原発敷地内とその周辺で実施されるべき工事(福島第一原発近くに作られるべき、放射能に汚染された表土の処分場)

Last-modified: 2011-10-13 (木) 06:14:13

(2011-10-13追記)
2011年9月30日・児玉龍彦教授記者会見
http://www.youtube.com/watch?v=hqkwggg2hIc
前回の(私が思うところの)積み残しはそのままです。
近いうちに(数カ月ぶりになりますが)、除染に関して私なりに思うところを書こうと思っています。


(2011-8-30追記)
このページに訪れる方なら最近、東大の児玉龍彦教授が何度も記者会見を開いて提案されている「人口バリア型処分場」のことをご存知の方も多いでしょう。

 

「人口バリア型処分場」の仕様はこのページで記述している汚染表土処分場のそれよりも豪盛です。児玉先生が提案している「人口バリア型処分場」は最高1000万ベクレル/リットルという低レベル汚染物の中では比較的汚染度の高い汚染物の保管を目的としている為にこのような仕様になっているのだと、私は理解しています。
(1)地上盛り上げ型、(2)ジオケミカルバリア層、(3)浸出水の処理、等の特徴は私が記述してきた処分場と共通ですが、汚染物の収容方法が、容器を使う、使わないと、異なっています。

 

児玉教授は2011年7月29日の衆議院厚生労働委員会で参考人として発言された後、2011年8月12日と2011年8月22日に除染に関する記者会見をされています。

 

私は両方の記者会見を(多分)全部聴きました。

 

僭越ながら8月12日の記者会見よりも、8月22日の記者会見の方が相当進歩・洗練されていると感じました。

 

実は8月12日の記者会見の内容に対して突っ込み意見を書こうかなと思っていたのですが、8月22日の記者会見を聴いてみると、理由説明等がより多くの人を納得させるものに変わっていて、8月12日の内容に対して突っ込みを入れるよりも「皆さん8月22日の記者会見を視てよ、聴いてよ」と書くべきだと思いました。

 

ただ8月22日の記者会見においても、一部についてはまだ突っ込みを入れたくなる箇所が見受けられます。それは汚染物(廃棄物)の引取りについての部分です。具体的には示しませんが、この部分は提案ではなく困難な条件を示したのみに留まっています。この部分についてはさすがに児玉教授でも次回(?)に解決策を提案できないかもしれません。

 

おすすめ
2011年8月22日
東京大学児玉龍彦教授緊急記者会見
http://www.tokyopressclub.com/2011/08/2011822.html

 

内容的に古くておすすめしない
2011年8月12日
東京大学先端科学技術研究センター教授 児玉龍彦氏 記者説明会 福島原発事故に対する緊急提案
http://www.ustream.tv/recorded/16590303
http://www.videonews.com/asx/press/110812_kodama_300.asx


2011-6-1
汚染表土処分場と遮水壁の仕様ついて記したオリジナルの本文は下の方(↓)にあります。
 

(2011-8-2追記)遮水壁に関してはこの図中に青線で示した遮水壁とほぼ同じものが実際に作られることがやっと決定したようです。これから詳細設計にかかるようです。
f1_de_nasarerubeki_kouji_2_s.png
海側の壁の位置が私の案(予想)では数メートル内側になっています。これは私の図ではこの辺りを、東電から当時発表されていた仮設防潮堤の建設位置に合わせたからです。本来仮設防潮堤とは鋼管矢板を打つものであって、同じく鋼管矢板を打つ必要のある遮水壁がほぼ同じ場所に必要なのであれば兼用とするのが当然だからです。そしてその予想はその場所に鋼管矢板が打たれる壁は一つだけになったという意味で”ほぼ”正しいものでした。仮設防潮堤の方は常識からかけ離れ、鋼管矢板は打たれないことになり、まるでアリバイのように役に立ちそうにない簡素なものが作られました。その代わり”遮水壁として”今後そのすぐ外側に鋼管矢板が打たれることになりました。実質的にはこの遮水壁が”実際に役に立つ”防潮堤としての役割を併せ持つものとして設計されると思います。現在の仮設防潮堤が”見せかけだけのもの”あとバレることを恐れずに、きちんとした防潮堤機能を持たせて欲しいと思います。ただしもちろん私はもっと外側にもう一重、この図中に緑線で示した遮水壁(兼防潮堤)を建設すべきだと考えています。
もちろんより大きな難関は汚染表土処分場の建設です。どんなに力のある政治家でも世論やメディアの後押しがなければ実現は不可能でしょう。皆さん是非他人事と思わず動いてみて下さい。
既に何度も書いていますが、本格的な汚染表土処分場ができれば現在とは比較にならないほど大胆に除染がおこなえます。たとえば福島県の東半分の(都市部の)道路を全て再舗装するという除染手段が実施できるようになります。


