momo

Last-modified: 2015-06-19 (金) 00:28:39
530 名前: momo 投稿日: 2003/08/06(水) 02:07 [ uUsQuuaw ]
-和歌山県桃山町、都会のAAのしがらみから身を引いて田舎でのんびりと暮らすAAが居た。-
私の名は「桃山 白鳳」AA名を「モモラー」と言う。あまりAAの世界では知名度も低く、
実際さして名を売ろうとは考えていなかった。

「都会との暮らしを絶って五年か・・。田舎の暮らしもそう悪くないもんですね。しぃ美さん。」

一人のしぃに向かってそう言った。彼女の名は「しぃ美」。私と同じく都会で生まれたしぃである。
家族も都会育ちだが・・。その母親が世間で言う「アフォしぃ」だったのである。
育児に疲れたのか存在が疎いのか彼女はほぼ毎日の割合で母親から虐待を受けていた。
彼女はそんな母親から逃げるようにして此処、和歌山に来たのである。言わば彼女も都会に押し潰された
身と言って良い。
正直言って彼女が初めて弟の「チビギコ」と妹の「ベビしぃ」を連れてきたときには驚いた。
彼女の体は傷と痣だらけ。子供達・・。なんと幼い赤ん坊同然のベビしぃまでもが体に痣をつけて
いたのである。
彼女は私をみてこう言った。

「オネガイシマス。ナンデモイウコトキキマスカラ、ココニオイテクレマセンカ?」

都会を蔑視する気は無いのだが、都会住まいの連中はこういう弱者を平気で見捨てていた。
恐らく、都会では何度も断られたのであろう。
私は彼女を置いてやることにした。彼女らの話を聞いて行くうちに、あまりにも不憫に思えてきたからだ。
そして彼女を私の元に置いて半年が経ち今に至る。
今日も早く起き、農作業に出かける。案の定、しぃ美さんはまだ寝てる兄弟達を置いて私より
先に畑仕事に出ていた。

531 名前: momo 投稿日: 2003/08/06(水) 02:20 [ uUsQuuaw ]
「いつも早起きですね、しぃ美さんは。仕事を手伝ってくれてありがとうございます。」
「イエ、ムリヲイッテオイテイタダイテルミデスカラ・・。オレイナンテイリマセン。」
「いえいえ、対したおもてなしもお礼も出来ませんで・・さ、しぃ美さん、後は私に任して、
無理をしないで休んでいてください。元々これは僕の仕事ですから。」
「ス、スイマセン・・・。」

元々しぃ族は体が虚弱である。ましてや自分の背丈程も有る鍬をもって耕そうと言うのだから
しぃ美さんとてすぐに息があがってしまう。
私は生計を立てるために農作業をして果物を育てているのだが、その畑は周辺の倍ほども有る。
体力には元から自信はあったので、元々は一人でも食いつないでいた。
私は鍬を持ち、畑を耕しながらしぃ美さんにむかって話し掛けた。

「しぃ美さん、無理をすることはありません。私一人で貴方達を食べさせてやるくらいの事は
出来ます。ですから私に任して貴方は休んでてください。」
「アリガトウゴザイマス・・・デモセッカクオイテモラッテルノニナニモデキナイナンテ・・。」

しぃ族にも共通して言えることは(アフォしぃは別だが)義理固いと言うことだ。
しぃ美さんも私に対して相当恩義を感じているのだろう。
何かをやらないと、と必死になっているのかもしれない。

「良いですから。・・ん?そろそろ弟さん達の起きる頃じゃないですか?}
「エ?ハ、ハイ!チョットヘヤヲミテキマス。」
「はい。」
「・・・さて、私はもう少し頑張りますかね・・。」

そして畑仕事の残りを片付けようとして外に出た瞬間・・・。

532 名前: momo 投稿日: 2003/08/06(水) 02:32 [ uUsQuuaw ]
「お・・・。おお?」
「タイヘンデス!チビチャンタチガイナ・・・ア・・アアア・・」

ちび達は珍しくこの日は早起きして外に出て遊んでいた・・・。普通の人なら微笑ましい風景
の内に入るであろう。が、遊びのやり方が不味かった。
耕したスイカ畑の真中で、驚くほどの短時間で土山を作ってキャッキャと遊んでいた。

「・・・(ポカーン)」

呆然と眺めている私の横で、しぃ美さんが叫んだ。

「コ・・・コラ!チビチャン!ベビチャンッ!モモヤマサンノハタケニナンテコトヲスルノ!ハヤクモモヤマサンニアヤマリナサイ!」
「ま・・・まぁまぁ、良いですよ。もう一回耕せば良いんだし。それに子供のやった
事ですし・・・。」
「ソ、ソウデスカ・・・ドウモスミマセン。デモワタシハトキニハチャントオコルトキニハオコラナイトダメダトオモイマス・・。」
「はぁ・・。」
「トキニハココロヲオニニシテチャントオコラナイト・・。チビチャンタチガズニノッテシマイマスヨ。」

