テレビ

Last-modified: 2019-08-14 (水) 15:57:59

テレビについて

  • アンティークショップにて初期から販売されている組み立て図を買うと、作成可能になる。材料については組み立て図参照
  • さまざまな情報について知ることができ、過去作のキャラも番組内に登場するとの噂あり。(要検証)
  • 今回天気予報はテレビで知ることができる。(これ以外にもリーリエがたまに教えてくれるとの噂あり)

番組

天気予報

  • 年間行事などの際は予報に関わらず晴れる仕様。
季節天気今日or明日セリフ服装備考追加
晴れ今日春らしい、あたたかくすごしやすい一日になるでしょう。普通編集
晴れ明日お花見日和のいいお天気になるでしょう。普通編集
今日一日降り続きますので、お花見などの野外活動は残念ですがあきらめましょう。普通編集
明日少しはだ寒くなりますので明日の出勤・通学時には上着を一枚おわすれなく!普通編集
晴れ今日蒸し暑い一日になりますのでこまめな水分補給をおわすれなく!普通編集
晴れ明日日差し、紫外線ともに強く暑い一日になります。外出時には必ず帽子とお茶を用意しましょう。普通編集
今日じめじめと湿気が多くすごしにくい一日になるでしょう。普通編集
明日日差しがない分、暑さはやわらぎますが湿気が多いため夜には各地で熱帯夜となる見こみです。普通編集
大雨今日みなさん、台風対策はお済みですか?今日は一日、無理な外出などはひかえてお家でゆっくり過ごしましょう。普通編集
大雨明日梅雨前線の活発化により発生した台風は、ゆっくりと北上を続けており朝にはこちらへ到着する見こみです。普通編集
晴れ今日雲も少なく、おだやかないいお天気が一日続くでしょう。普通編集
晴れ明日秋晴れのすっきりと気持ちいいお天気になるでしょう。普通編集
今日湿気は少ないため、すずしくすごしやすい一日になるでしょう。普通編集
明日秋雨前線の影響を受け、残念ながら明日は一日、日差しを見ることはかなわないでしょう。普通編集
晴れ今日日中は、日差しで多少寒さはやわらぐものの…。
夜から朝にかけては変わらず冷え込みそうです。
夜はあたたかくしてお休みくださいね。
マフラー編集
晴れ明日空気はつめたいものの、あたたかな日差しがふりそそぎ気持ちのいい一日になるでしょう。マフラー編集
今日冷えこみがきびしい一日です。みなさん、カゼにはくれぐれもお気をつけください。マフラー編集
明日明日は、冬らしく寒い一日になります。おでかけの際は、十分な防寒対策をしてくださいね。マフラー編集
大雪今日視界が悪くあぶないので、おでかけはやめて家でゆっくり過ごしましょう。
地域や、部屋によってはなだれにくれぐれもご注意ください。
屋内のなだれが心配な方はこの機会に、お部屋のお片づけをするのがいいかもしれませんね!
マフラー編集
大雪明日寒波の影響により、視界が悪くなるほどの大雪が一日中、降り続く見込みです。マフラー編集

エディットコンボ情報

詳細はエディットコンボ参照

樫の木チャンネル

樫の木タウンのお得な情報を伝える番組。
毎週土曜日はジョルジュが登場し、日曜日は住人へのインタビューを見ることができる。

  • サファリの採掘ポイントは数日採掘しないでおくとレアな鉱石が出やすくなる。
  • つけるアクセサリーの組み合わせによっては体力が回復したり、住民の好感度が上がりやすくなる。   
  • コインは組立図で乗り物を作ったら使用する。
  • 全種類の魚を釣ると川の主が釣れる。
  • 台風や大雪の日は、普段よりもいい魚が釣れるかも。
  • 牧場にゴールドなオブジェを置くと黄金系の作物の収穫数が増えることがある。

バラエティ

曜日毎に番組内容が変わる。
連続ドラマもあり、過去作の番組を再放送として見ることもできる。
(過去作と同じであれば、連続ドラマは一年毎に番組内容が変わる?)

  • 一年目ラインナップ
    曜日番組名備考追加
    新米探偵カナコ(再)全23話
    DSソフト「コロボックルステーション」の番組を再放送
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~全24回
    画面に出ているのが前作のニールとフェリシア説。
    編集
    世界街角散歩貿易国を訪れ紹介する観光番組。(微妙にブラックなのはご愛嬌)編集
    伝説の料理人を追う!全20回。(明らかにヤラセだけど言っちゃいけないお約束)編集
    リリア姫の大冒険全31回。(いろいろハチャメチャなのはご愛嬌)編集
    野菜戦隊 ベジレンジャー(全30回以上?)編集
    コロボックル物語3DSソフト「はじまりの大地」のキャラクターによる番組。
    コロボックルのソクラとアリス、女神さま、魔女さまなどが登場。ずっとリピートで放送
    編集
  • 二年目ラインナップ
    曜日番組名備考追加
    機動創世伝サイキョウオーZERO夏の月7日から放送開始。全20話。編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~夏の月15日に再び一話から放送編集
    伝説の料理人を追う!春の月20日に再び1話から放送編集
    リリア姫の大冒険冬の月5日に再び1話から放送編集
    野菜戦隊 ベジレンジャー春の29日に再び1話から放送編集
  • 三年目ラインナップ
    曜日番組名備考追加
    妖精さんといっしょ夏の月23日から放送開始。編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~秋の月28日に再び1話から放送編集
    伝説の料理人を追う!夏の月5日に再び1話から放送編集
    リリア姫の大冒険編集
    野菜戦隊 ベジレンジャー夏の21日に再び1話から放送編集
    コロボックル物語冬の月2日に再び1話から放送編集

