの無残な屍骸が眼前に晒されるとは毛筋の先ほども考えていません。
何が「カワイイ大人シィ」でしょうか。私は奴のセリフを心中で反芻すると、
自然に殺意が高揚するのが分かりました。
糞虫がうつらうつらとするとベビが「ミィミィ!」と泣き出します。
その度に起き、「ベビチャン ゴメンネ オパーイ アゲルカラネ」とまた授乳するのです。
実に健気な母親ぶり。「動物キソウテソガイ」なら「ママのおぱーいおいしいよう」等と
ウザいナレーションが入りそうな場面。
我々はウィダーイソゼリーをすすりながら、虐殺開始の好機を伺っていました。

66 名前:MR  5/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:07 [ lszM1MSg ]
ようやく授乳が終わったとき、ベビは「ミュイ ミィイ」とむずかりました。
小さいオテテをばたつかせ、尻を振っています。
「ハニャ!? ソウカ ウンチサン シタインダネ!」
糞虫はベビの肛門をぺろぺろとやり、排便を促すのです。
その時、私はハンティング開始の好機到来を直感しました。
モラ男の目を見やって
「GO!」
と鋭く吼えると、茂みの中から跳躍し、奴らの前後にバーソと立ちはだかります。
「ハ…ハニャ!?」
驚いたのは糞虫です。突然のモララーの出現に呆気にとられながらも、
「ギ…ギャクサツチュウ!!」
と自分が置かれた状況を把握し始めたようでした。
「酷いなしぃちゃん。僕達は、君のベビの排便を手伝おうとしてるんだよ?」
「ミィ? ミィミィ」
生まれたばかりのベビは何の警戒もせず、私の足元へちょこちょことやって来ました。
「シィィィィィ!! ベビチャン駄目!!」
糞虫が声を上げたのと同時!
私はベビをむんずと掴み上げると、やおら懐中よりねりわさびを抜き、
小さな小さなケツにぶち込んだ挙句、渾身の力でチューブを握りしめたのです!
ボグン!と急激に膨れ上がるベビの腹!わさびを抜くと、血の混じった便が一気に噴出する!
「ギュィィィィィィィィィィィ―――――――――――――――――――――!!」
ぶびゅりゅ!!びゅりびゅりびゅりびゅり!
ベビの断末魔と脱糞とは同時でした。ビグンビグンと痙攣しながら体内の糞を撒き散らし、ケツの穴を引き裂かれ、口からは緑色の液体を垂れ流しながら、短い生涯を終えました。
「シィイイイイイイイイイイイイイイノ ベビチャンガーーーーーーーー!!」
糞虫は両手をバンザイさせ、大粒の涙を流してベビの屍骸に近づきました。
「ネエ、嘘デショ!? ベビチャン チィチィッテ言ッテ ホラ ミィミィッテ鳴イテ!!」
大事にダッコしぺろぺろと舐めるが、ベビは裂けた肛門から腸をだらりと垂らし、
縦長の楕円形に開いた口は、妙な液体を流すばかりで終に愛らしい声を発することはなかった。
「ドーーーシテコンナ事ニーーーーーーーーーー!!」

67 名前:MR  6/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:07 [ lszM1MSg ]
ビエーンと泣き出した糞虫は私に向かって来ました。
「返シテヨ!! シィノベビチャンヲ 返シテヨ!!」
「おやおや、そんなことやってる場合ですか?他のベビちゃんも危ないんじゃないですか?」
ハッとして振り向くと、モラ男は一匹の糞幼虫を踏みつけにしていました。
「ビィーーーー!! ギュイイーーーー!!」
ベビの絶叫を聞き糞虫は駆け寄ろうとしますが、私に羽交い絞めにされ、身動きすらままなりません。
「ヤメテーーーー!! ベビチャンガ 死ンジャウヨーー!!」
「ん~~~?聞こえんなーーー?」
モラ男は北斗の拳の悪役のような声を出し、徐々に力を込めて行きます。
クキ、ポキ、と骨だか肉だかが潰れる音がし、ベビは口から血を吐いて泣き叫びます。
「ビッギ ギュビ…」
ぐじゃ、という音とともに血がほとばしり、辺りを赤く染めました。
モラ男がゆっくりと足を上げると、にちゃーと糸が引きました。
その下には車に轢かれたカエルの様になったピンク色の物体が。
はらわたを飛散させ、糞をはみ出させ、脳を露出させ絶命しているベビは、
糞虫にさらなる絶望を呼び起こしました。
「ベビチャンガーーー!! シィノ ベビチャンガーーー!!」
糞虫はショックのあまり失禁し、さらには茶色の固体を菊の門から放出させました。
私は失敗しました。
糞虫は極度の興奮状態になると糞や小便をもらす、下卑極まりない下等生物だということを忘れていたのです。
小便は私のズボンを濡らし、股間には糞がクリーンヒットしました。
それから後は、少しの間記憶がありません。
ハッと気が付くと、目の前には糞虫と思われる物体が転がっていました。
頭部は二倍ほどに腫れ上がり、何処が目だか口だか分からないほど、ボコボコになっていました。
右のオテテは根元から千切れ、ケツの穴にぶち込まれていました。
息子は返り血が付いたトゲトゲバットで体を支えながら、今までに見たことのないような
晴れやかな顔で、大きく息をしています。
私の両手も血に染まっていました。どうやら怒りのあまり我を忘れ、
得物を使うことなく息子と一緒に糞虫を殴打したようです。
糞虫はビグン、ビグンと痙攣しながら、地面に這いつくばり、ベビの元に近づきました。
「キチィ!!」「ピィイイ!!」
もぞもぞと近づいてきたベビに手を伸ばし、
「グビイ ボビイ」
とわけの分からない言葉を最期に、絶命しました。

