記憶

Last-modified: 2015-06-23 (火) 01:01:07
688 名前: がるく 投稿日: 2004/04/05(月) 08:53 [ ke.gQlM. ]

おかしい。 なにかがおかしい


身体に違和感を感じるのだ

目を開けるのが怖い とても恐ろしい事が起きそうな


だが、自分の身体を見てみなくてはどこがおかしいか分からない


私はおそるおそる目を開けた





まず最初に、見えたのは白くなめまかしい壁だった
それから、ゆっくりと周りを見渡す


どうやら、私は小さな球体のようなドームの中に一人でいるらしい

そしてそのドームの上部には、分厚いガラスが張られていて、外からここを見渡せるようになっている
私はそのドームの真ん中に一人で椅子に座っている


肝心の身体はというと

身体中に、様々な色の管や線などが自分の身体に繋がっている
特に、頭の方に多く繋がっている

痛みは無いが、だるい 
意識も少し霞む


と、ガラスを叩く鈍い音
それに気付き、上を見上げる
「やぁ、しぃどうだい調子は?」
医務服を着たモララーが愛想良く笑った

「まぁまぁ、ね」

689 名前: がるく 投稿日: 2004/04/05(月) 08:53 [ ke.gQlM. ]
私達は、夫婦なのだ
自分で言うのもなんだが、私は全角が喋れて、普通のしぃより賢い

私は、ここの研究所で働いている
しかし、この研究所の所長はあのモララーである
そしてただ一人の所員が、この私だ
彼は、病気で妻と子供を亡くしたそうだが、私はそれを理解して接しているつもりである
そのおかげで、時々子供の事が話題に出る

きっと彼は子供が欲しくて仕方が無いのだ
しかし、私は子供が出来ない体なのだ


そして今日は
実験をする
しかし、実験をするという予告が無かったため、正直驚いている

実験動物で何回も実験した
きっと安全だと信じたい

私達がやっている実験は
非道人的な人体改造だ

技術を買われ、軍に頼まれた
しかし、軍は勿体ぶって実験動物を出して来ないので仕方なく自分達でやっている


「じゃあ、スイッチを入れるよ?」
私は深く深呼吸をしてから、答えた

「いいわ」


まず、多くある実験用機械の中で一番大きい機械のスイッチを入れる
スイッチに、オレンジ色の灯りが灯る

身体に電流が走る
それに耐えられず、小さく呻いてしまう

この機械は、身体の神経を麻痺させるための物だ

意識はあるのだが、身体が動かない

次々に機械のスイッチを入れていく
意識がふっと消える

690 名前: がるく 投稿日: 2004/04/05(月) 08:54 [ ke.gQlM. ]
それだけだと思ったのだ


次に目覚めた時、少々身体が変形しているだけだと








おかしい 何かが

何か嫌だ 嫌だ  助けて  



変だ おかしい
目の前が真っ暗

身体が激しく痙攣するのが分かる



消えていく 消えていく  助けて!助けてモララー



私 の 記 憶 が
 


私が私じゃ、無くなっていく様な

走馬灯のように駆け巡っては消えていく私の記憶
映像と記憶が流れていく


モララーと私が海で楽しそうに遊ぶ記憶
あぁ、モララーと一緒に海に行ったっけ


楽しかったなぁ・・・・・

秋にも一緒に落葉を見に行ったっけ

そして、結婚式を挙げて・・・・・
一緒に暮らしたりして


そんな記憶も消えていく 嫌、嫌だ 何で?おかしい 

助けて、助けてよモララー

691 名前: がるく 投稿日: 2004/04/05(月) 08:55 [ ke.gQlM. ]
あれ?何だろうこの記憶


私と同じ・・・・違う、幼いしぃがモララーと手を繋いでいて

そのしぃがモララーと一緒に遊園地に居て

共に夕食を食べていて


誰?一体誰なのよ


消えていく記憶と入れ替わりに入っていくる変な記憶



そして、唐突に理解した

これは、死んだはずのモララーの娘の記憶だと





私ハわタシデ イやダヨ タスケてヨ もララー

アァ、ワタシがワタしジャナクなッテクル


ワたシハ いッタイ   ダレ




ワたシハ


わタシハ








もララーノ       むすめ

692 名前: がるく 投稿日: 2004/04/05(月) 08:55 [ ke.gQlM. ]



ゆっくりと目を開ける

目の前には、あのモララーがいた

「やぁ、起きたかい?シィラーヌ」
私は、とりあえず頷いた
モララーはそれを見届けると

管やホースを丁寧に優しく身体から取っていく
時折、管を取り除くことで身体が痛むが気にしなかった

しばらくして、全部管を取り終わると、モララーはシィラーヌと呼ばれた自分の娘の手を取り、立ち上がらせた


「さぁ、お父さんと言ってごらん?」
とにこやかに微笑むと

私もそれに習って微笑みながら言った
「 お父さん 」

それを聞くとモララーは優しく頷いた


「さぁ、行こうか」

一体私は何を忘れていたのだろうか?

私はこの人の娘なのに





「はい、 私のお父さん」



終わり