「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~

  • 数カ所でデヴィッドの名前がデビッドと誤記されている。また第11話でチャーリーがチェーリーと誤記されている。
    曜日番組名備考追加
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第1回
    そこは町から遠く離れた海沿いの丘の上、と言うよりも、海に突き出た断崖絶壁の先端だった。
    その上に立つ異様なお屋敷。ガルシア家の別荘、海猫亭と呼ばれるのがその建物の名前だ。
    ボクと先生が海猫亭に着いたのは連絡を貰った次の日の朝だった。あっ、まだ自己紹介してなかったね。
    ボクの名前はロバート、名探偵フェリックス・カッツ…ボクが先生と呼んでる探偵さんの助手だ。
    その先生の友人であるチャーリー・チャンから、先生の事務所に連絡が来たのは昨日の昼過ぎだった。
    それから先生は直ぐに旅支度をし日が暮れるころには長距離列車のコンパートメントで資料を調べていた。
    資料は列車の時間待ちの間にボクが近くの本屋で探してきたもので、主にこれから行く地方の地図だった。
    そしてボクが翌朝目を覚ますと、列車は見たこともないへんぴな駅に停車していた。駅にはチャーリーが車で迎えに来ていた。
    「よく来てくれた、フェリックス。ロバート君も遠いところをありがとう。疲れただろう?」
    「ボクは大丈夫です。ぐっすり寝ましたから…」
    「チャーリー、久しぶりだな。とは言っても、キミから呼ばれるときはろくなことがないんだが、今回は…?」
    「電話で話した通り、ボクの婚約者が昨日の朝、海猫亭裏の断崖下の海で死体で発見された。
    地元の警察は通り一遍の現場検証と聞き込み調査の後、自殺と判断して帰って行った…。
    …しかし、ボクには彼女が自殺したとは思えないんだ」
    「分かったよ、チャーリー。まあ、まずは現場を見てからだ。…海猫亭…とか言ったっけ、その別荘?」
    「うん、そうだ。ガルシア家が所有する別荘で建てられてから200年以上経つそうだ。
    …言ってるうちにそろそろ見えてきたぞ!」
    「せ、先生…あれは!?」
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第2回
    その館は丘陵地帯を超えた岬の突端に果てしなく前方に広がる紺碧の海と共にボクたちの前に現れた。
    豪壮を極めたケルト・ルネッサンス様式の館…それは崖の上からはるか洋上を見下ろすように悠然と建っていた。
    長旅の疲れを背負って車から降りたボクたちを「海猫亭へようこそ…」と言って出迎えてくれる者は誰もなかった。
    「どうやら我々は招かれざる客のようだな」
    …と言いながらも先生はその館に興味深々のようだった。仕事柄、冷たい扱いにはなれているんだ。
    「今日はみんな疲れて、部屋で休んでいるんだろう。まあ、気にしないでくれ」
    「身内が死んだ後に探偵が来て歓迎する者は誰もいないさ。…そうだろう、チャーリー?」
    「…そうか、因果な商売だな」
    「それより、我々も一休みさせてもらえないか…。できれば部屋に荷物を運んで…」
    「わかってるよ。すぐ部屋に案内させるから…」
    「どうぞこちらへ…」
    ボクたちを案内してくれたのはガスパーと言うこの別荘の管理人だった。
    無表情で白髪のこの老人は代々この館の管理をしてきた家系の子孫で、今は娘と二人でこの別荘に使用人として住んでいる。
    案内された部屋は2階の廊下の突き当たりで先生と二人で使うには十分な広さだった。
    部屋は白を基調にした内装で清潔そうだったが、長年使われていなかったせいかカビ臭かった。
    机の上に部屋の鍵を置くとガスパーは黙って部屋を出て行き、入れ違いに中年の女性が荷物を持って部屋に入ってきた。
    その女性も荷物を置くと何も言わずに出て行ったが、おそらくガスパーの娘なのだろう。
    …で、次に部屋に入ってきたのはチャーリーだ。
    「ここは元ガルシア夫人が使っていた部屋だったんだそうだ」
    「…その、元ガルシア夫人って?」
    「今の当主、ヘンリー・ガルシアの三人目の奥さんだったんだが、5年前に亡くなった」
    「えっ、死んじゃったんですか?!」
    「心配しなくてもいいよ、ロバート。ここで亡くなったわけじゃないから…。体が弱くて病気で亡くなったんだ」
    「…それより、一休みしたら一階のロビーへ来てくれ。状況を詳しく説明したいから…」
    チャーリーは窓のカーテンを開けながらそれだけ言うと忙しそうに、部屋から出て行った。
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第3回
    1階エントランスからつながるロビーではがらんとした中に一人、チャーリーがコーヒーを飲んでいた。
    「まあ、座ってコーヒーでも飲みながら話そう」
    ボクたちが座ると先ほど荷物を運んでくれた女性がコーヒーを持ってきてくれた。
    「今の女性は管理人の娘でエラだ。部屋の掃除や食事の用意なんかは彼女がやってくれる。
    …じゃあ簡単にこれまでの出来事について説明しよう。
    まず一昨日だが、この日はガルシア家の長女ボクの婚約者であったメアリー・ガルシアの誕生パーティだった。
    当然ボクも招待されていた。しかし、急に仕事で行けなくなったので前日に電報を打っておいたんだ。
    言っておくけど、ここは携帯電話は使えないし、パソコンのネットワークもつながらない。
    昔からこの1階に置いてある電話だけが唯一の連絡方法なんだが、あいにく3日前は故障でつながらなかったんだ。
    パーティは昼に始まって、3時頃にお開きになったらしい。
    殆どの客はその時に帰って行ったんだけど3人だけその夜はこの別荘に宿泊する予定になっていた。
    パーティの後はみんなそれぞれの部屋でくつろぎ、夕食を食堂で一緒にとってからまた部屋に戻ったとの事だ。
    ただし、その夕食にはメアリーは顔を見せていない。パーティの疲れが出たらしいんだ。
    それで、その夜遅くに様子を見にいったエラが部屋にメアリーがいない事に気づきみんなで手分けして探した。
    …そして朝方、屋敷の裏の断崖の下で海に浮いているメアリーが発見された」
    淡々と話しているチャーリーだが、彼の手はひざの上で固く拳を作り少しふるえているようだった。
    「ボクがこの別荘に着いたのは昼過ぎで既に地元の警察が来て調査していた。
    ボクは何が起こったのか分からず、しばらく呆然としていたが、警察の調べが終わった頃やっと状況を把握することができた。
    みんなもメアリーが自殺するなんて思っていなかっただろうし、納得もしていなかったと思う。
    しかし、誰も警察の調べに対して反対はしなかった。状況がそれ以外考えられなかったからだ。
    メアリーの部屋は一昨日の夜は鍵がかかっており、ドアを開けるには管理人の部屋にある合鍵が必要だった。
    もちろん本鍵はメアリーが持っていた。死体のポケットから発見されたんだ。部屋には誰も入れなかったという事だ。
    合鍵を使って部屋に入った時、部屋の灯りはついており、ベランダの戸は開いていて、靴が脱いであったそうだ。
    メアリーは一昨日の夜、そのベランダから飛び降りたと言うのが警察の見解だった。ベランダの下は断崖絶壁だ」
    チャーリーはまた膝の上の手を握りしめた。
    「確かに状況は自殺に見えるだろう。しかし、ボクには彼女が自殺する理由なんて見つからないんだ。
    それでふと、フェリックス…キミの事が頭に浮かんだんだ。」
    「ボクのことを思い出してくれたのはうれしいが、この館の皆さんには果たしてご協力いただけるのかな?」
    「その事だが、昨日当主のヘンリー氏にボクの気持ちを伝え、みんなに協力してもらうよう話してもらったんだ。
    ヘンリー氏はボクの気持ちを察してみんなを説得してくれた。
    まあ、中には非協力的な人物もいるかもしれないが…。
    …じゃあ、早速関係者に会いに行こうか…」
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第4回
    一通りの状況説明を聞くとボクたちはチャーリーの案内で関係者を訪ねることにした。
    「この別荘には現在われわれ3人の他に8人の人物が滞在している。ガスパーとエラはもう知ってるね。
    それからパーティの招待客が3人、後はガルシア家の人物で当主のヘンリー氏、長男のフランク、次男のデヴィッドだ」
    チャーリーは話ながらロビーの階段を2階へと上がっていった。
    「まず最初に会ってもらうのはフランク・ガルシアだ。
    ガルシア家が持っているグループ会社の社長をしている。
    …ここだけの話だが、所謂バカ息子だ。放蕩三昧で会社の金をかなり使いこんでいるらしい」
    3階の中ほどにある部屋のドアの前まで来た時、チャーリーは話を止め、ドアをノックした。
    「フランクさん、ちょっといいですか?」
    しばらく沈黙が続いた後、部屋の中から低い声が返ってきた。
    「…入りたまえ」
    チャーリーがドアを開け、ボクたちを先に中へ入れた。正面のソファに疲れた顔の男が座っていた。
    「その方がキミの友達の探偵君か?…まあ、突っ立てないで座ったらどうだ…」
    男はソファに座ったまま、横柄な態度でボクたちに椅子をすすめた。
    「フランクさんですね。…探偵のフェリックスです。どうぞよろしく」
    先生がそう言って椅子に座ったのでボクも同じようにした。
    「こちらがガルシア家の長男、フランクさんです」
    チャーリーが形だけの紹介をし最後に席に着いたが、フランクはチャーリーをジロッと見ただけだった。
    「知っていることは全部警察に話した。これ以上何か聞きたいのなら手短に頼む。親父の頼みだから協力するが…。
    ガルシア家を侮辱することは許さん。もし姉の死が自殺ではないとすると、あの時別荘にいた誰かが殺したという事になる。
    チャーリー、あんたは姉の婚約者だったんだ。なのにガルシア家の人間を疑うのか?」
    「いえ、そんなつもりあありません。ただボクはメアリーさんが自殺するなんて信じられないんです」
    「そうか…じゃあ聞くが、どうしてあんたは姉の誕生パーティに来れなかったんだ?彼女は楽しみにしてたんだ」
    「…申し訳ないことをしました。あの日は急に仕事がてできて…こんなことなら断ればよかった…。
    でも、1日遅れで2人だけで誕生日を祝うつもりで、プレゼントも用意してきたのに…こんなことになるなんて…」
    チャーリー体は小刻みにふるえていた。先生はじっとフランクの方を見ている。
    「今更そんなこと言っても遅いよ。もう姉はいないんだ。あんたに会えずに死んでいったんだ。
    この際、はっきり言うが私は姉の自殺の原因はあんただと思っている」
    「そ、そんな…」
    チャーリーが信じられない、と言った眼でフランクを見た。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第5回
    「フランクさん、あなたのお気持ちはよく分かります。お悔やみ申し上げます。
    つらいでしょうけど、もう一度一昨日の事を教えて頂けますでしょうか?」
    先生が口をはさんだので、はりつめた部屋の空気が幾分和らいだようだった。
    「ああ、わかった。…で、何が聞きたいんだ?」
    チャーリーが我に返ったようにハッとしてポケットから手帳を出して先生に渡した。
    「昨日の警察の聞き取りメモです」
    先生は手帳を見ながら質問を始めた。
    「フランクさん、あなたはパーティの日の夕方6時ごろ、メアリーさんの部屋で話をされてますね。
    どんな話をされたんですか?」
    「そこにいるチャーリーのことだ。婚約者の誕生日パーティをすっぽかすヤツなんて、ろくな奴じゃないって話さ。
    いや、確かにちょっと言い過ぎたと思っているが…あの時は彼女が悲しそうだったから、なだめるつもりだったんだ」
    「…その後、6時半ごろメアリーさんの部屋を出て、デヴィッドさんを誘って散歩に出かけた…」
    「ああ、夕日がきれいなんで、弟と一緒に海岸を散歩してたのさ」
    「その散歩道から屋敷のベランダが見えるんですね。メアリーさんの…」
    「そうだ、メアリーはベランダの椅子に座ったまま寝ていたようだった。パーティの疲れが出たんだろう」
    「はい、デヴィッドさんもそうおっしゃっているようです。そして、夕食前に別荘に戻られた。
    …少なくともこの時点ではメアリーさんは生きておられたという事です」
    「当たり前じゃないか…」
    フランクはちょっとイラついているようだった。先生はそんなこと気にしてないけど…。
    「散歩から帰ると夕食の時間なので食堂に行かれましたが、メアリーさんはいつまで経っても夕食に来られなかった。
    そこでエラさんに呼びにやらせたが、部屋には鍵がかかっており、声をかけても返事がなかったという事です」
    「あの時は姉がまだ疲れて眠っていると思っていたんだが…」
    「…夕食の後、お酒を取りに部屋に戻った、となってますが…」
    「ああ、モルガンと一杯やろうと思って良い酒を部屋に取りに行ったのさ。…モルガンはあの日泊まった客の一人だ」
    「ガルシアグループ本社の役員でパーティの招待客です。後で紹介するよ」
    チャーリーがモルガンの説明を付け加えた。
    「モルガンさんとはどんな話を…?」
    「仕事の話だ。彼は本社の役員だからな…グループ会社の社長としてはいろいろと相談があるんだ」
    「なるほど…で、モルガンさんが部屋に帰った後、メアリーさんの様子を見に行かれたんですね…それが午後10時頃」
    「ちょっと心配になったんでガスパーに鍵を開けてもらって部屋の中に入ったんだ…そしたら…」
    「それからみんなで探してたんですね。…分かりました。ご協力ありがとうございました」
    「デヴィッドにも話を聞くのならあまり刺激しないでやってっくれ。彼もかなりショックを受けているんだ。」
    「分かってます。では、また後ほど…」
    フランクの部屋を出た僕たちは次に1階のデヴィッドの部屋へ向かった。
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第6回
    ガルシア家の次男、と言ってもフランクとはかなり年が離れている。どう見ても14、5才だろう。
    きっとこの少年が3人目のガルシア夫人の息子なのだろう。
    「デヴィッド君、こちらが探偵のフェリックスさんだ。そして助手のロバート君」
    こんどはちゃんと紹介してもらったがデヴィッドは黙って上目づかいにボクたちを見ていた。
    「次男のデヴィッド君だ」
    チャーリーに紹介されるとデヴィッドはちょこんと頭を下げた。
    「デヴィッド君、ちょっと話を聞かせてほしいんだが…」
    先生はいつもより少しやさしい口調で質問に入った。
    「君はパーティの後ずっと部屋にいて夕方、兄さんと散歩に出たんだね?」
    「そうです。夕日がきれいだから散歩しようって、兄さんが…」
    「うん、そうだったね。じゃあ、夕日はどのへんに見えるの?」
    デヴィッドは窓の方を見たが、先生が立って窓の方へ行くと、彼も一緒についてきた。
    「あっちの方です」
    デヴィッドは窓の外、左の方向を指差した。先生も窓の外を眺めて、ゆっくりとデヴィッドが指差す方向へ目を向けた。
    「じゃあ、散歩道は?」
    デヴィッドは黙って反対の方、窓の右側を指差した。
    「この部屋は1階だからベランダが無いんだね」
    「そうなんです。でもこの上の姉さんの部屋にはベランダがあるんです…だから、姉さんは…」
    先生もマズい事を言ったと思ったのだろう。すぐにデヴィッドを促し、窓から離れて席に戻った。
    「この別荘は南向きに建っていて北に海が見えるから、海側の窓からは左手に夕日が見えることになる。
    そして、散歩道は別荘の東側を岸壁に沿ってやや北方向、海側へ湾曲している。
    だから、散歩道をしばらく歩いて行くと斜め後方にベランダが見える箇所があるんだ。ここの窓からも散歩道が見えたからね。
    それでデヴィッド君、キミは散歩の途中で2階のベランダにいるメアリーさんを見たんだね」
    「はい、そうなんです。姉さんはベランダの椅子に座って寝てました」
    「姉さんはどっち向きに座ってた?」
    「こっちを向いてたようですが、帽子を深くかぶってたので顔はよく分かりませんでした。
    きっとまぶしいから、帽子を顔にかぶせてたんだと思います」
    「なるほど…それで、散歩から帰ってから直ぐに夕食になったのかい?」
    「そうです。だからボクは兄さんに言われて姉さんを呼びに行ったんです。
    …でもその時は返事がありませんでした。ドアにも鍵がかかってましたからそのまま食堂へ行きました」
    「その時、兄さんも一緒だったかい?」
    「いえ、兄さんは服を着替えるからって一旦部屋に戻って、しばらくして食堂にきました」
    「夕食が終わってからはずっと部屋にいたんだね」
    「ええ、ちょうど寝ようかなと思った時あの騒ぎになって…一緒に姉さんを探しました…でも…」
    「わかった、ありかとう。…もういいよ」
    デヴィッドは年の割にはしっかりしていて素直でいいヤツのように思えた。
    さて、次はだれに会うんだろう…?
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第7回
    ガルシア家の兄弟には会ったから、次は当主のヘンリー氏だろうか、でも彼は病気らしいし…。
    となると、3人の客の内の誰かだろうか…。
    「次に会ってもらうのはジェシカ・ウィリアムス、メアリーの学生時代からの友人だ」
    チャーリーはそう言いながらまた階段を2階へ上って行った。
    目指す部屋は2階の東の部屋、メアリーの向かって右隣の部屋だった。
    「…メアリーは自殺したんじゃないんですか?…まさか…殺されたなんて…!?」
    ジェシカは先生が紹介されるとたまりかねたように第一声を口から吐き出した。
    「いや、まだ何もわかりません。だから当時の状況をお聞きしているんです。ご協力お願いします」
    先生は事務的に答えたが、その目はじっとジェシカの表情を観察していた。
    「まず、ジェシカさん、あなたはパーティの後、メアリーさんの部屋に行かれてますね。
    その時、どんな話をされたんですか?」
    「…別に大した話じゃないわ。お互いの仕事の話や…久しぶりだったんで昔の思い出話…なんかです」
    「そうですか…ではその後、あなたは夕食までずっと部屋におられた訳ですが、隣から何か変な物音とかは…?」
    「…何回かドアの開く音がしましたが、この部屋は隣の物音は殆ど聞こえませんので…よく分かりませんでした」
    確かにこの建物の部屋の壁は厚く隣の部屋の物音は殆ど聞こえない。廊下の足音が少し聞こえる程度だ。
    「なるほど…で、夕食後もずっと部屋におられた…メアリーさんの行方不明が発覚するまでは…」
    「はい、疲れていたので夕食後は直ぐに寝てしまいました。でも、あの騒ぎで目を覚ましたんです」
    「わかりました。じゃあ、ちょっとこの部屋のベランダを見せて頂けますか?」
    先生はそう言うとすぐに立ってベランダへ出て行った。もちろんボクもついて行った。
    ベランダの前には海が広がっていた。左がメアリーの部屋になっているはずだがそのベランダは壁で見えなかった。
    この別荘の北側の部屋は西に行くに従って少しずつ海の方へせり出していて、隣のベランダが見えないようになっているのだ。
    先生はしきりに辺りを見渡していたがしばらくして納得したようにつぶやいた。
    「…なるほど、各部屋は完全にプライバシーが守られているという訳か…さすがはガルシア家の別荘だ」
    先生とボクがベランダで心地よい海風を受けている間、ジェシカとチャーリーは部屋の中からこちらを見ていた。
    メアリーの件があるから、ベランダにはでたくないのだろう。
    「いや、どうも有り難うございました」
    先生はもうお腹いっぱいになったのかベランダから部屋へ戻るとそそくさとドアの方へ向かって行った。
    ボクとチャーリーも慌ててついて行った。
    「さあ、次はまた3階だ」
    チャーリーは次に紹介する人物の部屋を目指して、階段を上って行った。
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第8回
    今度の部屋は3階の東端、ジェシカの部屋の真上だった。
    部屋の主はマキシムと言う男らしい。
    チャーリーの話ではかなりの要注意人物とのことだ。
    その理由は部屋に入るとすぐに分かった。
    「メアリーはお前のせいで死んだんだ!」
    マキシムはいきなりチャーリーの胸倉につかみかかった。
    「メアリーはお前がパーティに来ないから悲しんでたんだ。お前にふられたと思って自殺したんだ!!」
    先生とボクはなだめるようにマキシムを引き離し椅子に座らせた。
    チャーリーは呆然としていた。
    「あなたはマキシムさんですね?探偵のフェリックスです。ちょっとお話を聞かせてください」
    「何も話すことなんかない…。メアリーはもういないんだ。オレはメアリーを守れなかったんだ…」
    「少し落ち着いてください、マキシムさん。じゃあ、一つだけ聞かせてください」
    「何か知らないが、先にこの男を部屋から追い出してくれ。目障りなんだ」
    マキシムはチャーリーをにらんだ。
    先生が目で合図するとチャーリーは黙って部屋から出て行った。
    「チャーリーを追い出しましたよ。さあ、教えてください。あなたはパーティの後、メアリーさんの部屋でどんな話をしたんですか?」
    「…………………」
    マキシムの顔から怒りの表情が消え狼狽の色が浮かんだ。そしてうつむいたまま黙り込んだ。
    「なぜ、黙っているんですか?話の内容はメアリーさんの死に関係あるんじゃないんですか?」
    先生の口調は相変わらず柔らかだったが相手を威圧するような重さがあった。
    「……オレは…メアリーを愛していた。なのに…彼女は……ヤツと…あのチャーリーと結婚すると言ったんだ。誕生パーティにも顔を見せないようなあの男と…」
    マキシムはうつむいていた顔を上げたがその目には涙がにじんでいた。
    「そして…彼女は最後に言ったんだ。……二度と付きまとわないでくれ…って。………それだけだ…」
    「ありがとう、よく話してくれました。それだけで十分です」
    先生は席を立つとベランダの方へ行き少し外を眺めた後、部屋の中を見渡しながらドアの方へ向かった。
    「…最後に一つだけ…。メアリーさんとあなたはどういう仲だったんですか?」
    「…そんなこと、あんたに関係ないだろう!用が済んだら出て行ってくれ…」
    マキシムは再び怒りの表情を浮かべボクたちを部屋から追い出した。
    部屋の外ではチャーリーが心配そうな顔で立っていた。
    「彼はボクのせいでメアリーにふられたと思って、ボクを恨んでいるんです。彼は昔、メアリーと付き合っていたんですが…あまりにしつこいので、メアリーは怖くなって交際を断ったんです。でも、彼はそれからも彼女に付きまとって、…所謂ストーカーってやつです。それで彼女も困ってたみたいです」
    「そうか、それでメアリーは彼を今回のパーティに招待し、その後できっぱり話を付けるつもりだったんですね」
    歩きながらそんな話をしているうちにボクたちは次に会う人物の部屋の前へやってきた。
    つづく
    編集
    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第9回
    「次に紹介するのはモーガン・ウィテカー。先ほどのフランクの話に出てきたガルシアグループ本社の社員だ。会社のお偉いさんなんでそのつもりでたのむよ」
    「ああ、分かったよ」
    先生は軽く返事したが恐らく分かってないと思う。
    …でもチャーリーは既にドアをノックしていた。
    部屋は3階の西側、フランクの部屋の左隣だ。
    西側なのでちょっと奥に広くなっている。
    「協力するから早く帰らせてくれ。仕事が詰まってるんだ」
    モーガンの第一声だ。
    でっぷりと太った胴体に肉のたるんだ顔がのっている。
    いかにも会社の重役と言ったタイプだが、ヘンリー氏に協力を要請されているためか質問には以外に素直に答えてくれた。
    「ワシはパーティの後、話があるので部屋に来るようにメアリーさんに言われた。…話は会社の事だった。社長の容体が良くないので会社をよろしく頼む、と言う話だ。…夕食後はフランクと酒を飲んだ。彼が部屋から良い酒を持って来たんだ。…ああ、その時も仕事の話だ。話が終わって部屋に戻ったのは10時頃だったと思う。その後、メアリーさんが行方不明になった。ワシも一緒に探したが……、結局あんなことになってしまった。…残念なことだ…社長の心中を察するよ」
    モーガンはこちらが質問する暇もないほど殆ど一気にしゃべった。
    先生は黙って聞いていたが最後に一つだけ質問した。
    「モーガンさん、社長にもしもの事があった場合、あんなが後を引き継ぐ事になるんでしょうね?」
    「バカなことを言っちゃいかん!…縁起でもないことを…。ワシはこれからも社長を支えていく。」
    「これは失礼なことを申しました。お許しください。…ではこれで…」
    あんなあからさまな質問をして、答えられる訳ないのに…。先生も何も考えているのやら…。
    でも、これで3人の客の話も聞けたし後は…ヘンリー・ガルシア…かな?
    でも、容体が悪いらしいから…。
    「この隣の部屋がガルシア家の当主ヘンリー氏の部屋だが、彼はパーティの最初に車イスで顔を出しただけなんだ。後はずっと部屋で寝ていたと付添いの看護師がいっているので、特に話を聞く必要は無いと思うが…どうだろう?」
    チャーリーはヘンリー氏の容体を気にしているようだが、先生の頭はもう情報収集モードに入っていた。
    「いや、ガルシア家の人たちと会社のことについて聞きたいんだ。…体に差支えなければだが…」
    「…そうか、わかった。一応、看護師に聞いてみるから、ちょっと待っていてくれ」
    チャーリーはドアをノックし中に入って行ったが、直ぐに出てきた。
    「OKだ。長い時間は無理だが、できるだけ協力するとの事だ」
    ボクたちは部屋に通された。
    薬品の匂いがプーンと鼻につく。
    ベッドにはやつれた顔の老人が寝ていた。
    これがガルシア家の当主ヘンリー・ガルシアなのか…。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第10回
    ヘンリー氏は60過ぎのはずだが病気でやつれた顔は歳以上に老けて見えた。
    でも、チャーリーの紹介を聞いてボクたちの顔を見た時、その顔に少し赤みが差し、正気が宿った感じがした。
    「あいさつはいらんから、何でも聞いてくれ…」
    ヘンリー氏の声はか細いが意外にしっかりしており、はっきりと聞き取れた。
    さすがはガルシア家の当主だ。
    「では、まずフランクさんの事からお聞きします。彼の仕事ぶりをどう評価されてますか?」
    先生は遠慮なしに直ぐ質問を始めた。
    「…あいつは頼りにならん。グループ会社の一つを任せておるが会社の金を使い込んでいるらしい。父親としては何とか後を継いでほしいと思っておるが、グループ全体を任せるのは
    ムリだ…当主の器ではない」
    「では、あなたは誰を後継者にするおつもりなんですか?」
    「…メアリーだ…あの子以外には考えられなかった。しかし、あえて会社に入れなかった。影で私を支えてほしかったからだ。…攻守ともに…。だから、あの子には全てを教えた。しかし、それがいけなかったのかも知れん。あの子は最近、何か心配事をかかえておるようだった」
    「でも彼女はそんなことで自殺するような人じゃありません。ボクも相談にのっていたのでわかります」
    チャーリーはきっぱりと言った。
    ヘンリー氏は目をつむってうなずいた。
    「私もそう思うから、キミたちの調査に協力しておるのだ」
    こちらを向いたヘンリー氏の顔は少し悲しそうだった。
    「では、グループ本社の役員をされてるモーガンさんに関してはどう思われますか?」
    「彼は長年私を補佐してくれた男だがメアリーはあまりよく思っていないようだった。フランクはモーガンにいろいろと相談しているようだ。使い込みの事がばれていなければいいが…」
    ヘンリー氏はまた目をつむった。
    ちょっと疲れてきたみたいだ。
    「では最後にデヴィッドさんはメアリーさんと仲が良かったんですか?」
    「…デヴィッドは優しい子だ。メアリーともフランクとも仲が良かった。特にメアリーは彼をよくかわいがっていた。しかし私は彼に会社を継がすつもりはない。あの子にはもっと自由に好きなことをして生きていってほしいんだ。会社の方はフランクに任せるしかないだろう。本当はチャーリー君…、娘婿としてキミにも頼みたかったんだが、こんなことになってしまって…」
    「…ボクにできることがあったら何でも言ってください」
    チャーリーがヘンリー氏の手を取って力強く言ったが、ヘンリー氏は目をつむってうなずくだけだった。
    「ヘンリーさん、お疲れの所、本当にありがとうございました。大変参考になりました」
    先生がそう言って、頭を下げたときヘンリー氏は薄く目を開け、口を開いた。
    「…もし、メアリーの死に誰かが関係していたとしても、私に知らせる必要はない」
    か細い声でそれだけ言うとヘンリー氏はまた目をつむった。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第11回
    ヘンリー氏の部屋を出たボクたちは1階へ降りて食堂へ入っていった。
    「お茶でも飲みながら、ちょっと休憩しよう」
    チャーリーはエラにお茶を3つ頼んでイスに座った。
    「ガルシア家の人物と泊り客についてはこんな感じだ。…どう思う?」
    「まだ何とも言えないな。私の見た所、ヘンリー氏とデヴィッド以外は何かを隠しているように思える。…それからチャーリー、キミにも聞きたい事があるんだが…」
    「うん、分かってるよ。でも、その前にエラの話も聞いてみたらどうかね?」
    「ああ、もちろんだ」
    …休憩するんじゃなかったの…。
    ちょうどその時、エラがお茶を持って来た。
    「エラさん、ちょっと話を聞かせてほしいんだが…」
    チェーリーはそう言ってエラを先生の向かいの席に座らせた。
    「パーティの時、何か変わったことはありませんでしたか?例えば、メアリーさんが誰かと言い争っていたとか…、誰かとひそひそ話をしていたとか…?」
    エラはうつむいて黙ったままだった。
    「エラさん、心配しなくてもあなたがここでしゃべったことは誰にも言いませんよ」
    先生のその言葉を聞くとエラは顔を上げ、ゆっくりと話し始めた。
    「お嬢様はいろんな人と話されてました。なにしろお誕生パーティですからみんなお嬢様のお客さんなんですからね。でも、時々ふと寂しそうな、悲しそうな顔をされてました。あなた様のせいかもしれませんね…」
    エラはそう言って、チャーリーの顔に意地悪そうな目を向けた。
    「まあ、それはいいとして、気になった人と言えば、やっぱりあのマキシムとか言う人ですね。絶えず隙を見てはお嬢様に近寄って話しかけてました。ホントにいやらしい男ですよ。パーティの席ですからお嬢様も最初は笑っておいででしたが、そのうち何か真顔で一言二言話をされました。そしたらあの男は満足したように大人しくなったんです。きっと後から部屋へ来るようにと約束されたんですよ。パーティが終わってしばらくしたころあの男がメアリーさんの部屋へ入っていくのを見ましたから…。それから…そう、フランク様と何かお話しされてましたが…確か…チャーリーさん、あなたの名前が聞こえましたよ。フランク様はあなたが誕生パーティに来ないことでお嬢様を攻めていらしたようでした」
    チャーリーは申し訳なさそうな顔でエラを見たが、彼女はまるで気にしてないように話し続けた。
    「パーティで気になったのはそんな所でしょうか…。わたしも忙しかったもんですから…。
    でも、パーティが終わってからはロビーの片づけをしてましたから、お嬢様の部屋に入っていった人は覚えてますよ。最初はお泊りになった女の人でした。出てこられた時の様子からしてあまり面白い話ではなかったようですね。次があのマキシムでした。こちらも部屋から出てきたときはかなり落ち込んでいたみたいです。それから…ああ、あの会社の偉いさん。
    モーガン様でしたね。あの人は怒って出てきました。そして最後がフランク様です。あの方は部屋から出て来てから1階に下りてデヴィッド様と散歩に出られました」
    エラはここでちょっと息を継ぎ、自分のためにお茶を入れてきた。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第12回
    「夕食の準備ができ、ロビーに出てきたときデヴィッド様がお嬢様の部屋のドアの前で
    声をかけられてました」
    お茶を一口飲むとエラは話の続きを始めた。
    「でも、お嬢様は出てこられませんでした。そのうちフランク様が部屋から出てこられ
    食堂に入って行かれました。でもすぐに出てこられ、お嬢様を見てきてほしいと言われたんです。…ベランダで寝ているかどうか…です。わたしは外の散歩道からベランダを確かめましたが、お嬢様の姿はありませんでした。外は薄暗かったんですがベランダには部屋の灯りがもれていてなんとか確認できました。それからまた戻ってきて、今度はお嬢様の部屋まで行って、声をかけました。ドアには鍵がかかってました。ドアをノックしていると下からフランク様が戻ってくるように言われました。…多分疲れて寝ているんだろうって…。お嬢様はひょっとして…あの時…既に………ああ、一体なぜ……」
    「エラさん、よく観察されてましたね。大変参考になりました」
    「こんな仕事をしてますと、どうしても人の動きや話に気がいってしまうんです。それにここのロビーは吹き抜けでしょう。御覧の通り、階段と2階、3階の廊下が丸見えで、ここにいたらイヤでも人の動きが分かるんです」
    …仕事は関係ないとボクは思う。
    きっと彼女の好奇心がそうさせるんだろう。
    「それではちょっと確認させてください。フランクさんとデヴィッドさんが散歩に出られたのは何時頃でしたか?」
    「…確か夕食の支度をしかけてましたから、…午後6時ごろだったと思います」
    「では、フランクさんが夕食に降りてこられたのは…?」
    「…夕食は午後7時から始まる予定でしたから、そのころだったと思います」
    「それから間もなくあなたは散歩道からメアリーさんの部屋のベランダを見たんですね」
    「はい、でもお嬢様はおられませんでした」
    「…で、夕食の後は?」
    「夕食後はフランク様とモーガン様がロビーでお酒を召し上がってました」
    「そのお酒はフランクさんが部屋から持って来たんだね」
    「そうなんです。ここにもお酒は置いてあるんですが、わざわざ部屋まで取りに行かれました。お酒の事はよく分かりませんがよっぽどいいお酒だったんでしょうね。3階まで取りに行かれたんですから…」
    「なるほど、よく分かりました。もう充分です。ありがとうございました」
    どこの家でもお手伝いさんや管理人はすばらしい情報源だ。
    エラの観察力と記憶力には感心した。
    「もういいよ、エラさん。代わりにガスパーさんを呼んで来てくれないか…」
    エラはまだしゃべりたそうだったが軽く頭を下げながら、父親を呼びに行った。
    ガスパーは普段、この建物の西にある小さな管理人小屋にいるが、客があるときは料理の手伝いなどもする。
    「なんでございますか?」
    ガスパーは直ぐにやってきた。
    「ちょっとお聞きしたいんですが…、この別荘の部屋のカギは何本ずつあるんですか?」
    「各部屋2本ずつあります。1本はお客様にお渡しし、合カギはわしが管理しております」
    「パーティのあった日、合カギが持ち出されたと言うような事は無かっただろうか?」
    「ありません。合鍵は管理人小屋のキーケースに入れてカギをかけております。そのカギはわしがいつも持っております」
    ガスパーはポケットからキーホルダーの付いたカギを出して見せてくれた。
    「あの日、フランク様に頼まれてお嬢様の部屋を開けた時は、わしが管理人小屋から合カギを取って来ました」
    「そうですか、分かりました。どうもご苦労様でした」
    ガスパーを見送ってボクたち3人はホッと一息ついた。
    「さあ、次はキミだね」
    先生がチャーリーの方を向いて言った。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第13回
    メアリーの誕生パーティの日にこの海猫亭にいた人物からは全て話が聞けた。
    後はメアリーの事をよく知っているチャーリーから話を聞くだけだ。
    「じゃあチャーリー、まず、キミがパーティに来られなかった理由から聞こうか?」
    「…急に仕事が入ったので…と言っても納得してくれないだろうから、正直に言うよ。実はボクの会社の経営が思わしくなくてどうしてもお金が必要だったんだ。その期限があのパーティの日だった。メアリーには申し訳ないと思ったんだが…しかし、まさかこんなことになるなんて思いもしなかったから…。それにあの日はここの電話が故障で仕方なく電報で欠席だけを知らせたんだが、…メアリーも分かってくれると思っていた。いや、分かっていてくれたはずだ。だからそんな理由で自殺するはずはないと思う」
    「分かっているよ。ボクも誕生パーティに婚約者が欠席したくらいで自殺するとは思っていないさ」
    「じゃあ、やっぱり彼女は誰かに…?!」
    「いや、まだはっきり断言はできない。…その前に気になることがあるんだが…。メアリーの心配事って、何のことなんだ?…さっき、ヘンリー氏との話の時にキミも知ってるような話しぶりだっただが…」
    「ああ、ボクもその話をこれからしようと思ってたところだ。実は今回の誕生パーティで彼女はその心配事と決別しようとしてたんだ。そのことでボクも相談を受けた。まず…もうわかっていると思うがマキシムの件だ。彼女はパーティの席でボクを紹介してきっぱりと諦めさせるつもりだったらしい。ボクもそのつもりだった。でも、ボクが行けなかったので1人で話したんだろう。結果はマキシムの話した通りだ。次はジェシカ・ウィリアムスだ。ジェシカはメアリーに多額の借金がある。しかし、返済する気が全くないらしい。いつものらりくらりと言い訳して返済を伸ばしてもらっている。メアリーも学生時代からの友人という事できつくは言わなかったが、あの日はその返済を約束してもらうつもりだった。メアリーはボクたちの結婚資金のためと、と言っていたが、今から思うとボクの会社の事を心配してくれていたのかもしれない」
    「なるほど、それでジェシカは話の内容をごまかしてたんだな。借金返済を迫れられていたなら、それを殺害理由に容疑がかかってくると思ったんだろう」
    「それから、モーガンとフランクだ。この件は会社の問題なので、絶対内密にお願いする。まず、モーガンはヘンリー氏の病気をいいことに会社の実権を握ろうとしている。以前から色々と策略を巡らしていたらしい。特に最近はフランクに接近し、彼を手なずけているようなんだ。メアリーはその情報をつかんでいた。だからこの機会に釘を刺しておこうと思ったんだろう。この3人に招待状を出したのは彼女なんだ」
    「しかし、それはかなり危険な賭けだね。策略がバレていると知ったら、モーガンはメアリーを何とかしたいと思うだろう」
    「じゃあモーガンがメアリーを!?」
    「モーガンだけじゃない。3人の客にはそれぞれメアリーに対する殺害動機がある。…殺人事件だとすればだが…。…問題は状況だ」
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第14回
    情報収集は一通り終わったが、結局、一番の問題はメアリーが亡くなった時の状況だった。
    「メアリーが部屋から消えた可能性のある時間…すなわち、デヴィッドが散歩道からベランダのメアリーを見たのが夕食前。…午後6時30分ごろとしておこう。それからフランクとガスパーがメアリーの部屋で彼女がいないことを確認した時刻。フランクがモーガンと酒を飲み終わった後、…午後10時とすると、メアリーはこの3時間半の間に部屋から消えた事になる。しかし、今までの証言でこの時間帯にカギの閉まっているメアリーの部屋に入った者はいない。従ってメアリーは1人でベランダから飛び降りたとしか考えられない」
    先生はここでちょっと考え込んだが直ぐに次の行動に移った。
    「メアリーの部屋を見せてくれないか?…それから、フランクの部屋も…」
    メアリーの部屋は警察が調べて帰った後カギがかけられていたので、ガスパーに開けてもらった。
    時刻は午後5時を回っていた。
    メアリーの部屋は先生が電話で指示した通り、当時のまま保存されていた。
    部屋の中は散らかった様子もなく開放されたベランダは夕日を受けてオレンジ色に輝いていた。
    机の上にはまるで遺書の様にチャーリーからの電報が置かれている。
    「こんな所から飛び降りるなんてボクにはとても無理だ」
    先生はいつの間にかベランダへ出て体を乗り出すように下をのぞいていた。
    その足元にはメアリーの靴が並んでいた。
    ベランダは岸壁に突き出た感じでその下は数十メートルの断崖だ。
    遥か下には岩に打ちつける波が白く砕け散るのが見える。
    しばらく見ていると吸い込まれそうになる。
    「おや……、ちょっと、誰か台を持って来てくれないか?ベランダの天井を見たいんだ」
    ボクは直ぐに部屋にあった足継ぎを持ってベランダに行った。
    ここのベランダの上には同じ造りの3階のベランダが突き出しており、ちょうど屋根の役目を果たしている。
    先生は足継ぎに上ると3階ベランダの海側の一番下の部分、つまり2階ベランダの海側の真上の先端部分を観察し始めた。
    そして虫眼鏡で調べた後、その漆喰のような白い部分から何か摘み取り、丁寧に手帳に挟んでポケットにしまった。
    そして何度もベランダから身を乗り出して上を見たり下を見たりしていたが、やがて満足したと見えて部屋に入ってきた。
    「何か見つかったのかい?」
    チャーリーが声をかけると先生は先ほど手帳に挟んだものを取り出してチャーリーに見せた。
    「悪いがこれを警察に持って行って鑑定してもらってほしいんだ。メアリーの髪の毛かどうか…」
    「…どうして、あんなところに髪の毛が?………分かった。直ぐに届けてもらうよ」
    チャーリーはその髪の毛を部屋にあった封筒に入れ部屋を出ていった。
    それからしばらく先生は部屋を調べていた。
    …が、今度は部屋の隅から何か拾い上げてボクの方を見た。
    「これが何かわかるかい?」
    それは細い透明の糸のように見えたがボクには見覚えがあった。
    「魚釣りの糸じゃないんですか?」
    「その通り…これはテグスだ。メアリーさんは釣りが趣味だったのかな…」
    とぼけたようなことを言っているが先生の頭はフル回転している。
    何かをつかみかけている証拠なんだ。
    「さあ、次は上へ行こう」
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第15回
    メアリーの部屋を見終わったボクたちは3階へ上がりメアリーの部屋の真上、フランクの部屋のドアをノックした。
    フランクはかなり不機嫌そうだったが先生がメアリーさんの自殺の原因について聞きたいと言うと部屋に入れてくれた。
    でも、先生は適当な質問をすると後はフランクの話も上の空で部屋の中を調べ始めた。
    「フランクさんはこの別荘ではいつもこの部屋を使われるんですか?」
    「ああ、うちの家族はみんな部屋が決まってるんだ。それも兄妹は縦に並んでいる」
    「ええ、確かに3階がフランクさんその下がメアリーさん、そして一番下がデヴィッドさんですね。…何か理由があるんですか?」
    「…いや、特に何もない。なんとなく決まったんだ」
    「しかし、立派なもんですね。ベランダからの景色も最高だ」
    先生はそう言いながら、ガラス戸の閉まったベランダの方へ歩いて行った。
    「ベランダへ出てもいいですか?」
    「ああ、夕日がきれいだろう…。もうすぐ沈んでしまうが…」
    フランクはガラス戸のカギを開け先生と一緒にベランダへ出た。もちろんボクも後からついて行った。
    「あれはなんですか?」
    先生はベランダへ出るなり、その上の屋根から海の方へ突き出した鉄の腕のようなものを指差した。
    「ああ…あれは荷物を釣り上げる装置だ。ここは交通の便が悪いから、大きな荷物があると船で運んだんだ。
    船をこの下の海につけ、ロープで引き揚げたんだ。この腕の先の滑車にロープを通して…。
    そこにロープを巻き取るハンドルがあるだろう。…今はもう使ってないが…」
    確かにベランダの端にロープを巻き取るリールがあり、ロープが巻きとってあった。先生はしばらくそのロープを見ていた。
    「…ああ、思い出した。兄弟の部屋が縦に並んでいるのは荷物を揚げる時のためなんだ。滑車はこの部屋にしかないからな。
    この下の階なら海から直接部屋に荷物を運びこめるからなんだ」
    「なる程…うまく考えたもんですね。…でも、下を見たら目がくらみませんか?」
    「私は絶対下を見ない事にしてる。なにしろ高所恐怖症だからな。…さ、もう中へ入ってくれ。」
    フランクは急き立てるように夕闇の迫ったベランダからボクたちを部屋の中へ入れた。
    「フランクさん、あなたは釣りがお好きですか?」
    「あ…まあ、やらないこともないが…なぜそんなことを聞く?」
    「いや、こんな海辺のいい別荘があるならいつでも釣りができるじゃないですか…」
    「…うん、まあそうだな。あっ、そろそろ夕食時間だ。キミたちも食堂へ行ったらどうだ…」
    「はい、どうもいろいろご協力頂きありがとうございました。調査結果は明日にでもご報告いたします」
    「ああ、自殺の原因が分かったら教えてくれ」
    ボクたちはフランクの部屋を出て食堂へ向かった。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第16回
    1階に降りるとちょうどチャーリーが入り口から入ってきた。
    「あの髪の毛、手紙を付けてガスパーに渡しておいた。明日の朝一番に車で町の警察に持って行ってくれるそうだ」
    「ありがとう、チャーリー。それじゃ、エラを呼んできてくれないか?夕食の準備で忙しいだろうが、頼むよ」
    間もなく厨房の方からエラがやって来たが予想通り、忙しい所を呼び出されてご機嫌斜めのようだった。
    「夕食の準備で忙しいんですから手短にお願いしますよ」
    「一つだけ思い出してほしんですが、パーティの後、フランクさんがメアリーさんの部屋へ行かれました。…で、フランクさんが部屋から出てこられた時、あなたはここのロビーにいたんですね?」
    「…先ほどお話しした通り、わたしはロビーでフランク様がメアリー様の部屋から出てこられるのを見てました。そして、散歩に行くからデヴィッド様を呼んでほしいと言われたので、デヴィッド様の部屋をノックしました」
    「…では、あなたはフランクさんがメアリーさんの部屋を出られた直後にデヴィッドさんを呼びに行ったんですね?デヴィッドさんの部屋の前からはその時2階のメアリーさんの部屋の前にいたフランクさんは見えませんでしたよね」
    「そりゃそうですよ…デヴィッド様の部屋は見ての通り、2階の廊下の下ですから…」
    「…なろほど、わかりました。ありがとうございます。じゃあ、夕食の準備に戻ってください…。あっ、すいません…もう一つ。パーティの前日、チャーリーさんからの電報はあなたが受け取ったのですか?」
    「いえ、受け取られたのはフランク様です。ちょうどロビーにおられたものですから…。それで、メアリー様にお渡しになりました」
    「…そうですか、分かりました。じゃあもう結構です」
    エラは首をかしげながら厨房へ戻っていった。
    「さあ、夕食までにもう一人、デビッド君にも今一度、話を聞いておきたいんだが…」
    「じゃあ、部屋へ行こうか…」
    ボクたちは再び1階のロビー奥のデヴィッドの部屋へ行った。
    「…まだ、何か…?」
    デヴィッドは不安そうな顔で先生を見た。
    「いや、大したことじゃないんです。仕事が終わったら、海で釣りでもしようかと思いまして…。この別荘には釣り道具なんて置いてありますかね?」
    「ええ、ありますよ。管理小屋にガスパーさんのが置いてます。それに兄さんも持ってるはずですよ」
    「…フランクさんの釣り具は部屋に置いてあるんですか?」
    「ええ、前に部屋で見せてもらった事があるんです…姉さんは釣りはしませんが、兄さんは好きですから…」
    「…そうですか、有難うございます。じゃあ、そろそろ夕食のようですから行きましょうか…」
    ボクたちはデヴィッドと一緒に部屋を出て食堂に入った。
    間もなくみんなが揃い、夕食となった。
    その時、どこかから鐘の音が聞こえてきた。
    しかも、2、3種類の音程の違う音が不規則にか細く鳴っている。
    「あれはなんの音ですか?」
    まず、先生が興味を示した。
    「カリヨンです。音程の違う鐘を操作して、音楽を演奏する…大がかりな楽器です。この別荘の4階…まあ屋根裏部屋みたいなところですが、そこに設置してあるんです。鐘は屋根の上に突き出た尖塔の中にあるんですが、今は壊れています」
    デヴィッドが答えながら、ガスパーの方を見た。
    「鐘を鳴らすハンドルと鐘をつないでいるワイヤーが切れとりまして、風が強い時は鐘が揺れて勝手に音が鳴るんです」
    ガスパーが説明を付け加えたがマキシムがハッとして顔を上げた。
    「…そうだ、あの時も鐘が鳴っていた!」
    つづく
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    第17回
    「そう言えば、あの日も夕食前にこの音が聞こえてましたわ。ちょっと気持ち悪かったの覚えてます」
    ジェシカも思い出すように言った。
    先生は目を閉じて顔を上に向けていた。
    音はまだ鳴り続けている。
    「今日も風が強いようだな…。さあ、早く食べよう」
    フランクがみんなを促し、食事が再開されたが、モーガンだけは先生の方を向いて何か言いたげだった。
    「明日は帰してもらえるんでしょうね?」
    モーガンが言いたかったことをジェシカが口に出した。
    「もちろんです…明日の午前中には分かった事を報告いたします。…大したことは分かりませんでしたが…。どうも、いろいろご協力いただきありがとうございました」
    先生は明るくそう言ったがみんなの顔には不安の色が浮かんでいた。
    それから夕食が終わるまで、重い空気が食卓を包んでいた。
    ただ、先生だけは厨房へ行ったりチャーリーとこそこそ話したりしていた。
    そして夕食が終わった。
    夕食が終わるとボクと先生は2階の部屋に向かったが、チャーリーとフランクは食堂で話をしていた。
    他の人はそれぞれ自分の部屋へ戻って行った。
    もうカリヨンの鐘の音は聞こえなかった。
    「ロバート君、君は先に部屋へ帰っていてくれたまえ。ボクはちょっと調べものがあるんだ」
    先生はそう言って、2階にボクを残して3階へ上がって行った。
    ボクは部屋に入って、一人で考えてみた。
    今回のメアリーの死は本当に自殺なんだろうか…?
    先生は何かをつかんでいるみたいだがボクには未だに真相が見えてこない。
    ただ、ボクにも考えはある。
    探偵小説風に推理するなら、まず一番怪しいのはチャーリーだろう。
    3人の客は動機がはっきりしすぎている。
    ただし、フランクには姉を殺すようなはっきりした動機はない。
    そうすると見えてくるシナリオは…。
    「さあ、一通りの調査は終わった。…じゃあ、事件を整理しながら推理してみようか…」
    ボクが勝手に推理していたのに先生が帰って来てしまった。
    「まず、この事件だが、ズバリ犯人は誰だと思う?」
    いきなり、そんな質問はないだろう…。
    ボクに犯人が分かるくらいなら先生は出る幕ないじゃないか…。
    「ボクの考えでは…」
    それでも一応さっきの考えを話してみることにした。
    先生の反応も見てみたいからね。
    「チャーリーさん…じゃないですか?」
    先生は一瞬怖い目で僕を見たが、すぐに表情を和らげて、部屋の中を歩き始めた。
    先生が推理をするときの動きだ。
    「チャーリーか…、さすがはボクの助手だ。ロバート君、セオリー通りだね。でもね、そうはうまくいかないんだ。ボクも最初はチャーリーを疑っていた。被害者の婚約者であり、突然その彼女の誕生パーティに来れなくなった…。自殺の原因が自分にあると責められている。自分から自殺ではなく他殺の可能性があると調査を依頼している。キミの考え通りチャーリーには犯人としての要素がそろっているんだ。…探偵小説風に考えればの話だが…。…しかし、彼にはメアリーを殺すことはできなかった…不可能なんだ」
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第18回
    先生はチャーリー犯人説を否定したが…しかし、メアリーは自殺ではないと考えているみたいだ
    「キミも知っている通り、この別荘は完全に隔離されている。車か船でしか来られないんだ。チャーリーがあの日、誰にも知られずにこの建物に忍び込むとしたら船で来てあの岸壁を上るしかないんだ。しかも、2階のベランダまで一気に登らなければならないが、もちろん1階のデヴィッド君の部屋の外を通る事になる。ボクの知る限り、チャーリーには登山の趣味はないと思う。では、表から忍び込んだか?…もし建物に忍び込めたとしてもメアリーの部屋のドアはエラが絶えずうろうろしていた1階吹き抜けのロビーから丸見えなんだ。…だから彼があの日この建物に入る事はほぼ不可能なんだ。でも、正直ボクも彼を疑っていたんだ。…と言うのが、彼は既にメアリーと結婚しているんだ。ここへ来る前に結婚届を出しているんだよ。正式のメアリーの夫となってガルシア家の一員になっているんだ。…で、メアリーを殺してフランクを犯人に仕立て上げれば、ガルシア家の実権を握れるからね」
    「…探偵小説風に考えればですよね」
    ボクも先生と同じことを考えていたのでちょっとうれしくなった。
    「ハハハッ…その通りだ。でも、実際はそんなに複雑じゃなかった。1点を除けば非常に単純な事件だったんだ」
    「じゃあ、やっぱり自殺じゃないんですね」
    「当たり前だよ。今まで聞いたところではメアリーに自殺する動機なんて見当たらない。誰かが自殺に見せかけようとして
    殺したんだ。さっき、ヘンリー氏に会って犯人の動機を確認してきたよ。…遺言の中見だ」
    「…じゃあ、先生はもう犯人を…?!でも、さっきの単純でない1点とは何なんですか?」
    「死体の処理…という事になるだろうか…。或る1点が解決することで、全てのつじつまが合ってくる。最初の発見はメアリーの部屋のベランダだ。その次は3階のフランクさんの部屋の同じくベランダ。そして最後はさっきのカリヨンの鐘の音だ。これらから一つの推理が導き出された。単純明快で子供だましのようなトリックだ。しかし、全て状況証拠なんだよ。今もフランクの部屋でそれを確認してきたんだ。まあ、詳しい事は明日みんなの前で説明するよ」
    先生は肝心の話の中身を明日に残してベットに入ってしまった。
    ボクはなかなか寝付かれず窓から海を眺めていた。
    …と言っても真っ暗な空間があるだけだ。
    夕食時、尖塔の鐘が鳴るくらい吹いていた強い風はもうなくなっていた。
    あくる日、朝食が終わると先生は全員をロビーに集めた。
    ただし、ガスパーだけは夜明け前に車で町に向かったのでいなかった。
    頼まれ物を警察に届けるためだ。
    「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。では、調査結果を報告いたします」
    いよいよ先生の謎解きが始まった!
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第19回
    「既にご説明があったと思いますが今回のボクの目的はメアリーさんの死が本当に自殺かどうかを調べることです。そして皆さんのご協力の元、今ここに一応の結論を導き出すことができました。それを今からお話しいたします」
    先生はここで水を飲み、大きく深呼吸をした。
    みんなの目は先生に集中していた。
    「まず、パーティのあった日の事を思い出してみましょう…あっ失礼、前日にもある大事な出来事がありました。チャーリーさんからの電報が届いたんです。パーティには出席できないとの内容でした。その電報はフランクさんが受け取った」
    「ちょうどロビーにいたんで、電報を受け取ったんだ。直ぐにメアリーに渡したさ」
    「そう、それでパーティの出席者が一人減り宿泊するはずの部屋、2階の西側…メアリーさんの隣の部屋が空いた訳です。さて、パーティ当日は皆さんご存知の通りですが、パーティが終わってから皆さんは順にメアリーさんの部屋に行かれました」
    「彼女に呼ばれたんだ。話があるから4時ごろに来てくれって。…そのことについてはもう話しただろう」
    マキシムがちょっと苛立たしげに言った。
    「そうです。フランクさん以外はパーティの時にメアリーさんが声をかけていたんです。もちろんデヴィッドさんは別です。彼はあの日、メアリーさんの部屋へ行ってませんから。ジェシカさん、あなたはメアリーさんに多額の借金があった。あの日、メアリーさんはあなたを部屋に呼んで、返済を迫ったんですよね。…結婚資金にしたいからって…」
    「…確かに、借金はありましたし、あの日、早く返してほしいと言われました。でも…それでメアリーを殺したりはしません…そんなこと…」
    「誰もあなたが殺したとは言っていません。…ただ、動機があると言っているだけです。…他の人もそうです。
    「おい、なんだ!キミは我々を疑っているのか!?」
    モーガンが怒りをあらわにした。
    「フェリックス君、ちょっと失礼じゃないかね!」
    フランクも顔が赤くなっている。
    「いや、決してそんなつもりじゃあ…。まあ、落ち着いて最後まで聞いてください。これはあくまでも報告ですから…。話を続けます。マキシムさん、あなたはメアリーさんに交際を断られた。モーガンさんは…会社の事で忠告を受けた」
    「ちょっと待ってくれ!会社の事って、一体何のことだ…。ワシは忠告を受けるようなことはしとらん。キミは何を証拠にそんなこと言うんだ!?」
    「そのことについてはここで申し上げる訳にはいきませんので後ほどお話しします」
    先生がそう言ってモーガンの顔に鋭い視線を送ると、モーガンは黙って下を向いた。
    「とにかく3人との話が終わった後今度はフランクさんがメアリーさんの部屋へ入った。出てこられたのが、午後6時ごろでした。それからデヴィッドさんと一緒に散歩に出られた…東の岸壁沿いの道でしたね。その散歩の途中でデヴィッドさんは2階のベランダで寝ている…そのように見えた…メアリーさんを見ているんです」
    「でも、遠くからでしたから本当に寝てたのかどうか、…よく分かりません」
    デヴィッドが自信無げに小さな声でつぶやいた。
    「確かに散歩道からじゃ、遠くて表情までは見えなかったでしょう。でもベランダにメアリーさんがいたんです。そして散歩から戻って夕食…その前にデヴィッドさんはメアリーさんに夕食を告げ、フランクさんは部屋に戻った。そしてエラさんは夕食前にもう一度散歩道まで行ってメアリーさんがベランダにいないことを確認した。…メアリーさんはデヴィッドさんがベランダを確認した後、エラさんが見に行く前にベランダから姿を消した事になります。…ここが大事なところなんです」
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第20回
    そう、ここが大事なところなんだ。メアリーさんはこの時部屋にいたのか、それとも…。
    「夕食はエラさんがメアリーさんの部屋をノックしてカギがかかっていることを確認した後、午後7時過ぎに始まりました。
    そして、午後9時に夕食が終わりデヴィッドさん、ジェシカさん、マキシムさんは部屋に戻った。
    フランクさんは部屋からお酒を持って来てモーガンさんとロビーで飲んだ。…10時頃まででしたね。
    酒が終わるとモーガンさんは部屋に戻り、フランクさんはガスパーさんと一緒にメアリーさんの部屋を確認した。
    …ここで初めてメアリーさんが部屋にいないことが分かったんです。それからみんなで別荘内を探した。
    外は真っ暗で危険なため夜が明けてからの捜索になった。そして断崖の下で死体が発見された。
    以上がパーティ当日の主な出来事です。その後、警察が来て調査しておりますが、警察の見解は御存じの通り自殺です。
    状況から見てそれは疑いようがないでしょう。
    つまり、デヴィッドさんがベランダでメアリーさんを見てからフランクさんが部屋の中を見るまでの間が死亡推定時刻です。
    この間にメアリーさんの部屋には誰も入っておりません。
    これは部屋にカギがかかっていたことやロビーにいたエラさんからの証言から判断できます。
    もちろんメアリーさんも部屋から出ていないはずです。
    そうするとその間…時間にすると午後7時頃から午後10時ごろまでの間にメアリーさんは自殺した事になります。
    …メアリーさんは自室のベランダから真っ暗な闇の中へ飛び込んだのです。それが警察の見解です。
    しかし、もし自殺ではなかったとしたら…。今お話しした死亡推定時刻に誰かがメアリーさんを殺害することは可能なのか?
    …そう考えるとボクにも殺害方法が分かりませんでした。…でも…、一つ証拠がある可能性を与えてくれました。
    それはメアリーさんのベランダの屋根、すなわち上の階の部屋のベランダの下部分に付着していた髪の毛です。
    …もうそろそろ警察から鑑識結果が出ると思いますが、恐らくメアリーさんの物でしょう。
    その髪の毛が付着していたところには、うっすら血痕も見られました。ちょうど頭をぶつけたような状況です。
    ベランダの屋根までの高さは2メートルはあるので、メアリーさんはジャンプしても頭が届かないでしょう。
    では、なぜそんな所に髪の毛が血痕と一緒に付着していたか…その答えはフランクさんの部屋を見せてもらってわかりました」
    みんなが一斉にフランクの顔を見た。フランクは少し顔色が悪かったが何も言わなかった。
    「この別荘には構造上、海から荷物を引き上げる装置が設置されているんです。
    そこはフランクさんのベランダの屋根で軒から突き出たような形で滑車が設置されておりました。
    その滑車を使って海から荷物を引き上げていたそうで、ベランダにロープを巻き取るリールも置いてありました。
    …荷物は海から1階、2階を経て3階へ引き上げられます。
    つまり、その装置を使えば2階から3階へも荷物を引き上げられます…メアリーさんの体を引き揚げることも可能なはずです」
    フランクが顔を上げたがその顔色は蒼白だった。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第21回
    フランクは自分を落ち着かせようとするように、ゆっくり口を開いた。
    「…あの装置は今は使ってないんだ。ロープもリールに巻き取ってあっただろう。どうして滑車に通すんだ…?」
    「では、ちゃんと説明しましょう」
    先生はかなり落ち着いている。自分の推理に自信があるのだろう。
    「確かにベランダから滑車まではいくら身を乗り出しても手の届く距離ではない。ましてロープを滑車にかけるなんて…。
    それにメアリーさんの体にロープを巻きつけたらそのロープは3階の上から2階まで下りてくることになる。
    そのロープを外から見られたら都合悪いでしょう。だから犯人は考えたんです。
    フランクさん、あなたは釣りをされますね。あなたの部屋には釣り道具が置いてあり、その中には釣り糸…テグスもあるはずです」
    この時、デヴィッドがハッと顔を上げた。自分が言った事でフランクが追及されると思ったからだろう。
    「実は2階のメアリーさんの部屋からそのテグスが見つかったんです。10m位だったでしょうか…。
    まあ、その時はメアリーさんが釣りでもするのかと思ってましたが、滑車とロープを見て、ピンと来たんです。
    釣竿を使ってテグスを滑車に通し、その先端をロープに結び付ければテグスを引っ張ってロープを通せます」
    「そんな事ができたところで、犯人はいつメアリーを殺したんだ?誰もあの部屋には入れなかったんだろう?」
    今度はモーガンが口を開いた。確かに誰もが聞きたいことだろう。
    「では、犯人の行動をお話ししましょう。ただし、これはボクの推理です。可能性としてお聞きください。
    まず、この事件でメアリーさんを殺害できる可能性のあるのは…フランクさん、あなただけなのです」
    フランクの体がわずかにふるえたが特に何も言わなかった。
    なぜならあなたがあの日一番最後にメアリーさんの部屋に入ったからです。その時点で彼女は生きていたはずです。
    それ以降、生きたメアリーさんの姿を見た人はいません」
    「でも、ボクはベランダで寝ている姉さんを見ましたよ」
    デヴィッドが直ぐに反論した。
    「あれは兄さんが姉さんの部屋を出てきた後じゃないんですか?」
    「そう、その通りなんだ。…あのベランダで見たメアリーさんがあの時、生きていたとしたら…だがね」
    「えっ!…じゃあ、ボクが見た姉さんは…!?」
    「そう、すでに死んでいた…と見るのが正しいでしょう。ちゃんと説明するから聞いてください。
    フランクさん、あなたはメアリーさんと話をしている間に隙を見て頭部を鈍器のようなもので殴り、殺害した。
    恐らくあの部屋にあった銀の蝋燭かクリスタルの灰皿でしょう。流血を防ぐためにタオルで覆って…。
    殺害した後はメアリーの死体をベランダまで運び、釣り上げるためにロープで体を縛るんですが、そのロープは3階にあるんです。
    そこで先ほど説明した方法でテグスを2階のベランダの位置まで垂らしておき、それをつかんで3階のロープを手繰り寄せた。
    ロープはあらかじめ適当な長さに切っておいたんでしょう。
    リールに巻かれていたロープには新しい切り口がありました。使ったロープは後で海へ捨てたのでしょう。
    用意したロープには両端にテグスが結ばれていて、2階へロープを下した後は3階にも一端のテグスが残っていたはずです。
    おそらくベランダのどこかにむすんであったのでしょう。
    言わば、これがこの事件のトリックなんです。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第22回
    メアリーさんの体にロープを結び付けるとロープが見えないように服を着せ、ベランダの椅子に座らせた。
    3階にあったロープは全て2階に手繰り寄せられ、その端はテグスによって3階に繋がっていたんです。
    だから、デヴィッドさんがベランダのメアリーさんを見たとき、ロープが見えずまるで寝ているように見えたんです。
    その後は部屋に証拠が残らないように注意して部屋を出るんですが、部屋のカギを持って出て、外からカギをかけたんです。
    その為、廊下に出た時、ロビーにいたエラさんに見られるとまずいのでわざわざデヴィッドさんを呼びに行かせた。
    部屋にカギをかけるとデヴィッドさんと散歩に出た。ベランダのメアリーさんを見せるためです。
    散歩から帰ると、さもメアリーさんが生きているかのごとく、デビッドさんに夕食の声をかけるように言った。
    その間、フランクさんは部屋に戻ってベランダからテグスでロープを手繰り寄せメアリーさんの死体を3階へ引き揚げた。
    しかし、思わぬアクシデントが起こった。みなさん覚えておいででしょう…あの時カヨリンの鐘が鳴っていたのを…。
    …そうです、風が強かったのです。ここは夕方、海からの風が吹くんです。その風が犯人の予想以上に強かった。
    その為、メアリーさんの死体を引き揚げる途中で3階ベランダの下の部分に頭部が当たってしまった。
    傷は大したことがなかったんですが、その時に髪の毛が漆喰に付着したんです。血痕もその時の物でしょう。
    また、風がきついのでそのまま死体をベランダから落とすことができなかった。外もまだ明るさが残っていたからね。
    飛ばされて2階のベランダにでも引っかかるとまずいですから…。念には念を入れたんでしょう。
    死体を一旦3階のベランダに置き、ロープをほどいてカギを死体のポケットにしまう。ロープはテグスを外して海へ捨てた。
    この時外したテグスも一緒に海へ捨てたはずだったんですが、風に吹かれて2階の部屋に入ってしまったんです。
    そのテグスをボクが見つけたという訳です」
    「…そんなのは全部キミの想像じゃないか!誰が見たって、姉が自殺したのは明らかなんだ…警察だってそう言っている」
    フランクがたまりかねたように大きな声を上げた。しかし、先生は落ち着いている。
    「ええ、その通り。全てボクの想像…と言うよりも、事実に基づいた推理です。
    最初に申しあげたようにこういうことも起こり得ると言う可能性をお話ししているだけです。
    …ではもう少しですので話を進めます。
    メアリーさんの死体を3階のベランダに置いたまま、犯人は1階に下りてきた。
    そしてエラさんに外からメアリーがまだベランダにいるか確認するように頼んだ。
    エラさんはベランダにメアリーさんがいないのを確認し、更にドアの外からロックを確認し声をかけた。
    これで、皆さんはメアリーさんがベランダから部屋に入ったと思われたでしょう。
    さて、問題は3階のベランダにある死体です。今の所犯人には完ぺきに近いアリバイがあります。
    しかし、このまま誰も気づかずに翌日になり、死体が発見されたのでは一晩中のアリバイが必要になります。
    そこで、夕食後モーガンを酒に誘い用意しておいた酒を取りに行くと言う理由で部屋に入った。
    ベランダにある死体をそのまま下に落とすのにそれほど時間はかからない。幸いその時には風は殆どやんでいた。
    死体を落とすと酒瓶を持って部屋から出て、モーガンの待つロビーへ降りて行った。
    後は御存じの通りです。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    第23回
    一通り話し終えた先生は満足そうにみんなを見渡した。
    「…キミはそんな話を作り上げるために我々に協力させたのかね…。とんだ時間の無駄だった。
    それにキミは大きな勘違いをしている。私には姉を殺さなければならない理由なんてないんだ。
    父があんな状態だから我々が力を合わせてガルシア家を支えていかなければならない時に…どうして私が姉を…」
    フランクは力説した。しかし先生は平然として彼の顔をまともに見返した。
    「では、申し上げましょう。ヘンリー・ガルシア氏は1か月前療養のため、この別荘に来られました。
    しかし、病状は思った以上に悪く仕事への復帰は無理との診断を受けておられました。
    自分の状態を知ったヘンリー氏はこの別荘で遺言状を作成されました。2週間前の事です。
    ところが遺言状を書き上げたとたんにヘンリー氏の容体が急変し、意識を無くされました。
    その時、フランクさんはヘンリーさんの様子を見に別荘に来られていました。
    そして急変の知らせを聞いて部屋に行ってみるとテーブルの上に書き上げたばかりの遺言状が置いてあったんです。
    ヘンリーさんは意識がなく、看護師は看病に追われていました。
    …偶然でした。フランクさんは遺言状を見てしまったんです。
    ボクは昨日、ヘンリーさんからそのいきさつと遺言状の内容を聞かされました。
    ヘンリー氏は看護師から話を聞きフランクさんが遺言状を見た可能性があることを知ったんです。
    息子を信じることにしたヘンリー氏は何も言わず、養生に専念されました。そして、今回の事件が起こったんです」
    「…その遺言状の内容は教えてもらえないのかね?」
    モーガンが先生をジロリとにらんだ。
    「ヘンリー氏はまだご存命です。ここで発表する訳にはいきません」
    「じゃあ、犯人…いや、フランクの動機が分からないじゃないか…?」
    「…フランクさん、あなたはもうお分かりですよね。
    チャーリーがボクに依頼した事、ヘンリー氏がこの調査に協力であった事。…もう、これ以上は何も言いませんよ」
    フランクは深く頭をたれていた。そのうち小刻みに体が震え咽がもれてきた。
    「あっ、どうも長い間ご苦労様でした。ジェシカさんとマキシムさんはお帰り頂いて結構です。
    車を呼んであるのでもうすぐ来ると思います。
    モーガンさんはヘンリー氏の部屋へ行ってください。話があるそうです」
    そして、ロビーには先生とチャーリーとボク…それにフランクとデヴィッドが残った。
    「フランクさん、ボクが言った事が事実かどうかはあなたしか知らない。ボクの仕事はここまでです。
    報告書はチャーリーに渡しておきます。後はご判断にお任せします」
    ボクと先生は部屋へ戻って荷物をまとめチャーリーの車で海猫亭を後にした。
    つづく
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    「海猫亭殺人事件」~カリヨンの嘆き~
    最終回
    駅へ行く車の中で、ボクは先生に聞きたい事があった。
    「先生、結局遺言はどう言う内容だったんですか?」
    「…簡単に言うとガルシアグループはメアリーさんに譲るという事だ。
    さらにフランクさんを経営から外すとも書かれていた。…フランクにとっては厳しい内容だった。
    チャーリー、キミはこの遺言の内容を本当に知らなかったのかい?」
    「当たり前じゃないか…ただ、ヘンリー氏からメアリーと結婚したら仕事を手伝ってくれと言われた事がある」
    「それじゃ言うが、遺言状にはメアリーが結婚した場合はその夫をグループ本社の社長にすると書いてあったんだ。
    …ところでチャーリー、キミはボクの報告書を警察に見せるのかい?」
    「…いや、それはフランク次第だ。それとヘンリー氏の意思を尊重する」
    「そうか、それで安心したよ」
    やがて車は駅につきボクたちはチャーリーに別れを告げた。
    数日後、ヘンリー・ガルシア死亡のニュースが新聞に載った。やはり病気には勝てなかったようだ。
    それからしばらくして先生の元に手紙が届いた。差出人はチャーリーだった。
    「フェリックス、先日はありがとう。おかげでガルシア家は落ち着きを取り戻した。
    フランクは自首し、デヴィッド君がガルシア家を継ぐことになった。モーガンは解雇された。
    そしてあの後、書き換えられた遺言状でボクがデヴィッド君の後見人に指名された。
    デヴィッド君はフランクが社会復帰した時はガルシアグループに迎えることを約束した。
    こっちが落ち着いたら一度遊びに行くよ。まずは報告まで…」
    …とにかくこれで後味が少し良くなった。と思っていると、電話が鳴った。
    「おい、ロバート君!旅の支度だ。今度は長くなりそうだ」
    …やれやれ…………。