(2011-6-27追記)(予測していた通りではありますが)東電・政府の取る方策は私が希望するよりも常に“安価に、お手軽に”ずれています。
【汚染水対策】
東電、海水浄化を9日から実施 福島第1原発
シルトフェンスを張っていましたからこれでもある程度の効果は見込めるのですが、未だに超大量の超高濃度汚染水を海から完全に遮断していないという事実は日本国自体の風評を危険に晒しています。きっちり遮断しないままだと、海面下では漏出が続いている可能性も高いでしょう。予算に糸目をつけずに対応できる仕組みになっていないことがこのような中途半端な対策に留まらせています。
福島第1原発:東電が政府側に渡した文書の全文 - 毎日jp(毎日新聞)
以前から私は万全を期すなら2重か3重に遮水壁を設けなければならないと書いていますが、1重に設置するだけでもいつになることやら。
【除染処置】
福島県、除染で大幅に線量減少 小学校で実証実験社会(TOKYO Web)
このような対策は大変結構なことでどんどん進めるべきですが、表土処分場を設けないままではこのような“お手軽な”対策しか実施できません。この記事で実施している対策は山間部では実施不可能です。飯舘村に再び子供が住めるようにするには私が書いているような処分場を建設して重機で除染をおこなえるようにする必要があります。

 

(2011-6-21追記)遮水壁の方は(私が書いている3重でなく)1重分ぐらいはなんとか作ってくれるだろうと期待できますが、問題は除染用の表土処分場の建設の方です。
最初に書いたときから思っているのですが、田中角栄くらいの腕力のある政治家でないと実現不可能だと思います。中曽根康弘でも無理だと思います。先日書いたように必要な土地を国が“(何年も経った後でなく)今からすぐ”買い上げることが極端に困難だと想定されるわけです。
合理的に考えれば、少なくともF1の周囲数(2,3,4)キロは表土の汚染度の酷さや地下水汚染の恐れやそもそも汚く壊れたF1に近すぎることから半永久的に居住できないことは3ヶ月前に実質的に決定済みであって、そこを国が買い上げて、その他の地域の相対的に弱く汚染された土(およびがれき)の処分場にすべきであることは明白です。
(半)永久表土処分場が建設されない限り大規模な除染は実施不可能です。
日本人全体もマスコミも合理的な考えが非常に苦手です。行政上は関係ないんですが橋下大阪府知事なんかが口撃で突破口を開いてくれることを望みます。

 

(2011-6-6追記)本日のTV朝日・TVタックルでISEP飯田哲也氏もドラム缶だと言っていました。この人までこんなことを言っているとは(法的には当然ではあるんですが)困ったことですね。
(2011-6-5追記)昨日のBS朝日・激論クロスファイアで自民党の石原伸晃幹事長が「(校庭から剥ぎ取った表土は)ドラム缶に詰めて福島第一原発に持っていくしかない」旨を発言していましたが、この考えは不適切です。理由は「(ドラム缶に入れるには)(1)量が多すぎ、(2)汚染度合いが低すぎ、(3)保管すべき期間が長すぎる」からです。(1)に関しては実は校庭表土だけなら量的にはドラム缶に入れて保存することは無理ではないんですが、除染すべき面積はそれだけに留まりませんので、汚染された地域全体として見ればとてもドラム缶に入れられるような量ではありません。結論としては石原案を採用するということは被害を矮小化して被害者を泣き寝入りさせることとイコールだと言えます。(2)に関しては汚染された表土の汚染度は原発から出される低濃度放射性廃棄物よりも遥かに低く、汚染された表土に触れた雨水の一部が僅かに川や海に流れこんでも致命的ということは全くありませんので(現に、既にどんどん流れ込んでいるのが実態なので)ドラム缶ではなく、本ページに記したような方法で十分です。(3)に関しては保管すべき期間は最低でも数百年以上と見られます。ドラム缶を数百年以上も使うとなるとどう甘く見積もっても全て屋内に保管する必要が生じ全くナンセンスです。

 

