鮮血色の青年

Last-modified: 2015-06-05 (金) 01:12:26
220 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:06 [ VN4afZIg ]
「鮮血色の青春」

 俺の名前は茂良野 智史(もらの さとし)14歳だ。とある県の山の中にすんでいる。
 ・・・・・こう書くと大抵の人は「木製の家で自炊してる田舎者」を思い浮かべるかもしれないが断じて違う。
まあ、田舎者はあってるかもしれないが家は普通の一戸建ての住宅だし、ちゃんと電気、水道、ガス、電話回線など
全てつながっている。まあ、ADSLは繋がらないわコンビニはおろか自動販売機すら無いわ学校医熊手自転車で15分
かかるわで不便この上ない・・・・っと、どうでもいい話はこれくらいにしとこう。
 さて、おそらく皆さんがこの板において一番見たがっているであろう「虐殺」は日本中あちこちで流行っている。
無論、俺の通う中学校でも流行りまくっている。俺もよく友人に誘われたりするがあいにく俺はインテリ系でそういう
体力使いそうなことはあまりしたくなかった。また、俺は無意味に生物を殺すことにずっと抵抗を感じていたこともあり
「俺は絶対に虐殺には手を出さないんだろうなあ・・・・」とずっと思っていた。そう思ってい「た」
 ・・・・・・・・・・・あのことがあるまでは

221 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:07 [ VN4afZIg ]
 とある日曜日、俺は家の周りをぶらぶらと散歩していた。普段は外には他人の土地で入りにくい森やよその家しかないので
ネットやらTVゲームやらしているのだが、その日は何となくむしゃくしゃしていてその辺をフラフラしたくなっていた。
・・・・え?何をむしゃくしゃしていたのかって?そんなこと聞くなよ、人には聞かれたくないことだってごまんとあるんだぜ?
まあ、強いて言うなら人間関係や勉強についてだな。それ以上はあまり聞くな。話を元に戻すぞ
 俺が近所をあらかた回り家に近づいてきたときふと、家の隣の空き地にあるモノを見つけた。それは直径50㎝くらいの
ほこらのような穴だった。俺はそのとき動物図鑑で見たあるモノを思い出した。・・・・・・・・・・・ちびギコの巣だ
 ちびギコの巣は本来人目のつかない隠れたところにあるモノだが、その巣と思われる穴は思いっきり日当たりがよく、
目立った場所(もっとも俺の家からは死角の位置にあったが)に作ってあった。おそらくこの辺にまで虐殺をしにくる奴は
少ないから油断して日当たりのよい場所を選んでしまったのだろう。俺はついつい見慣れぬちびギコの巣に興味を引かれて
近寄っていってしまった。

222 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:07 [ VN4afZIg ]
 近寄ってみたところやはりちびギコの巣のようだった。何で解るのかって?独特のにおいがするのさ。
ただ、どうも昨日や今日作られた巣ではなさそうだった。巣を掘った後の残土はすでに踏みしめられてからっからに
乾いており、おまけに5日前野良犬に持ってかれたと思っていたドッグフードの袋まですぐ横に放置されていた。
これらの状況から推測するとおそらく1週間くらい前にココへやってきたのだろう。もっともそんなことどうでもいいが。
 そんなことをぶつくさつぶやいていると穴の中からがさごそと音がしてきた。はっとして穴の方を見てみると
中からちびギコがあの間抜け面してこっちを見ていた。
「キャッ見つかっちゃったでち!」
そういってちびギコはさっと頭を引っ込めた。しばらくそのまま穴を見つめていると好奇心が抑えられなかったのか
ちびギコがおそるおそる穴の中から出てきた。
「お兄ちゃん誰でちか?」
俺は自分の家の方を指さして
「あの家に住んでいる者だよ」
とにこやかに言った。するとちびギコはさっと血の気の引いた顔をして
「ご、ごめんなさいでち!巣を作ったばかりでおなかが空いてたんでち!だからつい出来心であの袋を持ってちゃったんでち!
 もうしないから許してでち!」
と、ドッグフードの袋を盗んだことをさんざん謝ってきた。俺はちょっと笑いながら
「ハハハ、気にすることはないよ。中身はほんのちょっとしか残ってなかったし、替えのドッグフードもたくさん残ってたんだ。
 でも、犯人が自称猫な君たちだったとはちょっと驚いたけどね」
それを聞いたちびギコはまたあの間抜け面に戻り「ありがとうでちありがとうでち」と繰り返しお礼を言ってきた。
口の中で「ちっ、そっちを盗んどきゃよかったでち」とつぶやいてたことも大目に見といてやるか

223 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:07 [ VN4afZIg ]
「おーい、大丈夫でち。敵じゃないでちよー」
 ちびギコが穴の方に向けて声をかけると穴の中からちびしぃとベビギコが出てきた。
「こんにちは♪」
「ミュー♪」
「へえ~、子供いるんだ」
「そうでち、一昨日生まれたばかりなんでち。」
 例の間抜け面でにこやかに笑いながらちびギコは答えた。その時穴の中でじっとこっちを見つめてたベビギコが俺の足下によってきた。
「ミュ~♪」
おそらく遊んでほしいのだろう俺はそのベビギコをかまってやろうとベビギコの方を向いたとき、急に俺の頭の中に
聞き慣れた会話が聞こえてきた。

224 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:08 [ VN4afZIg ]


「オマエハギャクサツヤンネーノ?」
これは友人の声・・・・・?