    おわり
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世界街角散歩

曜日番組名備考追加
世界街角散歩
シルクロードの国
その1
今日から始まりました「世界街角散歩」。
私が案内役のライラです。
この番組では世界の国々を散歩気分で紹介していきます…という事で、今回はシルクロードの国に来ています。
さて、今、町の大通りを歩いていますがどこへ行きましょうか…?
道の左右にはいろんな店が並んでます。
あっ、そうそう…その国の生活を知るには市場へ行けと言いますから、市場へ行ってみましょう。
…市場はどこだ…市場はどこだ…?
あっ、なんかそんな雰囲気の入り口がありますよ~…行ってみましょう!
入り口は狭いんですが、中は意外と広そうです。まずはお野菜が並んでますね。
…う~ん、どれも新鮮でおいしそうです。
珍しい野菜もありますね~。
巨大な野菜もあります…。
「おう、ねえちゃん!なんか買っていかんかね…?安くしとくよ!」
さっそく、声をかけられました。
威勢がいいですね。
じゃあ、ちょっと聞いてみます。ーねえ、この大きなカボチャはいくらですか?
「…ねえちゃん、アホか!これはイクラじゃねえよ。カボチャだよ」
ちょっとやっかいな人みたいなので逆らわずに次の店へ行きましょう。
次は…フルーツが並んでますね…。
マンゴー、パパイヤ、バナナ、ジャックフルーツ、スターフルーツ…。
甘酸っぱい、いい匂いがしてます…うっ!!……なんかすごい匂いが…!
うわっ!ドリアンの山です。
それも試食用に切ってあります!!
「おい、、おねえちゃん!食べていかんかね…新鮮なドリアンだよ!…どうしたね、顔が真っ赤だぞ…」
………………………………………………………………………。
ふ~~~~っ、息を止めてドリアンの山をやり過ごしました。
…わたし、苦手なんです、あの匂い。
大変失礼いたしました。
では、気を取り直して次のお店へ…。
あっ、次は魚屋さん…でしょう…。
バケツやイケスに生きた魚がたくさん泳いでいます。
まるで水族館ですね。
あっ、ウナギがいますよ…こちらはエイですね、サメもいます。
タイやヒラメ…カツオにマグロ…。
「ねえちゃん、魚好きか?生きのいい魚好きか?」
ーおじさん、この生きている魚はちゃんとさばいてくれるの?
「…ん、さばいてくれるの?…ってこの魚は生きたまま買っていくんだ。どうして殺さなきゃなんないの?」
ーこんな大きな魚、生きたままじゃ料理できないじゃないですか…。
「…料理????ねえちゃん、アホか!これは家で飼うんじゃ」
「観賞魚って知らんかね?魚飼って、見て楽しむんだ」
…また、アホって言われました。
でも、市場に観賞魚なんて……まあ、この辺がお国柄でしょうか…。
では、今回はこの辺で…。
次回も引き続きシルクロードの国をご紹介いたします。
…じゃあね、バイバ~イ。
つづく
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世界街角散歩
シルクロードの国
その2
ハーイ、「世界街角散歩」の時間で~す。
私が案内役のライラです。
今日は前回の続きでシルクロードの国。
そう、前回は市場の中を紹介してましたね。
今回もその続きを紹介していきましょう。
魚屋さん…いや、観賞魚屋さんの次は…ん、かわいい小鳥がたくさんいます。
…そうか、この辺りはペット売り場じゃないでしょうか…。
「おう、そこのあんた!買って行きなさい」
…なんか、エラそうなおっさんが声をかけてきました。
ちょっとお話を聞いてみましょう。
ーかわいい小鳥がたくさんいますね。
ここはペット屋さんですか?
「あんた、アホか!…このバチ当たりが!!この鳥は逃がすんじゃ」
ーはあ…逃がす?!わざわざ買って逃がすんですか?
「功徳じゃ。生き物を逃がして功徳を得るのじゃ。さあ、買っていきなさい」
ーはい、わかりました。では、1羽ください。
さあ、ではこの小鳥を逃がしてやりましょう。
これでわたしも功徳を積んだ事になります。
それ~!
逃がしてあげたわよ~。
…………!!
こら~~~っ!
捕まえちゃダメ!!
私の鳥なんだから……。
まあ、何という事でしょう…!
私が店で買った鳥を逃がしてやると店の後ろからアミを持った子供が現れて…。
その鳥を捕まえてしまいました。
そして…小鳥屋のオヤジに渡してます。
…何が功徳なんでしょう…。
あのオヤジは絶対地獄に落ちますよ。
さて、気を取り直して…それはそうと、またアホと言われてしまいました。
この国ではわたしはアホなんでしょうか?
…特にアホな質問をしているとは思えないんですが…。
さてと…ん…なんか、店の様子が変わってきましたよ。
…甘くて、いい匂い…!!
お待たせしました!!
お菓子屋さんです!
スイーツのお店で~す!
わたし、甘いものには目がないんです。
テンション、バリバリに上がってます。
と言うのも…。
ここから先どこまでもお菓子のお店が続いているのです。
見渡す限りスイーツです。
…こちらはチョコレートのお店、こっちはケーキのお店、それにクッキー、バームクーヘン、マカロン…。
世界中のお菓子が並んでます。
わたし、もうリポートどころではありませんわ。
「おう、お姉ちゃん!甘いもん好きか?」
好き好き…甘いもん大好き!!
わたしはアホです。
甘いもん好きなアホで~す。
では、今日はこの辺で…。
つづく
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世界街角散歩
山小屋の国
その1
はい、「世界街角散歩」の時間がやってきました。
今日は山小屋の国を紹介致します。
この国の案内役は私、リーラです。
宜しくお願い致します。
さて、山小屋の国というと高原、牧畜、お花畑…そんなイメージがありますよね~。
では、まずそんな景色に囲まれた小さな山小屋を訪ねてみたいと思います。
実はもう近くまで来ているんですよ。
ここは既に標高3000メートルを超えているのです。
周りには雪をいただく山脈が続いています。
さあ、小屋が見えてきました。
一面のお花畑の中に建つ小さな丸太造りの山小屋です。
ウシもヒツジもいるようです。
小さな女の子が遊んでいます。
みんなよく景色に溶け込んでおります。
さあ、では小屋の方へ行ってみましょう。
お花畑の中を歩いて行きますと…かわいい女の子…ゲームをやってます。
ーあなたはここに住んでるの?
「うん、おじいちゃんと一緒にあの小屋に住んでるの。お姉ちゃん、遊びに来たの?」
ーええ、そうよ。そして、この辺を紹介してるの。
よかったら、案内してくれるかな…?」
「…う~ん、今はダメ。『牧場物語』やってるから…。小屋へ行ったらおじいちゃんがいるわ」
ーあっ、そう…はい、じゃあ行ってみます。ありがとう。後でまたお話聞かせてね。
「…………………」
…じゃあ、小屋の方へ行きましょう。
近くで見るとけっこう大きな小屋です。
…あっ、おじいさんが出てきました。
白いヒゲの優しそうなおじいさんです。
「やあ、お客さんかね?」
ーはい、「世界街角散歩」と言う番組でこの辺を紹介しているんです。小屋を見せてもらってもいいですか?
「どうぞどうぞ、ゆっくり見て行ってください。…と言っても何もありゃせんが…」
では、小屋の中に入れてもらいましょう。
…中はけっこう広いです。
きれいに整理された部屋ですね。
…でも、テレビやパソコン…意外に設備は近代的です。こちらのドアは?
「そこはバスルームじゃよ。別に見てもかまわんが…普通じゃ。あんたたちの生活と変わらんと思うよ」
ー確かに、全自動洗濯機もありますね。でも、電気はどこから来てるんですか?…自家発電ですか?
「いや、送電線は地下に埋まっとるんじゃ。テレビのケーブルも地下から来ておるよ」
ーなるほど、近頃は牧場生活も変わったんですね。
「だれも牧場などしておらんよ。うちはサラリーマン家庭じゃ。あの子の両親が働いておるんじゃよ」
ーえっ…じゃ、おじいさんはここで何を?
「ここの管理をしておる。…山小屋の国の観光事業じゃよ。ここの景観をまもっとるんじゃ。…まあ、公務員という事かのう。ウシもヒツジもペットのようなもんじゃ。丸太小屋もメンテナンスが大変でのう」
…なんか、ちょっとイメージが崩れてきましたので、今日はこの辺で終りたいと思います。
では、また次回をお楽しみに…。
つづく
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世界街角散歩
山小屋の国
その2
はい、「世界街角散歩」の時間がやってきました。
今日も山小屋の国の紹介を続けます。
案内役は私、リーラです。
宜しくお願い致します。
さて、いま山小屋の中にいるのですがかなり最初のイメージと違ってきております。
私たちがこの国に描いてきたイメージは現在、国の政策で保護されているものらしいのです。
実際には最新テクノロジーが入ってきており、生活そのものは私たちの日常と変わりないのです。
「いい所へ案内しようかのう?きっとびっくりするじゃろう」
ーえっ、どこですか?ぜひ案内してください。この国の新名所として紹介しますよ。
「じゃあ、行きましょう」
さあ、これからいい所へ案内してもらう事になったんですが…どのへんなんでしょう?
丘の下にはいくつか似たような山小屋がありますが…どうやらその中の一つを目指しているようです。
「さあ、ここじゃよ。この小屋の中じゃ」
やっぱりそうでした。
同じような山小屋ですが…中は…!
おや、エレベーターです!
地下に降りていきます。
まさか、山小屋の中にエレベーターがあるとは…。
「着いたようじゃの。さあ、行きましょう」
エレベーターを降りると廊下が続いています。
そして…階段を降りて…!!
駅です! …地下鉄の駅に出てきました!
他にも何人かの人が電車を待っているようです。
あっ、電車が来ました。
「さあ、乗りましょう」
ーこの電車はどこへ行くんですか?
「山の中心部にあたる所じゃよ。まあ、ちょっとした町じゃ。…ほら、もうすぐ着くよ」
わっ、すごい駅に着きました!
視界が広がって大きな吹き抜けのドームのようなところです。
周りにはいろんなお店があってその間を広い道が何本も放射線状に延びています。
「…どうじゃね、おどろいたかね?ここが山小屋の国の中心部じゃ。生活に必要なものはすべてここにある。役所や主な会社などもここから道でつながっておるんじゃ。しかし、作っとる物は昔と一緒じゃよ。乳製品や作物、織物などは今もこの国の
中心産業じゃが…ただ、動かしているのはハイテクノロジーじゃ」
…すばらしい!!生活水準は上がっているのに昔ながらの景観を残しているんですね。
…でも…なんか引っかかるものが…まあ、深く考えずに、せっかくですから買物でもしましょうか…。
…という事で、山小屋の国の紹介はこの辺でおしまいにしましょう。
つづく
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世界街角散歩
サクラの国
その1
さあ、「世界街角散歩」の時間がやってきました。
今日は私、ルーラがサクラの国を紹介します。
お楽しみに…。
現在、私がおりますのは超高層ビルが立ち並ぶこの国の中心街です。
今は朝のラッシュ時で、ものすごい人です。
わぁーっ、押さないでください!
ちょ、ちょっと…押さないでってば!
押すなって言っとるやろ、コラッ!
……あっ、失礼しました。
つい、はしたない言葉が出てしまいました。
…それにしても、すごい人の波です。
みなさん、地下鉄の方へ向かっているようですが…。
私も何となくそちらへ向かっています。
しかし、このまま地下鉄に乗せられて知らない街に連れて行かれると困りますのでここはなんとしても流れに逆らって…。
…人の波をかき分けかき分け…ふ~っ、なんとか、細い横道に逃げ込めました。
…ほ~、一筋入るとやけに静かですね。
大通りのさわがしさがうそのようです。
街並みも大きなビルは無くなり、普通の民家が並んでいます。
では、少しこの辺を散歩しましょう。
…なかなかいい感じの町です。
下町って言うんでしょうか…。
歩いてる人もどこかのんびりしてるように見えます。
あっ、魚屋さんがあります。
ちょっとのぞいてみましょう。
ーあの~…。
「へい、…らっしゃい!なにしましょ?…らっしゃい!!」
ねじりはち巻きのおじさんが出てきました。
さすがに威勢がいいですね。
「お姉さん、今日はイワシがいいよ!どうでぇ、ピチピチしてっだろ!さあ、買っちくんねぇ!」
ーあ、いえ…ちょっとこの辺の町を紹介しているんです。…良い街並みですね。
「あったりめぇよ~!この辺は昔とちっとも変わんねえんだ。だから人間も古い奴ばかりさ…へへっ。町は古いが魚は新しいよ…な~んちゃってね。さあ、買っちくんねぇ!」
ちょっとめんどくさそうな人なので先へ行くことにしましょう。
ーおじさん、どうも…。
「なんでぇ、ひやかしかい!今日は朝からついてねえや…」
…私はマイクを持って話してるんです。
横ではカメラマンがカメラを回しているんですよ。
どう見ても魚を買いに来たお客じゃないですよね。
…さて、もう少しブラブラ歩きましょう。
なんか、向こうの方が少しにぎやかになって来ましたよ。
どんどん行ってみましょう。
…向こうの方で人だかりが見えてきましたが、そろそろお時間です。
この続きはまた次回に…。
では、さようなら。
つづく
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世界街角散歩
サクラの国
その2
さあ、「世界街角散歩」の時間がやってきました。
今日は前回に続きサクラの国を紹介します。
案内役は私、ルーラです。
さて、前方に見える人だかりはいったいなんでしょう?
…ん、人だかりがこちらへ向かってきます!
人だかりの中心にキラキラ光るものが見えますが…揺れてます…揺れながらこちらへ近づいてきます!
「ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ…」
…おみこし…って言うものです。
私、調べてきました。
あれはおみこしです。
神社のお祭りなどで担ぎ出される神様の入った家のようなものだそうです。
それがこちらへ押し寄せてきております!
「ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ…」
「おう、じゃまだ、じゃまだい!!ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ…」
……危うく巻き込まれそうになりました。
それにしても威勢のいい人たちです。
あれはフンドシって言うんですかね…。
それにおそろいの…そう、ハッピです。
…なんか非常にゆかいな名前の服ですね。
そんな格好の一団が通って行きました。
おみこしの後からちょっとイキな浴衣姿の女性が歩いてきましたので、話を聞いてみましょう。
ーちょっと、お姉さん、イキですね…。
「あたしゃ、カエリだよ」
ーいや、そういう意味じゃなくて…。
「分かってるわよ。ちょっとからかっただけさ。…で、何のようだい?」
ー今日はお祭りなんですか?
「決まってんじゃないか!八幡様のお祭りだよ。これからまたみこしが来るよ!」
あら、ホントにおみこしが来たようです。
今度は先ほどより大人数です。
…道幅いっぱいに人が群がってます。
人の塊がこちらに向かってきます。
…あれ、さっきのイキなお姉さん、どっか行っちゃった…。
わ~、みこしがくる~~~~!
もう、よけられません…。
…巻き込まれそうです!!
よーし、こうなったら、一緒にみこしを…
うりゃぁぁ~~!
ワッショイ、ワッショイ!
「ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ…」
「ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ、ワッショイ…」
…もう抜けられませ~ん!!
では、今日はこの辺で…さようなら~。
つづく
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世界街角散歩
コムギの国
その1
は~い、「世界街角散歩」の時間ですよ~。
今日は私、レイラの案内でコムギの国を紹介します。
コムギの国と言うだけあって、…見てください、ここは一面の麦畑です。
見渡す限り麦畑が広がっています。
…地平線から地平線まで、本当に見渡す限りです。
…誰もいません…家もありません。
いきなりですが、我々は大変なところに置き去りにされてしまいました。
我々を下した車は遥か地平線の彼方です。
…この国の広大さをお伝えしたいと広報の方にお話ししたところ、このような状態になってしまいました。
この国の広大さは伝わりましたでしょうか?
私には十分に伝わりましたので、そろそろどこか人のいる所へ移動したいと思います。
…と言っても、予算の関係でヘリは呼べませんので、さっきの車に戻ってきてもらいましょう。
何時間かかるか分かりませんがそれしか方法がありませんので、その間、麦畑をさまよってみます。
…しかし、迷子になりそうなのでやっぱり道路で待つことにします。
……ん、あの土煙は……?!
ブロローン、ブロロロ-ン…ブロロンブロロン…。
「よう、あんたたち、こんなとこで何やってんだ?」
あっ、大型バイクのライダーたちが降りてきました。
ひょっとしたら乗せてもらえるかも…。
ーあの~、町まで乗せてくれませんか?
「…………ま、いいか。次の町で一杯おごってくれるんなら…?」
ーええ、それくらいならお安いご用です。
「オーケー、じゃあ乗りなよ。…オレはエリック、よろしくな。さあ、行こうか!」
…なんかおもしろい展開になって来ました。
「世界街角散歩」がロードムービーになりそうです。
それにしてもこんな広い所をバイクで飛ばすのはきもちいいですね~。
…あれ、今すれ違った車は…。
まあ、深く考えないようにしましょう。
我々の旅は出たとこ勝負ですから…。
…ん、いつからそんな番組になったのかな?
そうこうしているうちに前方に何か建物が見えてきました。
どうやら町のようです。
ブロローン、ブロロロ-ン…ブロロンブロロン…。
「さあ、着いたぜ」
ーありがとうございました。
で、これから……。
あっ、酒場へ入って行っちゃった。
まあ、約束だからしょうがないか…。
お付き合いしましょう。
ついでに酒場も紹介しますね。
カウンターだけの狭い店ですが日用雑貨なんかも売ってるんですね。
カウンターの中にはおじいさんが1人。
さっきのライダーはカウンターに座ってもう何か飲んでます。
他に客はいないようです。
さて、これから何が起こるのか…?
それは次回のお楽しみ。
今日はこの辺で…じゃあね~。
つづく
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世界街角散歩
コムギの国
その2
は~い、「世界街角散歩」の時間ですよ~。
今回も私、レイラの案内でコムギの国を紹介します。
さて、酒場に入ったライダーのエリックたちですが、人のおごりだと思って何か白い液体をガブガブ飲んでます。
「あんたも座って、一杯やりなよ」
そう言えばのどがカラカラでした。
じゃあ、ちょっと一杯、と言いたいんですが…何を飲もうかな…仕事中ですので…。
「彼女にも同じものを…」
あらら、カウンターに座ったら、エリックが勝手に注文しちゃいました。
…一体あの白い飲み物は?
ゴクッ…!
…ミルク?! …なんとライダーたちはミルクを飲んでいたんです。
ーあの~、いつもミルク飲んでるんですか?
「今は運転中だ。飲酒運転はダメだろう…。それにミルクは体にいい」
まあ、なんと真面目で健康的なライダーさんたちなんでしょう!
ちょっと感動しちゃいました。
…と同時に、ちょっと気が抜けちゃいました。
特に面白い展開にはならないようです。
では、ミルクでかわきをいやした後はちょっとこの町を散歩してみましょう。
そう、これが本来の番組なんです。
さて、酒場の前の道がどうやらこの町のメインストリートのようですね。
左右にいろんなお店があります。
…えーと、本屋さん、床屋さん、服屋さん、レストラン……!!
そう言えばお腹が減ってました。
レストランで何か食べましょう!
何かおいしそうなものは…。
…誰もいませんが……とりあえず、すわって店員さんが来るのを待ちます。
…………………………
…………………………
……………あっ、おじさんが来た!
料理の乗ったお皿を持ってますが………えっ、テーブルに置いていきました!
まだ、注文してないのに…。
ーあの~、まだ注文してませんが…?
「あんた、腹減ってんだべ?…ここはレストランだから来た人に食いもんだすの当たり前」
ーだから、何を食べるかまだ決めてないんですが…?
「…???食べるもの、これしかないべ。選択の余地なしだべ」
どうやら、メニューはこの料理しか無いようですので、ここは素直に食べた方がよさそうです。
豆の煮ものとパンです…固いパンです。
豆はチリビーンズでしょう。
…うん、味は悪くないです。
……………ふ~っ、おいしかった。
さて、お腹もふくれたし町の紹介を続けますか…。
「…お金、置いて行くべ」
えっ!スタッフがちゃんと……
…なに…お金がない!!
……!!
私も財布がないわ!
……ひょっとしてライダーたち?!
真面目で健康的だって思ったのに盗人だったのね…信じられない!
…でも、もういないに決まってるわね…。
…どうしましょう?
この辺じゃ、銀行もなさそうだし…。
「警察行くべ!」
ーいや、ちょっと待ってください。働きます、ここで働きますからかんべんしてください。
…という訳で食事代が稼げるまでこの店で働くことになりました。
街角散歩どころではありませんのでこのへんで失礼します。
つづく
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世界街角散歩
バラの国
その1
さあ始まりました「世界街角散歩」の時間。
今回はお待ちかね、バラの国を紹介します。
案内役は私、ローラでお送りします。
まず、バラの国と言うと皆さんは何を想像されます?
古い街並み、オシャレできれいなお店、美しい自然の中を流れる運河、花が咲き乱れる広大な庭園…。
そう…それらすべてがこの国のイメージなんですが、この番組は街角散歩ですのでまずは古い街並みをご紹介しましょう。
…今、私が立っているのは旧市街地の外れで、ここから西へ行くと城門がありその外が新しい商業地区です。
逆に東の道を行くと有名な寺院があります。
北は山が迫っており、南には迷路のような市街地が広がっています。
まずはその迷路へ踏み込んでみたいと思います。
…狭い道に人があふれているようです。
まず最初に目に入るのは…パン屋さんです。
おいしそうなパンがたくさん並んでます。
お腹も減ってるので1つ買って行きます。
ー何かおすすめのパンはありますか?
「いらっしゃい!今日のおすすめは……今日のおすすめは……今日は………おすすめは……………」
ーあの~、おすすめが無かったら何でもいいです。あっ、そこのクロワッサン1つ下さい。
「そうそう、クロワッサン…これおすすめです。どうもありがとうございます」
…なんか信用できない店員さんでしたがパンはおいしそうです。
さっそくいただきま~す。
う~ん、さすが本場ですね、おいしいです。
…さて、次のお店は…!
なんか、かわいいお店が見えてきました。
あっ、おもちゃ屋さんです!
ウィンドウにはかわいいお人形がたくさん並んでます。
ちょっと入ってみましょう。
…おもちゃ屋さんへ入るときってなんかワクワクしますよね~。
「イラッシャイマセ…イラッシャイマセ。…ヨウコソ…オモチャノクニヘ…」
わっ、…木の人形だと思っていたのが二足歩行のロボットでした。
…う~ん、よくできてますね~。
……ん……んん……!
………あれ……なに……!!
「そんなに見ちゃダメです」
わわっ!
人間です…このロボット…人間です!!
い、いや…この人、人間…いや…。
「そんなにパニくらなくても大丈夫です。私はこの店の主人です。…どうです、よくできてるでしょう?」
…あ~びっくりした…。
確かによくできてます。
ロボットとまちがえる所でした。
でも、それなら無精ヒゲはそった方がいいですよ。かなり不気味ですから…。
「そうなんですが、最近お客さんが多くて忙しかったもんでね。ついついヒゲをそるの忘れてました。ロボットにヒゲが生えてたらそりゃ気味悪いですよね、ハッハッハッ…」
「こらっ!またそんなことして遊んでる!!ちゃんと仕事しなさい!」
あらら…また新たな展開!
奥から髭のおじさんが出てきた!
……この続きは次回、お楽しみに!
つづく
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世界街角散歩
バラの国
その2
さて、「世界街角散歩」の時間ですが、今回はバラの国の続きを前回同様ローラがお送りします。
…おもちゃ屋さんの主人が人形に変装していた、ようなのですが、また、新たな人物が登場しそうです。
「いや~、おどかしてすいません。イタズラ好きなもんでね…。…こら、あっちへ行ってなさい」
ーあの~、あなたは?
「あっ、申し遅れました。私はこのおもちゃ屋の主人、クレオです。…どうぞよろしく」
ーえっ、あなたがご主人?じゃあ、この人は?
「これは私が作った人形でしてな…いたずら好きで困っております。すぐ、お客さんをおどかして…」
ーい、いや、これは…この人はどう見ても人間ですよ!よく見てください…無精ヒゲが…。
「…そう、よくできておるでしょう。どこから見ても人間なんですが実は私が作った人形なんです」
ーいや、それは信じられませんよ。…だって、この顔………!?
「こらこら、またわしのまねをしとるな!…ホントにしょうのないヤツらじゃ。いやぁ、おどろかせて申し訳ない」
わわわっ!!またヒゲのじいさんが出てきた!
…で、またきっとここの主人なんですよ~。
「こいつは私が作った人形でしてな…いたずら好きで困っております。すぐ、お客さんをおどろかせて…」
…なんだか頭が変になりそうです。
このお店はこれくらいにして
次の店へ行きましょう…。
「あっ、もうおかえりですか?」
「もう、おかえりですか?」
「おかえりですか?」
…3人とも人間なんですよ。
きっと主人の兄弟が集まっていたずらしてるんです。
でも、よくできたロボットだと考えた方がすっきりしますよね。
もし、3人とも人間で、しかもいたずらしてるんじゃないとしたら…
…すごく不気味ですものね~。
さて、気を取り直して、次の店へ行きましょう。
…ちょっとノドがかわいてきましたね。
ちょうどカフェが見えてきました。
おしゃれなお店です。入ってみましょう。
「いらっしゃませ、どうぞこちらへ…」
マスターがカウンター席をすすめてる…。
…ん、かなりのイケメンマスターです。
カウンターにすわります。
「何にいたしましょう?」
ーノドがかわいてるんですが何か冷たいものでも…。
「……少々お待ちを…」
口数は少ないけど、目はじっと私の方を見ているわ。
…なんて情熱的な目なんでしょう…。
「…お待ちどおさま…」
ああ~、まだ見てる~。
あんな目で見られたら…。
今日はもうおしまいにします。
じゃあ、さようなら…。
つづく
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世界街角散歩
トロピカルの国
その1
ハーイ、「世界街角散歩」の時間で~す。
私が案内役のライラです。
みなさん、覚えてくれてますか~?
あのシルクロードの国でさんざんアホ呼ばわりされたライラです。
私、アホじゃありませんからね。
今回はトロピカルの国をちゃんとご紹介します。
ではさっそく参りましょう。
今、私が歩いているのはリゾート地区の海岸通りです。
左手には海が広がり、道路の右側には高級ホテルが立ち並んでいます。
そして、しばらく行くと…。
ダウンタウンの方へと続くわけですが…そろそろ道の両側に土産物屋さんが見えてきました。
さすがは高級リゾート地ですねぇ~。
世界の有名ブランドのお店なんかもありそうです。
…ん、アイスクリームの屋台が出てます。
さすがはトロピカルの国、カラフルな色のアイスがたくさんそろってます。
ーねえ、青いのと黄色いのください。
…ちなみにそれって何の味かしら?
「…ミントとバナナ」
店員さんの愛想はよくありませんでしたがアイスの味は最高です!
さて、どこかおもしろいお店は……。
…あっ、民族衣装のお店がありますね。
おもしろそうなので行ってみましょう。
ネイティブの人がやってるお店です。
ーこんにちは、ちょっと見せてください。なかなか、おもしろい服ですが、この国の民族衣装ですか?
「はい、この国に古くから伝わる民族衣装…あなたにはこの赤いのが似合いますね」
ーあら、そうかしら…。ちょっとハデなような気がするけど……こっちの青いのはどうかしら?
「青いのは似合わない。あなたには赤いのが似合います。あなたとってもスタイルいいです。スタイルいい人は赤いのが似合います。あなた、この服着て歩いてたらみんな振り返ります」
ーあららら、ほんと?じゃあ、買っちゃおうかしら…。
「この服、他では売ってません。全部手作り、オリジナル品です。ここで買うのはいい判断です」
ーじゃあ、買いま~す。
「はい、お買い上げ!ありがとうございます。せっかくですから、ここで着替えては?」
ーえっ…そうね、これ着てレポートしたらテンション上がりそうね。じゃあ、そうするわ。
…という訳で、一着買っちゃいました。
真っ赤なきれを一枚巻いただけのかなり派手な服です。
着替えてから気づいたのですが背中ががら開きなのです。
確かにみんな振り返ります。
…なんか、うまく乗せられたみたいですが今更気づいても遅いですよね。
私っていつもそうなんです…。
さて、気を取り直して…そうだ!
海でも行きましょうか…。
エメラルドグリーンの海を見たら気分もさわやかになるでしょう。
つづく
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世界街角散歩
トロピカルの国
その2
ハーイ、「世界街角散歩」の時間で~す。
私が案内役のライラです。
今回も引き続きトロピカルの国からお送りしま~す。
…で、海へやってきました。
白い砂浜が何キロも続くすばらしいビーチです。
ここなら私の服も目立たないですね。
では、ちょっと水着姿のカップルにインタビューしてみましょう。
…観光客っぽいですが…。
ーちょっといいですか?今日はお二人でバカンスですか?
「そう、今、デートの真っ最中。…で、なんか用?」
ーへぇ~、デートですか…いいですね~。彼女とはもう長いんですか?
「今朝会ったばっか。…で、なんか用?」
ーあ、そうですか。じゃあ、初デートって訳ですね?
「…ワケわかんねぇ…。…で、なんか用?」
ーい、いえ、特に用はありませんからこれで失礼します。
おジャマだったみたいですね…。
…よく見ると周りはみんなカップル!
ひとりで歩いてるのは私だけみたいです。
おもしろくないので、港の方へ行ってみましょう。
船がたくさん見えてます。
「ネエチャン!クルーズ…どう?」
ん、なんかいきなり高級リゾート地に似合わない言葉が飛んできましたが……ここは港の船着き場です。
「ネエチャン、どこ見てんの!こっちこっち…桟橋の方よ。白い船の上…」
…白い船って…あ、あそこの船の上で小さいおっさんが手を振ってます。
きっと、あれです。
ーこんにちは~、おじさんの船ですか?
「ああ、オレの船だ。ちょっとのってみんかね?」
ーはい、じゃあちょっと乗せてもらいま~す。
おもしろそうなので、ちょっと船の中を
見てみたいと思います。
…よく見ると小さなおんぼろ船ですが…。
「せっかくだから、港一周クルーズ…大丈夫、港の中は揺れないから…。じゃあ、出航~」
い、いや…ちょっと…。
桟橋を離れていく…。
まあ、おもしろそうだから、いっか…。
「せっかくだから、ちょっと沖出てみるか?…なに、今日は波がないから大丈夫。海の上は気持ちいいよ~!」
…なんか、この船で沖に出るのは不安ですがもうすでに遅いようです。
船はどんどん沖に向かってます。
…ん、なんか雲行きが怪しくなって…!
雨が降って来ました!波も高くなってきました!
おじさん引き返しましょう。このままじゃ、ヤバいですよ。嵐が来そうです!
「………大変…大変……。舵が壊れた!もう、戻れない…」
な、なにーっ!!じゃあ、どうすんのよ!?
船はどんどん沖に流されてるわよ!!
「…わしゃ、船乗りじゃ。海で死ねれば本望じゃ!」
ア、アホなこと、言わないでください!私はどうなるんですか!!
「…運が良ければ、どこかに漂着する。祈るしかない…」
……………と、いう訳で、みなさんともお別れです…ありがとうございました。
つづく
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世界街角散歩
氷の国
その1
はい、「世界街角散歩」の時間がやってきました。
今日は氷の国を紹介致します。
この国の案内役は私、リーラです。
宜しくお願い致します。
さて、氷の国ですが……寒いです。
とにかく寒くてたまりませんのでどこか入りたいと思いますが…。
…この辺りは民家しかないようです。
道にも人影はありません。
とりあえず民家を訪ねてみましょう。
ーこんにちわ~。すいませ~ん、ちょっと入れてもらえませんか?
「ほ~い、ちょっと待ってろ。今、開けるから…」
ああ、良かったです。
中に入れてもらえそうです。
とにかく温まらないと…。
「はい、どうぞお入り。…んで、何かご用か?」
ーちょっと寒かったもんで…い、いえ、実は「世界街角散歩」と言う番組でこの国を紹介しているんですが…。
「ああ、旅番組ね。こんな遠いところまでご苦労さん。んで、何を紹介するね?」
ー街角散歩ですから、おもしろいお店や施設なんかがあれば紹介したいんですが…どこかごぞんじでしょうか?
「…店っつっても、雑貨屋が1軒あるだけで、施設なんてなんもない……そう言えば研究所があったけな…。
ー研究所…ですか?
「おう、海洋生物研究所ってのが最近できたんだな。そこへ行ったらどう?」
何もないのなら仕方ないのでそこへ行くことにしましょう。
研究所内なら温かいでしょうから…。
「研究所行くなら、送って行ってやるが…どうする?」
ーあっ、ぜひお願い申します。送ってもらえるなら、ラッキーです。何しろ寒いですから…!?
…ト、トナカイ…そり…!!
「さあ、乗った乗った!研究所までひとっ走り!」
…無事にたどり着けるかどうか…きっと、研究所に着くころには冷凍人間になってます…。
「さあ、しゅぱ~っつ!」
ひえぇぇぇ~~~~!!
顔が凍る…痛い…死ぬ~~~!!
………………………
………………………
…………………………ふうぅ~。
何とか海洋生物研究所に着いたみたいです。
トナカイさんありがとう。
おじさんもありがとう。
では、さっそく中に入ってお話を聞きたいと思います。
広報担当の方がいればいいのですが…。
「はい、いらっしゃい。見学の方ですか?私がご案内します」
まるで連絡ができていたみたいにタイミングよく案内係の方が出てこられました。
「私はこの研究所の所長、イゴールです。ここには私しかおりませんので私が案内します」
ーあっ、そうですか。じゃあ、よろしくお願いします。
つづく
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世界街角散歩
氷の国
その2
はい、「世界街角散歩」の時間がやってきました。
今日は氷の国の続きをお送りします。
案内役は引き続き私、リーラです。
宜しくお願い致します。
それでは海洋生物研究所の紹介です。
研究所の所長自ら案内してくれるそうです。期待しましょうね。
「それじゃ、まずこの国の海洋生物を紹介しましょう」
ーお願いします。…研究所の中に飼育施設があるんですか?
「いや、そんなものはありません。研究の中心はフィールドワークです。実際の生態を見に行くのです」
ー見に行くって…外へですか?この寒いのにまた外へ出るんですか?…今度こそ死んでしまいますよ。
「大丈夫、すぐになれます。とっておきのダウンコートもお貸しします。これを着てれば温かいです」
ーありがとうございます。ダウンコートはすっごく温かいです。助かりました。
「では、参りましょう。まずはこのすぐ先の岬まで行きましょう。セイウチが見られます」
野生のセイウチが見られるそうです。楽しみですね。私も初めてです。
…と、言っているうちに岬につきました。意外と早かったですね…!!
わっ、すぐ下の海岸にセイウチが…!
「どうです、すごいでしょう!ここの海岸はセイウチのハーレムなんです。数百頭はいると思います」
本当にすごいです。寒さをこらえて来たかいがありました。
…これからも期待できそうです。
「さて、次はホエールウォッチングです。この辺の海にはこの季節、クジラがたくさん集まってくるのです」
へぇーっ、クジラも見たいです。
…でも、まさか…!?
「さあ、行きましょう。この下にボートが留めてありますからすぐに行けます」
や、やっぱり…ボート…この寒い海に…絶対死んでしまいます。
ここは拒否するべきでしょう。
先週も1人行方不明になってますからね。
クジラよりも命が大切です。
ーあの~、私、ボートは苦手なんです。できたら、岸から見たいんですが…そういう訳にはいきませんか?
「…そうですか、岸から見るならちょっと遠いですが、トナカイでなら2日で行けます…どうですか?」
ーやっぱり死んでしまいます。…クジラは諦めます。何か他の生物は見られませんか?
「シロクマはどうですか?すぐに見られますよ」
ーえっ、そうなんですか?!シロクマ見たいです!
「…じゃあ、静かに後ろを振り返ってください。そして、一目散に研究所へ逃げてください。
……えっ、後ろって…もしかして…
…ひえぇぇぇ~~~!!
ちょっと待ってよ~、おいて行かないで~!
とりあえず、今回はこれでおしまいで~す!
ガオォォォ~~!!
終わり
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伝説の料理人を追う!