放射能に汚染された表土の処分場は(残念ながら)元々住まわれていた方々の了承をとってから建設する性質のものではありません。最高レベルの強制収用をおこなう必要があります。故郷を奪われた方々にはお金で補償する他はありません。そして故郷を奪われた方々はその決定を下した責任者を憎むべきではありません。それは全くのお門違いです。憎むべきは正力松太郎、中曽根康弘を初めとした原発を推進してきた人々です。この点をマスメディアはその大きな惰性によってまさしく私の危惧するその方向で報じるのは確実で、国民はしっかりと本当に向くべき方向がどっちなのかを意識する必要があります。
(2011-6-5追記)誘拐事件が発生したときに「報道協定」というものが結ばれますが、表土処分場についての報道でも「報道協定」が結ばれるべきだと考えます。表土処分場の建設の是非や場所の選定は誘拐事件と同じく自由な報道に馴染まないと思います。自由・勝手きままな報道姿勢に任せると各報道機関が独自色を出そうとする動機によって必ず一定以上の大きさの異論が"無理やり"作り出されてしまいます。「絶対に必要で、場所もそこしか選べないのは明らか」なのに「報道機関としての独自色を出したい」という相対的に"どうでもいい"理由の為に建設を阻害する勢力が無駄に拡大されてしまうのは誰にとっても不幸だと思います。

 

事故対応にあたる予算規模を大幅に増やす必要があります。しかしもちろん皆さんおわかりのとおり、現場の対応を東電に任せている限り改善は望めません。

 

残念ながら今の政権は事態を矮小化したい官僚達に支配されているも同然で、このページに示している「汚染された表土の処分場の建設」「幾重にわたる遮水壁の建設」という必要な大規模な工事に全く手がつけられていないどころか、今後も期待を抱けない状況にあります。その上事態を矮小化したいのは野党第一党も同じです。菅首相はどうせ人気がないんだから「原発事故は自民党のせいだ」とでも言って、思いっきり事故の深刻さを強調する策をとってもいいと思うんですが、現実は全く正反対で官僚を全く指導できないようです。実質被害と風評被害の区別もできない御仁では土台無理なのでしょう。因みに私は(野党第一党と違って)菅首相の本震直後の原発対応は以前から問題にしていません他の様々なことを問題視しています。と、ページと関係が薄いことをグダグダと書いてしまいました。↑(下線部について)(「現場は最初の時点から、ベストを尽くそうと(当然)勝手に動いたと思われる」という趣旨)


f1_de_nasarerubeki_kouji_1_s.png

表土処分場の仕様

(2011-6-6追記)この表土処分場の仕様は校庭の表土だけでなく、広範囲な汚染地域の除染・表土入れ替えを視野に入れたものです。
一般の残土処分場とはまるで別物です。図上の場所・大きさは適当。現在個人保有でない土地が望ましい。もし大規模な雨水の流路と重なる場合には大規模な土木工事をおこなって半永久的に流路を遠ざける必要があります。

外観

  • 堤防が非常に幅広い(数百メートル)
    理由
    • 絶対に決壊してはならない為
    • 段階的に高さを増やせるようにする為
      理由
      • 絶対に決壊してはならない為、不必要な高さを持たせないようにする為
      • 余計な雨水が溜まらないように不必要な高さを持たないようにする為
  • 底面および堤防は水を通さないように分厚い粘土層+コンクリート
    理由
    • 半永久的に使用することになるので粘土を活用せざるをえない
  • 底面はなだらかな傾斜を持つ(下記i案の場合)
    理由
    • 処分場の上に降った雨水(低濃度汚染水)をろ過の為に一箇所に集める必要がある為

運用

出来る限り持ち込んだ表土が雨水に触れない運用をおこなう。
基本的には低濃度汚染水処理施設を必要としない運用をおこなう。これには決壊を防ぐという意味もある。

  • 安全な運用方法が2通り考えられる。共に一般の残土処分ではありえない方法。
    1. 処分場内に無数の小さな仕切堤防を順次作りながらその中を埋めていく方法
      • 1000トンとか10000トンを一単位として一気に投入し、すぐに(その日のうちに)雨水が入り込まない処理をおこなう(=締固める※)
      • 仕切堤防を作ったり、持ち込まれた表層土を覆うための材料も長期に渡って大量に必要
    2. 先に健全な土で全体を埋めておく方法。
      • 先に健全な土で処分場全体を埋めておき(もちろん上記の遮水処理をおこなった上を埋めるということ。(2011-6-6追記)この埋立は深さ1mピッチで可)、汚染土を埋める直前に必要な分だけ穴を掘って健全な土を取り除き、その開いた穴に汚染土を埋めていくという方法。前者より安全度が遥かに高い
      • (こちらの方法でも)1000トンとか10000トンを一単位として一気に投入し、すぐに(その日のうちに)雨水が入り込まない処理をおこなう(=締固める※)
      • 実際に処分する汚染土の3倍以上の土を動かさなければならない
      • この方法なら表土処分場内に低濃度汚染水処理施設を設ける必要がない
      • (2011-6-6追記)この方法では出来る限りGPS誘導の重機を用いるべきです(詳細理由は略)。

