A-10C解説

Last-modified: 2015-09-28 (月) 07:36:19

A-10は非常に有名な攻撃機ですが、その改修機、A-10Cについては、まだ資料が少ない状態です。
ここでは、A-10Cに特化した解説を記載いたします。
(ここでの内容は、主にマニュアルから出典しています。)

A-10C改修に至るまでの経緯

湾岸戦争での活躍により、運用の延長が決まったA-10(A-10A)でしたが、この時点ですでに運用開始から20年近く経過していました。
また、運用年数以上に、A-10の設計思想と現代戦の近接航空支援に対する要求は大きく離れていきました。
冷戦が終結し、戦争の形態も機甲部隊同士の衝突から、非対称戦争へと移りました。
対戦車攻撃を想定して作られたA-10には、精密爆撃に必要な装備・機能が圧倒的に不足していました。

 

使用可能な誘導兵器は、マーベリックとレーザー誘導爆弾のみ。
そのレーザー誘導爆弾も、自らターゲッティングはできず、地上部隊からのレーザー照射を受信して誘導することしかできませんでした。

 

先進的な索敵能力は皆無でした。
当時のA-10のパイロット達は、索敵・味方部隊の位置確認を、双眼鏡と紙の地図、そして長時間に渡る無線連絡で行っていました。
このような必要以上に念密な連携が要求される状況では、作戦の進行を遅らせる原因となりました。
かといって、無理に攻撃を強行すれば、誤射・誤爆の危険性が高まりました。
有名になった流出動画を初めとする、決して少なくないA-10の誤射事例は、こうした経緯によって発生したと言われています。

 

1990年以降、数度の改修はあったものの、抜本的な解決には至りませんでした。
こうした状況を打開するため、耐用年数延長と共に、精密交戦能力向上プログラムが計画され、
後にA-10Cと呼称されることになる改修機の計画が始動しました。

A-10C改修概要

機体外に対する改修は殆どありませんでした。
エンジンの信頼性の向上のため、TF34-GE-100から、TF34-GE-100Aに換装され、各ウェポンステーションへの精密誘導兵器搭載能力改造以外には、機体・固定武装等には変更は加えられていません。

 

一方、機体内部、特に電子機器とそれに伴うコックピット周りは、大きな変更が加えられました。
機体コントロールに関する計器に変更はないものの、アナログな兵器コントロールパネルと、マーベリック用にしか使用できなかったモニターは取り外され、そこへMFCD(多機能カラーディスプレイ)が取り付けられました。
これにより、F-15E等の最新アビオニクス搭載機と同等の兵装、戦術情報などの包括的な管理が行えるようになりました。
また、これらMFCD・HUDを直感的に操作できるよう、HOTASコントロールを導入するため、スロットルはF-15E、スティックはF-16のもの(ただし、サイドスティック・感圧式ではない)に取り替えられました。

 

また、索敵能力の向上のため、AN/AAQ-28ライトニング2ポッドと、AN/AAQ-33スナイパーXRポッド(DCS:WHでは未収録)の搭載能力が追加されました。
これらターゲッティングポッドの搭載能力追加により、レーザー誘導爆弾のターゲッティングを自機で行えるようになりました。
更に、ターゲッティングポッドと最適な組み合わせの兵器として、JDAM、WCMDなどのIAM(精密誘導爆弾)の搭載能力が追加されました。

 

現代の統合作戦に対応できるよう、JTRS(統合戦術無線システム)、SADL(状況認識データリンク)/EPLRS(強化型位置評定報告システム)などの、各種データリンクへの対応も追加されました。
これらのデータリンクにより、友軍の航空機・地上部隊の位置が、HUD、TAD(戦術情報ディスプレイ)、ターゲッティングポッド映像、マーベリック映像にアイコンで表示され、目視で確認できるようになりました。
更にJTAC(統合末端攻撃統制官)による管制爆撃を行う際は、管制指示内容の9-lineメッセージとターゲットの位置をデータリンクにより取得でき、明確な意思疎通が図れるようになしました。

 

これらの抜本的な改修を受けたA-10Cは、現代戦に適合できる近接航空支援機として進化しました。
現存するA-10Aは、順次A-10Cに改修され、2028年まで運用される予定です。

DCS:WHにおける、A-10Cの再現度

本ソフトの開発元、ED社は、2007年に米軍向けに、A-10CのDTS(デスクトップシミュレーター。筐体などを再現せず、PCとジョイスティックのみで訓練ができる簡易シミュレーター)を卸しました。
このシミュレーターはDCSの前作である、LockOnシリーズのA-10をベースにしており、装置・挙動などは詳細に再現してるものの、コックピットは簡易再現に留まりました。
その後ED社は、DTS開発時に得た資料を元に、本作の開発に着手しました。
その為、本作はDTS以上にA-10Cの各種装置・電子機器・機体挙動を非常に高度に再現しています。
また、AIによるJTACを収録しており、今までの同社シリーズでは実現しなかった、本格的な管制爆撃が再現されました。

 

現時点では、IFF(敵味方識別装置)などの一部装置が、未動作(スイッチは操作できるものの、機能しない)となっています。
しかし、DCS:BSではほぼ意味を成さない機能であった無線通信など、DCSシリーズは今後、パッチ等で大幅な機能追加が行われる可能性があります。

 

いずれにしろ、現時点ではDCS:WHは、一般で手に入るものとしては、最もA-10Cを再現しているフライトシミュレーターであると断言できます。

コメント

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  • 知識としては十分過ぎる程の情報をありがとうございました。外見の違いはLightning/スナイパー等ターゲティングポッドを積んでいるかですかね? -- Therapy!?? 2013-05-10 (金) 16:36:51
  • ホーミング・レーザーポッド以外はほぼ再現されていると言えますね! -- まにまに? 2015-09-28 (月) 07:36:19