しずしず

Last-modified: 2024-02-09 (金) 21:30:32

夕方になり生徒たちはそれぞれ動き出す。そのまま帰宅する生徒、部活へ行く生徒、おしゃべりする生徒、課外や勉強会に参加する生徒。桜咲しずくもそのうちの一人で、今日は演劇部の練習に行き、大女優を目指して頑張っている。
今日の練習では「しずくが2人に分裂する」シーンを演じるため、特殊メイクで部長がしずくに変装している。
「どうかなしずく?そっくりかな?」
「どこからどう見ても、『私』ですよ」
以前も、部長がしずくに変装して闇のしずくを演じたこともあるが、今は何処からどう見ても『桜咲しずく』になって、まるで『桜咲しずく』が2人いるように見える。
ともあれ、練習に始める2人。物語はしずくが演じる女子高校生が2人に増えた物語。互いに、真剣になり練習にも熱が入る。
『さすが先輩…。私の姿で私の真似するなんて…』
しかも、天王寺璃奈の発明品で今の部長の声ですら『桜咲しずく』になっているのだ。
メタモンも驚く発明品を使ってまで演技するので、他の部員ですら小声でどちらが『しずく』なのか混乱するときもある。
「ねぇ、今の部長はどっち?」
「え?右のしずくが部長でしょ?」
「え?左でしょ?」
どっちがどっちなのか分からなくなってきたところで一旦休憩とした。
「じゃあ、私。お花摘みに行ってきま~す♡」
「もう!そこまで真似しないでください!」
どこまでもしずくの真似をするので、そこまでする必要があるのかと考えたが、逆に言えばそこまで徹底して演技するのはさすがだなと思っている。
数分後、しずくが戻ってきたので、再度練習をした。
時刻は18時30分。完全下校の時間なので、部員たちは帰っていき、しずくも部長に挨拶をしようとした。
「「部長、今日もありがとうございました」」
「「…え?」」
戸惑った。なぜなら、自分が「桜咲しずく」なのに部長も「桜咲しずく」の声であいさつしてきたのだ。さすがにもう部活も終わりなので、真似しなくてもいいはず。しずくは部長が意地悪かなんかでまだ変装しているのかと思った。
「もう、部長。いつまで変装しているのですか?」
「え?私は『桜咲しずく』ですよ?部長こそ、変装しないでくださいよ」
「「…え?」」
「「もう練習は終わりましたよ」」
また同じ台詞を同じ声・トーンで話す。自分が本物のはずなのに、何故か部長は自分が『桜咲しずく』と主張してきた。
「私が桜咲しずくです!いつまでも真似しないでください!」
「本物は私です!部長こそ真似しないでください!」
「いい加減にしてくださいっ!」
「部長こそいい加減にしてくださいっ!」
「「桜咲しずくは私です!」」
ヒートアップしてもどこまでも真似してくる部長の行動にさすがにおかしいと思って、失礼承知で部長が被っているウィッグ(カツラ)を取って変装を解くことにした。
「「失礼します!」」
お互いにウィッグを外そうとしたが…
「「痛いっ!痛いっ!何するんですかっ⁉」」
自慢の髪の毛を引っ張ったが相手のしずくもしずくの髪を引っ張ったので痛みが走る手を放す。取れにくいようにしているが、まるで本物の髪のようで独特な痛みもあった。それに、しずくの髪はサラサラしており、それは果林やかすみですら手入れの方法やシャンプーは何を使っているのか聞いてくるほど、魅力的な髪質をしている。
しゃべり方に髪の性質まで一緒というか、もはや変装というレベルではないほど「似ている」ので、もはや目の前の部長は本当に『桜咲しずく』なのかと思ってくるほどだ。
「どういうこと…?」
「これじゃあ、私が2人いるみたい…」
「何言っているの⁉本物は私!桜咲しずくは私ですっ!」
「いいえ!桜咲しずくは私ですっ!私こそ桜咲しずくですっ!」
しずくたちはだんだん恐怖を感じてきた。『もう1人の自分』なんて有り得ない。ドラマや映画ではそのような展開は見てきたけど、こんな異常現象は信じない。その後、しずくたちは何か本物の自分とは違うところはないか確認するため、強引に相手の身体に触れてみる。それは、目の前の自分も同じ考えをしており、第三者から見たら2人のしずくが互いの身体を触れ合っているようにも見える。
「きゃっ!どこ触っているのよ⁉」
「じっとしててよ!んんっ!そっちこそ、どこ触っているのよ⁉」
肩、胸、腕、首、横腹、太もも、お尻、足…。何でもいい。何か自分と違う部分があれば。しずくたちはとにかく目の前の自分が偽者だと決定づける証拠がないか探した。
だが、結果は変わらず…何の手かがりもなかった。むしろ、いろんな部位を触ったり見たが全て自分と一緒。
「ハア…ハァ…どこまでも一緒なんて…」
「こんなの…ありえない…うそでしょ?」
しかし、さまざまな部位に触れるうちに、目の前のしずくのシャンプーの香りや感じて変な声を聞くうちにだんだんとムラムラしてきた。
『目の前のは私は…桜咲しずくなの?それとも…』
髪の毛もボサボサになって、衣装もボロボロになって、汗もかいている自分の姿に発情してきて、2人は顔を近づけてきた。
「「演劇の練習がてら…キスしたいです…」」
2人は目の前の自分とキスをしてきた。ファーストキスが自分という特別な条件つきだが、2人は普通のキスじゃなくて、親に内緒でR指定の映画を観た時のように舌と舌を絡ませたディープキスをしてきた。
「「んんっ♡れろお♡んんん♡」」
顔を少し傾けながら、腕は離さないぞと言わんばかりにホールドする。自分の舌が自分の舌と重なりくすぐったい感触もあるが、逆にそれが気持ちいい感覚となっている。
『すごい…私…もう1人の自分とキスしている…』
『いい…キスすごく気持ちいいよわたし♡』
映画で見た濃厚なキス。吐息や身体の熱さえも、今の2人の興奮材料としてよりキスの感度を高める。
『『ああ♡気持ちいい♡私同士のキス♡すきいい♡』』
「んん♡しゅきい…しゅきぃいい♡」
「んんんっ♡わたひもぉ♡すきぃぃい♡」
一旦呼吸のために顔を外す2人。顔は赤面状態で完全に出来上がった状態。
もはや部長とか考えるのができなくなり、今は目の前の自分とのキスを楽しみたいと心の底から考えてる。
しかし、今は学校。そろそろ見回りの先生が来る時間。
時計も19時を過ぎてこのままだと家に着くのは下手すれば21時を過ぎるかもしれない。
「「…ねえ♡つづきは家でしない?」」

END