「・・・・キョウミネエヨ。ソレニムイミニセイブツヲコロスノハチョットキガヒケル。」
俺の・・・・声?


「ベツニムイミッテワケジャナイトオモウガ・・・・マア、イズレオマエニモワカルヨ。ギャクサツノイギヲナ」


「・・・・・・・・エイエンニワカラナイトオモウゼ」

225 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:08 [ VN4afZIg ]
俺の中でこだまする会話に煽られたかのように別の声も聞こえてきた。


「モラノクン、マタキミハわーくヲダサナカッタネ?」
これは英語の先生の声・・・か?


「・・・スミマセン」


「ベツニイインダケドネ・・・・デモ、コノママダトナイシンテンガチョットアブナイヨ・・・・」


「ハア・・・・・」


「ライネンカラハモウジュケンガハジマルンダカラシッカリキヲヒキシメナサイヨ?」

226 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:09 [ VN4afZIg ]
「ミュ~?」
「急に押し黙っちゃったでち」
「どうしたの?」
ちびギコたちの声で俺の中に響いていた声は姿を隠した。だが、俺の胸の中にはまだモヤモヤとしたモノが残っていて
そいつは俺にこう命令していた。

「コロセ」

俺は虚ろな目をしながらゆっくりと右足を上げた。そして、突然の行動に訳がわからず
「ミュ?」なんて声を出しているそいつを






グチャ
「ミ゙・・・・・・」

全体重かけて踏みつぶした。おそらく即死だろう。

227 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:09 [ VN4afZIg ]
その時周りでは確かに時が止まっていた。そりゃ、まあこんなところでいきなり自分の子供が、
しかもたった今まで和やかに会話をしていた奴に殺されるなんて思ってもなかっただろうからすぐに反応できるわけはないだろうな

だが、俺の中ではいろんなモノがせわしくうごめいていた。無意味な殺しによる罪悪感、自分がしたことについての困惑と驚愕、
そして・・・・・・・快感と胸の高まり

「キャーーー!ベビちゃん!!!!!!!」
 長い沈黙を破ったのはちびしぃの叫び声だった。その声でちびギコも正気に戻った。
「き、貴様、ちびたんのベビたんに何をするでちか!!!!すぐにその足をどけるでち!!!!」
 俺は怒りに燃えてはいるが恐怖でその場から罵倒することしかできないちびギコの方に虚ろな目のまま視線を向けた。
ちびギコはちょっと後ずさりをしたが罵倒をやめない
「こ、こら聞いてるんでちか!!早くその足をどけてベビたんを助け・・・・」
「もう、こいつは死んでるよ」
 そういった後、胸の中のモヤモヤに指図されるより早く大地を蹴り、ちびギコをインフロントキックで蹴飛ばした。
「ヒギャ!!!!!!!」
 いつもはサッカーのパス練習でもボールを浮かすことなんてできやしないのだがこの日は違った。
ちびギコはものすごい勢いで吹っ飛んでいき6m先の木にまだ余力を残したままぶつかり砕け散った。
「ちびギコってずいぶんと軽くてもろいんだな・・・・・」
そうつぶやいた後、俺はさっきから潰れたベビギコを抱えて「復活してください復活してください復活して・・・・」と
繰り返しつぶやいているちびしぃにゆっくりと近づいていった。

228 名前: 耳もぎ名無しさん 投稿日: 2003/02/13(木) 22:10 [ VN4afZIg ]

ザク、ザク、ザク、ザク・・・・・・・俺は元ちびギコの巣だった穴をスコップで掘り、さっき殺したちびギコ家族の墓を
作りながら先ほどのことを思い出していた。まだ30分もたってないはずなのにずいぶんと昔のことの気がする。
あのあとちびしぃも蹴り飛ばした時、俺の中で何かが解放されたような気がした。これはちょっとやそっとの爽快感とは
訳が違った。胸の中にあった重いモノが全て吹き飛んだような感覚だった。
「命は地球より重いって言うものな・・・・・その命と一緒にストレスも全て吹き飛んだか?」
ちびギコたちの亡骸を墓に詰め込みながらぼそっとつぶやいた。すると、なぜか笑いがこみ上げてきた。
別に奴等が死んだことがおかしいのではない。ベビギコが一発で潰れたりちびギコが予想以上に吹っ飛んだのがおかしいのでもない。
ただ・・・・・・・・・こんな簡単なことに気づかなかった自分がおかしかった



「・・・・・・・・マア、イズレオマエニモワカルヨ。ギャクサツノイギヲナ」

 友よ、ついに解るときが来たよ・・・・・・・「虐殺の意義」をな


                                     糸冬(好評だったら続くかも)