曜日番組名備考追加
伝説の料理人を追う!編集
伝説の料理人を追う!
第1回
「皆さん、こんにちはー!
いよいよ始まりました新番組、『伝説の料理人を追う!』の時間です!
10年前に起きた悲劇…
『チャーハン事変』によってひっそりと身を隠した、料理界の英雄!
ある者は涙し、ある者は歓喜にふるえた伝説のチャーハンを生み出した張本人!
チャー・ハン!!
その究極チャーハンを食べた者は、二度と他のチャーハンを食べられなくなったといいます…。
なんということでしょう!
当番組では彼の足跡をたどり、もはや伝説となったそのチャーハンを食してみたいと思います!
レポーターはこの私、ベニテレビ新人アナのサバ山ミソ子が務めます!
ではでは、また来週~!
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伝説の料理人を追う!
第2回
「皆さんこんにちはー!
『伝説の料理人を追う!』の時間です!
伝説の料理人、チャー・ハンを探すため、私はここ、サクラの国にやってきました!
でも、どうやって探したら……
…え? スカイダイビング?
……。
え~、ディレクターによりますと、なんと空から探すことになってるようです!
そんなバカな!
…放送2回目にしてすでに手詰まり感のあるこの番組ですが!
イヤと言えないのが新人アナの宿命です!
では、さっそくスカイダイビングの準備にとりかかりたいと思います!
みなさん、無事を祈ってて下さいね~!
……えっ、もう時間なの?
わぁ、ざんねーん! 続きは来週に!
では皆様、ごきげんよう~!」
編集
伝説の料理人を追う!
第3回
パラパラパラパラ
「皆さんこんにちはー!
『伝説の料理人を追う!』の時間です!
えー、私は今、ヘリで空の上に来ています!
スカイダイビングしながら、伝説の料理人の足跡を見つけろとの命令なのです!
正直に申し上げますと、このままヘリで上空から探したほうがよっぽど効率がいいと思いますが!
ディレクターがうるさいのでね!
さっそく飛んでみようと思います!
えーい、ままよ!!
えぃやぁああああ!!!!!
ジャーンプ!」
ひゅううぅぅぅぅぅぅぅ……
ビュオオオッ!!!!
「飛び降りたそばから
なんか突風来たあぁぁぁぁ!!!
流されてますよぉぉぉぉぉ!?
いやぁああああああああ!!!
……アッーーーーーーー!!!
というわけでえええええ
来週まで私の無事を
祈っていてくださーーーーい!!」
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伝説の料理人を追う!
第4回
(前回、スカイダイビングで空から伝説の料理人の足跡を探したミソ子アナ。
しかし、強風にあおられどこかに飛ばされてしまった。彼女は無事なのだろうか……)


バリバリッ!ドサっ!
「……お茶の間よ!私は帰ってきた!
はいっ、というわけで私は生きています!本当によかった!
ところで、ここはどこなんでしょうか?怪しい森の入り口のようですが…
本来の着地点がもはやみえないぐらい遠くに流されてしまったようです!
キョロキョロ…
「あら? あんなところに看板があります!えーとなになに…」
『ココカラタチサレサモナクバイノチハナイヨ伝説の料理人』
「…怖っ!! 怖すぎるよ!しかも語尾が微妙に優しいのがよけい怖いんですけど!
ていうか、これは……まさか、この森の中に伝説の料理人がいるということでは……!?
えーーー!!!こんなことってあるの!?超ラッキーじゃーん!!
えー、お茶の間の皆さん、これは断じてヤラセじゃありません!!
スカイダイビングで降り立った場所は、偶然にも!伝説の料理人が住まう森だったようです!
ということで次週!!恐ろしい森の中に入ってみたいと思います!こうご期待!!」
編集
伝説の料理人を追う!
第5回
「さあ! 今回も始まりました、『伝説の料理人を追う!』の時間です!
ワタクシたちは、ついに伝説の料理人が住む森の中に足を踏み入れました!
伝説の料理人は見つかるのでしょうか!?記念すべき第一歩を…」
ガコッ
「えっ、今何かをふんづけ」
バガンッ!!
ディレクター「ぉわっ!!!」
ひゅーーん………
ディレクター「わあああぁぁぁー…………」
「えええええっ!!ディレクター!!!!!
な、なんということでしょう……!ディレクターが…落とし穴に落ちてしまいました!!
ディレクター!!聞こえますかーー!!!」
「………」
「……」
「ディレクター…ムチャぶりも多かったけどあなたのこと、尊敬していました。私、あなたのぶんまでがんばりますね…!」
ディレクター「やめろー!まだ生きてるよーーー!!!」
「あれ? 無事だったんですね!」
ディレクター「当たり前だろ! でも自力じゃ出られん、助けを呼んできてくれないか!?」
「わかりました、待っててください!」
「というわけで今週はここまで!尺は守らなくちゃね!さようなら~!」
編集
伝説の料理人を追う!
第6回
「さあ! 今週も始まりました、『伝説の料理人を追う!』の時間です!
前回、私たちのディレクターが落とし穴にハマるという大マヌケ…もとい、不幸な事故にみまわれました!
とりあえず、助けられそうなものを探さなくちゃいけません!!さっそく…」
ガゴッ
「えっ」
バゴォォォン!!!
「ぎゃあああああああああ!!!!!
またなんかふんじゃった!!空からカゴが降ってきたああっ!!もうイヤッ!」
「ウッホッホ……」
「な、何か声が聞こえるんですけど……」
「ウホホーイ……オホホーイ……」
ガサガサッ!
「ウホホイ!」
「ひぃええええええぇぇぇぇぇぇ!!!
な、なんと、この森の住民の方々(?)が現れました……!!
しかも、手には大きなナタを!ナタを持っています!!
……あれかな、ひょっとして私たち、絶体絶命的な?
…つづくっ!!」
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伝説の料理人を追う!
第7回
「えーと……皆さん、こんにちはー…『伝説の料理人を追う!』の時間です…。
前回、森の中で現地の方々につかまってしまいまして…今目の前にいらっしゃるのは長老さんらしいです…」
長老「よそ者よ、何しにきたのだ?」
「あっ、どうやら言葉は通じるようです!お願いです助けてください、怪しいものじゃありません!!」
長老「よそ者はこの森に入ってはいけない。なぜ入った!?」
「ひぃぃぃぃ! ナタを!ナタをちらつかせないで!!」
長老「よそ者、この森にいらない。お前の荷物をよこせば見逃してやろう。とっとと去れ」
「(皆さん、どうやらイノチだけは助けてもらえるようです……!)」
長老「……いや、待て。お前の荷物に入っているこれは、ひょっとしてナタじゃないか!?
これは…美しい…なんと美しいナタだ!!」
「えっ!? いやあの、それナタじゃなくて包丁なんですけど…」
長老「ナタには神が宿っている。それを持つお前たちは、ひょっとして、神の使いか?」
「はぁ……?」
長老「神の使いなら、もてなさなくては!おおい、お前たち、うたげの準備だ!」
「えええええ!!!!
…ということで皆さん、なんだかよくわからない展開になってきましたが!
次回! 謎のうたげ!お楽しみに~!」
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伝説の料理人を追う!
第8回
「皆さんこんにちは~!『伝説の料理人を追う!』の時間です!!
いや~前回は、番組どころか私の人生の危機でしたが!!
私の荷物に包丁が入っていたおかげで九死に一生を得ました!
なんでも、ナタはこの森の人にとって聖なるアイテムだったそうで…!
まあ私のはナタじゃなくて包丁なんだけど…細かいことは気にしません!
そして今日は宴会を開いてもらってます!ありがとうございます、長老さん!」
長老「神の使い、我ら、もてなす。ささ、神の使いよ、この料理を献上します」
「やーしかも、特別な料理まで作って頂いて………って、えええっ!!!
こ、これは……これは、チャーハンです……よね?」
長老「この料理は、神が我らに下さったもの。この森ではチャーハン、特別な料理」
「あー…長老さん。あなた方の神様というのは、もしかして…」
長老「神の名前、チャー・ハン」
「やっぱりーー!!!!
まあぶっちゃけ、包丁(ナタ)を神の道具とあがめてる時点で予想はできてましたけどねっ!
ということで今週はここまで!次回をお楽しみに!!」
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伝説の料理人を追う!
第9回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
なんと、ここの住人の皆さんは、私たちの探しているあの!
伝説の料理人チャー・ハンを神とあがめていたんですねー!
長老さん、あなた方はチャー・ハンに会ったことがあるんですか!?」
長老「さよう。かつて、我が村がひどい食糧難にみまわれたときのことだ。
ふらりと立ち寄ったチャー・ハン神が私たちを救ってくれたのだ…
見たこともない材料と調理器具を使って、さっそうと作り上げて下さったその料理こそ、チャーハン!」
「な、なんと…」
長老「その後、この森の奥深くにレストランを作るといって出て行かれた……
もしも材料を持ってきたなら、またチャーハンをふるまってやろう、とそう言い残してな……。
あなた方がチャー・ハン様に会いにゆくなら道中で3つの宝箱を探すが良い。
中に、チャーハンにかかせないという伝説の食材が入っている」
「で、伝説の食材って…魔王倒しに行くんじゃないんですから…
…でも! わかりました!ありがとう長老!
では、次回からついに目的地へ向けて出発したいと思います!」
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伝説の料理人を追う!
第10回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
さて!ついに伝説の料理人の手がかりをつかみましたよ!
まずは長老さんの教えどおり、隠された食材探しに出発したいと思います!」
??「おぉ…い……」
「ん?なんでしょう、なんだか聞き覚えのあるような…そう、つい最近聞いた声で…
って、ああぁぁ!!! ディレクター!そういえば…落とし穴に落ちて、それっきり……!!」
ディレクター「おおーい!! ミソ子!!」
「ディレクター!!無事でよかったです!!」
ディレクター「よかった、じゃねぇよ!よくもオレを見捨ててくれたなぁ…」
「なっ、違いますよ、人聞きの悪い!!あのあとすぐにナタ族に捕まっちゃって、私も大変だったんですから!
でもディレクター、ひょっとして自力で脱出したんですか?」
ディレクター「そうさ、自力ではい上がってきたんだ。いつまでたっても助けが来ないから…」
「すすすすすみませーん!!無事で本当になによりでした!で、では気を取り直して…
来週こそ!食材を探しに行きましょう~!」
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伝説の料理人を追う!
第11回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
さて、私は今チャーハンの具材を求めて森を探検しています!
ん、怪しげな洞窟がありますよ!入り口に看板がかかってますね、なになに…」
『ネギの洞窟』
「見ましたか皆さん!間違いなく、この中にネギの宝箱があるはずですよ!
さっそく入ってみましょう…あっ、宝箱です!宝箱がありますよ!
その横には…これは、ガチャガチャでしょうか?あ、また貼り紙が貼ってありますね…」
『この宝箱を開けたくば、ガッチャガチャにてカギを手に入れるべし』
「ガッチャガチャって…いや書き間違いでしょうけど…そのせいで妙にきたならしい言葉に感じますね…
まぁ、とりあえずやってみますね!コインを入れて…っと」
ガッチャガッチャガゴンッ
「さあ、中身はどうでしょうか…!?この続きはまた来週!お楽しみに~!!」
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伝説の料理人を追う!
第12回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
さて、ガチャガチャの中身は何でしょうか…?カギが出ればアタリなのですが!」
パコッ
「おおお…!!カギが入っています!!まさかの一発です!!
なんと商売っ気のないガチャガチャ!アタリのカプセルを出口のほうに入れちゃダメなのにねぇ~!
…なーんてついついオバチャンのような発言をしつつ…よーし、ではさっそく宝箱を開けてみましょう!」
ガチャリ…ギィィィ…
「おおっ!!!!ネギ、ゲットだぜ!!!
ついにやりました、伝説の食材の1つ目を入手しましたよ!
あっ、宝箱の中はクーラーボックスになっていますね! これでネギの入った宝箱でも傷まず安心、そういうわけですね!
よーし、じゃあこんな洞窟はさっさと抜けだして、2つ目の食材を探しに行きましょう~!
それでは今週はこのへんで!また次回!」
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伝説の料理人を追う!
第13回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
前回は無事に伝説のネギをゲットした我々ですが、今週は2つ目の食材を探したいと思います!
あっ、あんなところに滝がありますよ!しかも名前が…『チャーシューの滝』すっごい名前ですね…
しかし、この滝はけっこう本気ですごい迫力です!これは圧巻!!
例によって、看板の下に説明があります、読みますね…」
『滝ツボの奥深くに、チャーシュー(ツボ漬け)が眠っている…手に入れたくば、もぐって取るが良い』
「えーーー!!ムリムリ、絶対にムリ!!
ナタにもひるまなかった我々ですが、ついにロケ中断の危機が…
あ、まって下さい、下にただし書きがついていますよ!なになに…」
『あるいは、このあみだくじを引くが良い。アタリの1本のみ、宝箱に通じている』
「おお! 救済処置ですね!じゃあエンリョなくこっちで!
というわけで、次回をお楽しみに!」
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伝説の料理人を追う!
第14回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
あみだくじを一本だけ引いて、チャーシューゲットなるか!?
まあ、ダメだったらまた引けばいいだけなんですけどね! ではさっそく!」
グイッ!
ゴゴゴ…
「おお…!滝ツボの水か引いていきます!
川だと思ったら、巨大なプールだったようです!
プールの底にはなんと!またしても宝箱が!!
みごと、チャーシューゲットだぜ!
…ちなみに、他のあみだを引いていたらどうなったのでしょうか?」
グイッ ガコン!
「…ん? あああーーーっ!巨大な石が! こちらに迫ってきてます!ににに逃げなくちゃ…!
あ、また来週! さよなら~!」
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伝説の料理人を追う!
第15回
「はぁ、はぁ……皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です…!
ひぃ、ひぃ…転がる巨石から、どうやら逃げ切れたようです…ここはどこでしょう…あっ!
『たまご神殿』と表札がついた神殿がありますよ!
ということは、ここで最後の食材を入手できるんですね!!
……こんなご都合主義的な展開でいいのでしょうかね?
まあとにかく、入ってみましょう…」
ギィ…
『よく来た!我はたまご神殿の主…』
「ひぃぃぃっ! な、なんか黄金の像がしゃべってますけど!」
『たまごが欲しければ、我が出す問に答えよ!』
「って、こっちのこと無視して話してるし…まあいいか! さあこい!」
『それでは、問題だ。うまれたらこわれるもの、なーんだ?』
「………………
…取りようによってはすごーく意味深な問いかけですが…!
さあ、果たして正解なるか!?続きは来週! お楽しみに~!!」
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伝説の料理人を追う!
第16回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!」
『さあ、答えよ!うまれたらこわれるもの、なーんだ?』
「まあ、たまご神殿ですからね…答えは『たまご』です!
『…………正解!!!!』
「わーい! やりました!」
『ほうびに、このたまごをくれてやろう!』
ガゴンッ
ギュイーーン
「おおっ、黄金像のアゴがのびて、口の中から宝箱が出てきましたよ!」
ガチャッ パカッ
「やった!たまご10個パックゲットです!
やりました、ついに伝説の食材をすべて集めきりました!」
『よくやった! お前の心は本物だ!さあ、我の口の中を通れ。
ここから、神殿の外に出られる。
神殿を出てまっすぐ行けば、伝説の料理人の店があるだろう』
「ええー! 何ということでしょう!
黄金像の口の中は、伝説の料理人のお店につながっていたんですね!
ということで、次回! いよいよ、伝説の料理人のお店に向けて出発します!
また来週~!」
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伝説の料理人を追う!
第17回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
私たちはいよいよ、伝説の料理人のお店に
向かって歩いています! 黄金像によるとこの先にお店があるそうなんですが……
ああッ! ありました、見つけました!
ほら、のぼりがたっていますよ!
『伝説の料理人の店』!
ついに見つけました!ここまで長かった…!」
ガラガラッ
「こんにちはー!…あれ、誰もいない?」
ディレクター
「とうとう、ここまで来ちまったか……」
「ん? どうしたんです、ディレクター?」
ディレクター
「よく聞け。お前の探しているのはオレだ。
このオレこそが、チャー・ハンなのだ」
「……なんですってーーーー!!!
…つづく!」
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伝説の料理人を追う!
第18回
「皆さん、こんにちはー!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
なんと前回、この番組のディレクターが
チャー・ハンだと、謎のカミングアウトをされてしまいましたが……
ディレクターがチャー・ハンだなんてうそですよ、だってあなたの名前は
フラ井エビ蔵のはずじゃ……」
ディレクター
「それこそが、チャー・ハンの本名だ。彼の正体は小さなテレビ局のディレクター。
とある料理番組で、大御所の料理人がドタキャンしてな…
番組に穴を空けるわけにはいかないからオレが伝説の料理人チャー・ハンと名乗り
マスクをして番組に出た。
ところが、作った料理がうますぎて、食べたやつらは二度と普通のチャーハンを
口にできなくなった…
きっと名のある料理人が作ったのだとうわさがうわさを呼び、伝説として一人歩き
していったのさ…」
「な、なんですって…じゃあ、チャーハン事変というのは…」
ディレクター
「ああ。オレの料理を食べた彼らは二度とふつうのチャーハンを食べられなくなった。
中にはそれを逆恨みしてオレの命を狙うやつらも現れた。その一連の事件を、
チャーハン事変というのさ」
「そ、そんなウソみたいな話が本当にあるんですね……
なんという痛ましい事件でしょう!そして今週はここまで!
来週はいよいよ…?
お楽しみに~!!」
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伝説の料理人を追う!
第19回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です。
ついに、チャーハン事変の真相が明らかになりましたね…」
ディレクター
「まあ、正直いつでもチャーハンくらい作ってやったんだがな」
「がーん! そ、そんな…
じゃあ、空から落ちたり転がる石に追われたりしたこれまでの茶番は一体…」
ディレクター
「茶番って言うな! まあ……お前はいろんな仕掛けにもめげずに、本当にここまでやってきた。
だから、ちゃんとお前の望むものを……チャーハンを作ってやるよ」
「ほ、ほんとですか!?」
ディレクター
「ああ、材料を貸せ。しばらく待っていろ」
トントントントン
ジュー ジュー
「いやー、一時はどうなるかと思いましたが…
初めて料理番組っぽくなってきましたね!
ここまでの流れは完全に冒険活劇みたいでしたからね…!」
ディレクター
「おい! できたぜ!」
「やった! 次週、ついに最終回!
伝説の料理の、試食会です!!」
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伝説の料理人を追う!
第20回
「皆さん、こんにちは!『伝説の料理人を追う!』の時間です!
私たちの旅に同行していたディレクターが伝説の料理人の正体だったという、ベタすぎる展開を迎え……
今、まさに、伝説のチャーハンが完成しようとしています!!」
ディレクター
「へい! おまちィ!」
「おおーっこれが…!!……ん? あの、ディレクター。
このチャーハン、ネギとたまごとチャーシューが見当たらないんですけど……」
ディレクター
「当然だ。伝説になったのは、海鮮チャーハンなのだからな!」
「……は?」
ディレクター
「というか、オレはこれしか作れないんだよね」
「……いや、じゃああの仕掛けはなんだったんですか…
ていうか私の集めたネギやらたまごやらチャーシューやらはどこに行ったんですかッ!!!」
ディレクター
「いやオレもおかしいなーって思ってたんだよ!?オレはあんな大掛かりな仕掛けなんて用意してないし……」
「はぁぁぁぁ!?食材の仕掛け、ディレクターが用意したんじゃないんですか!?」
ディレクター
「オレじゃないよ! たぶん、お前が会ったっていうナタ族が造ったんだろう。
いや~、伝説の食材とやらを回収してたころから、どうもおかしいなって思ってたんだよね~。
きっとナタ族のみなさんは山の民だから海の幸を用意できなかったんだろうなあ」
「……返して……」
ディレクター
「ん…? どうしたミソ子アナ」
「返して! 私が集めてきた食材返して!私のあのムダな労力に対価をよこせえぇぇぇっ!!」
ディレクター
「お、落ち着けってば! まあチャーハン食ってみろよ!! うまいから、な?」
「わかりましたよ!食べてやりますとも!!」
ぱくッ
「………!!ああっ…あああっ…おいしーーーーい!!!!」
(その日以降、ミソ子は二度と他のチャーハンを食べることができなくなったという…)
(こうして、またひとつ伝説が生まれた……)
伝説の料理人を追う!
ー  完  ー
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リリア姫の大冒険

