道端のしぃ

Last-modified: 2015-07-12 (日) 16:58:31
238 名前:219  1/4 投稿日:2004/08/24(火) 01:29 [ 7RtzJ4tI ]
二作目投下させて頂きます。
宜しく御願いします。


西の空が茜色に染まる夕方、家路を急ぐ人々が通り過ぎてゆく。
コンクリート壁の汚れた川の水面に、そんな人々の影が揺れる、都市郊外の道端。
仕事や学校が終わり、皆くつろぎの時間が待つ家に向かっているわけだが、
どういうわけか、道を行く人々の表情は冴えない。
「ハニャーン ハニャーン シィヲ拾ってー! ハニャーン ハニャーン!」
これがその原因だ。あのボロボロのダンボール箱から発せられる、このむわっとした
慰安食堂の残飯の様な臭い。そして、聞く度に眉をしかめざるを得ない、耳をつんざく甲高い声。しぃである。
なるべく目を合わせないようにしながら、早足で前を通り過ぎる。中には小走りになる者もいる。
「カワイイ シィチャン アイドル シィチャン!! オナガイ オナガイ シィヲヒロッテー!!」
今度は珍妙な歌まで繰り出して媚を売る始末。
人々は一層不快感をあらわにしながら、このダメージ床にも似た地帯を通過するのであった。
しぃはそんな人々の様子を、この場所でもう二時間も見続けている。
「………」
急に黙り込んだ。口の片端を上げる、あの自信ありげな表情が消えた。
さすがに傲岸不遜の権化の様なしぃも、見ず知らずの人に「拾ってー」等と、
およそこの世の常識から逸脱した唾棄千万な愚考に気付いたのだろうか。
と、その時であった!

239 名前:219  2/4 投稿日:2004/08/24(火) 01:30 [ 7RtzJ4tI ]
「シィイイイイイイイイイイイ!!」
やおら!しぃは奇声を発するや否やダンボールハウスから路上に暴れ出ると、
両手を盛んに上下させ、狂ったように地団太を踏み、大粒の涙を流して絶叫した!
「ドウシテ カワイイシィチャンヲ 拾ワナインデスカ!!」
あらー!!何としぃは誰からも見向きされないことに立腹し、ついに前後を忘れて
駄々をこねだしたのだ!
「シィハ カワイイノニ! シィハ アイドルナノニーーーーーーー! 皆ナ ギャクサツチュウダヨーー!! ビエーーーーーーーーーーン!」
道路の真ん中で、おもちゃ売り場の三歳児よりお粗末に、両手両足をばたつかせ、
自己の不遇を呪うのだった。
一体何事かと、しぃの半径2メートルを空けて取り囲むように、人々が集まってきた。
「カワイイシィチャンガ 拾ワレテヤルッテ イッテルノニ!! サッサト拾イナサイヨ クソヤロウドモ!!」
今度は怒りのままに悪口雑言をぶちまける。
この程度の低さに、スーツ姿のモララー族の男は失笑し、モナー族の学生は閉口するのだった。
そんな野次馬の中心で、しぃは嘲笑と嘆息を浴びながら、しかしそれを全く気にせず、
先ほどの通りに駄々をこね、ついには
「コノクソドモニハ シィノ コリコリウンチサンガ オ似合イヨ!!」
と放屁とともに便を垂れるまでに至った。
激烈な悪臭に直撃した者の中にはさすがに怒りを覚えて、
この糞虫が!ぶっ殺す!と息巻いて、周囲に制止される者もいた。
町中での虐殺は、景観美化のため禁止されているのだ。

240 名前:219  3/4 投稿日:2004/08/24(火) 01:31 [ 7RtzJ4tI ]
そんな中、ようやく警官がやって来た。
「通行の妨げになっているアフォしぃがいるのは、ここですか?」
モナー族の巡査が溜息をつきながら、野次馬の中から出てきた。
その後ろにはギコ族の警官もいて、
「あんたね、こんな所で暴れられちゃ、迷惑なんですよ」
と腰に手をやり言う。
「ハニャ!」
突如、しぃは口をワの字にして、一層媚びた声を出す。
そして次に奴がとった行動に、我々は仰天する!
「ギコクン! コウビ コウビ!! シィト コウビシテーーーーーー!!」
常軌を逸した発言とともに、臀部を突き出すしぃ。
青黒く変色し、尿や下り物の変化した臭いを発する性器を露出させ、
ちぢれた陰毛がのぞく、茶色い便がこびりつく肛門をあらわにし、
しかも、さあここにぶち込んでくれと言わんばかりに、腰をくねらすのだ。
この状況で、これだけの人々を前にして、こんな下劣極まりない行動をとると、
一体誰が想像できるだろうか?
この常人のおもんぱかりを凌駕したしぃの行状に、さすがのギコ巡査も度肝を抜かれて硬直した。
「ハニャ? ドウシタノ ギコクン? アッソウカ! 初メテダカラ 緊張シテルノネ! 大丈夫 オ姉サンガ
手取リ 足取リ 教エテ アゲルワ!!」
勝手なことをぬかすと、ハニャーンの鳴き声一閃、ギコ巡査に飛び掛る。
身の危険を感じた巡査は、腰の警棒を抜き、飛び掛って来たしぃの横っ面に痛烈な打撃を加えた。
「シィイイイイイイイイ!!?」
もんどり打って顔面から地面に激突する。
自慢の顔肛門*も真っ赤に腫れ上がり、口腔から流血しながら、
またビエーーーンと泣き出した。当然ギコを虐殺厨呼ばわりするのも忘れない。
見物人の中から、ざまあ見ろの失笑が漏れた。

241 名前:219  4/4 投稿日:2004/08/24(火) 01:32 [ 7RtzJ4tI ]
「こいつは手の付けられない基地外だぞゴルァ」
心底うんざりした表情のギコ巡査がうめきながら、相方に目配せをする。
モナー巡査はうなずくと、
「『しぃ対策法』第3条により、これより即時強制を執行するモナ!」
そう言い、モナーは両手をギコは両足をつかみ、しぃを仰向けにバンザイさせた姿勢で
移動を開始した。
「シィイイ!! ヤメテヨ! ギコクンヒドイヨ!! ギャクサツチュウノ 仲間ダ ナンテ!!」
体をくねらせ暴れるが、もうどうしようも出来ない。
二人の巡査は川べりのガードレールまでしぃを運ぶと、せーので投げ込んだ。
空中にしぃの体が舞う。かたく閉じられたまぶたから大粒の涙が流れ、
手足を縦横に伸ばし、糞尿を垂れ流しながら放物線を描くしぃの姿は、
見るものの笑いを誘って止まなかった。
ザブーーン!
水しぶきが上がり、しぃがドンブラコと流されてゆく。
見物人からワッと歓声とも安堵とも言える声が上がった。
ようやくウザイ糞虫がいなくなったかと、ホッとしてまた家路につく者もいれば、
しぃを指差してゲラゲラ笑い転げるものもいた。
そんなギャラリーの反応とは裏腹に、2人の警官は溜息をついた。
道路のしぃの糞と糞だらけのダンボールを処理しなければならなかったからだ。
沈鬱な気分に顔を見合わせ、そそくさと掃除道具を取りに交番へ向う2人の背後で、
ちかちかと今街灯が灯った。この街にも夜の帳が下りはじめたようだ。


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