しぃ美さんの言うこと最もだ。元来私は、本気で怒ったことが無い。
生まれつき温厚なのである。それが長所で有り短所でも有るのだが。

「ア!スミマセン。デシャバッタヨウナカタチニナッチャッテ・・。」
「えぇ・・。まぁ畑を耕しなおさないと。『しぃ美さん、手伝ってくれます?』」
「・・・エ?ハ、ハイ!ヨロコンデ!」

しぃ美さんは笑顔で応答した。そして二人で畑を耕し直し、ちび達を連れて昼食を取る事にした。

533 名前: momo 投稿日: 2003/08/06(水) 02:53 [ uUsQuuaw ]
しぃ族は甘い味付けが好きだとしぃに関する著書「しぃの生態 毒雄 奈々氏著」を読んでいた
私であったが・・。
しぃ美さんは父親方のしつけが良かったのであろうか?好き嫌いは無かった。
ちび達は別であったが・・。砂糖が切れた・・。
昼食を済ませ、ちび達には桃ジュースを、しぃ美さんにはピーチティーを振舞っていると、
突然外から甲高く、それでいて妙に甘ったるい声が聞こえてきた・・・。
刹那、しぃ美さんの身が強張る。
そう、私も都会で何度も聞いたあの・・。「アフォしぃ」の声である。
それもかなりの数だ。10・・。いや20はいる。
なぜ?なぜアフォしぃが突如として和歌山くんだりまで現れたのであろうか?
少しも考えることなく、答えはすぐにわかった。

「虐殺厨・・・のせいで、居場所が無くなったのか?」

そう、アフォ、普通、聡明関係無くしぃを、およびその他被虐種を虐殺する人種の事だ・・。
そのせいで居場所が無くなり、大挙して押し寄せてきたのであろうか・・。
それにしてもなぜ和歌山に?その自分自身に対しての問いも、すぐに分かった。
最近和歌山では果物の産地として有名所にするため、都会に向けてCMやら広告やらで
宣伝をしている。それがアフォしぃの耳にも入ったのであろう。

「しぃ美さん・・。今は外に出ないほうが良いですね。アフォしぃにどんな因縁をつけられるか
わかったもんじゃない。」
「エェ・・・・・。ワカッテマス。」

しぃ美さんも私も、アフォしぃという存在がどんなに始末に置けないか分かっている。
特にしぃ美さんは、奴らに見つけられるわけにはいかない。
もし見つかれば、口調の違いから異種族への攻撃性が芽生え、攻撃を受けてしまうかもしれない。
そういう恐れがあったからだ。
恐らく、しぃ美さんも同じ考えだろう。
そして、しぃ美さんが半ば隠れるようにして窓から覗き込んだ瞬間、

「アァァァァァァァァアアァァァ!!!!!!」

と、とても大きな声で叫んだ。

「ど、どうしたんですか?」

しぃ美さんは、およそ20匹はいるであろうアフォしぃの集団の先頭に立ち、ひときわ
威張っているしぃに視線を合わせて、こう呟いた。

「オカア・・・サ・・ン・・・。」

運命の因果の歯車が少しずつ、回りだした。     
   
         (続く)

576 名前: momo 投稿日: 2003/08/09(土) 22:20 [ Yg0kv4o2 ]
私は驚愕した。しぃ美さん自体を虐待した張本人がこの場にいるのである。
・・・だとしたらなおさらしぃ美さんたちに会わせる訳にはいかない。
・・恐らくアフォしぃは私の畑の果物が目当てなのだろう。それだけで済めば良いほうだ。
私一人と思わせて面倒な事に発展させずにこの場をやり過ごすしかあるまい。

「私が出て行きます。留守を決め込んだら、家にまで入り込んでくるかもしれません。」
「ハイ・・・スイマセン、メンドウヲオカケシテ・・・。」
「モモヤマタン、ドコイクデチカ?チビタンモイキタイデチ!」
「シィモイキマチュヨウ!」
「駄目です。お母さんと一緒に家にいてください。しぃ美さん、この子をよろしく
お願いします。」
「ハイ・・・・」

さて、会ってくるとするか。しぃたちがこれで修まってくれれば良いのだが・・・。
私はしぃ美さんに家の中で隠れているように命じ、一人、外に出てしぃの前に立った。
アフォしぃたちの視線が一斉にこちらに向けられる。