曜日番組名備考追加
リリア姫の大冒険編集
リリア姫の大冒険
~第1話 姫、ジョブチェンジ宣言~
ここは、剣と魔法とあれとそれと何かであふれるボクジョー大陸…。
その中でも、ひときわ大きな国シルバー王国の城の王様の部屋の一角である。
「お父様、どういうことですか!お見合いなんて話…、わたくし聞いていません!」
「落ち着いておくれ、リリア。わしのかわいい一人娘よ。わしはおまえのことを思って…」
「思って、勝手にお見合いを決めたんですね」
「いや、まぁ…そう言うな。わしもそろそろいい年だ。王座をゆずりたい気持ちもある。
しかし一人娘のおまえは少々世間ズレしていて王には向かん。残る方法はムコをもらうしかない。
お相手は、わしの親友でもある隣国の国王の息子、アモー第二王子だ。アモー王子は人柄良く、人望も厚く…
第一王子にも負けないほど優秀で将来有望な王子だと聞く。おまえ、兄妹がほしいと言っていたな。
アモー王子と結婚すれば美形の兄とかわいい妹が二人出来るぞ。ほら、大変な良縁だと思わんか」
「思いません。…大体、わたくしが世間ズレしているというのならお父様がカホゴなのがいけないんですわ」
「わしのせいだとは言い切れん。そもそもおまえは行動力がありすぎる。どこの国に流星群が見たいと言って
城の屋根をてっぺんまでよじ登る姫がいる」「ここにおりますわ、お父様」「……そうだ、おまえしかおらん。
姿が見えない、見えたら屋根の上…城中大さわぎで流星どころではなかった」「…一応、反省はしています」
「反省しているというのなら父の心労を少しは減らしておくれ、リリア。優秀なムコを迎えられれば…
国はあんたい。おまえの突飛な行動も少しはマシになるだろう」「突飛な行動なんて別にしていません」
「…ともかく、見合い話を取り下げるつもりはない。おまえは、わしの娘である以前に…
一国を担うこの国の姫だ。あまり言いたくはないが、これは…国王としての命令だと思ってくれ」
「なるほど、わたくしが姫だからお見合いをしなければいけないと。…わかりました」
「おお、わかってくれたか。よかっ…」「転職させていただきます」「転職っ!?」
「そうです、今決めました。わたくし、今日から勇者になります!」
…姫の突然の転職宣言。青くなる王様。果たして姫から勇者へのジョブチェンジは、可能なのか!?
次回、『第2話 世間ズレ、なう』勇者になるという姫の真意は一体?…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第2話 世間ズレ、なう~
お見合いがイヤで、姫から勇者に転職すると言い出したリリア。
その真意とは…?
「わたくし、常々外の世界と言うものを見たいと思っていましたの。
でも、姫という立場がカンタンに捨てられるものではないことくらいわたくしにもよくわかっています。
それで今まで、ずっと考えてきたのですが…
この立場から、自由の身になるにはもう勇者になるしか方法はないと思うのです。
世間では、一国の姫よりも…世界を救った勇者の方が重宝されますし
勇者になれば、お見合いを強要されることもなければ外の世界を見て回ることも出来ます。
それに最近、ちょうどいいことに、隣国に魔王が現れたという話を聞きました。
わたくし、その話を聞いてとっても楽しそうだと…いえ、大変危機感を持っておりますの。
…というわけで、今からわたくし魔王を倒して勇者になる資格をとってきますので。
どうしても王様が必要というのならそのアホー王子という方を養子にとられてはいかがでしょう」
「アモー王子だ、リリア。本当におまえは人の名前を覚えん…。
大体、養子ですむならわざわざ見合いなど…ただの養子ではわが王家が実質なくなるも同然で…
いや、待て。そういう問題では…!」
「それでは、行ってまいります。お父様ー」
ガチャ、バタン。
「ま、まままま待てっ! 姫が魔王を倒して勇者になるなど…だからおまえは世間ズレしているというんだ!
だれか、わしの娘を止めてくれ!だれかー!!」
…王様の声もむなしく、リリアはまるでピクニックにでも行くかのように、部屋を後にしたのでした。
次回、『第3話 騎士ユウカイ』
勇者は早くも道をふみ外したようです。
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第3話 騎士ユウカイ~
国王である父親の制止もきかず部屋をとびだしたリリア。
追っ手がかかる中無事城から出ることはできるのか…?
「…さて、いろいろと準備をしたかったけれど、こうなってしまっては
仕方がないわね。このまま城を出ましょう。
とはいえ、一人くらい兵力がほしかったわ…。
魔王は四天王を従えているらしいし。
やっぱり、仲間は必要だもの。
後ろにゾロゾロ連れ立って歩きたいわ。
とっても楽しそう」
そんなことを思いながらリリアが門前を歩いていると、いきなり目の前に
…ウマが立っているではありませんか。
「ヒヒーン!!」
「…きゃっ!?」
「あ、あぶないっ!?」
おどろいて後ろにとびのきあわや、転びそうになったリリアをだれかの腕が受け止めます。
「…申し訳ありません。リリア様。わたしの注意不足でした。…おケガはありませんか?」
「大丈夫よ。ありがとう。えっと、あなた確か騎士団長の…」
「ジャスティンと申します」
「ジャスティンね、ありがとう。
……………じーっ」
「…何か?」
「…ねぇ、あなた騎士団長を務めるくらいだもの。
腕には覚えがあるのでしょう?」
「いえ、わたしなどまだまだです。それよりも、供も連れずに一体
どこへおでかけされるつもりですか?」
「ちょっと、魔王を倒しに行こうと思って」
「そうですか。魔王を倒しに……え、今何とおっしゃいました?」
「魔王を倒しに!フフッ、さっそくいい仲間が見つかってうれしいわ。
ジャスティン騎士団長。あなた、わたくしと共に魔王を倒しに行きましょう!」
「は? え? 魔王?」
ジャスティンが困惑する中
遠くから、リリアを追う兵士のあせった声がひびき渡ります。
「リリア様ーーーー!!!!団長、リリア様をこちらへーーー!!」
「…大変、追っ手が来ちゃったわ!このウマ、乗らせてもらうわね。
さぁ早く! あなたも乗って!」
「え、追っ手とはどういう?ちょ、ちょっと待ってくださ…」
「説明は後! 早く!!」
「え、ちょっ、リリア様っ!?」
「魔王退治にしゅっぱーつ♪」
「え……えぇえぇえええええ!?!?」
はいよー、しるばー。
毛色も名前もシルバーではないウマにまたがり、暴走列車のごとく駆けるリリア。
…と、完全に巻きこまれユウカイよろしく連れ立たれた
ジャスティン。この先、どうなる!?
次回、『第4話 リリアの考え』
次回はちょっと真面目なお話!
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第4話 リリアの考え~
馬に乗り城を後にしたリリアとジャスティン。
初めての城下に、リリアは…?
「ねぇ、ジャスティン。ギルドはどこかしら。酒場は?情報収集したいのだけれど」
「わが国にギルドはありませんし酒場は昼間にはやっていません。…魔王を倒すなんて本気ですか?」
「何度も言ったでしょう。本気よ。わたくしは勇者になって自由に生きるの」
「ほかにも方法はあると思います。一度、城へもどりましょう」
「どんな方法があろうと今もどればおしまいよ。もう部屋から出してもらえなくなるわ」
「それは…ですが、魔王は魔法も剣も一流の腕だと聞きます。自由になる前に命のキケンが…」
「ジャスティン、見て見て!あの果物、おいしそうだわ」
「リリア様!」
「命は大切よ。死ぬつもりはないの。でも、このまま言うなりに城で一生を終えるのはイヤ。
だって、それって死んでいるのと同じことではないかしら?」
「…それは」
「それにね、大人しく結婚して新しい王様にまかせていればわたくしは何もしなくていいの?
城下の町の人々の日々の様子も知らないで、形だけの王妃になっているだけで本当にいいのかしら。
勇者になって自由の身になっても国を放り出す気はないのよ。
ただ、姫のままではあまりにいろいろなことが上手くいかなすぎるから…だからいい加減、現状を変えたいの。
…ねぇ、ジャスティン。無理を言っているのはわかっているわ。
それでも、どうかわたくしにチャンスをちょうだい」
「リリア様……」
意外と自分勝…、いやいや周りが見えていなかったわけではなく
真剣に物事を考えていたらしいリリア。
その言葉に、ジャスティンは何を思い、どう答えるのか?
次回、『第5話 キョウハク』
1話おきくらいに不穏なタイトルが。
…こうご期待!
編集
リリア姫の大冒険
~第5話 キョウハク~
勇者になりたいというリリアの割と真面目な本意を知ったジャスティン。
その真剣なまなざしにジャスティンは何と答えるのか…?
「…………そういう言い方は、ズルイと思います。」
ジャスティンは、頭をかかえました。
姫の気持ちはいたいほどわかります。
国のことを本当に思うならば、姫の言っていることは恐らく正しいし協力してあげるべきなのでしょう。
…最終目標が魔王討伐でさえなければ。
「そこまで国のことを思っての行動なら騎士であるわたしに止めることはできません。
ですが…わざわざ勇者にこだわる必要はないはずです。
しばらくの間、見聞を広げるというのなら協力はさせていただきますが
魔王討伐はあきらめて何かほかの方法を探しましょう」
「いーやー」
「子供ですか。前回のしっかりしたあなたは一体どこへ」
「だって、勇者になるのが一番てっとり早くて楽しそうだもの。わたくしギルドや酒場で情報収集したり…
魔王を倒すなんて、前々から楽しそうだと思っていたの!見聞を広げるのは国のためだけれど勇者になるのは単純にわたくしの夢よ」
「姫がそんなキラキラした笑顔で魔王を倒すの楽しそうとか言わないでください」
「じゃあ、ニヤリ笑いで言うわ」
「よけいタチが悪いです」
「もう、それじゃどうすればいいの?」
「いえもう、あきらめてぶらりして城に戻っていただけるのが一番いいのですが」
「わからずやね。もういいです。わかりました!こうなったら…」
「こうなったら?」
「キョウハクするわ」
「キョウハク!?」
…ニッコリ笑顔で勇者志望とは思えない発言をするリリアにぼうぜんとするジャスティン。
リリアの言う「キョウハク」の内容とは!?
次回、『第6話 約束』
約束したら、ちゃんと守りましょう。
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第6話 約束~
城に帰ることを切実に願うジャスティンをキョウハクすると言い放ち、勇者の何たるかが問われそうなリリア。
そのキョウハクの内容とは、一体…?
「…あなたがどうしてもわたくしに城へ帰れと言うのなら帰ってもいいわ。
そのかわり、帰ったら…わたくしは、あなたにそそのかされて勇者になることに決めたのだと城中に吹聴します!」
「はぁ!?」
「そうなれば、あなたは姫をかどわかしたと言われ城どころか国をも追われるかもしませんが…仕方ありませんね。
他人の自由をうばっておいて自分が平和にくらせるはずもありません」
「そ、それは…」
「さあ、選択をどうぞ。ジャスティン騎士団長」
「~~~~~~~っ」
がくり、とジャスティンは地に伏しました。
思えば彼女にユウカイされたあの時から全ては決まっていたのです。
「…ユウカイの上にキョウハク。仮にも勇者を志す人間がやることですか」
「だって、人間だもの」
「…人間不信になりそうです」
「そう? わたくしは、好きよ。家族も民も、もちろんあなたも…。みんな大好きだわ。
だから、わたくしはその全部を守ってわたくし自身のことも好きになるためにこれから、勇者になるのよ」
ニコニコと楽しそうに笑うリリアにジャスティンは苦笑しました。
リリアに一切の悪気はないのです。
「…わかりました。お供します。ですが、キケンだと思ったらすぐにでも城に逃げ帰ると約束してください」
「ええ、善処するわ!」
…こうして、キョウハクされた騎士は勇者になりたい姫の手をとり…。
隣国にいるというウワサの魔王討伐のため国をあとにすることとなったのでした。
……これが、本当の苦労の始まりの一端に過ぎないことも知らずに。
次回、『第7話 初めての(1)』
おつかい、家出、それとも…?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第7話 初めての(1)~
隣国の魔王の元へとウマを走らせるリリアとジャスティン。でもその日のうちに、はい到着とは行かなくて…?
「…困りましたね。隣国での祭りが近いせいか国境付近の宿はどこもいっぱいのようです。
少し戻れば、空いている宿があるかもしれませんが…」
「野宿ではダメなの?」
「野宿なんてとんでもない!」
「でも、宿主の方もこのあたりはケモノも出ないしこの時期は宿がとれず
野宿する人も少なくないと言っていたじゃない」
「そういう問題ではなく、あなたは姫で…」
「あら、そんなことなら気にしないで。わたくしは今、勇者(仮)の身だもの!
それに、野宿なんて楽しそう!勇者と言えば、魔王と聖剣と野宿だとウワサに聞くわ。ビバ野宿よ!」
「いえ、勇者でも宿には泊まると……言ってもムダですね。
わかりました。準備をしてきます。少々お待ちください」
……………………。
「お待たせしました。とりあえず寝袋は用意しましたのでお休みの際はこれを。夕食ですが…」
「狩りね…!!」
「モンスターハンターになりたいのなら止めませんが。もう用意してありますので」
「あら、勇者は狩りをしないものなの?」
「少なくとも、わが国の勇者はそんな血生ぐさい職業設定ではありません。
ジュンスイに、魔王を倒した英雄を勇者と呼びます。とはいえ魔王なんて長く不在でしたから。
はるか昔、そうして勇者と呼ばれるようになった人間がいたという話です。
勇者の正しい定義などだれも知りません」
「そうなの。職業としてしっかり確立していないのなら、ケガした時に労災がおりるか心配だわ…」
「何の心配をしているんですか。いいからさっさと食べてください」
そう言って、ジャスティンはパンとスープをリリアに渡します。
…思えば、昼食を抜いて家を出たので今日何かを口にするのは初めてのことで。
リリアは、空腹を自覚するとあっという間にパンとスープをたいらげたのでした。
次回、『第8話 初めての(2)』
人生初の野宿、今日初めての食事。
つぎの初めては……こうご期待!
編集
リリア姫の大冒険
~第8話 初めての(2)~
初めての野宿で、夕食を囲むリリアとジャスティン。
今回の『初めて』とは一体…?
「この料理は、全部あなたが作ったの?騎士というのは、料理までできるものなのね」
「候補生はみな、宿舎の掃除や料理をするのも仕事のうちですから」
「そうなの…。あ、ごちそうさまでした」
「はい、おそまつさまでした。…ああ、リリア様。良かったら、これもどうぞ」
あっという間に食べ終わりリリアがほっと一息ついていると目の前に、果物が差し出されました。
「これ…」
「城下で気にされていたでしょう」
(あの時…、いろいろと怒っていた割にちゃんと見てくれていたのだわ)
同行すると決め(させ)てからとにかくジャスティンは、リリアをとてもきづかってくれていました。
何だかんだ言って、リリアも自分が箱入り娘であることを自覚しています。
旅に不安がないと言えばウソでした。
けれど、ジャスティンがたくさん助けてくれたおかげで、出発前の不安は、いつのまにかなくなり…。
それ以上に、楽しい・うれしいといった明るい気持ちが頭を占めるようになりました。今も、そうです。
昼間、ジャスティンの話を無視して何気なく言った一言を、彼は覚えてくれていてリリアをよろこばせてくれます。
「ありがとう、ジャスティン」
「いえ、お礼を言われるほどのことではありませんから」
たくさんの気持ちをこめたリリアのありがとうを、彼は果物についての感謝と受け取ったようですが
わざわざ説明するのも何だか気はずかしいので、リリアは何も言わず果物を口に運びます。
「…おいしい」
ナイフもフォークも使わず直接かじる果物の味は、城で食べるそれよりももっとずっとすっぱくて固かったのに
なぜか、今まで食べたどの果物よりもおいしく感じられました。
「良かったです」
ひとりごとのような感想にリリアの反応を見ていたジャスティンはにこりと笑ってそう言います。
その笑顔を見て、そういえば彼の苦笑以外の笑みを見るのは初めてかもしれない…と。
リリアは妙な感動を覚えつつ初めてがたくさんつまった旅の初日を終えるのでした。
次回、『第9話 謎の青年』
とうとう新キャラ登場!?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第9話 謎の青年~
ようやく隣国にたどりついたリリアとジャスティン。
これから二人を待ち受ける運命とは…?
「ここが隣国?魔王がいるなんて思えないくらいとっても、にぎやかね。人がたくさん!
こういう時は何て言うんだったかしら。えーっと…ああ、そうだったわ。『ゴミが人のようだ』!!」
「どこの物語で覚えた知識かは存じませんが、他国民を動くゴミよばわりするのはどうかと。
…このにぎわいは、近く第二王子の誕生祭があるからのようです」
「宿がとれなくなるほどのお祭りってそういうことだったの。
でもおかげで、初野宿ができたんだもの。第二王子生誕に、感謝しなくてはね」
「…万が一、本人を前にしても絶対にそんなことは言わないでくださいね」
「? どうして?」
「…どうしても何も」
あなたがこの日に生まれてくれたおかげで野宿ができました…、なんて。
まともな人間なら祝いの言葉どころか皮肉ととるかもしれませんから。
と、ジャスティンが言おうとしたその時。
「第二王子と野宿が何だって?」
ジャスティンの後ろから明るい声とともにひょっこり銀髪の青年が現れました。
「…!?」
「あのね、第二王子が生まれてきてくれたおかげで野宿…もがっ!」
背後をとられおどろくジャスティンをよそにリリアが問題の台詞をはこうとしましたが
ジャスティンは一拍遅れつつも何とかその口を両手でしっかりふさぐことに成功しました。…が、しっかり話は聞かれてしまったようで。
「ああ、なるほど。野宿組か。しかも、生誕祭には関係ない客と見える。さぞかし王子が憎いだろうな」
「いいえ、憎いなんてとんでもないわ!感謝しているの。宿が空いていたら野宿なんてゆるしてもらえなかったもの」
「そんなに野宿がしたかったのか?」
「ええ、だって勇者になるには魔王と聖剣と野宿が必須…もがもがっ」
あわててもう一度口をふさぐも時すでに遅し。
少年はおどろいて、聞きます。
「え、勇者?ああ、そこのお兄さんがなるの?…かーなーり、強そうだもんね」
「ちがうわ。勇者になるのはわたくし」
「…え、キミが?」
ぽかん、と口を開けてリリアを見る少年。
ニコニコとうなずくリリア。
世間ズレしたお姫様は言っていいことと悪いことの区別がつきません。
そのうち、隣国の姫で家出してきたなんて話までしてしまいそうだな…とジャスティンは頭をかかえるのでした。
次回、『第10話 魔王の倒し方』
そういえばどうやって倒すんだろうか。
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第10話 魔王の倒し方~
通りすがりの青年に野宿しただの、勇者になりたいだのとあけすけに話をするリリア。
頭を痛めるジャスティンはどこまで彼女を制御できるのか…?
「え、キミが勇者?こっちのお兄さんじゃなく?だって、キミ…」
「?」
「いや、うん…。その細腕でどうやって魔王を倒すつもりなの?見たところ、剣も魔法も使えなさそうだけど」
確かにそれはギモンだとジャスティンも思いました。
まがりなりにも、ジャスティンは騎士団長の身なので、剣にはそこそこ自信があります。
けれど、聞いている限りどうにもジャスティンの腕を頼るというよりは自分で倒す気満々なのです。
「えっと…」
二人の視線がじっとリリアを見つめるとリリアは、しばらく考えこんだ後首をこてんとかしげて言いました。
「…………話し合い?」
「まじかー」
予想外の答えに、青年は大爆笑。
ジャスティンはまたもや頭をかかえます。
どこの世界に、話し合いで諭される魔王がいるというのでしょう。
「いくら平和ボケした世界の魔王とはいえ、さすがに話し合いじゃどうにもならないんじゃないかなー。まぁ、基本いい人っぽいみたいだけど」
「え、そうなの?」
「うん。特に何か悪いことしてるってわけじゃないし。むしろ、いてくれていい感じに観光客とか増えてバンザイって感じ」
「まぁ! 魔王は観光大使だったの?では、倒す時は国に許可をとった方がいいのかしら…?」
「それはいらないと思うけど。っていうか観光大使じゃないし。魔王が観光大使っておかしいでしょ」
「悪いことをしていないのにどうして魔王なんて言われているんだ?」
「本人が魔王だって名乗ってるからじゃない?それに、自分の領土に入ってくるやつはようしゃなくこてんぱんらしいよ。
この間も、山賊の頭をぼっこぼこにして再起不能にしたとか」
「自分の家に山賊が押し入って来たらぼこぼこにしたくもなるだろう…」
「まあねー」
…さて、困ったことになりました。
ここに来て、魔王はいい人説浮上。
リリアは、悪者でも何でもないかもしれない魔王を倒し、無事自由を手に入れることができるのか!?
次回、『第11話 作戦』
すでにダメな気しかしない。
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第11話 作戦~
あれ、魔王って言われてるけどじつはいい人なんじゃね?
という話が浮上した前回。
でも、魔王を倒して勇者にならないとリリアの自由はありません。
さて、リリアの決断とは…。
「でも、魔王がどんなにいい人でもわたくしだって人生がかかっていることだし…。
倒されてもらわないと困ってしまうわ。
「ですが、悪くもない魔王を倒しても反感を買うばかりで勇者にはなれないのではないでしょうか」
「そうねぇ…。はっ!こういうのはどうかしら?
ちょっとお話でもどうですかと善良な一般人のふりで領地にふみいって、魔王側に先に手を出していただいて…
こっちは話しに来ただけなのになぐられましたひどい!
…という大義名分をふりかざしとりあえず、魔王の元まで実力行使で特攻するのはどうかしら!」
「とても勇者とは思えないヤ○ザまがいのひれつなやり口に開いた口がふさがりませんが」
「で、魔王にどうか大人しく倒されてわたしを勇者にしてくださいと話し合いを試みてみます」
「領地にふみいって暴れたあげく大人しく倒されろというのはもはや話し合いではなくキョウカツと言うんですよ…。
断られる確率の方が絶対に高いです。そうなったら、どうするんです?」
「実力行使で戦って勇者の称号を力でもぎとるわ!」
「…正義が遠のいていく………」
自分の領地を守って大人しく暮らす魔王と、そこへ来て自分の欲望のためにムチャを押し通そうとする勇者。
ジャスティンの言うとおりもはや、どちらが正義だかわかりません。
というか、結局実力行使になった場合、リリアの非力さでどうやって倒すのでしょう…。
次回、『第12話 謎のドキドキ』
そういえば、この話ってラブでファンタジーだって知ってました?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第12話 謎のドキドキ~
とっても真剣に、勇者らしからぬ作戦を決めたリリア。作戦は本当に決行されることになるのか…?
「勇者が魔王に話し合いをもちかける上に断ったら実力行使…って。
アハハ、面白いこと考えるねアンタ!ああ、でも大義名分はいらないかな。
国王様は、魔王の存在を容認してはいるけど、あつかいには困ってるんだ。権力が通じる相手じゃないしね。
倒したら、ちゃんと勇者の称号をさずけてくれると思うよ。
くさっても魔王なわけだし、今でも勇者になる気満々で動いてるやつらが少なからずいるしね。
うん、いいんじゃない。応援するよ。魔王の居場所の情報は仕入れてる?
城の裏にある大きな森の中。そのどこかにいるって話だから行ってみるといいんじゃないかな。それじゃ、健闘を祈ってるね!」
やっぱり話しかけて良かったなーとか何とか言いながら銀髪の青年はあっという間に祭りでごった返す人ごみの中に消えていきました。
「あら、行ってしまったわ。いろいろ教えてもらったお礼もまだ言っていなかったのに」
「本当ですね。…しかし、リリア様はもう少し相手を選んで話すことを身につけるべきです。
野宿の話に始まり、魔王や勇者なんて、あまり他人にする話ではありません。
それにもし、隣国の姫だとバレれば旅を続けられなくなっていたところですよ。
どんな理由があっても、あなたがわが国唯一の姫君だということは変わりません。もう少し立場を考えてください」
「…わかったわ。確かにそうね。今後、気をつけます」
「…やけに素直ですね」
「言われてみれば確かにちょっと考えなしだったもの。さっきの方、どこかで見たことがあるような気がして…つい親しい気分になってしまったの」
「知り合いにでも似ていたんですか?」
「うーん、どうかしら…フフ、それにしてもちょっと変わった方だったわね。楽しかったわ」
「リリア様ほどではないです」
「…カホゴなお父様のせいで世間ズレしている自覚は多少なりともあるけれど、変わっていると言われるのは、少々心外だわ」
「では、個性的と言うことで」
「まぁ、それはいいわね!」
「いいんですか」
「あら、だって個性的というのは個を尊重する素敵なほめ言葉だわ。それに何の文句があって?」
ジャスティンは、特にほめ言葉として言ったわけではありませんが(もちろんけなしたつもりもありません)
あまりにリリアが素直に、うれしそうにその言葉を受け取るので思わず主従の関係もわすれ、リリアの頭をぽんぽんとなでて言いました。
「リリア様は、かわいらしいお方ですね」
それでは、行きましょうかとエスコートの手を差し出されてリリアは、一瞬反応が遅れます。
「…リリア様、どうかされましたか?顔が赤いような」
「……っ、いえ! 行きましょう!」
リリアは、ジャスティンの手をとらずに両ほほへと手を当てた状態で足早に歩き始めました。
(あ、あんな顔でも笑えるのね!というか、何かしらこの変なドキドキは…うぅ…胸がくるしい…病気?)
謎のドウキにとまどいを覚えつつ今日もリリアは間違った勇者道をつきすすむのでした。
次回、『第13話 四天王・セバス』
とうとう四天王の一人と対決か!?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第13話 四天王・セバス~
通りすがりの銀髪青年から魔王のいる場所についての情報を得たリリアとジャスティン。
どうやら、早くも目的の森へとたどりついたようです。
「まぁ、素敵な森だわ!もっと木々のおいしげる真っ暗な森を想像していたのに」
「ますますもって魔王らしくないというか…リリア様の妙案はともかく
うまく交渉すれば、話し合いにも応じてくれそうな気がしてきますね」「わたくしとしては、その方が助かるわ。
一応、戦いにそなえて必要そうなものは買ってきたけれど、結局、剣や盾は重くて持てなかったから
基本装備は素手だし…拳にも平手にも自信がないこの腕では首をしめることくらいしかできないもの」
「…魔王の首を素手でしめ殺す勇者なんて聞いたことがありませんしそんな展開はだれも望んでいません。
ここまで付き合ってくださっている根気強い視聴者の方々が残らずはなれていってしまう前に
その物騒な考えは捨ててください」「えーっと、よくわからないけれどわかったわ。首をしめるのはダメなのね」
それじゃ、どうやって倒そうかしら…とリリアが考えていると不意に、頭上から声がしました。
「…やれやれ、我が主のウワサをしているものと耳をそばだててみれば。
ずいぶんと物騒な話をしてらっしゃいますね。大変、なげかわしいことです」
突然、あらわれた人の気配にジャスティンは、リリアを背にして身構えます。
ズドーーーンッ!!
二人の頭上から、黒い影が勢いよく降ってきてあたりには砂煙がたちこめました。
「これは、失礼。わたしとしたことが…名乗りもしないうえ立ち聞きとは。
魔王様の右腕、優秀な四天王の一人が行う行為としては、無礼千万。大変、なげかわしいことです。
あらためまして、自己紹介させていただきます。セバスと申します。どうかお見知りおきを」
「四天王…!!」
とうとう、姿をあらわした四天王の一人、セバス。
リリア達は無事、セバスを倒すことが出来るのか!?
次回、『第14話 セバス救出』…何があった。…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第14話 セバス救出~
とつじょ現れた四天王の一人、セバス。砂煙の向こうに隠されたその姿とは一体…?
「けほっ、けほっ…それにしてもすごい砂煙ね」「リリア姫、おさがりください。
これほど近くにいて気配を感じないなんて、おそらくはかなりの手練れです」
ケイカイするジャスティンと好奇心に胸をふくらませるリリアでしたが…
しかし、砂煙が晴れてくると共にあるギモンが浮かびます。あれ、何か小さくないか、と。
よく見ると、うすぼんやりとした視界の向こうにあるのは、地面から頭と腕がはえたようなこじんまりとした人影でした。
というか、どうみてもはえていました。地面から。頭と腕だけが。
「…大変、ジャスティン!セバスさん、地面にうまってらっしゃるわ!」
救出しようと走り出したリリアを追いかけると、そこには確かに、執事のような服装に
ひびわれたモノクルをつけた男性が地面から首だけ出し、万歳状態で穴にはまって動けなくなっていました。
「えーと……」「申し訳ありません。まさか着地点に落とし穴があるとは。
お嬢様のお手をわずらせるなど…しつ…コホン、四天王の一人として大変、なげかわしいことです。
森はこのようにキケンがつきものですから、お嬢様も道中はくれぐれもお気をつけください」
「まぁ、ありがとう!親切なのね。気をつけるわ」
なごやかに会話している二人をよそにジャスティンは、このままうめておけば戦わずにすむのではないか…などと
思ってしまいますが、カンジンのリリアが手を貸しているのですから捨て置くわけにもいきません。
念のため、リリアにはさがっておくよう言ってセバス救出に全力をつくします。
「ありがとうございました。しかし、敵に助けられるなどと大変、なげかわしいことです」
「いえいえ。ケガがなくて大変、なげかわしいことです!」
「リリア様、話し方がうつってます。そして、そこにそれをつけてしまうと悪意があるようにしか聞こえません」
「…あら?」「フフ、面白いお嬢様ですね。我が主がキョウミを持つはずです。
しかし、我が主は物事を面白いか面白くないでしか判断なさらない。今回も、このようにリスクが
高いことを平気でお言いつけになられるのですから…大変、なげかわしいことです」
何やらぶつぶつと一人で考え込むセバスにリリアとジャスティンはそろって首をかしげます。
「えっと、とりあえずわたくし達魔王に用があるので…ここを通していただいてもいいかしら?」
「いいえ、それは出来かねます。ですが、力量次第では通すようにと我が主からの命を受けておりますので。
どうしても通りたいというのであれば…どうでしょう、わたしとクイズ対決でもいたしませんか?」
「クイズ対決…!?」「まあ、面白そう!!」
…予想通り、行く手をはばむセバス。けれど、勝負の内容は予想外のクイズ対決!?
次回、『第15話 決戦はクイズで』対決の行方はどうなる!?…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第15話 決戦はクイズで~
自分に勝てばここを通ってかまわないという、四天王のセバス。しんし、勝負の内容はクイズ対決で…。
「それでは問題です。じゃじゃん。」「えっ、前置きもなくいきなり!?」「がんばるわ!!
フフッ、わたくしクイズ対決なんて初めてよ。わくわくするわね!」「リリア様……」
幸い負けてもリスクはない上にリリア自身がやる気ではジャスティンには何も言えません。
「それでは、いきます。パンはパンでも食べられないパンは、何でしょう?」
「…クイズというか、それはもうただのなぞなぞなんじゃ」「食べられないパン…わかったわ!
答えは、腐ったパンね!」「えぇ!? いやいや、リリア様!それはいくらなんでも安直すぎ…」
「正解です」「バカな」「やったわー!」
「第二問、じゃじゃん」「…何でもいいが、その口での効果音は必要なのか」
「この国の昨年度の小麦自給率は?」「いきなり難易度が!」「もう、ジャスティンうるさいわ!
わたくしたち、楽しくクイズをしているところなんだからジャマしないでちょうだい!!」
「リリア様、自分を見失わないでください。楽しんだら負けです」
「小麦の自給率…それならこの間外交の授業で習ったわ。80%ね。」「正解です。素晴らしい」
「それでは最後の問題です。じゃじゃん」「問題少なっ!」
「魔王について、どのような印象をお持ちですか?」「…魔王について?」
うーん…とリリアは考えます。いい人らしい、というのは先ほど銀髪の彼から聞きました。
でも、領地に入るとぼっこぼこだとも。会ったこともない人の印象を聞かれても正直、よくわかりません。
なので、リリアはそのまま正直に答えることにしました。
「お会いしたことがないので印象も何もないかしら」「リリア様…!?」
相手は魔王の部下。聞く限りではいい人そうだと言ってキゲンをとるなり勇者としてしっかり、悪いと思ったから
退治に来たとでも言っておいた方が良かったのではとジャスティンはあせります。
しかし、セバスは少し考えたあとにこりと笑っていいました。「合格です。お通りください」と。
「まぁ、本当に!?うれしいわ、ありがとうセバスさん」「いいえ、これで伝え聞いた通りに
いい人だとか、勇者としては悪だと思うなどとつまらないことを言われていたらお帰り願うところでしたが…。
周りにまどわされず自分の考えを言えるのは大変すばらしいことです。これからも、その気持ちを
わすれずにいてくださいね」「ええ、わかったわ!」「………………」
…こうして、無事先へ進めることになったリリアとジャスティンでしたが。
セバスの言葉に、ジャスティンがひそかに心傷ついていたのは言うまでもありません。
次回、『16話 四天王・チロルとロッテ』まさかの二人同時登場!?…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第16話 四天王・チロルとロッテ~
「セバスさん、本当にいい方だったわね。すごい戦いを覚悟していた分、ほんの少し拍子抜けしてしまったけれど…。
争うことなく先に進めるならこれほどいいことはないわ。何だか、順調すぎてこわいくらい」
「………………」「? どうしたの、ジャスティン?」「いえ…リリア様は、魔王とは
お知り合いではないですよね?」「そうね。知り合いなら、もっと上手くことが運んでいると思うわ」
「…そう、ですよね」「???」
(確か、セバスは魔王がリリア様にキョウミを持っているようなことを言っていたような気がするが…。
魔王と言うくらいだ。こちらのことは魔法でも使って、何でもお見通し…ということなのだろうか)
などと、ジャスティンが考えているとふと、正面に見える大木の向こうに人の気配を感じました。
「…だれかいるな。出て来い、魔王の手の者か!」
ジャスティンが声をはりあげると大木の後ろからひょっこりと小さな女の子達が出てきました。
ふわふわの金髪をゆらし手をつないで現れた少女達は同じ顔で同じ服。そして、同じ声で言います。
「ひゃう~…びっくりしたぁ」「まったく、子供相手にそんなにどなるなんて大人げないわ!」
「…まぁ、ソックリさん?」「どう見てもふたごではないでしょうか」「ええ、そうよ。ふたごよ」
「ふたご! 初めて見たわ…!ところでこんな森の中でどうしたの?迷子? お父様とお母様は?」
「わたし達、迷子じゃないわ。あなた達のことを追い返しに来たの」「え…」
「わたし達は、まおーさまをこよなく愛する四天王の一人、チロルと」「同じく四天王の一人、ロッテです」
「わたし達の大切なまおーさまをいじめようなんて悪いゆーしゃは…」「わたし達が、せいばいします!」
「え…、えぇ!?」
一見、十歳にも満たない年齢ながら四天王を名乗る少女達。魔王、まさかのロリコン説浮上!?
次回、『第17話 ドラゴン召喚』え、ドラゴン…?…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第17話 ドラゴン召喚~
現れたふたごの少女、チロルとロッテは四天王を名乗りリリア達を成敗するという。
果たして、リリア達はこのいたいけな少女達をも倒し魔王の元へたどりつけるのか…?
「さあ、カクゴしなさい!…って、あら? あなた達もしかして落とし穴に落なかったの?」
「確かに落ちた反応はあったのに…動物でも落ちたのでしょうか」
「え? 落とし穴になんて落なかったけれど………あっ!」「それならキミ達の仲間がおちていたぞ」
あの不自然な落とし穴は彼女達の仕業だったのか、とリリアとジャスティンはナットクしました。
「やだ、セバスが落ちたの!?」「あわわわ、わたし達の力作だとバレたらお仕置きされてしまいます…」
「こ、これもあなた達のインボウね!わたし達のまおーさまに近付くだけでなくセバスを、落とし穴に落とすなんて!」
「ひどいです! 人でなしです!」「いや…セバスが落ちたのはキミ達のせいだろう…」
「問答無用!セバスのかたきー!」「悪は、わたし達がほろぼします!
そう言うが早いか、二人の少女は両手をあわせてジュモンのような言葉をつむぎはじめました。
「「行けー! 召喚!ファイヤードラゴン!!」」「えっ、ドラゴン!?」
『グガォーーーーー!!!!』
空中に浮かんだ大きな模様から言葉通り、赤く大きなドラゴンが出現して火をふきます。
「ジャスティン、どうしましょう!本物のドラゴンよ!わたくし、ドラゴンなんて
空想上の生き物だと思っていたわ!」「はしゃいでいる場合ではありませんよ、リリア様!!」
こっちに来ます、と言いながらジャスティンはリリアをだいて横っ飛びしました。
ゴォォ、とドラゴンのはいた息で二人が先ほどいたところが火の海になります。
「…あそこにいたら、こんがりお肉になるところだったわね」「いえ、骨も残りませんよ。きっと。
それにしても、あの年でドラゴンを呼び出すような高等魔法が使えるなんて末恐ろしい子供達です…」
「いよいよファンタジーらしくなってきてうれしいわ!」「よろこんでいる場合ですか」
とりあえず、とジャスティンは剣を取り出し、ドラゴンを切りつけてみます。
…が、予想通りというべきかドラゴンのうろこは固く、傷ひとつつきそうにありません。
「…割と本気で絶体絶命かもしれません」「あらあら…」
そう言って、冷や汗を流すジャスティンとまだちょっと実感がない様子のリリア。二人の旅はここで終わってしまうのか!?
次回、『第18話 絶体絶命』今までが平和すぎたのです。…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第18話 絶体絶命~
チロルとロッテによるドラゴン召喚で絶体絶命におちいった二人。旅はここで終わってしまうのか…!?
「「行っけー!!」」『グガァァァーーー!!!』
気付けば、あたり一帯は火の海。灰の山。逃げ場も少なくなってきました。
「倒せないとなると、召喚者の手で戻してもらうよりほかありませんが…聞きいれてもらえそうにありませんね」
「そうねぇ…でもこのままじゃ森ごと丸焼きにされてしまいそう」
どうしたものか…と二人は策をねりますが、一向にいい案が浮かんできません。
「もうっ、ちょこまかちょこまか…全然当たらないじゃない!ロッテ、こうなったら二匹目行くわよ!」
「えっ、でも先生が二匹目はまだ制御できないから召喚しちゃダメって」「先生がそう言ってるだけで
やってみたら意外といけるかもしれないわよ」「でも…」
「わたし達の力で、まおーさまを守らなくっちゃ。そうでしょ?」「…うん。わかった」
チロルとロッテはうなずき合うと再びジュモンのような言葉をつむぎ始めました。
「「召喚! アイスドラゴン」」
『キシャァァーーーーー!!』
現れた青いドラゴンは空中で一回転すると、赤いドラゴンとともにリリアとジャスティンの周りを囲みました。
「……ねぇ、ジャスティン。わたくし達、今かなり本気でピンチね」「今さらですか」
『グガォーーーーー!!!!』『キシャァァーーーーー!!』
絶対絶命。意味がないと知りつつもジャスティンは、リリアをかばうようにして二人で身をかがめました。
………しかし、どれだけかまえていても一向に、いたいとか熱いとか冷たいとか感じることはなく。
おそるおそる二人が目を開けると二匹のドラゴンは、リリア達の頭上でケンカするかのごとく戦っています。
「…リリア様、今のうちです!森を脱出しましょう!」「ええ、わかったわ!」
「…ちょ、ちょっとちょっと!ドラゴン達、何をやってるの!?二人が逃げちゃうじゃない!
あの二人を、やっつけるのよ!」「チロル、ダメ…!わたし達、やっぱり制御できてない!」
チロルがあわててドラゴン達に命令すると、ドラゴン達はチロルとロッテの方を見て
おたけびをあげます。どうやら、ロッテの言うとおり完全に制御がとけてしまっているようでした。
「…ジャスティン、二人が!!」「リリア様、戻ってはいけません!リリア様!!」
ドラゴンにおいつめられたチロルとロッテを見てリリアは、思わずそちらへとかけ出します。
「「きゃー!!」」
少女達にせまりくる二匹のドラゴン。助けに走るリリアと追いかけるジャスティン…果たして、四人の運命は?
次回、『第19話 責任』責任感のある人間になりましょう。…こうご期待!
編集
リリア姫の大冒険
~第19話 責任~
制御を失い、召喚者のチロルとロッテに牙を向けるドラゴン達。四人の運命は、どうなるのか…?
「「いやー!だれか助けてーー!!」」
リリアは、走りながら例の袋の中身を取り出します。
「えっと、これは確か栓をはずして投げればいいのよね!えーい! しゅりゅーだん!!」
まぬけなかけ声と共にへろへろと頼りなくとんでいった小瓶が青いドラゴンのしっぽをふきとばします。
『ギャァァーーーーー!!』
パニックになった青いドラゴンは赤いドラゴンをまきこんで大暴れ。
そのすきに、リリアは二人を抱えドラゴン達からキョリをとりました。
「大丈夫!?」「うぅ…うわーーーんっ!!」「こわかったぁーー!!」
よしよし、と二人をなだめるリリアの元へ数秒遅れてジャスティンがかけよりさけびます。
「あなたは、ムチャばかりして…!二人も…、このままじゃ死ぬぞ!あのドラゴン達を今すぐ消すんだ!」
「そ、それが…」「わたし達では、もう制御ができないので、何とか倒すしか…」
「何だってー!?」とあせるジャスティン達をよそに、落ち着いたドラゴン達は再び四人へ照準を定めます。
「…ジャスティン、この子達を連れてここをはなれてちょうだい」「な、何を言っているんですか!?」
「わたくしが、残りのアイテムで彼らをひきつけるわ。大丈夫。言ったでしょう。
死ぬつもりは、ないの。逃げて、応援を連れて来てちょうだい」「そんなの、間に合うわけが…」
「大丈夫だから」
ニッコリと、いつも通りの明るい笑顔で力強く言うリリアの手をジャスティンは、そっととりました。
「…こんなにふるえている手をどうしてはなすことが出来るでしょう。あなたが戦うというなら
そんなあなたを最後まで守ることこそが、騎士の役目だとは思いませんか?」
「ジャスティン………でも…、あなたをキケンに巻きこんだのはわたしの責任だわ…」
言いながら、ボロボロと泣き出すリリアを見てチロルとロッテはおたがいを見合い、うなずきます。
「ロッテ、責任ならわたしたちがとらなきゃ。…消すよ、絶対」「うん、あれはわたしたちが呼んだものね」
…そう言って涙をぬぐい、笑顔で両手をつないだチロルとロッテ。少女達は無事ドラゴン達を消せるのか?
次回、『第20話 四天王・マカロン』最後の四天王とは、一体…?…こうご期待!
編集
リリア姫の大冒険
~第20話 四天王・マカロン~
自分の行動に対する責任の重みを知りドラゴン達を消すことを試みるチロルとロッテ。
精神的に成長した二人は無事、ドラゴンを消し去ることができるのか?
「「…お願い、戻って!ファイヤードラゴン…そしてアイスドラゴン!」」
小さな光が集まって大きな光を作り、その光がパアン、と大きな音をたててはじけました。
キラキラとした光のつぶが雨のようにリリア達へふりそそぐさまは、とても幻想的で、感動すら覚えます。
………………けれど。
『グガォーーーーー!!!!』『キシャァァーーーーー!!』
幻想的なその世界に、ドラゴンはしっかりおわしました。
「「「「ですよねー!!」」」」
完全に火やら氷やらはきだす体制のドラゴン達に、四人とももはやさけぶことしかできません。
「ぎゃー、ムリムリムリ!!」「いやぁぁー!!」「さようならー!!」
…そんな、あびきょうかんの場内にゆいいつの冷静な声がひびき渡ります。
「………なぁにやってんのアンタ達はぁ~。―――消えろ、ドラゴンズ!!」
声がした瞬間、先ほどとはくらべようもないほどのまばゆい光があたり一帯をつつみこみます。
一同は、思わず目をつむり…そして目を開けた時には。
「え、ウソ…」
まるで夢か幻のようにドラゴン達の姿はすっかりその場から消えさっており…そして。
「まったく…アンタ達は人の話をほんっとに聞かないんだから!これで、ちょっとは反省したかしら!?」
目の前には、ボンキュボンの形容が似合うとてつもなく美しくグラマラスな女性が立っていたのでした。
「「先生…!!」」「え、先生?」「わたし達の魔法の先生よ」
そして…と、ロッテが言いかけた言葉をさえぎって、女性は言いました。
「はーい、魔王様の左腕、世界で一番美人で魔法上手な四天王のマカロンとは、アタシのことよん♪」
うっふん、と投げキッスを送る最後の四天王、マカロン。
二体のドラゴンをあっさり消す実力の持ち主相手に、リリア達が勝つすべはあるのか!?
次回、『第21話 対決方法』さようなら、シリアス回。…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第21話 対決方法~
最後の四天王の一人、マカロンはボンキュボンのお姉さんだった!
ここに来て、男性視聴者がふえる予感?
「さて。まーずっ、チロルとロッテは後でアタシとセバスからこ~ってりお説教、カクゴしてね♪
魔王様は今回、実力行使はさけるようにとおっしゃったはずよ?」「「うぅ…ごめんなさい~…」」
クイズから一転、えらく攻撃的なカンゲイを受けたと思ったら、どうやらふたご達は命令ムシをしていた様子。
どうりで…とジャスティンはキケンを完全にしりぞけたことに安心して、息をはきだしました。
先ほどの力を見る限り、正直今リリア達が彼女と戦っても勝率はつめの先ほどもありません。
マカロンの言うことが本当ならマカロンとの戦闘もないということです。これは大変な朗報でした。
「で、つぎに…あなた達。一応、アタシがつぎの相手なんだけどどうする? 勝負、する?」
うふん、とお色気まんさいで近寄ってくるマカロンを見たリリアは自分の胸を見下ろして言いました。
「………勝てる気が、しませんっ」「リリア様、一体何で勝とうとしているんですか」
あきらかに勝負の方向性を間違えているのは見て取れましたが、こればかりは、ひじょうに
ナイーブな問題と判断してやんわりとした突込みにとどめます。
「ウフフッ、正直者は好きよ♪で~も~、美形男子はもっと好きねぇ、アタシが勝ったらこの騎士様アタシにちょーだい
ずいっ、とマカロンはジャスティンにつめより笑顔で言います。
「ダッ、ダダダダメですっ!それにジャスティンはわたくしのものではなくて…」
「あらんっ、ちがうの?手までつないじゃってるのに?」「「え」」
言われて初めてリリアとジャスティンはさっきのどさくさでつないでいた手がいまだに
つながれたままだということに気付き…おたがい、ばっといきおいよく手をはなしました。
「ウフフッ、初々しいわ~。でもそう…あなたのものじゃないならアタシとの対決はエンリョなく
彼の方に申しこませてもらうわ。勝負方法は…このアタシをきゅんとさせられればあなたの勝ち。
逆に、あなたがアタシにきゅんとしたらアタシの勝ちよ」
どう、カンタンでしょう?とあやしく笑うマカロンに固まるリリアとジャスティン。
ジャスティンは、リリアのためにある意味での身のキケンをおかすことができるのか…!?
次回、『第22話 真実』真実とは、一体…?…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第22話 真実~
マカロンのシュミにより、ある意味とっても危険な対決を持ちかけられたジャスティン。ジャスティンの答えは…?
「え…、いえ、えっとそれは…」
リリアの力になるためには勝負を受けなくてはいけませんがきゅんとさせる…なんて。
自分にはとてもできそうにない、とジャスティンが答えあぐねているとリリアがむすっとして言いました。
「そ、そんなの認めませんっ!」「あ~んっ、なんで~っ?」「何でって、それは……」
あれ、何でだろう…とリリアは首をかしげます。
勝負を持ちかけられたのはジャスティンで、応えるかどうかを決めるのもジャスティンです。
主従ならば、口出しする権利もありますがあくまで今のリリア達は魔王討伐を志す仲間です。
ジャスティンは認めないでしょうが少なくとも、リリアはそう思っています。
ならば、リリアが口を出すことではありません。…けれど。
(ジャスティンがほかの女の人を口説くなんて絶対にイヤなんだもの)
心の中でそうつぶやいたとたんすとんっ、とリリアの中にほしかった答えが降ってきました。
(ああ…そっか、わたくし…ジャスティンのことが…)
横にいるジャスティンをリリアはゆっくり見上げます。
不思議そうな顔をしたジャスティンと目が合うと、リリアの心臓はドキドキとうるさい音をたてました。
そうしているうちに、ジャスティンはやわらかい笑みをうかべてリリアに言います。
「リリア様のためならばとも思いましたがリリア様がそう言ってくださるのならわたしは、勝負を受けません。
マカロンさん、すみませんが勝負はほかの方法でさせてもらえますか。…そもそも。
わたしは、男性を口説くシュミも口説ける自信もありませんので」
………………………え?
ジャスティンは今、何か変なことを言わなかったか…?
男性を口説くシュミはないとか何とか…え? 男性?だれが、男性だって?
リリアが混乱しながら、マカロンの方を見ると、彼女は…いや、彼は笑って言いました。
「やっだ~バレてたのぉ?すごいわ。初見で見抜いたのはあなたと魔王様だけよ!
でもはずかしいから、あんまり男、男って言わないでね
「え、……え?」「本当にすごいわ! わたし達でも知ったのつい最近なのにね、ロッテ」
「うん。だって先生、すごく美人なんだもん…男の人だなんて、普通わからないよ」
「えぇぇぇぇぇぇ!?!?」
…とても残念なお知らせですが本作ゆいいつのセクシーキャラは本当の本当に男性だったのでした。
次回、『第23話 四天王との決着』魔王様は待ちくだびれてお昼寝中。…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第23話 四天王との決着~
ボンキュボンのお姉さんは本当はお兄さんでした。
果たして、リリアは女性としての自信を取り戻すことができるのか…?
「あ、ちなみにこのグラマスボディがどういう構造になってるかはヒ・ミ・ツ・よ
……これが、男。リリアは、世界にはまだ知らないことがたくさんあるのだと思いました。
「あーんっ、でも男って見抜いてくれて十分きゅんとできたわぁ♪アタシを男と知りながら平然として
変わらないその態度も素敵!女は、本心を見抜かれるのに弱い生き物なのよ~。
…というわけで、勝負はあなたの勝ち。ウフフ、楽しませてくれてありがと魔王様は、この先にある湖に
いらっしゃるわ。アタシ達はお先に帰らせてもらうけれど道は真っ直ぐだしもうジャマも出ないから安心して♪」
「…お姉さま。まおーさまのことあまりいじめないでね」「おねがいします」
先の戦いですっかりなつかれたらしくリリアをお姉さま呼びするふたご達にリリアはニッコリ笑ってうなずきました。
「ええ、わかったわ。大丈夫、わたくしとしても第一希望は話し合いだし…
戦っても、わたくしの装備は素手だからそんなに大ケガにはならないはずよ」
「そうですね、間違いなくあなたの方が大ケガになりますので、素手で戦う考えはそろそろ捨ててください」
あきらめたのは首をしめることだけだったのか、とジャスティンは頭をいためます。
「あなた達と戦えて楽しかったわ。無事帰って来られたら一緒にお茶会をしましょうね」
「「うん…!」」「さぁ、アンタ達。そろそろ行くわよ~」「「はーい。お姉さま、ばいばーい!」」
元気良く手を振って去っていく姿をひとしきり見送り、リリアはそっとため息をつきました。
「…さびしいですか?」「そうね。少しだけ。でも…」
あなたがいるから平気よ、と今までならさらりと言えた言葉がなぜか出てきません。
…そうでした。ショウゲキの真実ですっかり頭からとんでいましたが。
あの時、リリアだけが気付いたもうひとつの真実があったのでした。
「…ねぇ、ジャスティン」「何でしょう、リリア様」「わたくし、あなたのことが好きだわ」
「そうですか…って、………えぇ!?」
突然の告白にとまどうジャスティン。その頃、四天王一行の方は…。
「ねぇ、ロッテ。お兄さまが勝てばお姉さまは本当のお姉さまになるのね」「そうよ、チロル」
「お姉さまには悪いけどお兄さまが勝ったらいいわね」「わたしも同じことを思っていたわ」
…という、核心に近付く会話が繰り広げられていたことを二人は知るよしもないのでした。
次回、『第24話 魔王登場』とうとう、魔王とのご対面?…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第24話 魔王登場~
魔王戦を前に、自分の気持ちを打ち明けたリリアにジャスティンは…?「好き、というのはどういう意味で…」「もちろん、結婚してほしいという意味で」「け、結婚…!?」「ジャスティンは、わたくしのことをどう思っているの?」「どうって…」「好き?キライ?」「それは…」固まってしまったジャスティンにリリアはさらに追い討ちをかけます。「わたくしは、さっきあなたがマキロンさんを口説くと思ったらたまらなくイヤだったの」「…どこかの消毒液をほうふつとさせる名前になっていますが。マカロンです、リリア様」「もうっ、こんな時にちょっと名前を間違えたくらいで四の五の言わないでちょうだい!つまりわたくしが言いたいのはもし逆の立場だったらあなたがどんな風に思うのかということなのよ」逆の立場…つまり、リリアが男性に口説かせるところを想像して、ジャスティンは頭痛でこめかみを押さえる動きをぴたりと止めました。「………それは」「それは?」「………………」ジャスティンは答えられませんでした。その答えは、リリアの気持ちに応えるのと同じことだったからです。リリアは姫で、自分は騎士。共に旅をし、どれだけ身近に感じていてもその事実をわすれることは許されません。「わたしは……いえ…わたしとリリア様では身分がちがいますから」「……好きかキライかでもなく一番に言うのは、そこなの?どうしてあなたってそう真面目なの!…もういいわ!」「リ、リリア様どこへ…!?」「魔王のところよ!さっさと倒して勇者になってちゃんとした答えを聞かせてもらうんだから…!!」いつもニコニコ温和なリリアにはめずらしく、本気で怒ってしまったようです。かけだしたリリアの後を追ってジャスティンも走り出します。…とそんなジャスティンの目に大きく黒い光のかたまりがすごい速さでこちらに向かって来るのがうつりました。光は、リリアの横をすり抜けてまっすぐにジャスティンへと向かっていきます。「…っ!!」「ジャスティン!?」リリアが振り返ったつぎの瞬間大きな爆音と共にあたりが煙に包まれました。そして。「はぁ~…。遅かったから迎えに来ちゃったよ。勇者…いや、オレの花嫁殿?」そう言って、煙の間をさくようにして現れたけど青年の姿にリリアは、目を丸くします。「…あなたがどうしてここに?」…そう、青年は魔王の居場所をリリア達に教えてくれたあの、銀髪の彼だったのです。次回、『第25話 魔王の正体』いよいよ、大詰めです。…こうご期待!編集
リリア姫の大冒険
~第25話 魔王の正体~
魔王のもとを目指すリリア達の前に現れたのは、町で魔王の居場所を教えてくれたあの銀髪の青年でした。
青年の目的とは?
そして、黒い光におそわれたジャスティンの命運は、いかに…?
「どうして、あなたがこんなところにいるの?さっきの攻撃は、あなたが…?」
問いかけながら、リリアは煙の向こうにジャスティンの姿を探しますが視界は悪く、見つけられそうにありません。
リリアの不安をよそに、青年はまるで天気の話でもするかのような明るい声で言います。
「そうそう。ただの小手調べのつもりだったんだけど…やりすぎちゃったかな~。
あっ、とりあえず自己紹介!騎士殿は見当たらないけど…、まぁさすがに死んではないだろうからそのへんで聞いてるだろ。
初めまして…、って言っても一回会ってるわけだけど。オレは、この国で魔王と呼ばれている者」
「あなたが、魔王…?」
「うん。でも、それも仮の姿で…本当の名前は、アモー。名前くらいは聞き覚えない?
シルバー王国第一王女リリア…キミの婚約者でもある、この国の第二王子だったりするんだけど」
「……………………はい?」
ぽかん、とリリアは姫らしくなく口を開けて固まります。
(えーっと、親切な通行人の青年がじつは魔王で、でも魔王はじつはこの国の第二王子様…どういうこと?)
にわかに信じがたい話ですがそういえば、リリアは彼にあった時見たことがある気がする…という印象を持ちました。
あれは、お見合い写真で見たのだと今ならはっきり思い出せます。
「魔王業は、ただのシュミなんだよね。悪いことはしてないつもりだし…、青春のより道というかストレス発散方法?
ほら、リリアも勇者を目指してるだろ。それと同じようなものかな。言いなりになるのも疲れるわけですよ」
(…そういえば、お父様が彼のことを紹介する時、とにかくベタぼめだったような気がするわ。
やっぱりその分、苦労も多いのかしら。わたくしも、城での生活にはへきえきしていたけれど、王子様も大変なのね…)
もろもろをかんがみた上で彼が王子である、ということを信じるのに時間はかかりませんでした。
つまり、彼は魔王で、王子様でそして…、リリアのお見合い相手
つまり、婚約者(予定)だったのです。
次回、『第26話 宣戦布告』
ところでジャスティンは大丈夫かね。
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第26話 宣戦布告~
通りすがりの銀髪少年の正体は魔王で王子で婚約者だった…!?
果たして、リリアは魔王で王子で婚約者の青年を倒し、自分の自由を手にいれることができるのか…?
「じつは、魔王っていう名前もアモーをもじっただけで、四天王も全員オレの城仕えなんだよな。
セバスは、オレの専属執事だしマカロンは、城の魔法使いの長。あ、チロルとロッテは妹だけど。
アイツら、あぶないからダメだって言ってもすぐつっぱしるんだ。さっきも、メイワクかけたんだって?」
後できつくしかっておくよ、と苦笑しながら言うアモーは、いいお兄さんそのもので。
ふたご達が夢中になるはずです。
リリアの中の魔王のイメージとはすっかりかけはなれていました。
「わたくし達に声をかけたのは全部知っていてのことだったの?」
「そうだよ。キミが城を出た翌朝オレの父上あてにキミの父上から手紙が来たんだ。見合いがイヤで勇者になると家出したって。
手紙を見た時の父上のポカンとした顔を見せてあげたかったよ!オレも、人生で一番笑った!
オレも婚約には気乗りしなかったけどあれで、かなりキョウミがわいて…会ってみたくなって、張ってたんだ。
で、実際話してみたら予想以上に面白かったから、はまっちゃったよ。魔王と話し合いするんだっけ?」
そういえば、先制攻撃を受けてすっかり段取りがくるってしまいましたがそんな予定もありました。
「応じてくださるの?」
「オレと結婚してくれるならいいよ」
「まぁ…、プロポーズなんて初めてだわ。でも、結婚したくなくて勇者を目指している身なので丁重にお断りします」
ぺこり、とリリアは頭を下げました。
かわいそうなくらいの瞬殺です。
しかしアモーはめげません。
「それじゃ、やっぱり勝負するしかなくなるな。オレが勝ったら結婚するしかなくなるんだろ?」
「…やっぱりあなた、王子より魔王の方が向いているわ」
「おほめいただき、どーも。…でもまぁ、やっぱり女性を相手にドンパチやるのは気がひけるよなぁ。
ってわけで、どうかな騎士殿。リリア姫の代理ってことで。どっちかが「まいった」というまでの一本勝負。受けてほしいんだが」
やっと晴れてきた煙の中、ある一点へアモーの視線が送られるとそこから人影がゆらりと立ち上がりました。
「…もちろんです。リリア様を…あぶない目にはあわせられません」
その勝負受けて立ちましょう、と今まですっかりかやの外にされていたジャスティンは、ボロボロの姿でリリアとアモーの間に立ちはだかり、アモーの宣戦布告を受け取ったのでした。
次回、『第27話 魔王VS騎士』
勝敗の行方は…?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第27話 魔王VS騎士~
宣戦布告を受け、リリアの代わりにアモーと戦うことになったジャスティン。
でも、そのからだはすでにボロボロで…。
「…ジャスティン、後ろ!」
キィィンッ、と剣の交わる音が森にひびき渡ります。
二人が交戦してから、すでに15分ほどが経過していましたがなかなか決着はつきません。
「姫のえんごがあってうらやましいな~。うっかりシットしちゃうよ」
そんな軽口をたたきながらアモーはようしゃなくジャスティンへ剣を振り下ろします。
「…っ、魔王が人がいいなんてウソですね。意地の悪い太刀筋です」
「言うねぇ~」
バッ、とキョリをおいたアモーはジュモンのような言葉をつむぐと右手に黒い光を作り出します。
「あっ、魔法なんてヒキョウだわ!」
「って言ったって、ベル国最強の騎士様とオレじゃ剣の腕に差がありすぎて。そこは、ハンデだと思って…」
「ヒキョウ者ー! オニ、アクマ!パンダ、ウサギ、コアラー!!」
「おいおい、何でも言えばいいってもんじゃないだ…、ろっと!!」
よいせーっとアモーが投げた光の球がジャスティンに向かっていきます。
普段のジャスティンならばこともなげによけられたでしょうが、今は、ひどい負傷をしている身。思うようにはよけられません。
「ジャスティン…!!」
…リリアの祈るようなさけびもむなしく光は、ジャスティンの右腕に直撃。
持っていた剣は、宙へとなげだされ地面に落ち、そしてカラリとかわいた音をたてて折れました。
「オレの勝ちだね、騎士殿?」
さぁ、アンタは国へお帰り。リリアは、オレが必ず幸せにするからさ
…と、そう言ってアモーは、がくぜんとするジャスティンを見下ろしながら魔王らしく、あやしく笑ったのでした。
次回、『第28話 答え』
このまま魔王に敗北してしまうのか?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第28話 答え~
ひどい負傷をかかえながら戦うも剣が折れ、完全に対抗のすべを失ったジャスティン。
リリアは、本当にアモーと結婚することになってしまうのか…?
「…リリア様に、あやまらなければいけませんね」
ボロボロのジャスティンの姿を見てリリアは涙ぐみながら、首をふります。
「かまいません。まいった、と…言ってください」
巻きこまれただけにも関わらず彼は、リリアのために何度もからだをはってくれました。
あやまることなど何もありません。
今までそばにいてくれた。守ってくれた。
もう、それだけで十分でした。なのに。
「いいえ、リリア様。わたしは一生…たとえ死んでもその言葉だけは口にしません」
ジャスティンはリリアを見つめて…そして笑って言いました。
「今からは、素手で戦おうと思います。あなたにあれだけダメだと言ったくせに…すみません。それに。
目の前で大切な女性をみすみすほかの男に渡すわけにはいきませんから…!」
言ったとたん、ジャスティンはアモーに向かって行き拳や、けりを繰り出しました。
「あれ、オレってもしかしてウマにけられてる?やだなぁ、これ完全に悪役だ」
「魔王には、お似合いの言葉だと思いますがね」
戦う二人の姿を見ながらリリアは先ほどのジャスティンの言葉の意味を考えます。
「…それが、あの時のわたくしの問いへの答えなの?」
魔王に会う前、身分がどうのとはぐらかした答えをジャスティンは言ってくれました。それならば。
「結末は、きっとハッピーエンドだわ!恋する二人と言うのは、物語においてどんな時も最強なのだもの!」
ごし、と涙をぬぐって気持ちをきりかえるとリリアは、あわててあたりを見回します。
…そして、見つけました。
この状況を打開できるかもしれないあの、何でも袋を。
次回、『第29話 決着』
最終兵器の袋の中身とは…?
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~第29話 決着~
激戦の中、思いが通じたリリアとジャスティン。
しかし、状況は悪く、逆転の望みは…
あの、何でも袋にたくされていました。
(はっきり言って、とっても心もとないけれど…何もしないよりはマシよね!!)
袋をしっかりと抱きしめ、ひとつうなずくとリリアはさけびます。
「アモーさーーん。すみませんが、わたくしジャスティンに加勢しますのでー!」
「「え?」」
「ジャスティーーン!ちゃんとよけてねーー!!」
声と共に、ひゅ~~~ん、べしゃっと何かが、二人の足元にへろへろと頼りない速度で降って来ました。
「…………卵?」
はっ、としてジャスティンはアモーからキョリをとりました。
すると、つぎはフォークがとんできます。
当たるとケガくらいしそうですがこのくらいなら剣を相手にするよりよほど楽です。
「何だ…、びっくりした。ハハッ、いいよ。そんなかわいらしい加勢ならいくらでもしてくれて」
「わかりました!では、エンリョなく!」
ナイフ、手裏剣、バットにカミソリ、まきびし、石、エンピツ、人形、水筒、バナナの皮にチョコレートの包み紙…。
出てくるものは予想外としか言いようがありませんが、どれも気をそらす程度にしか役に立ちません。
とはいえ、様々なものがゆっくりながらつぎからつぎへと、アモーの頭上にふりそそぐのです。
そうなってくると、下手な鉄砲数うてば当たるという言葉がありまして。
「…ちょ、ちょっと待って。何それ、その袋どんだけもの入ってるの!」
くぎ、まきびし、メジャー、さつまいも、せんまいどおし、ぶんちん、ネコのぬいぐるみ、ブリキの置物…。
一つたりともはずれることなく全てが頭上にふりそそぐと、さすがにアモーのよゆうも、なくなってきました。
「え、いやいやいや!ちょっと待って!!何でも投げりゃいいってもんじゃ…てか、さすがにこれは全部よけきれな……いぃぃ!?」
どうやら、障害をよけようと一歩下がったところに最初の方に投げたバナナの皮があったようです。
ズルッ、という音とともにアモーの体勢がくずれます。
そして、そこにカンパツいれずやってきた、つぎなる投てき物にアモーは真っ青になりました。
「ちょっ、待て待て待て…!!それは今この体勢じゃよけられない無理、絶対無理!!」
ひゅーんっ、と相変わらずえがく放物線はへなちょこなのにねらいばかりはいい小瓶が、数個。
体制をくずしたアモーの上にゆっくりと…しかし、ようしゃなく降りそそぎます。
「うそだろーーー!?!?」
ちゅどーーーーんっ!!!!
ドラゴンのしっぽをも部位破壊出来る素敵ないりょくの小瓶は、見事、アモーに命中し…
被害者の悲痛な声をかき消すかのように大きな爆音が、あたりにひびき渡ったのでした…。
次回、『最終話 勇者誕生』
長い物語もとうとう、最終話。
…こうご期待!
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リリア姫の大冒険
~最終話 勇者誕生~
とにかく物をなげまくるという子供のケンカレベルの戦い方で勝利を手にしたリリア。
アモーの丸こげをすておいて長い物語はようやく終着点へとたどりつくのでした。
「大丈夫?ジャスティン」
「おかげさまで」
爆風から身をよけるため木陰にすわりこんでいたジャスティンにリリアが手を貸します。
「無事、魔王討伐ね。これで、勇者になれた…ということでいいのかしら?」
「まさか、本当に…しかもご自分でやってのけてしまうとは思いませんでしたよ」
「ウフフ、わたくしも思っていなかったわ。でも、これでようやく自由の身ね。…ねぇ、ジャスティン」
「はい?」
「わたくし、勇者よ。自由の身よ。あの言葉、あなたもわたくしのことを…好き、だということなのよね?」
「…ええ、まぁ」
あの時は、状況がちょっとドラマティックだったせいか思わず口に出してしまいましたがあらためて確認するのは聞く方も、聞かれる方もはずかしいものです。
真っ赤になりつつも、リリアははにかんだ笑みでジャスティンに言いました。
「勇者と騎士なら結婚できるわよね。これなら、もう身分に文句は言わせないわ」
もちろん、勇者になったとはいえ二人の結婚にはきっと普通よりも多くの障害があるでしょう。けれど。
「…えぇ、負けました。あなたという人は…本当に。きっと苦労しますよ。いいですか?」
ゆっくりと広げられた腕の中にリリアは勢いよく飛びこんで言いました。
「もちろんよ!!」
……そして、その後。
無事勇者となったリリアは城に戻って、全てを父に話し。
ジャスティンとの結婚を認めてもらって、二人末永く
幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
~ 完 ~
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リリア姫の大冒険
~番外編 エピローグ~
これは、二人が城にもどってきた時のお話です。
「お父様、魔王倒してきたから勇者に転職します!お見合いはできません。ついでに、騎士団長のジャスティンと結婚します!」
「はあぁぁ!?!?」
「リリア様、こういうことはもう少し手順をふんで説明を…」
「いや、ちょっと待ってくれ。何を言ってるんだ、リリア。勇者になったのは、ジャスティンだろう」
「まあ、信じてくれませんの?」
「ジャスティンは、傷だらけ。おまえは、無傷。この有様でどう信じろと言うんだ」
「……まぁ、コウセキはジャスティンの方が大きいことは認めますわ。ああ、でもそれならばジャスティンが勇者だとしたとして」
「しないでください。勇者はあなたです、リリア様」
「世界を救った勇者なら結婚相手に不足ありませんわよね、お父様」
「それは、もちろんだとも」
「ですって!良かったわね、勇者・ジャスティン!」
「え…えぇぁ!?」
…とまぁ、ゴカイはあるものの結局、ジャスティンと結婚できればいいリリアは、勇者の称号をジャスティンにゆずり姫と勇者として、幸せな結婚式をあげたという…。
そんな、裏話なのでした。
~今度こそ、本当に完~
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー

曜日番組名備考追加
野菜戦隊 ベジレンジャー編集
ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第1話
「我らベジレンジャー」
大地はやせ、水は枯れた、ある時代。それでも人々は、畑をたがやしけんめいに日々を生きていた。
だが、彼ら農民が必死で育てた作物を盗もうとする、不届きなやからもまた現れ始めた。
その名は、モグラ―族。
その昔人間に敗れ、地下世界へと逃げ込んだモグラたちの末えいであった。
彼らモグラ―族に抵抗するため立ち上がったのは、一人の科学者。
科学者は、筋力を極限まで高めるパワードスーツを開発し、3人の若者に与えた。
「ベジポタ戦隊ベジレンジャー」・・・
ソウ呼ばれる彼らは、モグラ―族をとりしますため、日夜パトロールにはげむのだった。
・・・・・・
イエロー「さあ、今日もこのベジタリアン号でパトロールだ」
ブルー「はりきっていくわよ!」
レッド「うむ、行こう」
きゃあぁぁ・・・・・・・・・
レッド「ん?今、何か聞こえなかったか?」
イエロー「女性の悲鳴のようだった!野菜ドロボーかもしれん!」
ブルー「急いで現場に向かいましょう!GO!ベジタリアン号!」
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第2話
「ブロッコリーは渡さない」
野菜ドロボーをとりしまるため、今日も元気にパトロールするベジレンジャー。そこに、若い女性の悲鳴が!
若い女性「やめて! モグ・モグーラ!畑を荒らさないで!」
モグ・モグーラ「ふふふ、そういうわけにはいかないグラ。このブロッコリーは全て頂いていくグラ」
若い女性「お願い、ブロッコリーを返して!それがないと、この冬を越せないの!
モグ・モグーラ「知ったことではないグラ! どけっ!!」
若い女性「ああっ、畑がぐちゃぐちゃに……助けて!ベジレンジャー!!」
ベジレンジャー「まてーい!」
ベジレンジャー「この世に畑ドロボーある限り、我らが成敗してくれるわ」
レッド「リコピンパワーで元気百倍!トマト戦士、ベジポタレッド見参」
ブルー「目の疲れにはアントシアニン!ブルーベリー戦士、ベジポタブルー」
イエロー「クエン酸で疲れ知らずのレモン戦士、ベジポタイエローもいるぜ!!」
ベジレンジャー「われら、ベジポタ戦隊ベジレンジャー!」
モグ・モグーラ「ちぃっ、あいつらがベジレンジャーか!」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第3話
「さくれつ!ベジポタパンチ」
若い女性のひめいを聞きつけ、現場に急行したベジレンジャーたち。
畑を荒らしていたのは、やはりモグラ一族のモグ・モグーラだった。
モグ・モグーラ「お前らがベジレンジャーか!うわさには聞いていたグラ……」
レッド「この食糧不足の時代に野菜ドロボーをはたらくとは、不届き者め」
モグ・モグーラ「ちぃっ、3対1は不利だな……見つかったからには逃げるしか……」
レッド「逃げようとしてもムダだ、くらえ……オレの必殺技!」
「ベジポタパーンチ!!」
バキィィッッ!!
モグ・モグーラ「ぐあぁっ!お、覚えてろグラーー!!」
ズババババババババッッッすぽんっ!
ブルー「あっ、穴を掘って逃げたわ」レッド「くっ、逃がしてしまったか…」
若い女性「あ、ありがとう……!なんとお礼を言ったらいいか!」イエロー「いいってことさ。
それより、ブロッコリーに含まれる葉酸は、妊婦さんにとって重要な栄養素だ。……体、大切にしなよ」
若い女性「……!あ、ありがとうございます!」
レッド「さあ、博士の待つラボに帰ろう。あのモグ・モグーラとやらのことを報告しなくては」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第4話
「つかの間の休息」
モグ・モグーラを取り逃がしてしまったベジレンジャー。ひとまずは、博士の待つラボに帰ることにしたのだった。
博士「よう、おかえり。首尾はどうじゃ?」
レッド「すみません、博士。とり逃がしてしまいました」
イエロー「どうやら、今回のドロボーはモグ・モグーラというらしいよ」
博士「モグ・モグーラじゃと!?そうか……そいつは、モグラ一族の王子じゃ。やつの仲間をこちらが大勢つかまえたからのう、うらんでいるかもしれんな」
レッド「なるほど……」
イエロー「じゃあヤツは、人間へのリベンジのため畑を荒らしまわっているのか……」
ブルー「ねえ博士、それはそうと最初の掛け声、別のに変えたらダメかしら?『目の疲れにはアントシアニン!』とか、はずかしいんだけど……」
博士「ダメじゃ!野菜の大切さを世に知らしめるのも、お前たちヒーローの重要な役目じゃ。ワシがいっしょうけんめい考えた、かっこいいキャッチフレーズをバカにするのか!」
レッド「そうだぞ、ブルー。なんてこというんだ」
ブルー「ご、ごめんなさい」
イエロー「オレはお前の気持ちがわかるぜ、ブルー……」
ジリリリリリ!!!!
レッド「なんだ、警報か!?」
博士「ドロボーがまた現れたようじゃな。ゆけっ、戦士たちよ!!」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第5話
「ニンジンのカロテン」
とあるニンジン畑……。
ベジレンジャーに敗れたモグ・モグーラは逃げ込んだ先の畑で、またしても盗みを働いていた。
モグ・モグーラ「ふふふ……さっきは油断したグラ。
レンジャーが現れる前にとっとと作物をいただけばこちらのもの!
ミーが開発したこのスーパーそうじ機で、土ごと作物を吸いとってやるグラ!」
シュオオオオオオ!!!!
かわいそうな農民「や、やめてくれ…!オラの畑が土ごとなくなっちまう~!!」
モグ・モグーラ「うっふっふ!!ミーは頭がいいのだグラ!!
この畑のニンジンは残らずミーが頂いたグラ!!」
ベジレンジャー「まてーい!!」モグ・モグーラ「えっ、もう来たの」
レッド「このドロボーモグラめ!ニンジンには、カゼ予防にも効果的なカロテンが豊富に含まれている……!
お前は、農家の方々をカゼにするつもりか!」
モグ・モグーラ「ふっ、知っているグラ!だからこそ、この畑をねらったのだ……」
イエロー「なんだと、どういうつもりだ?」モグ・モグーラ「お前らが知る必要はないグラ!」
ブルー「とりあえず、今度こそつかまえるわよ!」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第6話
「ベジポタ・フラッシュはレモンの輝き」
警報を聞きかけつけたレンジャーたちの前に現れたのは、やはりモグ・モグーラであった。
レッド「このドロボーモグラめ!オレのベジポタパンチをくらえ!」
モグ・モグーラ「おっと、そうはいくか!」
ガギーン!
レッド「なにっ、盾だと!?」
モグ・モグーラ「ふっははは!その技はすでに対策ずみグラ!!この鋼鉄の盾でパンチを防ぐグラ!見たかあ!!」
レッド「くそっ……」
イエロー「それならここは、オレの出番だな!レッド、ブルー、目をつぶれ!!くらえ、レモンのかがやきを!!」
「ベジポタ・フラーッシュ!」
ピカアッ!!!!!
モグ・モグーラ「ぐわあぁっ!目が、目がぁぁ~!!!!」
イエロー「いまだ! レッド!」
レッド「うむ!ベジポタパーンチ!!!」
バゴォッ!!
モグ・モグーラ「うわーーーー!!!」
キラーン……
ブルー「…つかまえるって言ったでしょ」
イエロー「…つかまえるって言っただろ」
レッド「す、すまん……思わずやってしまったのだ」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第7話
「大豆は畑のお肉です」
レッドのうっかりミスでモグ・モグーラをとり逃してしまったベジレンジャー。
一方、そんな戦いがあったとは知らないある農家での出来事……。
少女「いやっ、お肉キライ!」少女の父「そういうな。肉なんて今のご時世、なかなか手に入らないんだぞ」
少女「だってお肉って、くさくて脂が多くて、全然おいしくないんだもの」
少女の父「……しょうがない。ならお前は、この大豆のサラダでも食べていなさい」
少女の母「あなた…せっかくお肉を買ってきたのに……」
少女の父「いいさ。大豆には肉に負けない良質な植物性タンパク質が多く含まれているし、
その他にも様々な栄養がバランスよく含まれている。育ちざかりの子供にはぴったりの食材だよ」
少女「ありがとう、パパ!」
……
ガサガサッ
モグ・モグーラ「いいことを聞いたグラ……」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第8話
「大豆農家の悲劇」
肉ギライの娘のため、代わりに大豆を栽培している、とある一家。
だが、モグ・モグーラの魔の手はすぐそこに迫っていた。
少女「パパ、大豆を収穫するの?私も手伝うわ」
少女の父「ははっ、ありがとうな。じゃあ早いとこ収穫しちまおう」
モグ・モグーラ「ふふふ……じゃまさせてもらうグラ」少女の父「なっ、なんだお前は!?」
モグ・モグーラ「ここの畑の大豆は、このモグーラ様が頂いていくグラ!!
今回はこの!!新開発のジェットブーツで!!マッハの速度で収穫するグラー!」
ビュンッ!!シュパパパパパパ!!!
少女の父「や、やめてくれぇぇーー!!」少女「た、助けて……助けて!助けて、ベジレンジャー!!!」
レッド「待てえぇーーーーっ!!!」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第9話
「大豆、そしてジェットブーツ」
大豆ドロボーを働こうとしたモグ・モグーラ。だが、少女のひめいを聞きつけたベジレンジャーが立ちはだかる!
モグ・モグーラ「ま、またお前らかあ!」
イエロー「それはこちらのセリフさ、モグ・モグーラ」
ブルー「かよわい少女を泣かせるなど言語道断、正義のてっついを受けなさい!!」
イエロー「くらえ!ベジポタフラーッシュ!」
モグ・モグーラ「ふふふ!そうそういつもくらってたまるかグラ」レッド「なにぃっ、サングラスだと!?」
モグ・モグーラ「ミーには、一度見た技は効かないグラ!ミーの対応力と開発力をなめるなグラ!
今度はこっちの番だグラ……いくぞっ!!!」
ビュンッ! ビュンッ!レッド「は、速い……ぐあぁっ!!!!」
イエロー「くっ……ジェットブーツの真空波で大豆をかり取りつつ、こちらへの攻撃も同時に行うとは……!」
モグ・モグーラ「おっひょおおお!!見たかあ!!
ミーの邪魔は誰にもさせないグラ!ミーにはこの野菜が必要グラ!ブルー「くっ、こうなったら……!」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第10話
「ベジポタ・アイに死角はナイ!」
モグ・モグーラのジェットブーツに、なすすべがないベジレンジャー。このままやられてしまうのか!?
モグ・モグーラ「見たか!ミーのジェットブーツの破壊力を!」
イエロー「くそっ、どうしたら……」ブルー「私に任せて!」
「ベジポタ・アイ!」
ギュイイイイイ
ブルー「見える…見えるわ!私にも敵が見える!…そこよっ!」
プッ!!!グサッ!!!!
モグ・モグーラ「うぎゃああ!!いったーい!なにこれ、吹き矢グラ!?」
ブルー「そうよ。私のベジポタ・アイは動体視力を極限まで高め、敵のどんな動きも完全に見えるようになる。
そこに吹き矢を当てたってわけよ。おまけに……」
モグ・モグーラ「ぬっ、これは、やばい予感グラ……しびれ……る……」
ブルー「矢にはしびれ毒をぬってあるの」イエロー「なんかえげつないね」
モグ・モグーラ「く……ぅ……やばくなる前に、逃げるグラ!!とうっ!!」
ビューンっ!!
レッド「あっ、逃げたぞ!!」イエロー「ちっ、また逃したか……」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第11話
「新必殺技、完成!」
またしてもモグ・モグーラを撮り逃したベジレンジャー。しょんぼりとラボに帰還するのだった。
博士「おや、またモグ・モグーラを逃してしまったのか」
レッド「すみません、博士……オレたちがふがいないはがりに」
博士「いや、仕方ない。お前たちはまだまだヒーローとしては発展途上。まだ成長段階なのじゃ。
……お前たちに渡したいものがある。これを見なさい」イエロー「こ、これはなんだい?」
博士「ふっふっふ……これはワシが開発した新しい武器……その名も、ベジポタ・チャームじゃ!」
ブルー「ベ、ベジポタ・チャーム……?」博士「このチャームを天にかかげ、『ベジタポー』と唱えることで
周囲の野菜からエネルギーをもらい、特大ビームを放つことができるのじゃ!」
ブルー「ベジタポー……」イエロー「だっさ……」
レッド「……すごいです博士!!」イエロー「お前はそう言うと思ったよ」
博士「ただし注意しておくのじゃ。この技は、周囲の野菜とお前たちの生命力をユウゴウさせて放つ合体技じゃ。
ゆえに一度使うとものすご~く疲れる!使うのは一日一回までじゃ!」
レッド「はい、わかりました博士!」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第12話
「ほうれん草は肩こりに効くのか」
学校の先生「……と、このように……ほうれん草には『若返りのビタミン』と呼ばれる、ビタミンEが含まれている」
生徒「若返りのビタミン、ですか?」
学校の先生「そうじゃ。ホルモンバランスを整え、強い抗酸化作用もある。
また、血管を広げてくれるので、肩こりや頭痛にも効くのじゃ。
ほら、教室の横で育てたほうれん草も、そろそろ収穫の時期じゃ。さあ、みんなで収穫しようじゃないか」
生徒??「ふむ、肩こりに効く…と。それはいただきだな」
学校の先生「ど、どうしたんじゃ、そこのキミ?」
生徒に化けたモグ・モグーラ「ここの畑のほうれん草は、すべてミーが頂いていくグラ!!」
学校の先生「モグ・モグーラじゃと!?ま、まさかモグラ一族の生き残りか?」モグ・モグーラ「そのまさかグラ!
ミーはモグラ一族の王位継承者、モグ・モグーラ!!このほうれん草はもらい受けるグラ!」
学校の先生「や、やめろ……!」モグ・モグーラ「さあ、こう言ってる間にやつらがまた来るに決まってるグラ……」
レッド「まてー!!!!!!!」モグ・モグーラ「ほーら、来た来た!」
―つづく―
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第13話
「秘密兵器、大地に立つ」
学校の畑からほうれん草を盗もうとしたモグ・モグーラ。
かけつけたベジレンジャーに対して、ふてきな笑みを浮かべるのだった。
レッド「モグ・モグーラ!今日こそ逃さないぞ!」
モグ・モグーラ「もう、お前らのパターンは読めてるグラ!いでよ、『グンダム』!!」
ズズズズズズズ………
ドシン! ドシン!
レッド「な、なんだあれは……!」
モグ・モグーラ「ふふふふ、対お前ら用にミーが開発したロボット!その名も、『グンダム』グラ!とうっ!」
ウィーン…… スチャッ
ブルー「まずい、乗り込んだわ!あれを操縦されるとまずいわよ!!」
イエロー「……ていうか、前はジェットブーツ程度だったのにな……」
レッド「すごい技術力だな、モグラ一族……!」
モグ・モグーラ「ええい、ごちゃごちゃと!!これでもくらえっ!!」
ブォンッ!!!
イエロー「うわッ、あぶねっ!!あんなの当たったらやばいぜ!」
レッド「何か、何かないのか……!?」
モグ・モグーラ「はーっはっは、今度こそミーの勝ちグラ!!」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第14話
「合体技なら負けません」
モグ・モグーラの秘密兵器、グンダムにほんろうされるレンジャーたち。
このままやられてしまうのだろうか…!?
モグ・モグーラ「はーーっはっはぁ!!ミーの勝ちグラ!」
ドカッ バリバリッ
イエロー「くそっ、このままやられるしかないのか!?」
レッド「こうなったら、アレだ!あのチャームを使うぞ!」
ブルー「そうね、どうやらそうするしかないようだわ……」
レッド「さあ二人とも、手を!手をオレの手に重ねてくれ!」
イエロー「ああ!」
ブルー「わかったわ!」
レッド「よし、いくぞー!」
「ベジタボー!!」
ピカァァァ………
ブルー「すごい……周囲の野菜から光があふれて、チャームに集まっていくわ!」
イエロー「様々な野菜のエネルギーが濃厚な一つのパワーに収束していく!まるで……ポタージュスープだ!」
レッド「うおおおおお!!!!くらえ、ポタージュのパワーを!!」
モグ・モグーラ「あ、あれはやばい……やばいような気がするグラ!!!」
キィィィィ……………ィィイイイイイ!!!!!
3人「ポタージュ……ビィーーーム!!」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第15話
「くらえ! ポタージュ・ビーム」
モグ・モグーラに劣勢のベジレンジャー。
ポタージュ・ビームで一気に巻き返しなるか!?
レッド「くらえ……オレたちと野菜との合体技を!」
「ポタージュ・ビィーム!」
ドッシューーーン!
バゴォォォッッッ!!
モグ・モグーラ「あああああ!!!」
レッド「はぁ、はぁ……よし、ヒットしたぞ……!」
イエロー「博士の言ったとおりだ…一発でエネルギーを使い果たした……」
ブルー「まだよ、モグ・モグーラが逃げてしまうわ!」
モグ・モグーラ「グンダムの足が溶けちゃったグラ!!くっ……緊急脱出グラ!!!!!」
シューーン……
モグ・モグーラ「緊急脱出ポッドを作っといたおかげでなんとかなっ……ん?」
プスッ プスッ……
モグ・モグーラ「ああぁ~……いきおいが足りないグラ~……落ちるぅぅ!!」
ヒューーン………
ドォォォン!!
レッド「しめた、やつが落ちてきた…!今度こそ、つかまえるぞ…!」
モグ・モグーラ「くっ……くそっ……すまないグラ……母上……!!」
ブルー「……待って!つかまえる前に、聞きたいことがあるの。あなたはどうして、野菜ばかりを盗むの?自分の王国を復興するためなら、金品を盗みそうなものなのに……」
モグ・モグーラ「………。お、お前たちに……話す必要は、感じないグラ!!油断したな!!ジェットブーツははいてるのグラ!」
ゴオオオオオ
ビューーーーン……………
レッド「しまった、逃がした……」
イエロー「だが、もう力が入らない……」
ブルー(モグ・モグーラ…あなたは……)
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第16話
「生のわさびを丸かじり」
おばあさん「おじいさんや、調子はどうかねぇ?」
おじいさん「すこぶる調子がいいわい。山菜とりは、ワシも一緒にいこうか」
おばあさん「いえいえ、おじいさんは家にいてくださいな。おじいさんの分までどっさりわさびを取ってきますから」
おじいさん「おお、わさびか!生のわさびを丸かじりするのが、ワシの楽しみなんじゃあ」
おばあさん「わさびは食欲を刺激しますからねぇ。あの抜けるような辛味はクセになりますよねぇ」
おじいさん「ああ、それに殺菌作用だってあるんじゃ。あんな健康的でうまい食材は他にないわい」
おばあさん「じゃあ、行ってきますねぇ。留守番しっかりたのみましたよ」
……
おばあさん「……だいぶ登ってきたかね。ふぅ、つかれたねぇ……」
モグ・モグーラ「おい、ばあさん!」
おばあさん「ひっ!!」
モグ・モグーラ「話は聞いてたグラ。わさびとやらがある場所に案内するグラ」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第17話
「究極のわさびとベジレンジャー」
おじいさんのため、山にわさびを取りにきたおばあさんの前に現れたのは、やはりモグ・モグーラだった。
おばあさん「こ、ここがわさびの群生地だよ……」
モグ・モグーラ「おお、これがわさびか!」
おばあさん「おじいさんの分も、少しだけわけてくれないかい?」
モグ・モグーラ「うるさいグラ!!!人間はだまってろグラ!!!どうせ今日だって、そろそろあいつらが登場するにきまってるグラ……」
ベジレンジャー「見つけたぞーッ!」
モグ・モグーラ「ほーらやっぱり……」
レッド「罪もないおばあさんをおどして山菜を横取りしようとは……!」
イエロー「ほんと、どうしようもない悪党だな」
ブルー「…………」
モグ・モグーラ「お前らが来ることはわかっていたグラ!今日こそ、今日こそ、このマシンで……!お前らを倒してやるグラぁぁ!」
レッド「なっ!? それは!?」
イエロー「小型サイズのグンダム……だと……!」
モグ・モグーラ「ふーっはっはっは!前のは大きかったせいで負けたグラ!今回の改良型グンダムは、ミーをぴったり包むジャストサイズ!それでいて……!!」
ガシャーン!
ドビューン!
レッド「うわッ!」
モグ・モグーラ「装備は原型と同じもの、威力もそのまま!!これぞ史上最強兵器!やはりミーは天才グラ」
レッド「これは…ピンチかもしれん!」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第18話
「小型グンダムに勝つ方法は」
モグ・モグーラの新兵器とは、小型化されたグンダムだった!
どう戦う、ベジレンジャー!?
モグ・モグーラ「はーっはっはっは!!今度こそ、ミーの勝ちグラ!!!」
びゅんっ びゅんっ
おばあさん「ひっ……」
モグ・モグーラ「…ばあさん、何してる。戦いのじゃまグラ、さっさと逃げるグラ!」
おばあさん「ひ、ひぃぃ~……!!」
ブルー「モグ・モグーラ。やっぱり、あなたは……」
モグ・モグーラ「……さあ、今度こそじゃま者はいない。本気でいかせてもらうグラ!」
ドゴッ バキッ!
イエロー「あぶねっ!」
レッド「くそっ、防戦一方だ!このままでは……!」
イエロー「ポタージュ・ビームは!?」
ブルー「ダメよ、あのサイズの相手にぶつけるのはむずかしすぎるわ!」
レッド「だが……ほかに方法がない。やるしかないぞ!」
ブルー「そうね、仕方ないわ…!」
「ベジタボーーー!!!!」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第19話
「その名もコンソメパンチ!」
小型サイズのグンダムに打ち勝つため、ベジポタ・チャームを天にかかげるベジレンジャー。
ポタージュ・ビームを小型グンダムに当てることは可能なのか!?
レッド「他に方法がない。ビームをあいつに当てなくては!」
イエロー「じゃあ、いくぞ……」
<FONT_SIZE_L>「ベジタボーーー!!」
レッド(たのむ、野菜たち……オレに元気を分けてくれ…!)
イエロー(オレたちは、この大地を守らなくちゃならないんだ)
ブルー(アイツにはきっと、何かの思惑がある…それを聞き出したいの。お願い!!)
キィィィィィ………
レッド「な、なんだ、これは……!」
イエロー「チャームじゃなく、オレたち自身に光が集まってくる……」
ブルー「このすみきった黄金色のエネルギーは…ポタージュじゃない…!
イエロー「そう、これは……」
「コンソメ……!!」
レッド「このエネルギーを、3人一緒にモグ・モグーラにぶつけるんだ!」
イエロー「ああ……やってやるぜ!」
ブルー「準備できてるわ!」
レッド「よおおしいくぞあああ!!」
「コンソメ・パーーンチ!」
モグ・モグーラ「な、なんだ……なんなんだ、お前らはぁぁ!!?」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
第20話
「モグ・モグーラの秘密」
ついに、モグ・モグーラをつかまえたベジレンジャー。
気を失っている間に、博士の待つラボに連れて帰ることにしたのだが……。
モグ・モグーラ「う……」
ブルー「あっ、気がついたみたいよ」
モグ・モグーラ「ここは…どこグラ…ミーは、負けたのか……」
レッド「ここはオレたちのラボだ。なあ、モグ・モグーラ。お前に聞きたいことがある。お前が野菜ばかりを盗んでいたのはなんのためだ?」
モグ・モグーラ「………」
イエロー「オレたちはずっとお前と戦ってきたが…お前が盗もうとしていたのは、どれも栄養価の高い野菜ばかり。金品には目もくれずに、だ。何か、理由があるんじゃないか?」
レッド「オレたちも、お前を悪人と決めてかかっていたのかもしれん。理由があるなら、話してくれないか」
モグ・モグーラ「……。…母親のため、グラ……」
ブルー「なんですって?」
モグ・モグーラ「ミーの母親…モグ・モグリーヌ王妃はいま病気で床に伏せているグラ。しかし地下世界は光がささず、栄養のあるものは育たないグラ。だから、人間のものをうばう以外には……なかったグラ」
レッド「そうだったのか……オレたちは、やはり、お前を誤解していたようだ」
モグ・モグーラ「ふん、同情など…」
博士「そうではないぞ、モグ・モグーラ王子よ!!」
レッド「は、博士……!」
イエロー「なんか久しぶりの登場だな」
ーつづくー
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ベジポタ戦隊 ベジレンジャー
最終話
「人とモグラの生きるみち」
モグ・モグラ―がドロボーしていた理由をついに知ったベジレンジャー。
そこに現れたのは、レンジャーたちを見守ってきた博士の姿だった。
博士「モグ・モグラー王子よ。お初にお目にかかる。ワシはベジポタ戦隊の生みの親じゃ。科学者をやっている。おぬしらモグラー族の科学力、しかと見せてもらった。この荒廃した時代・・・・・・おぬしらの技術力は、この世界を救うやもしれぬ。そこでだ!!この荒廃を救うため、人間に協力してはもらえないじゃろうか?大地がうるおい、野菜がもっとたくさんとれるようになったら・・・・・・少ない作物をうばいあうことなく、2つの種族は平和に暮らせる。どうじゃ?悪い話ではなかろう?」
モグ・モグラー「ミーの一族を・・・・・・地上で受け入れてくれるグラ?」
博士「そうじゃ。ワシはこうして、シュミで科学者をやっているが・・・・・・本職は、世界政府の大統領。人間の基本的方針を決められる立場にあるのじゃ」
ベジレンジャー「エーーーーッッ!!」
モグ・モグラー「・・・・・・わかったグラ。ミーたちモグラー族は、人間たちとともに歩むグラ!」
・・・・・・
こうして、悲しい歴史を乗り越えおたがいの手を取り合った人間とモグラ―族。奇跡をなしとげた「ベジポタ戦隊ベジレンジャー」の名は広く世に知れ渡った。だが、まだ油断はできない。
彼らの戦いは、これからが本番なのだから・・・・・・。
ー終わりー
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コロボックル物語

曜日番組名備考追加
コロボックル物語
~序章~
ソクラ「こんにちは、ボクの名前はソクラなの!」
アリス「なんであんたが進行してんのよ。えらそーに」
ソクラ「こ、これはボクのお姉さんなの!ちょっと口が悪いけど根はいい人なの!」
アリス「うざっ。あんたなんかに番組MCなんてつとまるのかしらね?」
ソクラ「ううぅ……姉さんはいじわるなの……」
女神さま「アリス、ソクラをいじめちゃダメよ☆ 今は社会勉強中なんだからいろいろ経験をつませてあげなくちゃ!」
アリス「はい、女神様。私はいじめてなんていません、コイツに教えてあげてただけですよ」
ソクラ「うそなの~!ひどいの、姉さん!」
女神様「ソクラも、いったん落ち着きなさ~い☆
相手の言葉にまどわされず、流されない強さを持てばりっぱなMCになれるわよ~♪」
ソクラ「わかりましたなの!
えーと……次回からは、ボクの書いた日記を少しずつ皆さんに紹介するの!楽しみにしててなの~♪」
―つづく―
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コロボックル物語
~「町へのおつかい1」~
こんにちは、ボクの名前はソクラなの!コロボックルなの!
姉さんといっしょに、女神さまのお世話係として泉で暮らしているの。
女神さま「ソクラ、ちょっとおつかいを頼まれてくれるかしら~?町まで行って、いちごを買ってきて~」
「わかりましたなの!いちごをどっさり買ってくるの!」
こうしてボクは、久しぶりに人間の町へおつかいに行くことになったの!
でもボクは、このときすっかり忘れていたの……。
町には、女神さまの永遠のライバル、魔女さまが住んでるってことを……。
―つづく―
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コロボックル物語
~「町へのおつかい2」~
「ああ、今日もいい天気なの~♪」ボクは、いちごを買うために町までやってきたの。でも……。
「お店がわからないの……」
ボクの姿は普通の人には見えないから誰にもたずねられないの~!ピンチなの~!
おばあさん「いちご~、いちごはいらんかね~」
はっ! このお店、いちごを売ってるの!優しそうな黒ずくめのおばあさんなの!すっごく鼻がとんがってるの。
そーっとお金をおいて、いちごを頂くの!「やったぁ、いちごを買えたの~!」
おばあさん「ふふふふ……」
今、おばあさんが笑ったような気がしたけど……?まあいっかなの!
さあ、女神さまの泉に急いで帰らなくっちゃなの!
―つづく―
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コロボックル物語
~「町へのおつかい3」~
「ただいまなの、女神さま!いちごを買ってきたの~♪」
女神さま「あら、ソクラ。ありがと~♥ひょいぱくっ!」
女神さま「あ、あらら……?あららららららら」
「女神さま、どうかしたの?」
ぽわんっ
女神さま「おい、ソクラ!!てめぇ何買ってきやがったんでぇ!!」
「きゃあああああ!!!」
め、女神さまが、お、お、おじさんのような野太い声に!
というか人格がちがうの!べらんめぇ口調なの!こんなの女神さまじゃないの!!
アリス「女神さま~!どうしたんですか!
ソクラ、あんたいったい何やらかしたのよっ!」
「わ、わからないの~!ごめんなさいなの!いちごを食べたら、こうなったの!」
―つづく―
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コロボックル物語
~「町へのおつかい4」~
アリス「いちごを食べたら、女神さまがおっさんに変化したですって?
……てことは、いちごを売った人があやしいわね……」
「あ、あやしくなんてないの。優しそうな黒ずくめのおばあさんだったの」
アリス「おバカ!!」ぽかっ!「あいたっ!」
アリス「黒ずくめ=魔女の好きな色おばあさん=魔女の変装それ、かんっぺきに魔女のしわざでしょ!」
「あっ……!」
そうなの、全然気づいてなかったけど今から思うと全身黒ずくめはあやしいの。きっと、魔女の化けた姿だったの!
女神さま「おうおう、やっぱり魔女のしわざだったのかよ!
許せねぇ……よくもオレの金を!ぜってぇ返してもらうぜ!」
アリス「のろいの方を心配してください、女神さま」
女神さま「おう、そうだったぜぇ!オレの本気を見せてやる! のろいの元がわかればこっちのもんだぜ!!」
―つづく―
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コロボックル物語
~「町へのおつかい5」~
チュン チュン ―
「ん? なの……?」
いつの間にか、ボクは泉のそばで姉さんといっしょに寝ちゃってたの。
女神さま「起きた? ソクラ」「あっ、女神さま!」
いつもの女神さまなの。あれ?ボク、いちごを買いに行って……
うーん、何か大変なことが起きたような気がするけど、思い出せないの……。
女神さま「ありがとう、ソクラ。いちご、おいしかったわよ♪」
えっ、ボク、いちごを買えてたの?……うん、買えたような気がするの。
女神さま「……よしよし、ちゃんと消えてるわね♪」
「ん、女神さま何か言ったの?」女神さま「な、なんでもないわよ!!うふふふふふふ!!!!」
………………………
その後、この日記を開いたボクは、自分の身に何が起きたか想像がついたけれど……。
…それは女神さまにはナイショにしておくことにしたの!
ちなみに、悪事がバレた魔女さまはこのあと女神さまに、オソロシイ仕返しを受けたらしいの……。
―つづく―
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コロボックル物語
~「森の落し物1」~
こんにちは、ボクの名前はソクラなの!コロボックルなの!
姉さんといっしょに、女神さまのお世話係として泉で暮らしているの。
今日も元気に森で動物さんたちと遊んでいたときのこと……。
「あいたっ!なにかにつまずいてしまったの……」
森を走っていたボクは、大きな何かの骨にけつまずいたの!
「これは何の骨なの?イタチさん、わかるの~?」イタチ「キィッ、キィッ!」
イタチさんによると、これはむかーしむかしの化石らしいの……!
まさか……恐竜の化石なの!?前に本で読んだことがあるの!
たしかに、恐竜のあたまの部分によく似ているの!そうにちがいないの!
「大発見なの~!」すぐに女神さまに知らせなくっちゃなの!
―つづく―
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コロボックル物語
~「森の落し物2」~
「姉さん、ボク、恐竜の化石を見つけたの!」
アリス「恐竜ですって?はぁ~あ……男って、いつまでたっても子供ね! アンタに教えといてあげるわ。
こういう森林では化石は残りにくいのよ。まして恐竜の化石なんて……ばっかじゃないの」
「うっ……で、でも、これは、まちがいなく恐竜の頭の化石なの!」
ボクが化石を見せると、姉さんの顔がみるみるおどろきの表情に変わっていったの。
アリス「なんですって!これはたしかに恐竜の頭だわ!ずいぶん小型恐竜のようだけど……」
姉さんがボクを押しのけて、恐竜の骨をたしかめるようにさわったあとふぅ…っとため息をついて言ったの。
アリス「これは…すごい発見だわ……!さっそく女神さまに報告しなくっちゃ!」
やったぁ、姉さんに認めてもらえたの!女神さまにもジマンしなくちゃなの~!
―つづく―
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コロボックル物語
~「森の落し物3」~
森で世紀の大発見をしたボクは、姉さんといっしょに急いで女神さまのもとに向かったの!
「女神さま~!」「女神さま~!」
アリス「女神さま女神さま、これ恐竜の骨ですよね!?私が今日森で発見して……」
「ちがうの、ボクが見つけたの!」アリス「なに言ってるのよ、私が見つけたのよ!」
女神さま「あら、それ、魔女の魔術道具じゃないかしら?」
…………
……………
……………………。ゴトリ。
アリス「……アンタがっ、アンタがこんなもの拾ってくるからっ!」
「ね、姉さんだって信じてたの!」ああ、ボクのロマン、短かったの……。
女神さま「きっと、魔法の失敗で森に飛んできたのね~。
こんなもの、持ち主のところに強制返却しちゃうわよ~えいっ☆」
バッシューンと音を立てて恐竜の骨は持ち主のところに戻っていったの……。
―つづく―
編集
コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問1」~
こんにちは、ボクの名前はソクラなの!コロボックルなの!
姉さんといっしょに、女神さまのお世話係として泉で暮らしているの。
アリス「ソクラ、あんたちょっと、森に行ってきのこを集めてきてちょうだい」
「はーい! いってきますなの~♪」姉さんに言われて、ボクはきのこを集めに出かけたの!
「るーるる♪ るるる♪ るーるる♪るるるるーるーるーるーるー♪」
森の動物たちと楽しくおしゃべりしながら、きのこをとっていると、後ろから黒いカゲが突然現れたの!
魔女さま「なーに、アンタ、女神んとこの使いっ走りじゃない」「……きゃーーーっ!!」
こ、これは、女神さまのライバルである魔女さまにソウグウしてしまったかもしれないの!!
いやーっ、なにされるかわかんないのー!
―つづく―
編集
コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問2」~
森にきのこをとりに出かけたボクはなんと、あの魔女さまとソウグウしてしまったの!
魔女「ちょいちょい、待ちなさいよ。何もしないわよ」
「ほ、ほんとに何もしないの……?」魔女「しないわ。弱いものいじめなんて」
な、なんだか、イメージが少しちがうの!思ってたよりもいい人かもしれないの!
魔女「そうだわ!アンタ、ちょっとウチに寄りなさいよ」「えっ?」
魔女「わたし、女神と仲悪いからさ、アンタたちとお話もしたことないでしょ?一度お話ししてみたいと思ってたのよ!」
ひょっとしたら、これをキッカケに女神さまと仲良くなってくれるかもしれないの!
「わかったの!おじゃましますなの~♪」
このときボクは、後ろからついていったから魔女さまがどんな表情をしているのかわからなかったけど……
もしも魔女さまの笑みをこのとき見ていたら絶対についていかなかったの……!
―つづく―
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コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問3」~
「おじゃましまーす、なの……」
魔女さまのおうちの中は、何か変な液体?のニオイとけむりで満たされていたの。
それにガラスびんに入ったアレは……み、見ないでおくの!
「ううう……不気味なの……」
魔女さま「おーほほほ、それはほめ言葉と受け取っておくわ!!それにしても……」
魔女さまが、じぃっとボクを見てるの!……こ、こわいの!
魔女さま「せっかく家まで来てくれたんだし、何かおみやげをあげなきゃね。
ほら、あんたたちってきのこが好きなんでしょ? これ、あげるわ」
あああああーーーーーー!!!こ、これは、トリュフなの!!!ボクの大好物なの!!
「ありがとうなの~!!」お礼を言って飛びつこうとしたら、サッとトリュフを取り上げられたの。
魔女さま「このトリュフがほしければ……女神の弱点をわたしに教えなさい!」「ええっ!!!」
―つづく―
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コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問4」~
魔女さまの家におじゃましたボクは、トリュフがほしければ女神さまの弱点を教えろと、魔女さまに迫られたの!
「め、女神さまに、弱点なんてないの……」
魔女さま「あの泉で一緒に暮らしてるんなら弱みのひとつやふたつ知ってるはずよ!
あの性悪女……いつもいつも、わたしをバカにして!!」
……!「そんなことないの!女神さまはとってもさみしがりやで……
泉が山奥にあるせいで、人が来なくてさみしいから……
魔女さまに魔法でいたずらされた時も、本当はちょっとうれしそうなの!」
魔女さま「……アンタ、女神をほめてるの、けなしてるの?」
「それに、自分のキライなものが泉に投げ込まれたらボクにくれるの!とっても優しい神さまなの!」
魔女さま「ゴミ処理係じゃないの……」
女神さま「ぱんぱかぱ~ん♪おじゃまするわ~!」
魔女さま「女神!?どうしてここに?」
突然、魔女さまのおうちのドアを勢いよく開けて入ってきたのは、なんと女神さまだったの!
―つづく―
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コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問5」~
女神さま「うちのかわいいソクラがおじゃましてると思うけど~、
長居すると悪い影響を受けるから連れ帰りに来たわよ~♪」
女神さまがボクを連れ帰りに来てくれたの~!
魔女さま「アンタ、いつからいたのよ!」
女神さま「『あの性悪女』ぐらいからかしら~?」魔女さま「最初からじゃない……」
「女神さま!」ボクはうれしくなって、女神さまに飛びついたの!
女神さま「ソクラ、さあ、帰りましょ♪」「はーいなの!女神さま、ボクの話聞こえてたの?
ボクが女神さまのこと、大好きだって伝わったの?」
女神さま「え、ええ……痛いほど伝わったわ!」
魔女さま「うそつくんじゃないわよ、こめかみがピクピクしてるじゃない」
女神さま「さあさあホラふきは放っといて帰りましょ♪」
でも、帰ろうとした女神さまとボクを魔女さまがとおせんぼしたの!
魔女さま「帰さないわよ! そいつは、わたしのしもべにするんだから!」
―つづく―
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コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問6」~
女神さまが迎えに来てくれて、ボクは魔女さまのおうちをおいとましようと思ったんだけど……
魔女さまがボクのことを、「しもべにする」って言ってとおせんぼしてきたの!
女神さま「今何て言ったのかしらぁ~?よく聞こえなかったわぁ~?」
魔女さま「だから、そいつをしもべにするって言ってんのよ!
アンタんとこは二人もいるんだから一人よこしなさいよ!」
女神さま「イ・ヤ・よ。あなたにどうして私のお世話係をあげなくちゃいけないのよ」
魔女さま「ほーらコロボックル、わたしのとこにくれば、毎日トリュフが食べ放題よ~?」
!!それはすごいの!!
―つづく―
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コロボックル物語
~「魔女さま宅訪問7」~
魔女さまのしもべになれば、トリュフが毎日食べ放題と聞いて、ボクの心はゆらいだの!
でも……。
「ボクはいいの!ずーっと、女神さまのお世話係をやるの♪」
女神さま「当然よね~♪じゃあ帰りましょ!」魔女さま「……っ」
そのとき、ボクは見たの。いっしゅんだけ魔女さまがさみしそうな顔をしたのを。「……また遊びに来るの!またねー、なの!」
魔女さま「……まあ、たまになら遊びに来てもいいわよ!女神の弱点情報を手みやげに持ってくるならね!」
こうしてボクは、ぶじに泉に帰れることになったの!
魔女さまのおうちは、怖かったけど……女神さまとのキズナが、もっと深くなった気がするの!
これからもボクは、あの泉で女神さまと姉さんと暮らしていくの!
女神さま「…ときに、ソクラちゃん。
魔女にいたずらされて私が喜んでるっていったいどういうことかしら!?」「ひいっ、ごめんなさいなの!」
―おわり―
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新米探偵カナコ(再)