68 名前:MR  7/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:08 [ lszM1MSg ]
私とモラ男は用意していた新しい服に着替えると、また茂みの中に身を隠しました。
「パパー、糞虫のベビは母親がいないと、三時間で死んじゃうって言うけど本当かな?」
是非真偽を決したいとのモラ男の希望により、ベビを観察することにしたのです。
「キチィ!!」「ピィィ!」
残された二匹のベビは糞虫のわき腹に接近し、乳を欲しました。
乳首に口をつけ、飲もうとしますが、当然出るわけがありません。
「ママーオパーイ欲しいよー」等と言いたげにまたピィピィ泣きます。
そのうちぶるぶると震えだしました。
聞いた話しによれば、ベビは体温調節も自分ではままならないのだそうです。
母親に暖めてもらわねばならないのですが、件の糞虫はすでに冷たい肉塊と化し、
さっそく腐臭を漂わせ始めています。
「キュミイ キュミイ」
と苦しげに身悶えるベビ。さっきのマターリした姿とは天地雲泥の地獄絵図。
将来の我が子の姿を楽しみにしながら乳を与えていたであろう糞虫は、頭部を
ひき肉の塊にされ、乳を美味そうに飲んでいたベビも、二匹は酸鼻を極める屍骸と化し、
もう二匹は孤独と飢えと寒さに晒され、瀕死の状態。
そんな無様な姿に横手を打って笑いながら、刻一刻と迫る糞ベビの最期を楽しみにしていました。
その時です、太陽が西に傾きだした大空から鳥が飛来しました。
均整のとれたフォルムに漆黒の翼、カラスでした。
私はこの展開に興奮しました。
モラ男も思わぬゲストの出現に、どんな結果が待ち受けるのか、固唾を呑んで見守っています。
やがてカラスは二匹のベビに気が付くと、ちょんちょんと跳ねながら接近しました。
ベビは始めてみるカラスにも「ピィピィ」「ミィミィ」と鳴くだけです。
カラスはベビの様子を見ながら、ニ、三度軽くつつきました。
やがてベビの無抵抗なことを知ると、ついに奴は捕食者の牙をむき出しにしたのです!

69 名前:MR  8/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:08 [ lszM1MSg ]
ブスリと、太いくちばしがベビのわき腹を貫通しました。
「ビィイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーー!!」
ビグンビグンと小さなピンク色の体が痙攣し、まだ開かないオメメから涙が流れ、
楕円形に開いた口から血反吐が吐き出されました。
ベビの体内から抜かれた鮮血の付着したくちばしの先には、ピンク色の臓器が。
それを口の中に運び、満足そうにカーカーと鳴くカラスは、
続いて同じ箇所をくちばしでえぐり、また何かの臓器を引き出して食らっています。
ベビは「ギュイイ! ギュミィイイ!」とアンヨとオテテを動かして必死に逃れようとしますが、
カラスに小さなオミミをつまみ上げられ、ぶら下がった状態になりました。
やがてオミミの根元が青黒く変色するとブチっと千切れ、地面に叩きつけられたベビ。
その拍子でアンヨとオテテが有り得ない方向に曲がり、「ギジーーーー!!」と悲痛な叫びを上げます。
そんな中、さっきの鳴き声に呼び寄せられたのか、仲間のカラス達がやってきました。
「ピィ? ミュイ ミィ」とやっていた無事なベビも、そのカラスの冷酷な牙に当たり、
まだ開かないオメメをえぐられました。眼窩から激しい出血。
「ギューーーーーーーーーーーーー!!」という叫び声はカラス達の羽音にかき消され、
二匹のベビは食い散らかされました。

70 名前:MR  9/9 投稿日:2004/08/28(土) 22:10 [ lszM1MSg ]
後に残ったのは、肉やはらわたを食い尽くされた物体が二つ、ピンク色の圧死体、
糞まみれの変死体、そして頭部の形状を推し量ることが不可能な肉塊一つ。
我々は夕焼けに染まる空の下、蚊に刺された腕を掻きながら、
満足と快感に打ち震えた瞳で、この光景を眺めました。

「パパ、今日はすっごくスキーリしたよ!」
糞虫の屍骸を焼却施設に置いてきた、帰りの車内、目をキラッキラさせながら、
息子のモラ男は言いました。
「結局糞幼虫は三時間で死ぬのかどうか分からなかったけど、あのカラスに襲撃された
ときは、本当に体内の血が沸騰したかと思うほど熱くなったよ!」
「初めてトゲトゲバットで糞虫を殴った時の、あのぐにゃりとした手ごたえ!
一生忘れられないよ!」
モラ男の話は止まることを知りませんでした。
「よーし秋には、山にチビギコ狩りに行こうか!」
私の言葉に大喜びし、「早く秋にならないかなー!」と実に無邪気です。
すっかり日が暮れた頃に帰宅し、玄関先に立ったとき、涼しげな虫の声が聞こえました。
近づく秋の足音に、すぐにモラ男と狩りをする日がやってくるだろう、と思い
微笑がもれました。
忘れられない、息子との夏の思い出です。
                        
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