「ハニャ!ヒトガイタノネ!」
「ソコノモララー!カワイイワタシタチニクダモノヲヨコシナサイ!」
「コトワレバギャクサツチュウトシテアボーンヨ!」
「えぇ、良いでしょう。ただし、条件があります」
「ハァ?クソAAノブンザイデシィサマニイケンスルキ?マァイイワ!イッテミナサイ!」
「果物を一定量とったらこの場は引き取ってもらえませんか?」

577 名前: momo 投稿日: 2003/08/09(土) 22:32 [ Yg0kv4o2 ]
この場ですぐさま引き取ってさえくれればしぃ美さんを安全な場所まで逃がすことが出来る。
アフォしぃに狙われたとしても、しぃ美さんたちに被害が及ぶことは無いだろう。
だが・・。

「ウルサイワネ!シィタチニメイレイスルンジャナイワヨ!」
「イイカラサッサトクダモノヲヨコシナサイ!コノギャクサツチュウ!」

まいった・・。ここまで話の通じない相手だとは予想してなかった。
しかしこの場は穏便に済まさねば・・。しぃ美さん達に被害が及ぶわけにはいかない。

「ですから・・・。今日は好きなだけあげますからすぐ帰ってくれませんか?と言いたいんですけど・・。」
「ナニヨ!ソンナニシィタチガウザッタイトイイタイノ!」
「カワイイシイチャンヲウザガルナンテユルサナインダカラ!」
「ギャクサツチュウ!アボーンケッテイネ!」
「そんな・・・。」

アフォしぃ達が一斉に棍棒を振り上げた。もうその目は私を殺すつもりでいるのだろう。
残念だ・・。いくら頭が悪いとはいえ、ここまでだったとは・・。
このままでは家まで押し入り、しぃ美さんたちの身にも危険が及んでしまうかもしれない。
私は決心を決めた。

「つまらんぞ」
「ハァ?」
「ナニイッテルノ?コノヴァカ。キョウフデアタマオカシクナッチャッタ?」
「たかが果物を分け与えるかどうかで命を落とすのはつまらんと言っているんだ」
「ナニイッテルノ?アンタカズカゾエラレル?ショウガッコウカラヤリナオシテキタラ?」

アフォしぃ達は20匹前後。ここまで数が多ければ、負けるはずが無いと思っているのだろう。
しかし、そこが奢りだ。

「シィィ!カクゴシナサイ!」
「ワレラガダッコカクメイトウニメヲツケラレタノガウンノワルイトコネ!」

アフォしぃ達が一斉に飛び掛ってきた。


581 名前: momo 投稿日: 2003/08/09(土) 22:45 [ Yg0kv4o2 ]
アフォしぃ達は棍棒を振り上げ、私に殴りかかってきた。
しかし、所詮棒術など使ったことがないのであろう。動きは滅茶苦茶、スキだらけである。
そのガラ空きの二匹の腹に向かって、上段蹴りを叩き込んだ。そして振り返り、一匹の顔面に肘を打ち込み、
もう二匹にはその肘打ち動作のまま拳を顔面にめり込ませた。その間、わずか二秒たらず。
計5匹。吹っ飛び、口から血や歯や嘔吐物を巻き散らかしながらその場に倒れこんだ。

「ジィ・・・イタイヨウ・・ポンポイタイヨウ・・」
「ヒィィィィ!ヒィノハワイイホアオハァァ!」
「ハハオレヒャッタヨウ・・・イヒャイヨウ・・」

しぃ達は倒れこんだ同胞に向かって、顔を青くしている。

「シィィ・・イッシュンデゴニンモ・・・」
「ナンテツヨサナノ・・・・」
「ヨッポドジュクレンシタギャクサツチュウナノ?」
「さぁ、これで分かっただろう。怪我をしない内に、果物をとってさっさと帰るんだな」

護身のために習っていた拳法がこんな所で役に立つとは・・。
もはやしぃたちに先ほどの戦意はすっかり消えうせ、怯えるように棍棒を私に向けながら震えていた。
私は、その情けない姿を見て、油断してしまったのかもしれない。
そう、一瞬だけ。

582 名前: momo 投稿日: 2003/08/09(土) 22:51 [ Yg0kv4o2 ]
「ナニヨ、エラソウニ」

                ターン
「ぐはっ!?」

瞬間、腹に衝撃が走った。

「撃たれた・・・。」

そう思ったときは、すでにかなりの量の血が流れていた。
アフォしぃ達は、これを期と見たのだろう。

「ハニャーン!ヤッタ!」
「サスガカンブサマ!スゴイ!」
「カクゴシロ!ギャクサツチュウ!」

一体誰が・・・?幹部といわれたそのアフォしぃは・・。
紛れも無く、しぃ美さんが母と呼んだ、アフォしぃであった。
私は、それを最後に意識を失った。

    (続く)