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新米探偵カナコ(再)
第一話 新米探偵カナコ
「今日もヒマだなぁー」
もう夕方になろうとしているのに今日もお客さんは誰も来ないようである。
この場所で探偵を始めてから、もう一月が過ぎたのに、まだお仕事はまったく来ていない。そりゃヒマなはずである。
そうそう、私の紹介が遅れてしまった。
私はこの事務所で飼われているネコである。
名前はニャン太郎。
少しダサい名前ではあるが、ご主人様がこう呼ぶので仕方がない。
本当はシャルロットやジェニファーと呼んで欲しいのだが…。
話がそれてしまった。
この事務所の新米探偵で、私のご主人様が、さっきからソファーでヒマそうにしているこの女性だ。
「z……」
「ZZZ…」
とうとう寝てしまったらしい。
この、仕事中に寝ている人が私のご主人様である。
名前はカナコ。
今年でもう23才になるらしいが彼氏はずっといないらしい。
まぁ、世の中に物好きはいないと言うことか。
まぁ、ご主人様に彼氏がいなくても私には関係ないが、そろそろお仕事をしてもらわなければ、私のゴハンが心配なのだ。
最近は毎日”ネコまんま”が私のゴハンである。
ネコ缶がなつかしいのである。
「すいませーん!!」
あっ! お客さんだ!
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第二話 初めてのお仕事
カナコ「いらっしゃいませー」
どうやら初めてのお客さんのようである。ご主人様、がんばってくだされ。
お客「○×新聞とって欲しいんですけどー。今なら洗剤サービスしておきまs」
カナコ「ケッコウデス!!!」
はぁ、どうやら新聞の勧誘だったらしい。
ご主人様の背中が非常に寂しそうである。
今日もお客さんは来ないかもしれないのである。
<ガシャーーーン!!>
すごい音をたててドアが開いたのである。
「うちのぺロちゃんを探して!」
カナコ「ぺロちゃん?」
お客「昨日から帰ってこないの。うちの子、優しい性格だから、今頃どこかで泣いてるザマス。」
とうとうこの事務所で初めてのお客さんが来たようである。
カナコ「詳しく聞かせてください。」
お客「昨日、散歩の途中で、私のかわいいペロちゃんがいなくなってしまったザマスの!」
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第三話 ペロちゃん
カナコ「おまかせください。すぐにペロちゃんを探し出します!」
お客「お願いするザマス!」
どうやら迷子になったイヌを探すお仕事が来たらしい。がんばれ、ご主人様。私の晩ゴハンのために。
カナコ「さぁ、探しにいくわよ!一緒においで!」
ぬな? 一緒についてこいと?
カナコ「ニャン太郎! 急ぎなさい!」
どうやら本気で私を連れて行くようである。
ご主人様、イヌ探しにネコを連れて行くのですか? それはあまりにも私がかわいそうではありまっああっ!!
むりやり抱き上げられてしまったのである。
イヌは嫌いなのに…。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第四話 イヌ探し
カナコ「えーっと、イヌちゃんの特徴は…」
カナコ「まず名前がジョンでしょ。」
イヌっぽい名前であるな。
カナコ「そして、色は白いろでー」
白いイヌであるか。
カナコ「で、土佐犬なのよねー」
!!!!!!
土佐犬とな???
あの大きくて怖い、イヌの中でもキョウボウで有名な…
ニャン太郎「ニャニャフニャーー!!」
「フニャニャニュニャー!!!」訳)かんべんしてくれ!!助けてくれご主人様!!
カナコ「あら、どうしたの?ニャン太郎突然あばれ出して。」
ニャン太郎「ニャフニャーー!!」訳)土佐犬はイヤー!!
さて、ニャン太郎の運命やいかに?
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第五話 土佐犬との出会い
私の名前はニャン太郎。
新米探偵のカナコと、迷子になった土佐犬を現在ソウサク中である。
もう逃げ出すことはあきらめた。
ご主人様に体をがっちりとつかまれているので、脱出することが出来ないのである。
あとはご主人様がイヌを発見しないように祈るのみである。
カナコ 「あー土佐犬だーー!!」
土佐犬 「ガルルルルッ!!」
なんてこった。
ご主人様、土佐犬を発見してしまったようである。
こうなったらこのイヌが、探しているジョンとは人ちがい、いやイヌちがいであることを祈るのみである。
カナコ 「あなた、ジョンでしょ!?」
土佐犬 「わぅ!!」
あぁ、どうやらジョンである。
カナコ 「ジョン! こっちおいで!!」
ジョン(土佐犬) 「わうわぅ!!」
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第六話 お仕事完了!
カナコ 「ほら、捕まえた!!」
ジョン(土佐犬) 「わぅわぅ!」
ご主人様、これでお仕事完了ですね。
私は先ほどから、体のふるえが止まりません。
だって、目の前に土佐犬がいるんですもの。
<べろっ>
あぁ!!なめられました!!
あわわゎ
ごしゅじんさ…ま……



はっ!!
とっ土佐犬は!?ここはどこ??? 天国????
お客 「ジョンちゃーん、会いたかったザマスわー」
ジョン(土佐犬) 「わおん!」
カナコ 「よかったですね。」
お客 「ありがとうザマス。お礼ははずんでおくザマスわ」
カナコ 「ありがとうございます!
またよろしくおねがいしまーす。」
つづく
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第七話 そして今晩のゴハン
あぁ、ここは事務所か。
どうやら私は気を失っていたようである。
ご主人様の初仕事は無事に終わったようであるが、私はひどい目にあったのである。
本当なら、ご主人様の足をガブッといきたいところだが、今は仕返しはガマンガマンである。
だって、ご主人様には、お仕事のホウシュウが入ったからである。
今晩はきっとネコ缶くらいは食べさせてくれるのである。
ニャン太郎 「ニャ~ン」
カナコ 「ニャン太郎、どうしたの?」
ニャン太郎 「ニャニャ~ン」
カナコ 「あっおなかすいたのね。ちょっとまっててね。」
<ガサッゴソッ>
カナコ 「はい、おまたせ!」
ニャン太郎 「……」
最近は毎日”ネコまんま”が私のゴハンである。
ネコ缶への道のりはまだまだとおいのである。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第八話 ご主人様の日常
私はネコのシャルロットである。
えっ?ニャン太郎じゃないかって?
まぁ良いではないか。
前回はこの探偵事務所に初めてのお仕事が来たのだが、予想通り次のお仕事がなかなかこないのである。
この機会に、ご主人様のカナコをより詳しく紹介したいと思っているのである。
まず、名前はカナコ。
みなさんもご存知のとおりである。
今年で23才になるのであるが、全然彼氏ができないらしい。
先月からマンションの1Fを借りて、自分で探偵事務所を開いたのだが、お客さんはまだ1人なのである。
早く大ハンジョーして、毎日あこがれのネコ缶を食べたいものである。
お仕事…来ないかな……。
毎日毎日、”ネコまんま”が私のゴハンである。
ネコ缶をそろそろ味わいたいものである。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第九話 2つ目のお仕事
「たすけてっ!!」
とつぜん事務所に女の人が飛び込んできたのである。これは事件だ!
カナコ 「どうしました?」
お客 「変な人がついてくるんです。」
ご主人様は事務所を飛び出して、周りの状況をうかがい、異常がないことを確認してから、事務所に戻ってきた。
カナコ 「だいじょうぶ。誰もいないわ」
お客 「最近、変な人がずっと私の後をつけてくるんです。」
「おねがいします。犯人を捕まえて下さい。」
カナコ 「わかりました。かならず犯人を捕まえます。あっ、私は探偵ですから、タイホは出来ませんけどね。」
こうして探偵事務所に2件目のお仕事がきたのである。
つづくのである。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第十話 ストーカー
お客 「私の名前は、アヤコって言います。OLです。」
カナコ 「私はカナコ。まだ新米の探偵だけど、犯人はかならず捕まえてあげるわ。」
アヤコ 「よろしく、カナコさん。」
カナコ 「じゃあ、今日からすぐにアヤコさんの周りを張り込むわ。」
カナコ 「行くわよっ! ニャン太郎!」
どうやら今回も私を連れて行くようである。
ご主人様、張り込みにネコは関係ないんじゃないんですか?
それはあまりにも私がかわいそう
ではありまっああっ!!
むりやり抱き上げられてしまったのである。
タイクツは嫌いなのに…。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第十一話 張り込み
張り込み開始から、3時間あまりが経過した。
カナコ 「あやしい人はいないわね」
そう、さっそくご主人様はアヤコさんのマンションの前で張り込みをしているのである。
アヤコさんの話では、マンションの前にもあやしい人がいるらしいので、こうやって夜中に張り込みしているのである。
カナコ 「まだ油断はできないわ。アヤコさんが会社に出勤するまでは、このまま張り込みを続けるわ」
張り込み開始から、6時間あまりが経過した。
(いい加減飽きてきた)
カナコ 「ふわぁぁぁ~」
「あやしい人はどこにもいないわね。今日はお休みかしら」
そのとき、あやしい人影が、マンションの駐車場から現れたのである。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第十二話 あやしい影
カナコ 「あのひと、アヤコさんの部屋をみてるわ」
あやしい人影は、アヤコさんの部屋の方向を見ていた。
カナコ 「いちかばちかね」
ご主人様はそう言って、あやしい人影に向かって走り出した。
カナコ 「あなた、ちょっとお話聞かせてちょうだい!」
あやしい人影 「くそっ!」
そう言って、あやしい人影はとつぜん逃げ出し始めたのである。
カナコ 「待ちなさい!!」
ご主人様は、あやしい人影に向かって走り出したのである。
ここは私も追いかけなければ。
ニャン太郎 「ニャーー!!」
次回、どうなる??
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第十三話 逃走
逃げるあやしい人影!!
追いかけるご主人様!!
カナコ 「まちなさい!」
少しずつ、あやしい人影とご主人様との距離が引き離されていく。
カナコ 「はぁはぁ、待ちな…さ……い……」
カナコとあやしい人影との距離はどんどん引き離されていく。
あやしい人影 「どうやら逃げきれたようだな。」
そのときっ!!
「ニャーーーーーー!!」
私がなんとか追いついたのだ。
<ガリッバシッ>
あやしい人影 「ぐわぁーー。」
私の得意のネコパンチがサクレツしたのだ。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第十四話 ネコパンチ!
私のネコパンチがHITして、あやしい人影はその場にすわりこんでいる。
もう逃げる気力もないようだ。
カナコ 「よくやった! ニャン太郎。」
ニャン太郎 「ニャー!」
やっとご主人様が追いついてきたようだ。
さぁご主人様、犯人を捕まえちゃうのである。
カナコ 「もう逃げられないわ。」
あやしい人影 「まだ何もとってねえよ。」
カナコ 「へ? あなた、アヤコをつけてたストーカーでしょ?」
あやしい人影 「なんだそりゃ?俺はちょっと盗みに入っただけだ。アヤコなんて知らねーよ」
カナコ 「うそぉ~。」
次回、真犯人が明らかに!
つづく
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第十五話 真相は…
結局あの夜、ご主人様と私が捕まえたのは、マンションに忍び込もうとしていたドロボウだったのである。
カナコ 「明日からは、また真犯人を探さないとダメね。」
もう張り込みはかんべんしてほしいのである。
そのとき、
アヤコ 「こんにちは~。」
カナコ 「あら、アヤコさん。」
アヤコ 「あの、実はね………」