※乾燥した土を専用の機械で厚さ20cm毎に締め固めれば、水分はほぼ染み込まなくなります。もちろん液状化とも無縁となります。一般の工事ではここまでやらないので土砂崩れや液状化が起きるのです。

 

(2011-6-21)「締め固める」についてちょっと書き足りなかったことを追記します。一般的に土を手早く固く締固めたい場合は石灰を混ぜると思います。当然今回の場合でも何らかの(石灰ではない)適切な物質を混合して水の浸透を最大限減らす工夫がされるものと考えます。汚染された表土を埋めた部分に僅かに水は浸透したとしても、水と接触する汚染土を全体の0.00000001%程度に抑えれば実質的に周辺環境の汚染は無視できるレベルになる筈です。泥岩に近い状態を目指すべきです。

 

(2011-6-23追記)とてつもなく建設へのハードルは高いのですが、地道にちびちびと追記しておくことにします。
比較的小規模な処理場に留めたとしても粘土の調達は相当大規模なものになります。大規模なものなら川の付け替えも必要になるでしょう。またiiの手法では一時埋めておいた“健全な土”を置く(埋めるor積み上げる)場所にも相当な広さが要求されます。
それと言うまでもないことですが、大規模処理場の建設に拘って建設が遅れるよりは東電の敷地内に建設できる程度の規模のものを早く建設する方がマシです。
もちろん私の理想案では大規模処理場を建設し、広い面積の表土や木々をごっそりと剥ぎ取ったり切り倒して持ってこれることを想定しています。粉砕工場とかフィルター付きの焼却場も併設して広い面積を本格的に除染できる計画を実施できることを願っています。

 

(2011-7-3追記)最近ようやく下水汚泥や焼却灰の(高濃度)放射能汚染が頻繁に報じられるようになりましたが、これらの処分も本ページ記載の処分場でおこなうべきです。ただし汚染表土よりさらに放射能の汚染度が高いので汚染表土の処理よりもさらに工夫が必要だろうと思います。コストをいくらでもかけられるならガラス固化等をおこなうべきだと思いますが、現実には(1)処分場に特別な区画を設け(2)粘土層を厚くし、(3)遮水性の高い粘土状の材料と混合した上で特に丁寧に締め固める、等の対応をすべきだと思います。

 

(2011-7-25追記)元日本原子力学会会長、元原子力委員会委員長代理の田中俊一氏は除染用の処分場は通常の管理型処分場に似たものでいいとの旨の意見を7月20日にTBSラジオで述べています。通常の管理型処分場との違いはベントナイト(粘土)シートを遮水シートの上に敷くだけでいいとのことです。これは私の↓この意見と近く、ある程度私は理解できるのですが、あまりに簡易過ぎて国民に受け入れられる可能性は低いと思います。

 

わりと厳密な扱い方で書いてみましたが、表土は放射性廃棄物としてみると超低濃度ですので「多少漏れ出しても構わない」みたいなもう少し気楽な方針で扱っても実際には構わないと思います

遮水壁の説明

内側の遮水壁(赤)

  • まず設置される筈はない
  • 核燃料が格納容器の下のコンクリートをどんどん溶かしながら相当下に潜り込んでしまって原子炉建屋内からはどうにも冷却ができなくなり、且つ燃料の降下が止まらず(と見られ)、且つ地下水経路への放射能汚染が深刻に懸念される場合は、外側の遮水壁だけでは万全ではないので設置が望ましい
  • 「そこまですることはないのでは」というレベルの案だが、ただの遮水壁ではなく、冷却配管を配置して大深度部の土壌を凍土化する能力を持たせられれば燃料の降下を阻止できる効果が期待できる。ただしそれほどの冷却能力が実現できるか不明だし、実現できたとしても長期に渡ってものすごい電力を消費する
  • 設置すると建屋の耐震性に問題が生じる可能性もある上、他の作業の妨げになり易い

中間の遮水壁(青)

  • 既存の取水・排水口の利用復活の望みに見切りを付ければ設置はそれほど難しくない
  • 耐久性を高めるか修理を容易にする必要がある
  • (これが最外側となるように)一重にしか設置せず、且つ岸壁の間際だと修理が難しい
  • 仮設防潮堤としてだけの役割だけでなく、高濃度汚染水の流出防止の役割も大きく担わせるべき

外側の遮水壁(緑)

 

こっちは表土処分場の仕様・運用法と違ってもっともっと深刻に受け止めなければならないと思います。汚染水の濃度が“超超”高濃度だからです。

 

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