カナコ 「ええーーーそうだったの?」
アヤコ 「ごめんなさいね。」
カナコ 「いいのよ。また何かあったら、よろしくね。」
んん?いったい何があったのか?
つづく
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第十六話 そして今日も…。
アヤコさんの衝撃の告白!!
いったい何だったのであるか?
カナコ 「カン違いだったんだって。」
ニャン太郎 「ニャ?」
どうやら、アヤコさんがストーカーだと思っていたのは、実家から出てきたお父さんだったらしいのである。
娘のことが心配で、毎日アヤコさんのことを後ろからつけてたのである。
結局今回の事件では、ケイサツにもらったドロボウの逮捕に協力した感謝状が残っただけである。
つまり、事務所はもうかってないわけであり、今晩の晩ゴハンはやっぱり…
カナコ 「ゴハンよ。ニャン太郎!」
こっこれはキャットフード!!
カナコ 「今回は活躍したから、特別にごほうびよ」
ニャン太郎 「フニャーー!!」
<ムシャムシャ>
今日は久しぶりにキャットフードが私のゴハンである。
うーん、美味いのである。
つづく
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第十七話 私のゴハン
今日も事務所はお仕事がないのである。
だから、今回は特別に私の大好きなゴハンを紹介しようと思っているのである。
私の一番大好きなゴハンは、全国のネコがみんな夢見る、○×印のネコ缶である。
まったりとして、かつコクのあるやみつきの味である。
最近はめっきり食べていない。
そして2番目に好きなゴハンは、定番のキャットフードである。
ネコ缶には劣るものの、そのカリカリ感と味のキレは、全国のネコも納得の一品である。
最近、少しお目にかかれるようになってきたのである。
嬉しいのである。
そして、3番目に好きなゴハンは
…。
ネコまんまである。
私はあまりスキではないのであるが…。
これはゴハンにかつお節をかけた物で、最近はいつもこれである。
ネコ缶がたまには食べたいのである。
つづくのである。
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第十八話 私のゴハン2
前回に引き続いて、今回も私のゴハンを紹介するのである。
前回出てこなかったのであるが、私は生のお魚も大好きである。
昔は、ご主人様もたまに食べさせてくれたのであるが、ある事件のあとから、ご主人様は私には食べさせてくれないのである。
その事件とは…。
私がまだ子ネコだったころ、ご主人様の晩ゴハンのお魚を横取りしたのである。
今思えば、なんと無茶をしたのであろう。
当然の結果ではあるが、その後、むちゃくちゃ怒られたのである。
それ以来、ご主人様はお魚をくれないのである。
あぁ、サンマ食べたいのである。
つづく
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第十九話 さがしもの
「すいませーーん。」
ほほう、お客さんのようである。
かなこ 「どうされました?」
お客 「指輪を探して欲しいんです。」
かなこ 「お任せ下さい。詳しいお話を聞かせて頂けますか。」
どうやらお仕事のようである。
今回は落し物を探す仕事みたいである。
この仕事が成功すれば、あこがれのネコ缶を買ってもらえるかも知れないのである。
かなこ 「わかりました。それでは、通勤ルートが一番あやしいですね。」
お客 「よろしくお願いします。とても大切な指輪なんです。」
かなこ 「お任せ下さい。探しに行くよ、ニャン太郎!」
ニャン太郎 「……」
どうやら、今回も私を連れて行くらしいのである。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第二十話 探し中
かなこ 「ニャン太郎!最初はこの川から探しましょ!」
ニャン太郎 「ニャ!」
かなこ 「じゃあ、いくわよ!!」
ニャン太郎 「ニャ?」
ご主人様。なぜ私の体を持ち上げるのですか?
もしかして…。
いや、まさか…。
<ジャプーーン!!>
ニャン太郎 「フニャニャニュニャー!!!」
訳)ネコは水が嫌いなのにーー
かなこ 「ほら、ニャン太郎。探して!」
ニャン太郎 「フニャニャニュニャー!!!」訳)しーーーずーーーむーーー
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第二十一話 イヌではない。
かなこ 「ニャン太郎、あなた泳げなかったのね。ごめんね。」
ニャン太郎 「フニャーー。」訳)コロスキデスカ…
かなこ 「どうやら川には無さそうね。次は駅の方を探すわよ」
ニャン太郎 「フニャ…。」訳)好きにしてください…
~~~~駅ソウサク中~~~~
かなこ 「駅にも無いわねぇ。」
かなこ 「ニャン太郎、このニオイで指輪を探してちょうだい。」
ニャン太郎 「……。」
ご主人様。ニオイで探すのはイヌでございます。
ネコには無理です…。
そして、ハナにハンカチを押し付けないで下さい。
かなこ 「ほら、ニオイをかいで!」
……。
つづく
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新米探偵カナコ(再)
第二十二話 ひどい…
私はニャン太郎である。
前回、ご主人様に、クンクンさせられたのである。
くつじょくである。
かなこ 「どこにも無いわねぇ。」
かなこ 「一度、事務所に戻りましょう。」
やっと帰れるのである。
もうコリゴリである。
かなこ 「指輪、どこにあるのかしら。ケイサツのようには見つからないわね。」
ニャン太郎 「!」
ニャン太郎 「ニャニャニャー!!」訳)ケイサツ????
もしかして…
<ガシャーーーン!!>
すごい音をたててドアが開いたのである。
お客 「ごめんなさい!!!ケイサツに落し物で届いてたの!!」
お客 「慌ててたから、ケイサツに聞くの忘れてたの。」
かなこ 「……」
かなこ 「……」
かなこ 「……」
ご主人様。
カオがオニのようです…。
つづく
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第二十三話 最終回
今回も散々だったのである。
どうやら、ご主人様はこの仕事には向いていないようである。
かなこ 「まぁのんびり行きましょ」
ニャン太郎 「ニャ」
あせらずゆっくり行くのが一番なのである。
ご主人様。がんばってくださいなのである。
かなこ 「そろそろゴハンの時間ね。」
ニャン太郎 「ニャーー!」
<ガサッゴソッ>
カナコ 「はい、おまたせ!」
ニャン太郎 「……」
今日もゴハンは”ネコまんま”である。最終回なのに…。
ご主人様。のんびり行くのもいいのであるが、やっぱり少しは急いで欲しいのである。
ネコ缶のユメは、まだまだユメのままなのである。食べたいのである。
おしまい
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来週からは、「機動創世伝 サイキョウオーZERO」の再放送をお送りします。
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)

曜日番組名備考追加
機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第1話 Xday
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第1話 Xday
今日は12月25日、クリスマスの日。
そして…あかね、あおい、きいろ、みどり4人の誕生日でもある。
で、今4人は毎年恒例!
4人の家族がみんな集まってのクリスマス&4人の誕生日パーティーの準備をしている真っ最中なのだ。
「ねぇ~」
いきなり部屋の装飾をしている3人に向かって声をかけるきいろちゃん。
「ん? なに?」
(ちなみに、あかね、あおい、みどりの3人が装飾係で、きいろちゃんはお料理担当。今は休けい中だから話しかけたんだよ)
「ん~。あのね~」
つづく
予告
去年の12月25日。あの雪のふるクリスマスの日から、4人の闘いは始まった。
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第2話 White snow
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第2話 White snow
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第2話 White snow
「ん~。あのね~あたしたちがサイキョウオ~を手に入れて、ちょうど1年になるのか~って思って、何となくね」
「そうか…そうだったね」
あかねくんはそう答えながら、ふと窓から外をみてみる。
午前中は晴れていたはずなのにいつのまにか雪がぱらぱらとふっている。
去年のクリスマスと同じように…そう、ぼくたちがサイキョウオーを手に入れたのは、ちょうど1年前。
今日と同じく雪のふるクリスマスの日のことだった…
つづく
予告
他人とは違う特別な存在。4人は、それを運命と諦める事しか出来ないのか。
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第3話  Last year
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第3話 Last year
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第3話 Last year
ちょうど1年前。
ぼくたちは今と同じく、4人の家族がみんな集まってのクリスマス&4人の誕生日パーティーの準備をしていた。
~~~~~~~~~~~~~~
「あ~あ、毎年毎年嫌になっちゃうよね~」
「ん? なにが?」
「あたしたちさ~、み~んな、うまれたの12月25日じゃない。
クリスマスパ~ティ~と誕生日パ~ティ~を、いっしょにまとめてされてるからさ~もらったプレゼントもクリスマスのだか誕生日のだか…とにかく他の人よりプレゼントをもらえる回数は少ないんだよね~」
つづく
予告
繰り返される歴史。どうにもならない現実。
それでも進まなければ何も始まらない。
次回
機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第4話 Present
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第4話 Present
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第4話 Present
「この日だけで、2個いっぺんにプレゼントがもらえる、とかだったらいいんだけど…そういうわけにもいかないだろうしね」
「そうそう。プレゼント2つ、とまでは言わないからさ、何かふつうとは違う大きいものとかでもいいから、何かほしいよな」
「そうですね」
「やっぱりみんなもそう思うよね~」
12月25日、みんなが集まるパーティーの準備をしているときに毎回、同じようにくりかえされている会話。
でもこの年、いつもとは違う、本当に大きなクリスマスプレゼントが待っていようとは、このときの4人には、知る由もなかったのでした。
つづく
予告
早過ぎた結末。だがそれは、新たな闘いへの序章に過ぎなかったのか。
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第5話 Spark
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第5話 Spark
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第5話 Spark
「よし。準備かんりょ~」
「意外とはやく終わったね。毎年やってることだから、なれてきちゃったのかな?」
「でもどーする? 親たちが帰ってくるまでには、まだまだ時間があるぜ」
時計は、3時ちょっとすぎたところをさしている。親が帰ってくるまでには、少なくともあと3時間はあるだろう。
「そ~だね~。みんなで外出てあそぶ?」
「でも外は、雪がたくさんふり続いてるようですよ」
「ほんとだ」
みんなが窓の外を見たとき、『ぴかぴかっ!!』と、いきなり謎の光が!
つづく
予告
光あふれる未来への扉。その先に見えるものは希望か、それとも絶望か。
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第6話 Hurry up
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第6話 Hurry up
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第6話 Hurry up
みんなが窓の外を見たとき、いきなり謎の光が!
「な、なに~? いまの~?」
「太陽の光、ということでは無いようでしたけど…」
「それじゃ一体?」
「外に出て、見てみようか?」
「おう!」×3
4人が急いで外に出て見てみると、学校から謎の光があふれていた。
「学校が…火事、なのか?」
「いや、学校よりももっと向こう…裏山のようです」
「よし、みんな裏山まで行ってみよう!」
4人は裏山に向かって走っていくのでした。
つづく
予告
4人はただ進むだけだった。その先に、強大な敵が待っているとも知らずに…
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第7話 Arrive
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第7話 Arrive
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第7話 Arrive
謎の光が出ているらしい裏山に向かう4人。
「でもあの光ってるのさ~、なんか火事って感じじゃないよね~」
「うん、そだね。でもなんなんだろう?あの光」
「いってみりゃわかるんじゃねーの?」
「では、いそぎましょうか」
「おう」×3
ざっざっざっ…
ふりしきる雪の中を進んで行く4人。
しばらくすると、学校の校門前にとうちゃくする。
「ふぅ、光が出てるのはこの向こうだね。何がでてくるのかはわからないけど、ここからは慎重にいこう」
つづく
予告
強き想いは新たな出会いを引き寄せる。その出会いに光明を見出せるのか。
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第8話 Discovery
伝説は、ここからはじまった…
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第8話 Discovery
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第8話 Discovery
学校からさきの道は慎重に進むことにした4人。
「一体何があるんだろ~。たのしみだな~。わくわく」
って感じでしばらく裏山をのぼっていくと、光はだんだん強くなっていく。
やはりこの裏山の中、それもここからかなり近い場所に、光を出しているものの本体があるようだ。
そして…
「あ! あれかな~?」
先頭を行くきいろちゃんが、光をだしているものを見つけたみたいです。
他のみんなが見てみると…
つづく
予告
それを見たものは理性で感情を押さえられなくなる。後は本能のおもむくままに…
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第9話 Visitor
伝説は、ここからはじまった…
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第9話 Visitor
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第9話 Visitor
先頭を行くきいろちゃんが、光をだしているものを見つけたので、みんなも見てみると…
「何、あれ?」
「人…ですか?」
そう、光っているのは人のかたちをしたもののようだった。
「ひょっとして…宇宙人…ですか?」
「ということは、こいつは地球をしんりゃくしにきたんだな?」
「だったら~、今のうちにやっつけちゃった方が人類のためだね~」
「やっちまうか?」
4人はとりあえず地球の平和を守るため、この光る人をやっつけようと決めたとき…
『まって!』
「!!」×4
つづく
予告
許されない想い。それでも確実に加速してゆく。ぼくらは今、ここに生きている。
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第10話 Voice
伝説は、ここからはじまった…
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第10話 Voice
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第10話 Voice
4人がこの光る人をやっつけようと決めたとき、その声が聞こえてきた。
『まって!この星にうまれた子供たち』
「!! 今の声って…やっぱりあの光る人からだよね~?」
「だと、思うけど…」
「でも今の声、『まってくれ』とか言ってたみたいだぜ?」
「何かわたしたちに言いたいことでもあるんでしょうか?」
「きいてみよっか~?」
「そだね、死ぬ前にひと言くらいはしゃべらせてあげよう」
『…………………………………あ、ありがとう』
つづく
予告
真実はいまだ闇の中。しかし、刻一刻と、確実に破滅の時は迫っている。
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第11話 Mystery
伝説は、ここからはじまった…
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第11話 Mystery
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第11話 Mystery
光る人は、4人に向かって話し出す。
『じつは…この星が大変なことになりそうなの』
「大変って?」
『謎の宇宙生物フロギストンがこの星に近づいているの。あれが来れば、1か月もしない間に、全てのものが燃やしつくされてしまうでしょう』
「そんな…それは本当なのか?」
『はい…残念ながら…』
「何か手はないんですか?」
『はい。わたしがきたのはそのため、あれに対抗するためのものを、あなたたちにわたすためなの』
「わたしたちに?」
『はい。これです!』
つづく
予告
終わり無き闘いの連鎖。強さを求めてさまよう者たちが、ここに集結する。
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第12話 Strong
伝説は、ここからはじまった…
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第12話 Strong
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第12話 Strong
「なにをくれるの~?」
『はい。これです!サイキョウロボ×4』
4人の前にあらわれたのは大きな人型のロボット4体。
それぞれ色が違って、赤・青・黄・緑となっていた。
「でか! それになんかいかにも強いです、っていいたげな名前だね…まぁいいや。とにかく、これがあればその謎の宇宙生物とやらをたおせるんだね?」
『わかりません』
「どういうことですか、それは?」
『あれのちからは、燃え広がってどんどん大きくなってるから。以前の状態なら間違いなく大丈夫だったんだけど…』
「…………………………」×4
謎の光る人の言い方に不安の色をかくせない4人だった。
つづく
予告
新しく増えた仲間は、今まで築き上げてきた関係を壊すことになるのかもしれない。
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第13話 Power up
伝説は、ここからはじまった…
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第13話 Powerup
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第13話 Powerup
謎の光る人の言い方に不安の色をかくせない4人だった。
『で、でもたぶん大丈夫よ。
どんどん大きくなるフロギストンのちからに対抗するために、このロボもパワーアップしてるんだから。そのための、4号機だもの…』
「…ってことは、もとは3機だったんだ?」
『そう、このサイキョウロボは3体合体してサイキョウオーになることができたんだけど今回新たに4号機を追加、さらにサイキョウオーと合体してムテキサイキョウオーにもなれるようにしたの。これによって今までよりも攻撃力と防御力がUPしたのはもちろん、新たな武器も使えるようになって…って、もとのサイキョウオーがわからないのだから以前との比較は意味ないわね』
つづく
予告
始めから感じていた違和感。それを口にした時から平穏な日常は崩れてゆく。
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第14話 Question
伝説は、ここからはじまった…
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第14話 Question
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第14話 Question
『とにかく…このムテキサイキョウオーを使えば、あれをたおすこともできると思います。わたしは、このムテキサイキョウオーをあなたたち4人にわたすためにきました』
光る人のお話が一段落したところで、あおいくんはさっきから気になっていたことを聞いてみることにしてみました。
「でもなぜわたしたちに?わたしたちよりも、力の強い人やこういった機械関係のそうじゅうなどにくわしい人はこの星に…いや、この街の中にだって、たくさんいると思うんですが、どうしてわたしたちにこれをわたすんですか?」
『それは…』
つづく
予告
正しき心が集まって光となり、その光は、やがて大いなる闇を打ち砕く。
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第15話 Secret
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第15話 Secret
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第15話 Secret
「どうしてわたしたちにこれをわたすんですか?」
『それは…たしかに、ただ力や機械に強い人でいいのなら、あなたたちでなくてもいいでしょう』
「じゃあ、なんで~?」
『これをわたす相手の条件に、まず仲の良い4人組でなければいけません、サイキョウロボの力を引き出すためには、操縦している4人の心を1つにして力を合わせないといけません。そしてもうひとつ、これを手に入れても悪用しない人でなければいけません』
「でもそれって、オレたちが悪い人がどうかってのはどうやってわかるんだよ」
『それは…ひみつです』
つづく
予告
未来を決めるのは他の誰でも無い自分達。諦めるか、それとも闘うか…
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第16話 Brave
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第16話 Brave
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第16話 Brave
『それは…ひみつです』
「…………………………」×4
『あと最後にもうひとつ、悪に立ち向かってゆく勇気がある人でなければいけません。
あなたたちは正体不明なわたしに臆することなく向かってきました。
ただの無謀と取ることもできますが、わたしはあなたたちにかけてみようと思います。どうですか?
このムテキサイキョウオーで自分たちの住む星を救ってみようとは思いませんか?』
「ってことはぶっちゃけて言うと、戦う道具はあげるから、あとは自分らでなんとかしてってわけだね」
『…ま、まぁそういうことですかねぇ』
つづく
予告
導き出される1つの答え。どんな答えでも構わない。ただ確実に、時はここから動き出す。
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第17話 Allright
伝説は、ここからはじまった…
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第17話 Allright
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第17話 Allright
『…ま、まぁそういうことですかねぇ。それで、どうしますか?』
そう言われてとりあえず4人は集まってみる。
んでこっそり話し合ってみる。
「どうする?ぼくはやってみてもいいと思うよ」
「わたしもかまいませんよ」
「あたしも~」
「もちろん、オレもいいぜ」
ってわけでみんなもやる気まんまんっぽいので、あかねくんが代表して謎の光る人に答える。
「おっけーです。ぼくたち、やってみます」
『わかりました。それでは本当にあなたたちにこのサイキョウロボをわたします。あと、これを…』
謎の光る人は4人に腕時計みたいなものを手渡した。
つづく
予告
存在しないもの。その意味さえも理解しないまま、互いの心は離れてゆく。
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第18話 Change
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第18話 Change
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第18話 Change
謎の光る人は4人に腕時計みたいなものを手渡した。
「これは何?」
『これを腕につけて何か適当なポーズをつけながら「サイキョウチェンジ!」と大きな声でさけんでください。
そうすると全身をサイキョウスーツでおおうことができます。
これを装着せずに生身でサイキョウオーを動かそうとするとすごい衝撃が返ってくるので絶対にこのサイキョウスーツを装着してからサイキョウオーに乗ってください。わかりましたか?』
「んと、わかったんだけど適当なポ~ズってことは、別に何もポ~ズつけなくてもいいってことなの~?」
『ええまぁ、でもやっぱり雰囲気とか大事でしょ』
つづく
予告
忘れ去られた記憶に翻弄される者。すれ違う想いに涙する者。それぞれの別れの時は近い。
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第19話 Destroy
伝説は、ここからはじまった…
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第19話 Destroy
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第19話 Destroy
『ええまぁ、でもやっぱり雰囲気とか大事でしょ』
「…………………………」×4
『あれ、ポーズ考えるのが難しいのかしら?例えば…こんなの、とか…こんなのとか…』
「いいです…自分たちで何かポーズ考えます…」
『そぉ? じゃ確かにサイキョウロボとスーツはわたしたから、後は4人で力を合わせて宇宙生物
フロギストンを倒してください。それでは』
「その宇宙生物フロギストンって何だっけ?」
『…最初に言ったでしょ。触れたもの全てを焼き尽くす、炎の破壊神フロギストン』
「炎の破壊神は聞いてません」
『(ちっ、こまかいことを…)まぁそういう生物がもうすぐこの星にやってくるってことなのよ』
つづく
予告
乙女の幻想は無残に打ち砕かれ現実の世界をさ迷い続けることになるのか。
次回機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第20話 Return
伝説は、ここからはじまった…
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機動創世伝サイキョウオーZERO(再)
第20話 Return
☆テレビをみるときは部屋を明るくして、画面に近づきすぎないよう注意してね。
第20話 Return
『まぁそういう生物がもうすぐこの星にやってくるってことなのよ。それでは…』
~~~~~~~~~~~~~~
「…って感じでもらっちゃったんだよね~」
「そうそう」
「でも、結局サイキョウロボをもらってから全然、その宇宙生物とやらは現れなかったんですよね」
「そうそう」
「ヤツが来たのはサイキョウロボをもらった4か月後、オレたちの学校の始業式の
日だったよな」
「そうそう、あの謎の光る人もそんなに時間差があるんだったら言ってくれればよかったのにね」
『ぴんぽーん』
「あ~、お母さんたちが来たみたい。ちょびっと休けいしすぎちゃったね。はやくパ~ティ~の準備すませちゃお~」
「うん」×3
おしまい
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
来週からは、「妖精さんといっしょ」の再放送をお送りします。
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妖精さんといっしょ

曜日番組名備考追加
妖精さんといっしょこの本を最後まで読んだ人は、どんな願いごとでも、1つだけ、かなえることができる
でも、この本は心のきれいな人でないと、見ることはできない
そして、この本は今、ある家の女の子が持っています…。
1冊の本をきっかけにはじまる
2人の出会いのものがたり。
■■■■■■■■■■■■■■
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第1回
はぁ…はぁ…はぁ…なぜ僕が、警察に追われなきゃいけないんだ?
やってもないことで、捕まるわけにはいかない。
『ふぁんふぁんふぁん…』パトカーの音が近づいてくる。
とにかく、どこかに隠れられる場所を探さないと。
と、目の前には一軒の小さな家がある…とりあえずあの家でかくまってもらおうか?
でも不審がられて警察に通報とかされたら嫌だし…それ以前に誰もいなかったりして。
…んー、そのときはそのときでまた考えよう。
『こんこん…』『こんこんこん…』
誰もいないのかな?それじゃあ、どうしよう?と思っていたら、
『がちゃっ』と玄関のドアが開いて、一人の女の子が出てきて言った。
「はい、どなたですか?」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第2回
僕は今、警察に追われている。
かくまってもらおうと思って入った家からは、一人の女の子が出てきたのだった。
「はい、どなたですか?」
あっ、人が出てきた。でもどうしよう…
いきなり押しかけてきた見ず知らずの人を、かくまってくれるかどうか…
とか考えてても仕方がないか。ダメでもともと、事情を話してみよう。
「えっと…あの、実は、しばらく僕をここにかくまってほしいんだ。お願…あっ!」
家の向こうに警官が歩いているのが見えた。
とっさに目の前にいる女の子を抱えて一緒に家の中に入って、その入り口のドアを『ばたん』と閉める。
いきなり僕に抱きかかえられて驚いたんだろう…女の子は持っていた本を落としてしまった。
「ごめん、びっくりさせてしまったね。はい」
落とした本を拾ってあげながらそう言うと、女の子はさらに驚いたように僕を見る。
でも、すぐに女の子は僕から本を受け取ってほほえむと、
「どうぞ、あがってください」と、僕を家にあがるようにすすめてくれた。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第3回
かくまってもらおうと思って入った家から出てきた女の子は、僕を警戒することもなく、家の中に入れてくれた。
「どうぞ、あがってください」
僕が自分で言うのも何だけど…いきなり訪ねてきた見ず知らずの人を家に入れるなんて、いいのかなぁ?
…まぁいいか、こっちとしてはその方がありがたいわけだし…
では、ありがたく家の中にあがらせてもらいましょうか。
「おじゃましまーす」
で、2階にある女の子の部屋に案内されて、
「ちょっと待っていてくださいね、お茶いれてきますから」
と言って女の子は持っていた本を机の上に置いて部屋を出て行った。
うーん…それにしてもどうしてあの女の子は、僕をかくまってくれるんだろう?
まさか、僕をここに足止めしておいて、警察につきだすつもりとか?
まぁいいか。とりあえず今の所は、様子見ということにしておこう。
何か不審な所があれば、その時に動けばいいだろうし。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第4回
女の子は、僕を自分の部屋の中に案内してから、お茶の用意をするためいったん部屋から出ていった。
……………………………………それにしても落ち着かない。
警察から逃げている、って言うのもあるんだろうけど…
それより僕は今、女の子の部屋にいるんだなぁ(しかも全然知らない子だし…)って思ってるから落ち着かないんだろう。
意味もなく部屋をきょろきょろと見回すと、机の上に置かれている1冊の本、さっき女の子が持っていた本だね。
それが何か気になったからなんとなく手にとって見てみる。
『妖精さんといっしょ』か…
特に普通の本と違う所は無いみたいなんだけど、何だか気になる…なぜだろう?
と思っていたとき、『がらっ』と部屋のドアが開いた。
「おまたせしました」
ポット、ティーカップ×2コ、さとう、お菓子らしきもの等を乗せたおぼんを左手に持って女の子が入ってきた。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第5回
僕が本を手に取ったとき、女の子がお茶を入れて戻ってきた。
僕はあわてて持っていた本を机の上に戻して、椅子に座りなおした。
「あ、ごめん。置いてあった本を勝手に見たりして」
と言うと、女の子は持っていたおぼんを机の上に置いて、
「かまいませんよ」と言いながら僕の正面に座って紅茶をいれてくれる。
「えっと、おさとういくつ入れますか?」「あ、じゃあ…」と、僕が言いかけた時に…
『こんこん…ごめんくださーい』
「あら? 今度はだれかしら?なんか今日はよく人が訪ねてくる日ね。すいません。少し待っててくださいね」
と言って女の子は部屋から出て行った。とりあえず僕は自分でさとうを2個取って紅茶の中に入れてスプーンでかきまぜる。
『がちゃっ』「はい、どなたですか?」
「警察でーす」何っ!
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第6回
女の子が持ってきた紅茶を飲もうとした時にやって来たのは、警察の人だった。
何っ! 警察だって?
『かちゃん』
おおっと…あまりの驚きに危うくかきまぜてる最中の紅茶をこぼしてしまうところだった。
いや、そんなことより…警察って、まさかもう僕がここにいるってことがばれたのか?
どうすればいい?
「実は昨日そこのデパートで宝石が盗まれる事件が起こったんで、この付近を捜索中なんです。
ということで、こんな男を見ませんでしたか?」
警察の人らしき声がする。僕の写真なり似顔絵なりを見せているんだろうか。
ということは、まだここにいることはばれていないんだ、よかった。
いや、でもあの女の子が警察の人に僕がここにいるってことをばらしたら…
「うーん、わからないですね」あれ? 僕のことを言わないでいてくれるのか?
「そうですか、ではこの男らしき人を見かけたら警察まで連絡してください」「わかりました。それでは」
『がちゃっ』
女の子は警察の人に僕がここにいるってことを言わないでいてくれたみたいだし、とりあえずは助かったかな? ふぅ。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第7回
女の子は警察の人に僕がここにいるってことを言わないでいてくれたみたい。
とりあえずは助かったのかな?
『がらっ』
「おまたせしました。あれ?紅茶飲まないんですか?
冷めてしまいますよ。あっ、それとも、紅茶は嫌いでしたか?」
女の子は少し悲しそうな顔をする。
あっ、警察の人がきたからそっちばっかり気にしてしまって紅茶を飲むのも忘れていた…
「いや、そんなことはないよ。いただきます」
一口飲もうとしたときに、『ぐううぅ』と、僕のおなかが音をたてる。
そういえば警察から逃げ回っていたせいで昨日からなんにも食べてなかったからなぁ…
「ふふふ、お腹すいていたんですね。うーん、夕食にはちょっと早いですけど…
たまにはいいかな。今から何か作りますから、しばらく待っていてくださいね」
と、また部屋から出て行く。
部屋に入ったと思ったらまたすぐ出ていって、いそがしい女の子だなぁ…。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第8回
女の子はお腹が空いている僕のために夕食を作ろうと、再び部屋から出ていった。
部屋に入ったと思ったらまたすぐ出ていって、いそがしい女の子だなぁ…(まぁその原因は僕にあるんだけどね)
何にしてもせっかく何か作ってくれるって言ってるんだから、それに甘えさせてもらうか。
待っている間に紅茶をいただこうかな、と一口飲んでみたら…
あっ、美味しい。お腹が減っているからっていうのもあるだろうけど、なんだろう?
なんて言ったらいいかわからないんだけど何だかあったかい感じがする。
もちろん冷めてないからあったかいんだけどそういうこととは違って…
まぁいいや、今から何か作ってくれるんだったらしばらく時間かかるだろうし、待っている間紅茶飲みながら
テレビでもみせてもらっておこうかな?と思って『ぽちっ』とテレビの電源を入れてみる。
昨日の事件のことをやってるかも…と思いながらニュースをみてみる。
…うーん。特にやっていないみたいだな。他のところではどうなんだろう?
とチャンネルをぽちぽちと変えてみたけど、他にニュース番組を放送しているチャンネルはなかった。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第9回
女の子が夕食を作っている間、僕は部屋に置いてあるテレビを見ようと電源を入れてみた。
(ちなみに、リモコンが見当たらなかったから、操作は直接テレビの方でやっている)
しょうがないから、最初に見ていたニュース番組にしておこうかな…
と、机のそばに戻るとその上に置いてある本が目に入った。
さっき女の子が置いていった『妖精さんといっしょ』
実はさっきから何か気になってたしちょっと見てみるか。
『ぱらっ』表紙をめくると…
この本を最後まで読んだ人は、どんな願いごとでも1つだけ、かなえることができる。
ふーん、何でも願いがかなう、か…この本を読むだけで何でも願いがかなうのなら苦労はないよなぁ。
でも、もし本当に願いがかなうのなら、僕のぬれぎぬを晴らして欲しいなぁ…
と思いながらぱらぱらと本を読み進めていく。
…しばらくの間この『妖精さんといっしょ』を読んでいると、
「すいませーん。ここ、開けてもらえませんか」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第10回
僕が『妖精さんといっしょ』をぱらぱらめくって読んでいると女の子が戻ってきた。
「すいませーん。ここ、開けてもらえませんか」
ドアの向こうから女の子の声が聞こえてきた。
あわてて読んでいた本を閉じて、もともと置いてあった場所に戻してこの部屋のドアを開ける。
と、そこには女の子がおぼんを持って立っていた。
おぼんの上には大きな鍋とおひつ。やかんとコップ。あとお皿とスープがのっかっている。
「ありがとうございます」あ、なんかいい匂いがする…これはひょっとして、
「カレーライス?」「はい、そうです」
答えながら、女の子はおぼんを机の横に置いて、お皿を1枚取り出して、その上にごはんとカレーをよそう。
「はい、どうぞ。お口に合うかどうかわかりませんが…」
カレーライスをよそったお皿を僕にわたしてくれる。
「ありがとう。いただきます」
『ぱくっ』と一口食べてみた。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第11回
女の子は作ってきてくれたカレーライスをよそって僕にわたしてくれた。
「ありがとう。いただきます」『ぱくっ』と一口食べてみた。「美味しい!」
うん、ほんとに美味しい。これならいくらでも食べられそう。
(まぁもともと、お腹がすいてたからっていうのもあるけど…)
「ほんと? よかった。おかわりはたくさんありますから、どんどん食べてくださいね」
にっこりしながら自分にもカレーライスをよそいつつ答える女の子。
それじゃあえんりょなくいただきます、とばかりに、僕はお皿に残っていたカレーライスをぱくぱく食べまくる。
で、お皿の上のカレーライスを全部食べ終えると女の子は、
「おかわり、いかがですか?」と、にこにこしながら僕に聞いてくる。
とても美味しいから、もう少し食べたい感じはするんだけど、いいのかな?
…まぁ女の子の方から言ってきてるんだったらいいかな?
お言葉に甘えて、もう一杯いただいちゃおう。
「あ、ありがとう。それじゃあいただこうかな」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第12回
女の子が作ってきてくれたカレーライスはとっても美味しかったから、おかわりをもらおう。
「あ、ありがとう。それじゃあいただこうかな」
といいながら空になったお皿を差し出すと、
女の子は受け取ったお皿の上にカレーライスをよそって、僕にわたしてくれる。
「はい、どうぞ」「ありがとう」
女の子からお皿を受け取ったらさっそくおかわりをいただく。ぱくぱくぱくぱく。
うん、やっぱりすっごく美味しい。
……………
「ふぅー、もうお腹いっぱい。ごちそうさまでした」
もういいや、もう入らない、いくらおいしかったからって言っても、ちょっと食べすぎたかな?
「たっくさん食べましたねー。よっぽどお腹すいてたんですね」
女の子は空っぽになったなべとおひつを交互に見て驚くのと呆れるのが半々といった顔あんど口調で言う。
そりゃまぁ、あんだけ食べれば当たり前か…
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第13回
女の子が作ってきてくれたカレーライスをいっぱい食べたからもうお腹いっぱい。
女の子は空っぽになったなべとおひつを交互に見て驚くのと呆れるのが半々といった顔をしている。
「お腹がすいてたのは確かにそうなんだけど、君のお料理がとってもおいしかったから思わずこんなに食べてしまったんだ…ごめんね。何か君の分まで食べてしまったみたいで…」
「いいえ、もともとこのカレーライスはあなたのために作った物なのでかまいませんよ。わたしはこの1杯だけあればじゅうぶんなので」
と、手をぱたぱたふって笑ってくれる。
「でも、ほんとにおいしかったよ。お料理上手なんだねぇ」
僕がそう言うと女の子はいきなり表情を暗くしてしまった。
あれ?なんか悪いこと言っちゃったかなぁ?
「…それは、いっつもわたしは一人だから…だれもつくる人がいないから、ずっとわたし一人でくらしていれば、お料理も…そのほかの家事いろいろも、それなりに上手にはなりますよ」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第14回
ご飯がおいしかったのでほめると、女の子が暗い顔をしてしまった。
え?いつも一人って…この家に一人で住んでるってことなのか?
親は一体どうしたんだろう?
「昔はお母さんと二人で住んでたんだけど3年前…交通事故で死んでしまいました」
「あ、そうなんだ…ごめん」
そうか、お母さんはもう亡くなってるんだ。
悪いこと聞いちゃったなぁ…あれ?
だとするとお父さんの方はどうなんだろう?
「かまいませんよ、昔のことなので。それで、お父さんはお仕事で海外にいっています。
お仕事にしか興味の無い人だから…お母さんが死んだ時にもこっちには帰ってきませんでしたしね。
手紙や電話なんかも一度も来たことがありませんが、毎月お金だけは、生活するのに不自由しないだけのお金は送ってくるので、お父さんは向こうで生きているみたいです」
じゃあやっぱり本当にこの女の子はこの家に一人で住んでいるんだ…でも、それじゃあ…
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第15回
じゃあやっぱり本当にこの女の子はこの家に一人で住んでいるんだ…
「お母さんが亡くなったとき、お父さんのところに行こうとは思わなかったの?お父さんじゃなくても、親戚のところとかでもいいじゃない」
「お父さんのとこに行っても今と一緒です…さっき言ったと思うんだけど、お父さんは仕事にしか興味が無い人だからいつも家に帰るのも、すごく遅くて、たまに休みの日があってもただ家で寝てるだけです。だから、わたしが向こうに行っても今の状態と何にも変わらないんですよ。もちろんずっと一人でさみしくないって言ったらうそになりますけど。だからといって親戚の人なんかは、お父さんの財産目当てのうそっぽいやさしさでわたしに近づいてくる人ばかりなので、絶対にあの人たちとは
いっしょにいたくない。あんな人たちといっしょにいるぐらいなら、一人でここに住んでいる方がよっぽどいい」
財産目当てってことは、この女の子のお父さんってすごくお金持ちなんだろうなぁ…
そんな子を一人でほったらかしておいて大丈夫なのか?
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第16回
女の子はこの家に一人で住んでいるみたい。
僕がいても大丈夫なのかな?
変な人が来たらどうするんだ?
(…まぁ実際、僕みたいに突然ここにたずねてきた、はたから見たら限りなくあやしいやつが女の子の部屋に入ったりしてるわけなんだからねぇ…)
「でもね、今は一人じゃないから、さびしくありませんよ」
と言って女の子は僕を見る。
「え?」
それって、僕がいるからってことなのか?
親戚の人よりも、見ず知らずの僕の方がいいって言うのか?
なんでだろう?
僕だってそんな話(←この子の親が金持ちだよって話)を聞いたら、女の子を誘拐して身代金をもらおうとしたりとかするかもしれないのに…
「でも僕なんて今日はじめて会ったばかりだし、その親戚の人たちみたいにお金目当てでこの家にきたのかもしれないのに…」
と、その時つけっぱなしにしていたテレビからあの話題が出てきた。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第17回
女の子はこの家に一人で住んでいるみたい。
でも今は僕がいるからさびしくないんだって。
つけっぱなしにしていたテレビからあの話題が出てきた。
『続いては、昨日ボクジョデパートでアクセサリーが盗まれる事件が起こっちゃいました。幸い犯人が店を出る前にばれちゃったみたいで、お店の方には被害がなかったの。でも犯人は逃げちゃってまだ捕まってないからボクジョデパートの近くに住んでる人は注意してちょうだいね。この犯人の特徴は身長うんたら~』
女の子はテレビをじっと見ている。
服装などの特徴でこの犯人とされているのが僕だってのはすぐにわかるだろう。
さて、女の子はどう出るか…
「なるほど…だからいきなりかくまってほしいと言ってわざわざこの家まで、わたしのところまでやって来たというわけですか」
あれ?
たしかにかくまって欲しいと言って家にいれてもらったけど、この家はたまたま目についたってだけで、とくにこの家を狙ったわけではないのに…
どうしてこの女の子は僕が狙ってこの家にきたみたいに言うんだろう?
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第18回
ニュース番組で昨日僕がまきこまれた事件の話題が出てきたんだけど…
どうしてこの女の子は、僕が狙ってこの家にきたみたいに言うんだろう?
でもまぁ今はそんなことより、僕は何も盗んでないってことを言っておかないと…。
(信じてもらえるかどうかはわからない、っていうか普通信じてもらえないだろうけど)
「信じてもらえないかもしれないけど、僕はあんなことやってないんだ」
「うん、あなたはたぶんそんなことはしてないでしょうね。信じますよ」
…あれ?
やけにあっさりと信じてくれたみたい。
自分で言うのもなんだけど、なんでそんなに簡単に信じられるんだ?
普通は信じないだろう。
なのになぜこの女の子は一瞬で信じてくれたんだ?
「あのー、ほんとに信じてくれるの?」
「はい、だって…」
と言いながらつくえの上に置いてあった本
『妖精さんといっしょ』を僕にさしだす。
この本に何かあるのか?
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第19回
僕は何も盗んでいないってことを言うと、女の子はやけにあっさりと信じてくれた。
この本に何かあるのか?
「ほら。だって、あなたはこの本をみることができる人だから…」
え? それはどういう…。
僕が不思議そうな顔をしていると、女の子はほほえみながら持っていた本の表紙をめくる。
そこにはこう書かれている。
--------------
この本を最後まで読んだ人は、
どんな願いごとでも1つだけ、かなえることができる
でも、この本は心のきれいな人でないと、見ることはできない
--------------
女の子は下3行の部分を指さして、
「あなたがこの家に来たとき、わたし、びっくりしてこの本を落としましたよね。そのときあなたはわたしが落とした本をひろってくれました。ということは、あなたはこの本を見ることができる=あなたは心のきれいな人…ってことになります。心のきれいな人なら、物をぬすんだりしませんよね」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第20回
女の子が僕の言うことを信じてくれたのは『妖精さんといっしょ』に書かれていた文章のおかげだった。
「心のきれいな人なら、物をぬすんだりしませんよね」
…なるほど、この本に書いてあることをそのままうのみにしてしまっているんだ。
「でも…そんな簡単に人を信じても、いや、本に書かれていることを信じてもいいの?まぁ僕はそのおかげで助かってるんだけど…」
「もちろん、それだけで信じてるわけではありませんよ。これでも人を見る目はあるつもりなので」
一応本だけで決めたってわけでは無いんだね。
まぁ僕からしてみれば、信用してもらえるなら別にどっちでもいいのかもしれないけどね。
信じてもらえたのはいいとして、この女の子は僕が「わざわざ」この家にきた、みたいに言ってたけど、一体どういうことだろう?
それを聞いてみないと…
「あのさ、さっき僕に、わざわざこの家に来たって、僕がここに来たのは偶然じゃないみたいな言い方をしたけど、それは一体どういうことなのか、教えてくれる?」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第21回
女の子が僕の言うことを信じてくれたのは『妖精さんといっしょ』に書かれていた文章のせいだけではなかった。
「え? わたしのことを知っててここまで来たんじゃないんですか?…んー、そうか。それでは順に説明しますね。わたしのお父さんはお仕事がいそがしいってさっき言いましたよね。で、わりとえらい人みたいで、あなたがまきこまれた事件のあった場所って、実はお父さんが経営しているデパートなんです」
あぁ、なるほどね。この女の子はただお金持ちの娘さんってわけじゃなくて、あのデパートの持ち主の娘さんだったんだ。
だったらわざわざこの家に来たって思われても仕方がないかもね。
この女の子を味方につけておけば昨日、あのデパートで何があったのかを調べることもできるかもしれないし…
「だから、わたしの家の場所を調べてここまで来たのかと思ったんです。けど、ちがったんですね…これってすごい偶然です」
たしかにすごい偶然だ。
しかもこれはチャンスだし。
せっかくのチャンス、有効に使わせてもらおう。
でも、まずどうしたらいいだろう?
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第22回
女の子はあのデパートの持ち主の娘さんだった。
せっかくのチャンス、有効に使わせてもらおう。
「とにかくわたしもできる限り協力します。盗まれたとされていたアクセサリーってあなたのかばんに入ってたんですよね。だったらどうやってあなたのかばんの中に入ったのかを調べてみましょう」
それはありがたい。
でも、一体どうやってそんなことを調べればいいんだろう?
デパートの店員さんたちに聞いてまわってもしょうがないだろうし…
「どうやって調べる?」
「店長さんにたのんで、昨日店内をうつしていた防犯カメラの映像を見せてもらいます。それに何かあやしいものがうつってないか調べてみましょう」
なるほど。さすがあのデパートの持ち主の娘さんだね。
「それでは、さっそくその店の店長さんに電話して、映像を持ってきてもらうようたのんで来ます。ちょっとまっていてください」
と言って女の子は部屋を出て行く。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第23回
女の子はあの店の防犯カメラの映像を見せてもらえるように電話してくれるらしい。
女の子は部屋を出て行く。
…これで、僕の無実が証明できるかもしれない。
これで、逃げ回る必要もなくなるんだ。
なんてことを考えていると女の子が戻ってきた。
「店長さんに電話してきましたよ。ここまで届けにきてもらえるそうなので、しばらく待っていましょう。んー、でもただ待っているだけなのもしんどいでしょうから、この本でも読んでおきますか?」
と、女の子はつくえの上に置いてある『妖精さんといっしょ』を僕にわたす。
どうしてだろ?
たしかに僕はその本には興味があるんだけど、この部屋にはテレビとか何とか、他にもひまをつぶせそうなものなら色々とあるのに…
「なぜ、この本を?」
「この本に興味があるんですよね?わたしとお話しているときも、ちらちらとこの本の方を見ていたようなので…」
あれ?僕そんなにちらちら見てたっけ?
まぁいいか、せっかくだからこの機会に『妖精さんといっしょ』を見せてもらおうかな。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第24回
女の子が店長さんに電話したらここまで届けてくれるってことになったみたい。
せっかくだからこの機会に『妖精さんといっしょ』を見せてもらおうかな。
僕はうなずいて本を受け取る。
そしていざ読もうとすると…
なんかずっと女の子がこっちを見てるんだけど…
「あの、なんでずっとこっちを見てるの?」
「わたしのことは気にしないで続けて読んでください」
…気にするなって言われても気になるって、そんなににこにこしながらこっちを見つづけられたら。
でも全然女の子は気にする様子もない。
仕方が無いのでそのまま本を読むことにした。
最初は女の子の視線が気になっていたけど、そのうち本を読むのに夢中になっていった。
…どれくらいの時間がたったのだろう。
外はいつのまにか暗くなり、星がまたたいている。
「ちょっといいですか?」
うわっ、びっくりした。
女の子は僕が本を読む前と同じかっこうのまま、そこに座っていた。
あれからずっと本を読んでる僕を見てたのか?
うーん、何だかちょっとはずかしいぞ。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第25回
店長さんが届けてくれるまでは『妖精さんといっしょ』を見せてもらうことにした。
「うん。どうしたの?」
「さっき店長さんから届いた防犯カメラの映像を見てみましょうか」
え?もう届いてたのか?
それならはやくおしえてくれたって…
あ、でも僕が夢中で『妖精さんといっしょ』を読んでたから声をかけづらかったのかな?
まぁいいや、さっそく見てみようか。
「あのデパートの防犯カメラ1日分全部となったらすごい量になるんだろうね…でも、とりあえず僕がうつっているところ以外は意味がないから、飛ばして見てみよう。で、僕が昨日このデパートに来たのは午後の2時ぐらいで、正面玄関から入ってすぐに4階のアクセサリーショップに入って、そこで適当に見て回ってからブローチを1個買ってそのまま店を出ようとしたら、変な音(防犯用のブザーか?)が鳴って店員に呼びとめられて、って言う感じだったから…」
「なるほど、わかりました。ではそのあたりの時間のものを見てみましょうか」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第26回
防犯カメラの映像は、僕が『妖精さんといっしょ』を読みふけっている間に届いていたみたい。
「なるほど、わかりました。ではそのあたりの時間のものを見てみましょうか」
と言って女の子は立ちあがる。
あれ? あぁ、そうか。
ここでは見られないから別の場所に行くんだね。
だからここには防犯カメラの映像が映っているもの(ビデオテープか?)を持ってこなかったんだろう。
僕も立ちあがって女の子の後について歩いていく。
階段を降りると、玄関にダンボール箱が置かれている。
「このダンボール箱の中に昨日デパートでとられていた防犯カメラの映像が全部入っています。この中からさっきの時間に合う物だけを持って行きましょう。さすがに全部持っていくのはつかれます
からね」
と言って女の子はダンボール箱を開ける。
アクセサリーショップの午後2時から3時くらいが映っているもの…っと、これかな?
「それをこっちの部屋まで持って来てください」
女の子は少し進んだところにある部屋に入ったので、僕も続いてその部屋に入る。
「ここ?」
「はい、この部屋でしか見ることができないから。じゃさっそく見てみましょう」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第27回
早速僕たちは防犯カメラに映っている映像を見てみることにした。
「じゃ、さっそく見てみましょう」
そして僕がアクセサリーショップに入ってから出るまでが映っている部分を全部見てみたが、防犯ベルが鳴って僕が呼びとめられるまで、不審な点はない。
(もちろん僕は何もしていないから不審な点はあるはずないんだけど…
だれかが僕に近づいたりした形跡もないから一体いつアクセサリーが僕のかばんに入れられたのかと言うのもわからない)
女の子のほうを見ると、何か考えているように画面を見ながら指で自分の頭をとんとんとたたいている。
「どうしたの?何か気になることでもあった?」
「…はい。今までのを見る限り誰も、あなたのかばんの中に盗まれたとされているアクセサリーを入れたようには見えません。もちろんあなたが盗んだようにも見えなかった、なのに防犯ベルが鳴るというのはおかしいです。何か他に…」
もう一度僕が店員に呼びとめられるところを見ていた女の子が、何か気がついたように言葉を止める。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第28回
女の子は防犯カメラに映っていた映像を見てて、何か気付いたことがあったみたい。
「どうしたの? 何かわかった?」
「ちょっと待ってください!」
女の子はもう一度まき戻して同じところを見る。
「なるほど、そういうことか。わかりました。ここ、見ててくださいね」
と言って女の子はお店の出口に立っている店員さんを指差して少しまき戻す。
あっ、僕の横に立っていた店員さんは僕が店を出ようとするのと同時に自分の手を店の外に出している。
その店員さんは何か手に持っているように見えるんだけど…ということは、防犯ベルを鳴らしたのは僕じゃなくて、この店員さん?
「そうです。最初からこの店員は、自分の手にアクセサリーを持っていた。で、あなたが通りすぎるのと同時に防犯ベルを作動させて、あなたを呼びとめ持ち物検査するふりをして、店員さんが手に持っていたアクセサリーをあなたのかばんの中にこっそり入れたんです。ほらここで!」
確かにこの店員は自分の手に持ってるものを僕のかばんの中に入れている。
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第29回
どうやら何かやっていたのは、あのお店の店員さんだったみたい。
確かにこの店員は自分の手に持ってるものを僕のかばんの中に入れている。
「本当だ。でも、なぜこんなことを?」
「わかりません…でももう今日は遅いので明日聞いてみましょう」
気がつけばもう深夜0時をまわっている。
当然デパートはすでに閉まっているので店員に話を聞くのも難しいだろうし、今僕が出ていっても話を聞いてもらう前に警察につかまってしまうかもしれないし、しょうがないか…
「では今日はもう終わりにしてお風呂に入って寝てしまいましょう。ということで、今お風呂をわかしてくるのでちょっと待っててください」
僕が返事を返す間もなく女の子は部屋を出て行く。
うーん…たしかに昨日今日と逃げ回っててお風呂に入れなかったから、お風呂には入りたいけど。
まぁいいか、深くは考えないで素直にお風呂をいただこう。
待っている間は、下におりてくる時にこっそり持ってきていた『妖精さんといっしょ』でも読んどこうかなっと…
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第30回
気付いたらもう深夜0時をまわっている。
続きは明日にしようかな。
「お風呂の準備ができたので先に入ってくださーい」
「あ、はーい…ってどこで言ってるのか全然わからないんだけど…」
どうやらお風呂場から言っているみたいなんだけど、この家のつくりがわからないから、そのお風呂場の場所がわからない。
「そうでしたね、ちょっと待っててくださいね」
と言うことなのでちょっと待ってみると、すぐに女の子はこの部屋に戻ってきた。
「お待たせしました、こっちですよ」
女の子はお風呂場まで案内してくれるみたいなので読んでいた本を置いて女の子の後ろをついていく。
「はい、ここがお風呂場です。ぬいだ服はあとで洗濯しておきますから、このかごの中に入れてください。あ、着替え用意するのを忘れてました。すぐ持ってきますから、その間に入っててください。それじゃ他に何かあれば呼んでくださいね」
「わかった、ありがとう」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第31回
女の子がお風呂の準備をしてくれたので、ありがたくいただくことにした。
「それじゃ他に何かあれば呼んでくださいね」
女の子が出て行くのを確認してから僕は服をぬいでお風呂場の中に入る。
とりあえず頭と体をがしがし洗ってから湯船につかる。
『ちゃぽん』
…ふぅ、いい湯だなぁ~。
こうしてると昨日から今日の出来事が色々と思い起こされる。
デパートでアクセサリーを盗んだと思われて警察に追いかけられて逃げ回っているうちに偶然この家にかくまってもらうことになって…でも、この家にいた人がまさかそのデパートの持ち主の娘さんとは…
まぁその女の子のおかげで僕が盗んだって言う疑いをはらすことができそうなんだけどね。
なんてことを考えている時に、ドアの外から女の子の声が聞こえてきた。
「あのー、着替えはここに置いておきます。でもこれお父さんのだからちょっと…と言うかかなり大きいかもしれませんねぇ」
「いいよ、ありがとう」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第32回
身体を洗って湯船につかると、昨日から今日にかけて起こった色々なことが思いおこされた。
「…たしかに、すっごく大きいような」
お風呂からあがって女の子が用意してくれた着替えを見てみると(もちろん着てみても)かなり大きい。
でもまぁ細かいことは気にしないでおこう。
どうせ気にしても、僕の着ていたものはただ今洗濯中のようだったりするので。
(横にある洗濯機がぐわんぐわんと回っている…)
他に着られるものはないので、まぁいいでしょ。
さて、女の子に僕がお風呂からあがった
ことを知らせるかな、でもどこにいるんだろ?
とりあえずさっきの応接間に行ってみようかな。
と思っていたところに女の子がその部屋から出てきて僕に声をかけてきた。
「あ、もうあがったんですか。…やっぱりパジャマ、大きすぎましたね。でもこれしかなかったので、今日一日だけ、がまんしてくださいね。この部屋におふとんをしいておいたので、今日はここで寝てください」
「あ、ふとんまで用意してくれたんだ。ありがとう」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第33回
女の子が用意してくれたパジャマはやっぱり僕にはかなり大きかった。
「あ、ふとんまで用意してくれたんだ。ありがとう」
「さすがに地べたに寝てもらうわけにもいかないから…じゃあわたしもお風呂に入ってきますね」
と、さっき僕が出てきた風呂場に入っていく。
では僕はさっきまで読んでいた『妖精さんといっしょ』の続きでも読むとしますか…
と思ったら女の子がこの部屋に戻ってきた。
「ん? どうしたの?」
「のぞかないでくださいね」
「……………………………」
僕を信用してるんじゃなかったのか?
盗みはしないけどのぞきはすると?
「なーんてね。心のきれいな人はそんなことしないでしょうからね。それじゃ本当にお風呂に入ってきます」
「…のぞいたりしないから安心してね」
「はいっ」
むうっ、からかわれただけってか?
それとも一応のぞかないようにくぎさしにきたのか?
まぁどっちでもいいか。
さて、ではあらためて『妖精さんといっしょ』の続きでも読むとしますか…
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第34回
女の子は自分がお風呂に入る前に僕にのぞかないようにくぎをさしに戻ってきた。
さて、ではあらためて『妖精さんといっしょ』の続きでも読むとしますか。

『ぱたん』
ふぅ、終了!
やっと読み終わった…
「あの、読み終わりました?」
びくっ!
いきなり女の子が声をかけてきた。
って言うかいつの間に女の子はお風呂からあがってきたんだ?
あ、でも僕が『妖精さんといっしょ』を全部読み終わったってことは、わりと時間がたっているだろうから別に変じゃないのかな。
「ご、ごめんなさい。おどかすつもりはなかったんです。あの、読み終わりました?」
僕がうなずくと、
「どうでした?おもしろかったですか?」
僕はもう一度うなずく。
「それじゃあ…あなたの願いごとは…何ですか?」
「もちろん、僕が何も盗んでないってことをみんなにわからせたいってことだね」
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第35回
僕は女の子がお風呂に入っている間に『妖精さんといっしょ』を読み終えてしまった。
「もちろん、僕が何も盗んでないってことをみんなにわからせたいってことだね」
「よかったですね。それなら明日、かなえられるでしょうから…」
僕はもう一度うなずく。でも何か女の子はさびしそうだなぁ…
よくわからないけど、何かちょっと違う話にしてみようかな?
「ところで、きみも最後まで読んだんだろ?願い事は何か無いの?」
「あります。それを言う前に、その…一つだけ、聞いてもいいですか?」
何だかえらく深刻そうな顔で聞いてくる女の子。
まぁ僕が答えられることならいくらでも聞いてくれたらいいんだけど。
「何?」
「昨日あのアクセサリーショップで買っていた物って、女の人へのプレゼントですよね?だれにプレゼントするものだったんですか?」
そういえば、盗んだって疑われていることは言ったけど、
何でその店に行ったのかってことは女の子には全然説明してなかったなぁ…
つづく
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妖精さんといっしょ
~ぼくの場合~
第36回
僕の願いは、もちろん何も盗ってないってことをみんなにわからせたいってこと。
そういえば、何でその店に行ったのかってことは女の子には全然説明してなかったなぁ…
「あぁ、もうすぐ妹の誕生日だからね。毎年、何か買ってやらないと泣くか怒るかしてしまうし、
何か買ってやっても気に入らないものだとやっぱり不機嫌になるし…だから今年はちゃんと何が欲しいのかを事前に妹と一緒にあのお店に見に行って聞いておいたから大丈夫!ってことだったんだけど…」
それとは全然関係の無いところで大変な目にあってしまったんだよね。
「じゃあ恋人へのプレゼント、というわけじゃないんですね?」
「残念ながら、僕には恋人なんていないよ」
と言うと女の子はどこかほっとしたような表情をして…
「わたしの願い事は…恋人さんが欲しいです。心のきれいな人が恋人さんになってくれたらうれしいです」
…えーっと、これって僕に恋人になって欲しいって言ってるんだよね。
もちろん僕の答えは……
おわり
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妖精さんといっしょ
~その後の場合~
で、やっぱりあの店の店員さんが全部一人でやってたみたい。
じつは、少し前にあの男の人と妹さんが二人であの店に来たことがあって(そのときに男の人は妹さんにアクセサリーどんなのが欲しいか聞いてたみたい)
そのときに店員さんは妹さんにひとめぼれしたみたいなの。
で、横の男の人が妹さんの恋人に見えちゃったっぽくて、まぁぶっちゃけて言うとやきもちを焼いちゃったってわけで…
で、ふたたびあの店にやってきた男の人を見つけときに、思わずあんなことをしてしまったみたいなの。
後で店員さんは自分がひとめぼれした人が男の人の妹さんだって聞いてとってもおどろいたみたいなの。
んで結局、店員さんは男の人にあやまったみたいで、男の人が店員さんをゆるしたか、それともゆるさなかったかってのはどっちでもいいとして、妹さんにはもう恋人さんがいるらしく、店員さんにはごめんなさいってことで…
まぁ結論として、恋人さんがいるならお兄さんにプレゼントをおねだりしなくてもいいじゃんとか思ったり…
おしまい
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来週からは、「新米探偵カナコ」の再放送をお送りします。
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情報追加

情報はこちらにお願いします。(質問・会話は 雑談・質問掲示板 またはチャットルームをご利用下さい。)


  • 日曜日が誰かの誕生日だと、樫の木ちゃんねるがその人の特集になるっぽいです。余談ですがカッシーさんは胸が控えめな女性の模様 -- 2014-03-24 (月) 13:50:11
  • サイキョウオーZERO終了後妖精さんといっしょ -- 2014-03-25 (火) 10:12:22
  • ↑↑ついでに童顔らしい。嫁候補に欲しかった。 -- 2014-03-25 (火) 22:00:42
  • 5年目夏の月20日(日)に「妖精さんといっしょ」が36話で完結しました。 -- 2014-03-26 (水) 15:06:34
  • ↑5年目って…すご  3年目夏天気予報でコケッコ祭りの日が雨になっていました。祭りの日に雨って降ります? -- 2014-03-30 (日) 14:54:26
  • ↑コケッコ祭りの日、晴れでした。 -- 2014-03-30 (日) 14:57:28
  • 2年目の春の月20日(水)に「伝説の料理人を追う」が始まりました!もう、書かれてた方がいたらすいません -- 2014-03-30 (日) 23:08:34
  • あ、間違いました!再放送されてました! -- 2014-03-30 (日) 23:10:23
  • 3年目の秋です。天気予報がはずれてました。雨と言っていたのですが晴れてました。(コンサートの日だったのでおかしいとは思っていたんですが…。) -- 2014-03-31 (月) 17:14:23
  • ↑昔からの仕様ですね。行事の日は、天気予報が台風だろうが大雪だろうが強制的に晴れになりますよ。 -- 2014-03-31 (月) 22:43:01
  • サイキョウオーZERO20話確定です。のち「妖精さんといっしょ」が始まりました -- 2014-04-01 (火) 22:53:56
  • コロボックル物語は7まででした -- 2014-04-02 (水) 14:02:48
  • 3年目の秋です。料理祭の日 天気予報が雨になっていたのですが、晴れてました。天気予報はずれることあるんですね。というか…そもそも祭りの日に雨ってのがおかしいですね。 -- 2014-04-05 (土) 17:40:03
  • 一年目冬、ジョルジュの番組で果樹の影になった作物が育ちにくいと言っていました -- 2014-04-22 (火) 21:42:05
  • 妖精さんと一緒→新米探偵かなこ→サイキョウオーZEROじゃないの? -- 2014-09-23 (火) 17:45:52
  • 樫の木タイムのカッシーさん胸控えめ、童顔らしい。樫の木タイムに出ることになったのは名前が似ているから。(樫の木とカッシー)リーリエの大ファン。 -- 2014-09-23 (火) 17:52:14
  • リーリエ、天気予報で予報雪の時マフラーつける -- 2014-09-23 (火) 17:53:14
  • コンサートの日の予報が台風でしたが、晴れました。 -- 2014-09-23 (火) 17:56:44
  • 海猫亭殺人事件~カリヨンの嘆き~のことですが、チャーリーの部分が1つだけチェーリーになってました。うちだけかな・・・・・ -- 2016-02-27 (土) 17:02:23
  • どんな天気だろうと祭りの日は確定で晴れなので -- 2019-08-14 (水) 15:57:59

※何年目の何曜日放送かなど、なるべく詳しくお願いします。